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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.03.02,Sun

 

タルタロスから兵を引かせて、リグレット達には『教団最高位の導師の命の方が優先する、不満ならヴァンに指示を仰げ』と言って追い返したあと、俺は何名かの兵と共に和平の使節一行をセントビナーまで送った。
タルタロスはネクロマンサーの一言で起動停止してたから徒歩だ。(俺の所為じゃねぇ)
途中、ルーク殿の使用人らしい奴が合流した。探していたらしい。

驚いた事に、王族であるルーク殿が前衛に立とうとする。慌てて止める俺たちに不思議そうに訊いてきた。
「だって、剣を持っているなら子供でも戦うんだろ? 戦えないなら足手まといだって言われたぞ」

開いた口が塞がらない。何処の馬鹿野郎だ、そんなデタラメを教えたのは。
と言うか、速攻で首を落とされるレベルの不敬だぞ。使用人やネクロマンサーも何故止めない。
「ルーク様、王族と言うのは守られるべき存在です。イオン様と同等の身分なのです。あなたがここで傷ついたら和平どころでは有りません。即戦争になります」
「そうなのか・・・でも俺、他人に戦わせて守られてるのは嫌だよ」
俯くルーク殿に苦笑が漏れる。なんて真っ直ぐな優しさだ。ガキっぽいとも言えるが。
「その苦しみが、王族の背負うものなのではないでしょうか。部下に死んで来いと言うのは、自分が剣を取るより辛いものです」

驚いたように眼を見張ったルーク殿が、不意にニパッと笑った。
眩しいくらいの全開笑顔に、不覚にも見惚れてしまった。こんな風に笑う奴、俺の周りにはいなかった。
「なあ、あんたすげえな! 俺と同じ位の歳なのに何でも知ってるのな。俺の事はルークって呼んでくれよ! 敬語も無しだぜ!」
「・・・わかった、ルーク。俺はアッシュと呼んでくれ」
なんか使用人が向こうでギリギリ睨んでいるが、気にしない。皇帝の名代や導師の前でいきなり王族の名を呼び捨てるような使用人の分を弁えない奴に、王族の護衛など勤まらない。


ルークは何かと言うと俺に纏わり付いてきた。ちょっと鬱陶しいが、弟が出来たみたいでくすぐったい感じだ。俺たちは少しづつ自分の事を語り合った。

「なあ、それにしても俺達そっくりだよな。孤児って言っても、何かちょっと位親の事覚えてないのか?」
ルークの言葉に俺は苦笑する。
「俺は10歳くらいの時にダアトで拾われたんだが、記憶喪失でそれまでの事を何も覚えてなかったんだ」
「ええっ、アッシュも記憶喪失なの! 俺も10歳で誘拐されて記憶喪失になったんだ。歩く事も話すことも出来なくなってて、赤ん坊からやり直したんだぜ」
「俺は話すことは出来たな。日常生活くらいは出来た。読み書きは忘れてたがな」

ああ、こいつがガキっぽいのは赤ん坊からやり直した所為か。王族で、軟禁されて7年じゃ世間知らずなのも当たり前だ。世間に揉まれた俺だって随分苦労したからな。

しかしここまでそっくりで、しかも同じ頃に記憶喪失になるとは。
・・・やはり俺と何か繋がりが有るのかもしれないな。


野営の事とか戦いの事なんかを教えてやると、ルークは眼を輝かせて聞いている。
何を見ても珍しくってしょうがないと言った感じだ。嬉しそうに笑う生徒に、教える方も気合が入る。
とうとう部下に『師団長、弟さんが呼んでますよ~(笑)』とか言われちまった。

「本当に、アッシュが兄上なら良いのにな。・・・帰ったら父上と母上に聞いて見よう!」
「・・・おい、それは両親が揃ってる所で聞くなよ」
「何でだ?」
首を傾げるルークに溜息だ。どうやらそっちの方もガキらしい。
「王族はどうだか知らんが、普通一般人の家庭でそれを聞くと、浮気したしないで血の雨が降るからだ。
・・・それに俺は王族なんて面倒なものになりたくねぇ」 
「ええ~っ、ずりぃ! 俺もアッシュと色んなとこ行ってみたいな・・・」
寂しそうになったルークをぐしゃぐしゃ撫でてやる。不敬だが、まあ大目に見てもらおう。

 

セントビナーには、シンクが俺たちを待っていた。
どうやら導師のキムラスカ行きは承認されたらしい。リグレットとラルゴは一足先にダアトへと帰還したと伝えてきた。

「アッシュ、あんたもすぐダアトへ戻れってヴァンが言ってたよ」
シンクの言葉にルークの耳と尻尾がへにゃりと垂れた。・・・ように見えた。
「ええ~・・・アッシュ、もう行っちゃうのかよ。つまんねぇー、バチカルまで来いよ・・・」
子供みたいに俺の袖を引くルークを、ムッとしたシンクが俺の反対側から睨んだ。
「何あんた、アッシュは軍人なんだから帰還命令無視できるわけないだろ」
左右で睨み合いをされて、微妙に居心地が悪い。
「シンク、不敬だぞ。・・・それに導師の護衛が不足してるんだよ。どういうルートで帰れって指示は出てねぇだろ、俺はカイツール回りで帰還するから、国境あたりにフレスベルグを手配してくんねぇか?」
「・・・怒られたって知らないよ。分かった、アリエッタに伝えておいてあげるよ」
 
何か機嫌の悪いシンクが帰って行ったあと、ニコニコしているルークに話しかける。
「国境を越えればとりあえず安全だろう。そこまで送ってやるよ」
「やった! どうせならバチカルまで来ればいいのに・・・」
「さすがにそれは命令違反だからな」
俺は苦笑した。何だかんだ言って、俺もこいつと離れ難いみたいだ。手の掛かる弟みたいで眼が離せねぇ。今まで天涯孤独だったから、こいつといると何かこう、あったかくなるんだよ。


セントビナーに入ると導師守護役が先に来ていた。
導師を放っておいてマルクト皇帝の親書を優先するとは呆れた奴だ。
いやにベタベタしたしゃべり方のこいつを俺はあまり好きじゃない。アリエッタに変な優越感を持ってる態度が気に障る。
まあ守護役も合流したし、マルクト兵もいるから特務師団は帰還させても良いだろう。
セントビナーに一泊すると、俺たちはカイツールへと向かった。
(こっそり老マクガヴァンに名代の態度をチクってやった)

驚いた事にカーティスは、隠密行動とか言って護衛の兵士を伴わせなかった。
ちっ、特務師団を帰したのは早まったか。何考えてんだこの眼鏡! 
守護役も使用人も守るべき主を放置して前衛に突っ走っていくわ、ルークにも戦わせようとするわ、まったくろくな奴がいねぇ。
導師や公爵子息が怪我でもすれば、和平なんてたちまちおじゃんだぜ。


橋が落ちたフーブラス河を徒歩で渡り終えた時、アリエッタが現れた。
導師守護役が早速噛み付くが黙らせた。お前分かってんのか、アリエッタはお前より上官なんだぞ?
「アッシュ!」
「何だアリエッタ、早いな。国境まではもう少しあるぞ?」
なぜかもじもじしたアリエッタがルークのほうに向き直った。
「ルーク、さま。ママを助けてくれてありがとう、です。アリエッタお礼を言いたくて・・・」
「え? 俺は誰も助けた覚えなんかないぞ」
「アリエッタのママは、エンゲーブの北の森にいた、ライガクイーン、です」
「ああ! あのときの!」

・・・何でルークとライガクイーンが関わりがあるんだ?
俺の視線に気付いたルークが、ちょっと照れながら説明する。

「チーグルに森を燃やされたライガがエンゲーブの北の森に住み着いて、チーグルがエンゲーブからドロボウしてたんで、移動してもらったんだ。ティアは殺せって言ってたけど、可哀想じゃん。だからブタザルにもっといい場所に案内させたんだよ。」
「おなかが空いてもチーグルを食べないでいいように、ルークさま、ママに自分のお弁当、くれたです。卵は孵って、ママたちは無事、移動しました」

クイーンは確か卵を産んでいたはずだ。気が立っているライガクイーンと交渉したのか・・・
俺はぞっとすると共に心底ホッとした。食い殺されなくて、本当に良かった。
アリエッタの礼に照れ笑いをしているルークに近づき、その頭を撫でる。
「ルーク、俺からも礼を言う。クイーンは俺も友達なんだ。・・・けれどもうこんな危険なまねはすんなよ?」

ルークが嬉しそうに顔を輝かせて笑った時だ。
いきなり岩場から紫色のガスが噴出した。
俺はとっさにルークを抱き抱えると、ガスの無い方へと走った。同じくアリエッタが素早くイオンをライガの背に乗せてその場を離れるのが見えた。
「そこから早く離れろ! 有毒なガスだったらどうする!」
もたもたしている使用人や守護役、安全な所で考え込んでいるネクロマンサーに俺は怒鳴った。


安全な所まで離れると考え込んでいた眼鏡が話し出した。
「これは瘴気です。多量に取り込むと瘴気障害を引き起こして最悪死に至ります。・・・今回和平を結ぼうとした理由は、アクゼリュスで瘴気が発生しマルクト側の街道が使用不能になってしまったからなのです。・・・・・・こんなところにまで瘴気が出てくるとは、急がなくてはなりません」

だったらこんな手間も時間もかかる方法を取らないで、さっさとグランコクマからバチカルに鳩でも飛ばせば良いのに・・・とか思ったが、そこにはツッコまずに俺は気を引き締めた。

導師守護役が頼りなさ過ぎるのでアリエッタにカイツールまで同行してもらう。
足の遅い導師をアリエッタとともにライガに乗せると一行の歩みは格段に速まった。
守護役はブーブー言っていたが、無視だ。時々アリエッタとバトルしていて煩せぇ。
アリエッタが口を出したくなる気持ちは分かるので止めないが。
ルークもライガに乗せようとしたが、護衛の俺が乗らないと知ると『俺もアッシュと歩く!』と言い出した。言い出したら聞かないからな、このガキは。


ルークは俺の戦いを食い入るように見ている。
俺は普段試合とかでは右手を使う。基本を押さえた綺麗な剣だからだ。相手が強くなると左手に持ち替える。左は自己流がとうとう抜けなかった。それ故剣筋の読めない、スピードを生かして我武者羅に相手の急所を狙っていく汚ねぇ剣だ。ただ勝つだけならこっちのが強い。
相手がもっと強くなると、右に剣を、左に細剣を持つ。右で相手を誘い左で撹乱して止めを刺す。
まあ、俺に両手を使わせる奴なんかそうはいないがな。

「すっげぇアッシュ! 俺にも教えてくれよ!」
「俺のは自己流すぎて、勉強にならねぇよ。下手に真似すると剣の型が崩れて眼も当てられなくなるぞ?」
「ええ~、そうなのか。・・・んじゃ、時間のあるとき相手してくれよ!」
やる気満々のルークに苦笑する。野営の時に相手をしてやったら、けっこう筋が良い。
ヴァンと同じ、綺麗なアルバート流だった。
「変な癖をつけるより、そのままアルバート流の基本を伸ばせ。筋が良いから頑張れば伸びるぞ」
「わかった! 俺、頑張るよ」
誉められたルークが、ガキみたいな全開笑顔で笑った。俺も少し嬉しくなった。

 

とうとうカイツールに着いた。そこでひと悶着起きた。
旅券が無ぇだと? 何考えてんだ、この眼鏡。
俺のを貸してやろうにも、到底全員分なんて持っていない。困っていたら向こうからヴァンが表れた。

「師匠!」
嬉しそうにルークが駆け寄っていく。
「アッシュ、何故ここにいる。私はダアトに戻れと命じたはずだ」
敬礼した俺にヴァンの厳しい声がかけられる。
「師匠、アッシュは護衛が足りないから残ってくれたんだよ! 俺の我侭だから、アッシュを罰するのはやめてくれよ!」
「・・・わかった、ルーク。 アッシュ、直ちにダアトに帰還せよ。・・・ところでルークを攫った者はどうした?」
「襲撃犯はオラクルの団員と判明致しましたので、リグレットに言ってダアトに護送させてあります。・・・では、これより直ちに帰還します」

俺の報告にヴァンは難しい顔をして考え込んだ。・・・そういやあの女、ティア・グランツと言っていたな。もしかしてヴァンの身内だったのか? ま、俺にゃ関係ねぇ。
ルークが名残惜しそうに手を振ってくるのに、俺は手を振り返した。
「アッシュー! ここまでありがとうな! また会えると良いな!」
「ああ、またな」
俺とアリエッタは和平の一行をヴァンに任せ、ダアトに帰還した。


・・・・・・しかしヴァンはルークと俺の両方を知ってたのに、疑問に思わなかったのか?
俺にそっくりな奴が要るなんて、いっぺんも聞いたことが無かったんだが。
教えたくない理由でも有ったんだろうか・・・ 
俺はヴァンに不信感を抱きはじめていた。

 

 

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