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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2025.04.20,Sun
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Posted by tafuto - 2008.01.18,Fri

   ※アニス好きさん注意                 

2週間ほど父上が忙しそうにしていたと思ったら、ルークは登城を命じられた。
ファブレ邸を出るなんて、初めての事だ。
ルークは驚きと少しの不安で傍らのジョゼットを見た。ジョゼットは何か思いつめたような固い顔をしている。
「どうかしたのか?ジョゼット。」
「いえ・・・私が護衛につきます。お支度を。」
ジョゼットに支度を手伝わせて城に向かう。無理に微笑んだような笑みが気にかかるが、今は急がなくてはならない。


「ルーク・フォン・ファブレ、お召しにより参上致しました。」
ルークは王座に向かって膝を付いた。ジョゼットは謁見の間に入った所で控えている。
「おお、ルークよ。久方ぶりであるな。顔を上げよ、さあ、こちらへ来い。」
妙に上機嫌なインゴベルト王がルークを促す。ルークは怪訝そうに立ち上がった。
そこで国王からマルクト皇帝の名代であるカーティス大佐とダアトの導師イオンを紹介される。
「この度マルクトと和平を結ぶ事とあい成った。その証に、親善大使としてお前にアクゼリュスへと赴いてもらいたいのだ。」
「お・・・私がですか?私のような未熟者で宜しいのでしょうか。」
戸惑うルークに、モースの声がかけられた。
「聖なる焔の光がアクゼリュスに向かうことは、預言に詠まれておるのですぞ。ティア、ここへ。」
ティアと呼ばれた少女がインゴベルトの前へと進み出、王が示した譜石を詠みあげる。
「ルークよ、これは預言で定められた事なのだ。しっかりと頼むぞ。」
まだ腑に落ちないものを感じたが、勅命に異を唱えるわけには行かない。ルークは頭を垂れた。
「・・・拝命、仕りました。」

 


ピオニーはいつものように王宮をこっそりと抜け出して、下町に遊びに来ていた。
なじみの店で昼食を取り、こっそり戻ろうと人気の無い道を歩いていると複数の気配がする。
ぴりぴりとした殺気があたりに漂う。
(ヤバイ、囲まれたな・・・)
舌打ちをして身を翻そうとしたピオニーを取り囲むように男たちが現れた。
無言で剣を抜いて、切りかかってくる。

一人目をかわし、二人目に掌底を叩き込む。・・・かわし切れない。
三人目の剣が己を捕らえそうになった時、突然その男が吹き飛んだ。
黒い影のように現れた男が、次々と男たちを切り伏せてゆく。返り血さえ浴びない速さで刺客を倒した男は、息を乱しもせずに剣を納めた。
「・・・・・・すまん、助かった。礼を言う。」

男がゆっくりと振り向いた。その眼を見たとき、ピオニーは全身が粟立つのを感じた。
二つの深淵がぽっかりと穴を開けている。
(これは・・・人か?)
「礼を言われる筋合いは無い。俺は、俺の目的の為にお前を助けた。・・・ピオニー陛下、アクゼリュスは崩落するぜ。住人を助けたいなら、早めに何とかするんだな。まあ、放って置いても俺は一向に構わんが。」

その言葉に驚愕したピオニーは思わず問いかけた。
アクゼリュスから瘴気が噴出し、救助の為にキムラスカに和平の名代を送り出したばかりなのだ。
「待て。なぜそんな事を知っている!」
「預言に詠まれている。キムラスカはその崩落をきっかけにマルクトに宣戦布告するはずだ。そうなる前に、俺がアクゼリュスを落す。住民を助けたいならさっさと逃せ。」
瞠目したピオニーが固まっている脇を男が通り過ぎる。
「待ってくれ、お前の名は・・・・・・!」
振り返ったそこには、もう誰もいなかった。数十メートルも脇道など無い。消え失せた。
青褪めたピオニーは呆然と立ち尽くしていた。

 


インゴベルト王への謁見の後、和平の使者との懇談がもたれた。
ルークは内心げっそりしながら、ここぞとばかりに近づいて来る貴族たちの相手をしていた。
ティアと言う導師守護役は、報告があるからと言って導師をもう一人の守護役のアニスに任せ、途中で退席して行った。ルークを値踏みするような冷たい視線が気にかかる。
そのアニスは、導師の事などそっちのけでルークに話しかけて来る。
今まであからさまに媚を売って来る者などいなかったので、ルークは戸惑いながらも何とか相手をしていた。ルークとの会話を遮られた貴族が不快そうに見るが、導師はニコニコするばかりでアニスを咎めようともしない。
名代のカーティス大佐は、値踏みするようにルークを見た後、表情の読めない笑みを浮かべながらのらりくらりと会話をしている。

(何か、変なの・・・それにしても疲れた・・・・・・)
家から出た事の無いルークに、初めからこれではハードルが高すぎる。
溜息が多くなってきたルークにジョゼットがそっと近づいた。
「ルーク様、お疲れでしょう。明日の準備もありますので、そろそろ退席いたしませんか?」
「そうだね、ジョゼット。」
ホッとしたようにルークが微笑む。二人は王に挨拶をして退席して行った。


館に着くと、げっそりとしたルークがジョゼットに問いかける。
「ねえ、ジョゼット。この親善って変じゃない? 普通誰か実績のある者を立てて、初心者の俺は補佐じゃない? それに何で親善大使が瘴気の出てるアクゼリュスに行くの、グランコクマじゃなくて。それもあんな少人数でさ。いったい俺に何が出来るんだよ。」
ジョゼットもそう思う。『以前』はおかしいとも思わなかった。いかに預言に囚われていた事か。

「・・・はい、おかしいと思います。明日カーティス大佐に、救助はマルクトから出してもらうよう要請したほうが良いと思います。こちらはあくまで親善で行くのですから。」
「うん、そうする。街道使用許可は出たし、こんな人数じゃ住民の避難なんてできっこないよ。」
他国の民を救おうと必死で段取りを考えるルークの聡明さと真っ直ぐな優しさに、ジョゼットは喜びと共に胸の痛みを感じる。
この優しさを歪めて来た『以前』の自分達の罪深さに吐き気すら覚える。
(この命を懸けて、お守りいたします・・・)
そして“彼”も、アクゼリュスでこの方を死なせはしないだろう。

 

翌日、ルークが救助の依頼をすると、カーティス大佐は笑みを浮かべながら言った。
「まあ、必要ないとは思うのですが、昨日グランコクマから知らせが届きましてねぇ。街道使用許可が出次第、救助を差し向けるそうです。許可証はもう送ってあります。」
ホッとしたように微笑を浮かべたルークに、慌しい叫び声がかけられた。

「あー、いた!ルークさまぁ、大変なんですぅ!イオン様が攫われちゃったんです。」
国家機密にも等しい事を大声で叫びながらやってくる導師守護役に、ルークの顔が引き攣る。
護衛として同行する事になっていたジョゼットが、ルークに縋り付こうとしたアニスを遮った。
同じく同行を命じられたガイは、ぽかんとしてそれを見ている。

「ちょっとあんた、何すんのよー!」
「何ではない!どういうことだ。もう一人の守護役はどうした。」
「ティアなら昨日報告に行くって言ったきり、戻ってこないけど。今朝起きたらイオン様がいないの! あやしい人影が砂漠方面に向かったって・・・」
「守護役が一人なのに寝ていたのか! それになぜルーク様に言うのだ。城にモース殿がいるだろう。」
「ええ、だってぇ・・・ルーク様! イオン様を助けて下さい!」
「まぁ、アニスはまだ子供なんだし・・・ルーク、助けてやったらどうだ?」
自分勝手なアニスの言い草と、国の重要問題に許可も無く口を出してくるガイに、ジョゼットは呆れ果てた。問題が有るなと思っていたが、ここまでとは思っていなかった。
『前回』のルークに同情する。

「ルーク様は王命でアクゼリュスに向かうのだ。導師の救出に割く時間は無い。城から兵を出してもらえ。」
「ええ~そんな暇ありませんよー。ルーク様ぁ、お願いします。砂漠に行ったんならケセドニアから先回り出来るから、一緒に連れて行ってください!」
「ルーク、こんなに頼んでるんだし、連れて行くくらい良いだろう?」
「決めるのは親善大使殿ですしねぇ。」
ルークとジョゼットは顔を見合わせた。
「・・・分かった。ケセドニアまでの同行を許可する。しかし、直ちにダアトに連絡を取れ。俺は城に報告してくるから。」
ルークは屋敷に駆け戻ると、すぐに王に手紙をしたためた。白光騎士に王宮に使いにやらせる。
「・・・なあ、ジョゼット。何で出発前からこんなに疲れてるんだろうな?」
二人は溜息をついた。

 

ダアトへの報告を命じられたアニスは、報告に行くふりをしてこっそりと隠れていた。
人影の無いここで時間を潰して戻るつもりだ。
「もぉ~! モース様に報告なんか出来ないよ。さっさとイオン様を見つければ良いんだもんね。あの世間知らずのお坊ちゃんに手伝わせれば何とかなるよね!」

「ほぅ、お前はルークを騙して顎で使おうって言うのか?」

真後ろから掛けられた声に、アニスは飛び上がった。誰も居なかったはずなのに!
振り返った先には赤い髪が見える。
「げっ!いやですよぉ、ルーク様、冗談ですってばぁ。」
アニスの作り笑顔は途中で凍りついた。これは誰だ!ルークじゃない。

「お前はルークを利用し、責め、馬鹿にし続けた。・・・自分はイオンを殺したくせにな。今度もそれは変わらないと見える。その不愉快な言動でルークを疲れさせる前に、ここで死ね。」

人の形をした“死”が迫ってくる。
「い・・・嫌ぁ!」
アニスは人形を盾にするように巨大化させた。その人形がアニスの目前で二つに分かれていく。
頭頂から股間まで一直線に氷が触れたように冷たさが走った。
ずれていく視界の中で、無表情な男の暗い瞳が見えた。
それがアニスの最後に見たものだった。

「ルークを利用する奴は誰であろうと許さない。」

男は不愉快そうにアニスだったモノを廃工場の暗がりに蹴り込んだ。
徘徊する魔物どもの餌にでもなればいい。

「守ってやるぞ・・・ルーク。」

 

 

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