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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.01.19,Sat

 

「お待たせしました。・・・あれ、アニスは?」
報告を済ませ戻ってきたルークとジョゼットは、辺りを見回した。ジェイドがそれに答える。
「さあ、まだ戻ってきませんが。」
10分ほど待ったが戻ってくる様子がない。ルークは諦めた。
「きっとモース殿から新たな命が下ったのでしょう。これ以上出航は伸ばせません、行きましょう、カーティス大佐。」

親善大使の一行はルーク、名代のジェイド、ルークの護衛にジョゼットと使用人のガイ、それから白光騎士が数名というメンバーだ。
ルーク達は連絡船をケセドニアで乗り換えてカイツール軍港へと向かう手はずだった。
一行は船へと乗り込んだ。


船内でもまたひと悶着起きた。ナタリアが密航していたのだ。
「ナタリア!あれほど王に行くのを止められていたじゃないか。許可は取ったのか。」
「お父様はきっと解って下さいますわ。こんな時、王女である私が行かないでどうしますの!ルークは不慣れなのですから、婚約者のわたくしが代わりに頑張らないと!」
自信満々なナタリアに経験の浅いルークは口を挟めない。しかしこれが、臣下として決してやってはいけない事だと言う事は解る。
「だめだ、ナタリア。ケセドニアでキムラスカへ帰れ。」
「まあ、何を言いますの、ルーク。」
散々もめた後、ナタリアをケセドニアで降ろす事にする。


ケセドニアで領事館へと一行が入って行ったとき、ちょうど兵士が領事に報告を持ってきた。
攫われた導師がオアシスからザオ遺跡方面へと向かったという知らせだ。
それを耳に挟んだナタリアは、俄然張り切り出した。
「まあ、なぜそんな大切な事を黙っていましたの?早く助けに行かないと!」
「ナタリア、俺たちは王命でアクゼリュスに向かっているんだ。王命に背くつもりか。」
いい加減うんざりしていたルークが、イライラと口を挟む。
「和平の取次ぎをした導師がバチカルで攫われたなんて、和平に差し支える可能性もありますわ!助けてすぐに帰ってくれば良いじゃありませんの。」
「ここから兵を出せば良いだろう?とにかくダメだ。ナタリアはバチカルへ帰れ。」

ナタリアをなだめすかした後、今日はケセドニアで一泊する事になった。ルークは疲労困憊している。しかしその疲労は翌日まで持ち越されることとなった。
ナタリアが兵を勝手に連れて行ってしまったのだ。

「まったくもう! 何考えてんだよ!」
「まあ、姫の言うことにも一理ありますがね。・・・導師誘拐は重大事ですからねぇ。和平に差し支える可能性も無いわけではない。」
怒るルークにジェイドがのほほんとした口調で告げる。
ルークはじっとジェイドを見た。
「それは、マルクトが導師救出を認めると言う事か? カーティス大佐。」
「・・・そうとって貰っても構いませんよ。親善大使殿。」
「・・・・・・わかった。マルクトが認めるならこちらに否はない。導師救出に向かおう。」


キムラスカ領事館で兵を借りてザオ遺跡へと向かったルーク達は、オアシスでナタリアたちに追いついた。
何とイオンが共にいる。
「助けに来てくれたのですか。ありがとうございます。ザオ遺跡で追いついたティアが僕をここまで連れて戻ってくれました。」
「誘拐される所をお見かけしましたので、後をつけてザオ遺跡で解放された導師を保護しました。」
無表情に頭を下げるティアにルークは何か腑に落ちないものを感じたが、ナタリアの叫びにその思考は途切れてしまった。
「無事で良かったですわ!イオン様。 ルーク、やっぱり来てくれましたのね! 約束は思い出してくれまして?」


身体の弱い導師を労わりながら行く為、随分時を無駄にしてしまった。
ケセドニアまで戻った一行は、疲れ切っていた。それなのにイオンはアクゼリュスまで同行したいと言う。
「許可できません、導師イオン。誘拐で疲れている、ただでさえ身体の弱い貴方を、瘴気の出ているアクゼリュスになど連れて行けません。それでなくても、もう2日も無駄にしてしまったのだから。」
「でも、ルーク。僕は導師として和平の結果を見届けたいのです。」
「ルーク、導師がこう仰っているのですもの、連れて行ってさしあげたら?」
その言葉にルークはキッとナタリアを睨んだ。
「ナタリア、親善大使は俺だ!」


「ずいぶん傲慢なのね。」
イオンの側に居たティアが軽蔑したように口を出す。
「酷いですわ、ルーク!」
「ルーク、女の子に怒鳴るのは感心しないぞ。」
口々に責める同行者にルークはキレかかった。
「決めるのは親善大使殿ですから。」
他人ごとのように薄笑いを浮かべているジェイドにも腹が立つ。
「親善大使としては許可しない! 来たけりゃ導師命令で勝手にしろ!」
ルークは踵を返した。焦りが胸にこみ上げる。
ずっと何かいやな予感がしていた。そしてそれは刻々と大きくなっていたのだ。

 

アッシュはデオ峠からアクゼリュスを見下ろしていた。
住民を乗せたタルタロスが峠を離れてゆくのが見える。避難が終わっていなくても、ルークが来る前にアクゼリュスは落してしまうつもりだった。
煩いナタリアも殺してしまおうと思ったが、時間稼ぎの為にあえてそのままにした。
しかしルークを軽んじ、重荷になった事は忘れない。あんな愚かな女はルークの伴侶には相応しくない。

「ルーク・・・お前にアクゼリュスは落とさせない。あれはあんなにもお前を苦しめた。
・・・・・・最初から俺がやるべきだった事だ。」

ふわりと笑ったアッシュは、パッセージリングの前に跳んだ。
無造作に両手を挙げて超振動を発生させる。
眩い光と共にパッセージリングは砕け散った。

 


カイツールからデオ峠を目指していたルーク達は、大きな地震に膝を付いた。
「な、何だ。」
ずいぶん長い間続いていた地鳴りがおさまり、アクゼリュス方面から暗い土煙が流れてくる。
ルークはジョゼットが止めるのも聞かず、駆け出した。
森を抜け、峠に差し掛かったところでルークの足は止まった。
・・・・・・無い。なにも無い。
広大な大地が深く抉られたように消失していた。

立ち竦むルークにジェイドたちが追いついてきた。みな声も無く大地の傷跡を眺めている。
「俺が遅くなったから・・・住民たちは・・・・・・」
ルークの呟きに、ナタリアが眼をそらした。イオンも項垂れている。
ティアは凍りついたように前方とルークを交互に見ていた。

「・・・いえ、これで良かったのです。」
どこか呆然としたジェイドの言葉にルークは振り向いた。
「あれを見て下さい、タルタロスです。救助は済んでいたのでしょう。私が浅はかでした、お許し下さいルーク様。・・・・・・貴方が無事で良かった。」
跪き謝罪するジェイドにルークは瞠目し、微かな笑みを浮かべた。
「いや、良いよ。住民が無事なら。それじゃ、タルタロスへ行って見よう。」

ジェイドは己のこれまでの態度が、どれほど非常識だったかを実感していた。
一歩間違えば、開戦してもおかしくは無かった。
そうならなかったのは、己が侮って見くだしていたこの少年の和平を望む心から来ていたのだ。
自分のプライドより民の命の心配をしたこの子供に、ジェイドは心から頭を下げた。

 

言葉少なになった一行の後ろに無言で付き従いながら、ジョゼットは恐怖と、そして一抹の安堵感を覚えていた。
(きっと“彼”がアクゼリュスを落とした・・・でも、これでルーク様が苦しむ事は無い・・・あんなにも責められ、心を壊す事は無いのだ。)
前方に停泊しているタルタロスから、偵察の兵士がこちらに向かっているのが見える。
崩落現場を見に来たのだろう。
駆け寄ってくる兵士にジェイドが何か話しかけている。一人の男が進み出てジェイドが略式敬礼をした。銀の髪が光を弾く。

(アスラン・・・・・・!)

男達がこちらへと歩いてくる。ジョゼットはアスランから眼を離すことが出来なかった。
「はじめまして。私はアスラン・フリングス。マルクト軍の少将を務めております。この度のアクゼリュスからの住民の避難の指揮を執らせて頂いております。」
男が穏やかに微笑んだ。・・・・・・胸が痛む。
(この笑顔はこんなにもあの人なのに、彼は私のアスランでは無いのだわ・・・・・・ああ、“彼”はどんなに絶望した事だろう、私がそうであるように・・・)

ぎこちなく笑顔を返しながら、ジョゼットは唇を噛んだ。・・・早く一人になりたかった。

 


グランコクマの王宮に一人の男が現れた。男はゆっくりと王座へと歩み寄って来る。
「な、何者だ!」
誰も男が何処から現れたか分からなかった。気が付いたら、そこに居たのだ。
駆け寄ってくる護衛兵たちを、ピオニーは腕を振って収めた。
「よお、また会ったな。アクゼリュスの事は礼を言う。・・・名を聞いても良いか?」

異様な気配に怯える兵士とは裏腹に、まるで知人にでも対する様なピオニーの態度に、アッシュは少し面白そうな顔になった。
「俺のことはアッシュと呼べ。・・・アクゼリュスは落としたぞ。親善大使は無事だ。」
ピオニーは真面目な顔になった。じっとアッシュを見据える。
「理由を聞かせてもらおうか。」
「それを話しに来たのさ・・・お前らにとっても、悪い話じゃないだろうよ。」
アッシュはにやりと嗤った。



自らを『燃え滓』と名乗る男の語る話に、ピオニーを初めマルクトの重鎮達は顔色を無くしていった。消滅預言、パッセージリング。初めて聞くことばかりだ。
「疑うんなら、懐刀の眼鏡にでも調べさせろ。大地の降下は協力してやる。」
「いや、疑うわけじゃない。だが、なぜお前は俺たちにそこまでしてくれるんだ。」
ピオニーの問いに、男は嗤う。

「只って訳じゃない。契約をしてもらおう。・・・今後一切『ルーク・フォン・ファブレ』の治めるキムラスカに手を出さない事だ。守れないなら俺はマルクトを滅ぼす。」
「預言によると、キムラスカの方から手を出して来るんじゃないのか? それに、ルーク・フォン・ファブレは第一王位継承者じゃないぞ。」
「ルークは王になるさ。・・・・・・戦争をやりたがっている者どもは、もうすぐキムラスカにいなくなるからな・・・」
クックッと楽しそうに嗤う男の暗い瞳に、背筋が寒くなる。

「・・・・・・そうか。」

これ以上聞いてはならない。ピオニーはそう確信する。
この男は眉一つ動かさずに、マルクトを滅ぼすだろう。安っぽい正義感や好奇心でマルクトを滅ぼすわけには行かない。そんな生半可な気持ちで皇帝の座にはついていない。

「誓おう。マルクトはルーク・フォン・ファブレの治めるキムラスカに、決して侵攻しない。」
「・・・契約は成立した。・・・俺の事はキムラスカには言うなよ。」
ゆらりと立ち上がる男に、ピオニーは思わず問いかけた。
「お前は何者だ。」
ピオニーに背を向けたまま、男は呟いた。


「俺は、ローレライの力を奪った・・・・・・ただの燃え滓だ。」

そうしてその姿は、その場からふっと消え失せた。

 

 

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