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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.05.08,Thu

 

する事の無くなった赤毛達は、日がな一日ベッドで戯れていた。 
人間が殺し合っていてもそんなことどうでも良い。 二人にはあまり時間が残されていないのだから。


コーヒーカップを受け取ろうとしたアッシュの手から力が抜け、カップが落下した。
びくりと振り返ったルークを見たアッシュは静かに笑った。
「アッシュ・・・はじまったの?」
「ああ、そうだろうな。この感じは大爆発だ。・・・今度はどの位もつか。レプリカの国をお前と見てみたいもんだがな」
「・・・・・・アッシュ。嫌だよ、二人でいたいよ。ずっと、ずっと・・・」
縋り付く半身を、アッシュは強く抱きしめた。
「俺も同じだ・・・お前を『喰う』時、いつも気が狂いそうになる。 一人だと気付いた瞬間、死にたくなる」

餓えたような視線が絡み合った。
溺れる者のようにお互いの身体に腕をまわし、床に倒れ込む。
噛み付くように唇を貪った。
引き裂かれたシャツが滑り落ち、白い背に赤い爪痕が幾筋も流れる。
灼熱に貫かれ、全てを奪うように締め付け、揺さぶられる。
飲みきれない唾液が顎に伝い、舐め上げる。
断末魔にも似た嬌声。
互いの輪郭さえ曖昧になる気がするほどの快楽。
溺れ、呑み込まれる。


(俺達はもう、とっくに狂ってるのかも知れねぇな・・・)
(・・・それでも、いいよ。 ・・・アッシュと一緒なら・・・・・・)

 

夕暮れの陽の当たるソファーで、アッシュがけだるげに本を読んでいる。
指がしなやかに動き、ページをめくる音がカサリと小さな音をたてた。
その白い指に見蕩れていたルークは視線を少し上げて息をのんだ。
落ちかかる最後の夕日がアッシュの上半身を染め上げていた。髪が、腕が、顔が、緋に彩られている。
静かに目を伏せたアッシュはその生の最後を連想させた。

「アッシュ・・・」
ふらりと立ち上がったルークはアッシュの首に腕を回して屈み込んだ。己の名を呼ぶ小さな呟きに顔を上げたアッシュが、ルークの腰を引き寄せ自分の膝に座らせた。
「どうした? ルーク」
「アッシュ・・・一人にしないで」
すり寄ってくる半身の髪にそっと口付け、アッシュが抱きしめる腕に力を込めると、ルークはアッシュの首筋に顔を埋めた。
唇で頸動脈の鼓動を確かめ、滑らせた舌で体温を感じる。ルークは堪らなくなって柔らかな其処に歯を立てた。
ぷつり、と犬歯が食い込み、甘く感じられる液体が口腔に溢れた。

「・・・っ」
アッシュの体がピクリと動き、吐息が荒くなった。
「俺を噛み殺したくなったか? ・・・いいぜ、お前になら。その代り俺が死ぬ時はお前も一緒だ。俺はお前を手放さない、一人になんてさせねぇ」
アッシュの熱の籠った掠れた囁きに、体の芯が熱くなる。
顔を上げたルークの首筋に、アッシュは同じように歯を立てた。
チリ、と鋭い痛みが走り、生暖かいものが首筋を伝った。
アッシュは舌を蠢かせてそれを舐め取ってゆく。ぴちゃぴちゃと音を立てて貪られてゆく。
「あ・・・ああ・・・ アッシュ うれしい・・・」
二人はお互いから滴る命の水をまるで蜜のように味わった。

二人で居る事が実感できるこの瞬間、繋がるこのひと時だけが二人の全てだった。

 


バチカル周辺が崩落した。そして後をを追うようにグランコクマが海に沈んだ。
混乱した人間達は、成す術もなく崩壊する大地に呑まれていった。

 

初めにホドが再生された。次にフェレス島が。
本拠地をレプリカホドに移したヴァンは、加速するようにレプリカ大地を造りだしていった。
崩落していった大陸に代わるように次々と浮かび上がってくるレプリカ大地。
そこには無垢な人形のようなレプリカたちが住んでいた。


凄まじい勢いで第七音素は使われ、地核にいるローレライから引きはがされた。
自我も保てないくらい薄くなっていく音素に、ローレライは断末魔の悲鳴を上げた。


少しずつ衰弱していくアッシュの身体を抱きしめながら、ルークはローレライの悲鳴にうっとりと聞き入った。
うまく動かなくなってきた指で半身の美しい髪を梳きながらアッシュも楽しそうに微笑んだ。

(ローレライ、お前の創る運命に弄ばれて来た俺たちの憎しみをその身を持って知ればいい・・・)

 

最後の大地が地の底から浮かび上がって来た時、ローレライの叫びは止まった。
再生されたホド、栄光の地なんて馬鹿げた名で呼ばれているそのレプリカ大地の最深部でヴァンは大譜歌を歌った。
もう言葉すら出なくなった、消えかけた焔のようなローレライがうっすらと姿を現す。

「さあアッシュ、ルーク。お前たちが役立つ時が来たのだ。その憎しみをローレライにぶつけるが良い・・・」
幽鬼のようなヴァンの哄笑が白く冷たい大地に響き渡る。


アッシュとルークの大爆発は終盤を迎えていた。
痩せたアッシュの身体を繋ぎ止めるようにルークは縋り付く。
アッシュは自分の音素がルークに向かうのを押し止めるように固く眼を瞑り手を握り締めた。
その手にそっとルークは手を合わせた。

眼を開いたアッシュが半身と眼を合わせる。ルークはアッシュの眼をじっと見て静かに微笑んだ。
「アッシュ、・・・ずっと、一緒に居よう」
「・・・・・・ああ」

繋ぎ合った手がローレライに向って差し上げられる。
「・・・消えろ、ローレライ。すべての元凶」
その手を中心に溢れた光は、消えかけたローレライを貫いた。

 

最後の力を振り絞って超振動を使ったアッシュとルークの身体から、音素が乖離していった。
朱金の光が二人から立ち上り、乱舞し、融合していく。


その瞬間、二人の完全同位体、消えゆくローレライの最後の一欠片がアッシュとルークの大爆発に混ざり合った。

 

ふと身体が楽になったのを感じてアッシュはうっすらと目を開けた。なにかが融合されたようなこの感覚は大爆発の完了を意味する。
(俺はまたルークを『喰って』しまったのか・・・)
死にたくなるほどの絶望がアッシュを襲う。


その時アッシュは自分の身体が温かなものに抱きしめられていることに気付いた。
顔を上げると、きれいな翡翠が眼に入った。翡翠は2、3度瞬きをすると、ゆっくりと涙を落した。
「アッシュ・・・俺たち、生きてる・・・・・・二人で・・・」
震える手をルークの頬に宛がい、親指で涙をぬぐう。次々に溢れ出る涙に到底それだけでは足りず、唇を寄せて舐め取った。
「ルーク・・・・・・」

言葉にならない。言葉など要らない。
二人は固く抱きしめ合い、長い間口付けを交わした。

 

乖離をはじめていたルークの音素はローレライによって補填され、ルークに流れ込んでいたアッシュの音素は押し戻された。
消失しようとしていたルークの意識は、飛び散ることなくその身体に繋ぎ止められた。
澄んだ輝きを取り戻した音素が二人の中でしゃらんと奇麗な音を奏でる。


大爆発は終了した。二人の間に二度と大爆発が起きる事は無い。
そしてローレライの消滅した今、過去に飛ばされることはもう無いだろう。


永遠のループに閉ざされていた未来への扉が、今、開かれた。

 

 



無垢なる世界が誕生して間もなく、ヴァンは死亡した。
瘴気障害はもはや回復できないところまで来ていたのだ。

満足気に息を引き取ったヴァンを、リグレットはユリアの墓の隣に埋葬した。


小さな白い墓石が光をはじく。
リグレットはその墓石の前に呆然と座り込んだ。
無意識のうちに手が腰に伸び、銃を掴んだ。虚ろな目で銃を持ち上げ、銃口をこめかみにあてる。

弟も、愛した男も、弟子も、信用した部下も、故郷も。
何もかも全て壊してしまった。・・・これが自分が本当に望んでいたものだったのか?
眼を閉じゆっくりと指に力を込める。 その指は大きな手に掴まれた。


「・・・リグレット、死んで己のした事全てから逃げるつもりか」
ラルゴを見たリグレットの顔がゆがむ。崩れ落ちたリグレットは地を搔き毟り慟哭した。
「わかっていた、閣下が復讐しか考えていないことなどはじめから解っていたのだ・・・ 私は、預言を覆すと言いながら閣下を預言の代わりにして自分で考える事もせず、愛する男の愚行を諫めもしなかった愚かな女だ。・・・その結果がこれだ! 私は、どうやって詫びればいいのだ!」

号泣するリグレットを見つめていたラルゴは、やがてゆっくりと踵を返した。去り際に呟く。
「俺も、後悔していないと言ったら嘘になる。俺は俺の憎しみの為に娘まで犠牲にしたのだ。しかし俺がやった事は俺が死んでも消えはしない。せめてこのレプリカたちを生かすための手伝いをしようと思う」

 

長い間すすり泣いていたリグレットに、そっと一輪の花が差し出された。
顔を上げたリグレットに栗色の長い髪の少女がにっこりと笑う。
「どこか、いたいの?」
「ティア・・・」
「ティア・・・? それが私のお名前なの?」
レプリカの少女が無邪気に笑う。
人の愚かさによって創りだされた新しい生命が、疑う事を知らぬ無垢な微笑みをリグレットに向けている。

(それなら私にもまだ、やるべき事が残っているのだな・・・・・・)

少女の手を取って、リグレットはゆっくりと歩き出した。

 


栄光の地と言う白い墓場から、焔のような朝焼けに照らされて皆がおもいおもいに真新しい大地を見つめていた。
群青から紫苑に変わる空に薔薇色の光が射す。 朝日に浮かび上がる緑の大地。
少し肌寒い、澄んだ風が髪をなぶった。

焔の片割れがリグレットを見てニッと笑う。その身体を傍らの紅が抱き寄せる。
聖なる焔の光はまっすぐに大地を指差した。



「さあ、行こうよ。 俺たちの国へ」

 

 

無垢なる大地 『フローラント』   ・・・これがその創世の物語

 


                                      END

 

 

あとがき(もどき)

この後レプリカの国を存続させる為にかなり頑張って設定を考えたのですが、別な話になってしまうためすっぱりと諦めました。
シンクとディストは裏方で頑張っていたのです(笑) ごめん、全然活躍させなくて!
ノエルとかギンジとかノアールとか生かしたかったんだけど、設定的に無理だったです。
ちなみにユリアシティはダアトの崩落に巻き込まれています。


ちょっと考えていたその後設定↓

ディストはネビリム先生を作るが、人形のようなネビリムに己の過ちを悟る。そしてレプリカを別の人間として見るようになりレプリカの為に働く。
「馬鹿なディスト。レプリカと被験者が違うのくらい、アリエッタにもわかる、です」とか言われちゃう。
そのうちレプリカジェイド(22歳)にフォミクリーの事教えて、自我に目覚めたレプリカたちと協力して働く。
さすがにピオニーのレプリカ情報は取れないと思うんです。ナタリアとかガイも無理そう。

何年かはディストが1~6音素を使って食べ物のレプリカを作ってレプリカたちを養う。
(セルパーティクルが無くなったので、音素が使えるのは10年ってとこか。それまでにレプリカ自身が食べ物を作れるように指導。)
できるのはぶよぶよした肉とか野菜の塊っぽいもので、まずいけど食べられる。あと漁業で食いつなぐ。(一年分くらいはシンクが備蓄してた)
鳥とか虫とか野生の獣などは崩落前の大地からレプリカ大地に多少移動してきている。
シンク(とアリエッタ)が計画の数年前からプロジェクトXで種と家畜を準備してた。それらを使って農耕。
暫くは増やすだけだが、そのうち軌道に乗るだろう。
ちなみに初代王はシンク。頑張ってね、参謀さん。 そのうちシンアリで子供も出来る。
赤毛達はイチャイチャしてるばかりで全然役に立たない。
食べ物が魚ばっかりでふてくされるルーク(笑)

瘴気はレプリカ大地の第七音素として使われ、地殻付近の(最深部)大地と化した為もう出て来ない。(物質化したから)
「瘴気と言うのは汚染された第七音素です。第七音素はほとんどレプリカ大地を作るのに使ってしまいましたから、もう害があるほど残ってはいないでしょう。セルパーティクルも止まったので液状化した地殻もそのうち固形化します。何も問題はありません」
とか適当な事を考えてみた(笑)嘘っぱちの大捏造。

この後は続かないと思いますが、続くとしても
・プロジェクトX 無垢なる地『フローラント』 その創世に力を尽くした男、シンク。~苦労人哀歌~
・アビスでイチャイチャ☆パラダイス!

・・・・・・・・・なんてそれぞれ別の話になってしまうでしょう(笑)

 

 

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