忍者ブログ
同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by tafuto - 2008.03.03,Mon

 

ダアトに戻った俺とアリエッタは六神将の執務室に顔を出した。シンクが一人寛いでいる。
「おかえりーアッシュ、アリエッタ。随分ゆっくりだったじゃない」
「ああ、色々あってな。カイツールでヴァンに追い帰されたぜ。・・・あの襲撃犯はどうした?」
「モースの命令で贖罪の為にバチカルに連れて行かれたよ。あいつ、ヴァンの妹だよ。ユリアの子孫なんだってさ。ヴァンの命を狙ってファブレ家を襲撃したらしいよ」

つまらなそうにシンクが言う。・・・ヴァンがユリアの子孫なんて、はじめて聞いたぜ。
何もかもが胡散臭せぇ。ヴァンは何か企んでやがるのか?


その時、黙っていたアリエッタが俺の袖をおずおずと引いた。
「アッシュ・・・・・・アリエッタのイオンさまから、アッシュにお手紙を預かっている、です。ヴァン総長が変な事したら、アッシュに渡せ、って」

アリエッタがどこかから持ってきた手紙を開封し、読みはじめた俺はすぐに顔色を変えた。
そこには秘預言の全文が記されていた。 ・・・俺が、聖なる焔の光?
『ヴァンはアッシュをファブレ家から誘拐し、レプリカを作らせた。その副作用でアッシュは記憶喪失になったんだと思う。ヴァンはアクゼリュスでアッシュの代わりにレプリカを使うつもりだ。君は預言なんかに負けないで欲しい』
手紙の最後にはそう記されていた。


「レプリカ・・・・・・それじゃ、ルークが俺のレプリカなのか?」
呆然と呟く俺を哀れむように見ると、シンクが言葉を発した。
「そうだよ。・・・そして僕と『イオン』は、導師イオンのレプリカなのさ。三つ子なんて思ってたの、あんたくらいだよ」
瞠目して見返した俺の視線を避けるように、シンクは目を逸らした。

「・・・悪かったな。よく知りもしないで、俺はおまえに無神経な事を言ったのか」
俺の言葉にシンクが勢い良く振り返った。
「何で謝るのさ! ・・・あんた、レプリカが憎くないの? 自分の場所を奪われたんだよ?」
「何も覚えてねぇのに、奪われたとか言われてもわからねぇよ。ルークの事なら、憎くない。弟が出来たみたいで楽しかったからな。レプリカって、弟みたいなもんだろ?」

「・・・まったく、あんたって・・・・・・」
しばらく下を向いて笑っていたシンクは、真面目な顔をすると俺に尋ねた。
「んで、どうするの? これから」
「決まってる。ルークを助けに行く。俺の代わりに殺させたりしねぇ」
「・・・言うと思ったよ。僕も手伝ってあげるよ」
「アリエッタもアッシュの味方です。それに、ルークは恩人、です」

 

まずはヴァンの目的を知るために、俺たちはディストを問い詰めた。
なかなか吐かなかったから、3人がかりでボコボコに・・・してやると脅したらあっさり白状した。
アクゼリュスを皮切りに全ての大地を崩落させ、レプリカ大地を造る。人も皆殺しにしてレプリカに置き換える事で預言を覆す・・・だって。 あいつ馬鹿じゃねぇのか?
「ディスト・・・なんでおまえ協力してんだ? この計画じゃ、みんな死ぬって事じゃねぇか」
「私はネビリム先生のレプリカを作れればそれで良かったのです!」
喚き散らすディストに、俺は呆れたように話しかけた。こいつ天才なのに、時々物凄く頭悪いんだよな。

「・・・作る前にお前、死んじまうんじゃねぇか? それに、レプリカは被験者とは別人だぞ。ルークと会った俺が言うんだ、間違いねぇ。イオンとシンクだって全然違うだろ? きっと、同じ形でも魂が違うんだよ。 同じ人間なんて、作れるはずが無いんだよ」
ディストは涙と鼻水を垂らして俯いている。
「・・・何となくそうじゃないかと思っていました。・・・でも、信じたくなかった。ネビリム先生を復活させて、ジェイドやピオニーともう一度あの頃のように楽しく・・・・・・」

「何だディスト、今楽しくないのか? おまえいっつも十分楽しそうだが」

俺の呆れ声に、ディストはきょとんとして眼を瞬かせた。
「・・・・・・それもそうですね。・・・どうやら私は、過去に囚われ過ぎていたようです。ヴァンに協力するのは止めました、死んでしまっては元も子もないですからね」
「そうか、そんなら手伝え」
俺は3人目の協力者を手に入れた。

 

シンクにはバチカルで導師を拉致してザオ遺跡のダアト式封咒を解かせろと言う指令が出ていた。
シンクにはとりあえずその命に従う振りをしてイオンに話をつけ、アクゼリュス救助の為の時間稼ぎをしてくれと言ってある。
何か吹っ切ったらしいディストは自分からピオニー皇帝に話をつけに行くと言ってくれたので、イオンの書いた秘預言を渡した。ピオニーがこれを見たら速攻で救助を出すだろう。
俺はアリエッタとアクゼリュスに向かい住民を救助しつつ、アクゼリュスに向かわされるであろうルークを待つ事にした。

俺はまず全ての預金を下ろして宝石に替え、隠しにしまい込んだ。
もうここには戻れないかもしれないからな。何をするにも先立つものは必要だ。
いつか独り立ちする時の為にと、給料を溜め込んでおいて良かった。

 

アクゼリュスへ向かった俺達の元に、シンクから報告が届いた。
案の定ルークは親善大使としてアクゼリュスに送られた。キムラスカは繁栄の為に『聖なる焔の光』を差し出すつもりだ。
驚いた事に、襲撃犯のティアが同行するらしい。ユリアの子孫だと言ってモースがねじ込んだと言う。なぜあれだけの事をしでかして斬首されないのか理解に苦しむ。
ルーク・ティア・カーティス・使用人・導師守護役(それとこっそり付いて来たキムラスカの王女)なんて少人数で陸路を進んでいるとは、一体どういうつもりか。途中に砂漠もあるのに。
当然のように前衛に立たされているというルークの身が心配だ。
あいつは人を斬った事が無い。俺だって初めて人を殺した時は眠れなかったからな。

シンクの報告書は最後にこう書かれていた。
『僕がわざわざ足止めしなくたって、あのペースじゃそっちに着くのは相当時間かかるんじゃない?』
俺もそう思うぜ。でも海路を来ているヴァンが到着する前に避難を終わらせねぇとな。

 

アクゼリュスに着くと瘴気はかなり大地を汚染していた。俺は責任者に鉱山が崩落する事を伝えて避難を促した。
ダアトの六神将が預言に詠まれたと言って疑う奴はいねぇ。・・・本当の事だし。
歩ける奴はデオ峠からさっさとカイツールに向かってもらった。
動けない奴は、アリエッタのお友達を総動員してデオ峠を西に飛び越え、カイツールとフーブラス川の間くらいに避難させた。ディストから救助隊が出たと知らせがあったから大丈夫だろう。
マルクトからの陸艦も到着し避難の目処が立ったので、俺は後をアリエッタに任せて(ヴァンが来たら隠れろと言ってある)ルークの元へと向かった。


まずい事に、ルークに会う前にリグレットに会っちまった。
命令違反で俺を捕らえようとしたので、リグレットを撒こうとした俺はルークと行き違いになっちまった。
それに気付いた時には、ヴァンもルークもアクゼリュスに入った後だった。
慌ててアクゼリュスに戻り、残った人間を連れてすぐここを離れろとアリエッタに指示を出す。
坑道の手前にティアが居たので、ヴァンがルークを利用してアクゼリュスを落とすつもりだと言い捨てて俺は最深部を目指した。
俺が血相を変えて走っていくと、眼鏡や使用人や姫や守護役が次々と後を付いて来る。
何でおまえらルークと一緒じゃないんだ! 導師はどうした。
最奥のダアト式封咒が開けられている。俺たちはそこに飛び込んでいった。


「愚かなレプリカルーク、力を解放するのだ」
ヴァンの冷たい声が響き、もがいていたルークが身体を強張らせて虚ろな目になった。
その手が力なく上がり、光が迸った。
「ヴァン、てめぇ!」
俺が斬りかかると、ヴァンはグリフォンに掴まって宙に逃れた。
「アッシュ、なぜここに来た!」
「うるせぇ! てめぇの企みは分かってんだ!」
ティアに譜歌を詠えと言い捨て、ヴァンは去って行った。俺のことも捕らえようとしたが、魔物に蹴りを入れてやった。
ルークは気を失っている。担ぎ上げ、ティアが詠う譜陣の中に引き入れた。イオンも近くに倒れている。
アクゼリュスの大地は崩落していった。

 

あたり一面に紫色の世界が広がっている。ここは地下世界、クリフォトと言うらしい。
ディストの説明にはあったが見るのは初めてだ。
俺はルークをそっと寝かせると、あたりの探索に出かけた。

少し行くとタルタロスを見つけた。どうやら崩落に巻き込まれたらしい。誰も生き残っちゃ居ないだろうと思って入ってみたが、驚いた事に生存者が居た。
「あなたがアッシュ殿ですか・・・私たちはマルクトの救助隊です。崩落の危険が高いと言ってネイス博士がタルタロスの推進力を大幅に上げてくださったので、落下の際全力で噴射を続け何とか助かる事が出来ました。・・・運の悪い者も居ましたが、ほとんどの者は命は助かりました。ありがとうございます」
俺はホッとした。無駄死にさせなくて良かった。・・・しかし、ネイスって誰だ? 
タルタロスは半壊したが、かろうじて動くらしい。俺は皆を呼び集めようと元居た場所に戻った。


「じゃあ、このお坊ちゃんのせいなの? サイッテー!!」
「見損ないましたわ、ルーク! 記憶を失ってからのあなたはまるで別人ですわ!」
「こうなる前に、相談していただきたかったですね」
「少しはいいところもあると思ってたのに、私が馬鹿だったわ」
「あんまり幻滅させないでくれ」

口々にルークを罵る声が聞こえてきて、俺は急いでルークのところへ戻った。
ヴァンが暗示をかけていた所は全員見ていたと思ったのは俺の間違いか?
倒れたルークを介抱してくれていると思った俺が馬鹿だった。

「何やってる!」
蹲って震えていたルークが縋るように俺を見た。その眼に涙がこみ上げる。
「アッシュ・・・」
「何でこいつの所為なんだ。あん時ヴァンが暗示をかけていたのを、お前らも見てたじゃねぇか!」
「あ、貴方が言ったんじゃない!兄さんがルークを使ってアクゼリュスを崩落させようとしているって!」
ティアが俺に食ってかかる。てめぇ、何で自分の兄貴じゃなくてこいつを責めるんだ。
「ああ、だからやったのはヴァンだろ? 人を斬ったら刀が悪いのかよ。罪はやった人間のものだろうが。何でてめぇは自分の兄貴の罪を他人の所為にしてんだよ」

まだぶつぶつ言ってる奴らを無視して、俺は俯いているルークの頭をぽんぽんと撫でた。
「間に合わなくて悪かったな。でもアクゼリュスの人間はほとんど救助した。おまえは誰も殺してねぇ」
バッと顔を上げたルークがくしゃりと顔を歪めると大声で泣き出した。
ガキっぽいと思ってたが、おまえは本当に七歳だったんだよな。
手を引っ張って立たせてやると、ぐちゃぐちゃの顔で縋り付いてきた。
「ほら、しゃんと歩け。」
俺は泣きべそをかくルークの手を引いてタルタロスに向かって歩き出した。
あいつらは付いて来ようと来るまいともうどうでもいい。


タルタロスはティアの進言でユリアシティって所へ向かう事になった。こんな瘴気の中で生きていられるなんて今でも信じられねぇが。
ティアと王女がタルタロスの重傷者に治癒術をかけ終わると、奴らは自然と俺の所に集まってきた。
ルークは倒れそうに疲れてるのに俺に引っ付いて離れねぇ。・・・恐い目にあったからな。

「さてアッシュ、貴方の知っている事を話してくれませんか」
ネクロマンサーが眼鏡を光らせながら俺にきりだす。
「・・・ヴァンは大地を全て崩落させて、レプリカで置き換える事で預言を覆そうとした、ってところだ。俺はダアトでそれを知って、阻止する為にアクゼリュスに来た。預言の内容はピオニー皇帝に伝えたからそっちに訊け。こんなとこじゃ話せねぇ。・・・ヴァンは計画の為に俺からレプリカを作った、それがルークだ」
「レプリカ・・・!」
「ええ~! このお坊ちゃん、人間じゃなかったのぉ~?」
ルークがビクリと身体を強張らせた。・・・しまった、ショックだったか。


「それでは貴方が本物のルークですのね! あの約束を覚えていらして?」
ルークの様子にも気付かず、押しのけるようにナタリア王女が俺に詰め寄ってきた。
「そんなもん覚えてるわけねぇだろ」
7年も一緒に育ったのに、掌を返したような王女の態度に俺は不快になった。
「俺だって記憶喪失だぜ? 俺がレプリカかもしれないじゃねぇか。記憶が無けりゃ偽者かよ」

何か言いたげな王女を無視して、ルークの手を引っ張って部屋に休みに行く。ルークはなぜかしょんぼりしている。
「・・・・・・アッシュ、俺がレプリカなら、俺はおまえの居場所を取っちまった事になるのか? ごめんな、アッシュ・・・」
「気にすんな。そうだとしてもお前の所為じゃねぇし、俺も何も覚えてねぇから取った取られた言ってもしょうがねぇ。レプリカなんて、兄弟みたいなもんだろ? お前、兄貴が欲しいって言ってたじゃねぇか。あれは嘘だったのかよ」

顔を上げたルークは、プルプルと顔を振った。
「う、嘘じゃない! アッシュが兄上なら俺は凄く嬉しい! でも良いのかよ、俺みたいなレプリカが弟で・・・」
「危なっかしくって、目が離せねぇ。しょうがないから面倒見てやるぜ」
ルークの背中をべしっと引っ叩く。 

・・・ああ、やっと笑ったな。

 

ユリアシティで俺達はここの責任者のテオドーロに会った。ティアの育ての祖父(?)だ。
タルタロスの負傷者の治療を要請する。
テオドーロはアクゼリュスの崩落が預言に詠まれていた事を俺達に話した。俺は知っていたが皆は驚いていた。そりゃそうだよな、知っててルークをアクゼリュスに行かせたって事なんだから。
キムラスカは多分預言を知っている。それも中途半端に。
繁栄の後に世界の滅亡が来ることは知らなかったのだろう。知っててやったならただの馬鹿だ。

驚愕はしたものの、こいつらはルークが利用されただけだとは思わないらしい。
相変わらずルークに辛く当たっている。自分達が保護の義務を怠ったくせに。
俺はもうこいつらと行動を共にするのが嫌になった。一緒に居る義理もねぇし。


後でこっそりルークとイオンを連れてテオドーロに面会すると、秘預言を最後までぶちまけた。
青褪め、言葉も出ないテオドーロから外へ行く方法を聞きだす。さっさとこんな所からは出て行ってやる。
部屋を出ようとすると、蒼い顔のイオンが走り寄ってきた。
「アッシュ・・・なぜそんな事を知っているのですか。僕も最後の預言は聞いたことがありませんでした」
「・・・・・・秘預言は、前のイオンが教えてくれた」

俺のその言葉にイオンは震える手で口を押さえた。
「貴方は・・・僕がレプリカだって、知っていたのですか?」
俺の隣でルークが驚いたように目を見開く。俺は静かにイオンに答えた。
「レプリカだって知ったのは最近だが、身代りだとは知っていた。シンクもそうだしな。俺は前のイオンと友人だったんだ。あいつは俺に、自分の兄弟たちを頼むと言っていた。・・・俺はレプリカだとかそう言う事はどうでも良いんだよ。ただ、お前が知ってなきゃいけないことだと思ったから話しただけだ」


立ち竦むイオンを残して俺達は部屋を出た。
ルークが心配そうに振り返ったが、こういう事は自分で決着つけるしかねぇんだ、そっとしといてやれよ。
廊下の向こうから導師守護役がぎゃんぎゃん喚きながらやって来た。
人間じゃないくせにとルークを罵るこいつの言葉を、イオンはどんな気持ちで聞いていたんだろう。
イオン・・・お前も早くシンクみたいに好き勝手に生きられるようになれば良いと思うぜ?

 

 

PR
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
はくしゅ
気に入って下さいましたら、 ぜひぽちっとな
プロフィール
HN:
tafuto
性別:
女性
自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

当家のPCとセキュリティ
Windows Vista  IE8
Norton Internet Security 2009
GENOウィルス対策↓
Adobe Reader 9.4.4
Adobe Flash Player WIN 10,3,181,14
メールフォーム
カウンター
アクセス解析
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]