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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
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Posted by tafuto - 2008.05.17,Sat

拍手再録  

※この作品は名前が微妙に違うので本編をお読みになっていないと訳がわからないと思われます。 

 

ファブレ家の新年  (『幸せ家族の作成法』のその後、ルーシアとガイが結婚して7年後くらい)





冬の寒い日の朝、ここファブレ家ではまるで春の日差しのような笑い声があふれていた。
今日は新年を迎える祭りの日だ。光の王都はその名に相応しく、花や綺麗な飾りで彩られ、人々は新年の喜びを祝い合っていた。


「父上、母上。新年の寿ぎを申し上げる」

朝一番に顔を出した国王陛下とその第一の側近に、ルーとアッシュは破顔して挨拶を返す。
「まあ、ルーク、エステル。あけましておめでとう!」
「おめでとう、ルーク、エステル。国王自ら御出でになられるとは、城の方は良いのか?」
「どうせ祝賀は午後からです。それより父上と母上に一番に新年の挨拶をしたかったのです」
苦笑するルークに微笑んだエステルが寄り添った。
「あけましておめでとうございます。父上、母上、エルウィング」


結婚してファブレ公爵を継いだ妹が、夫を連れて挨拶に出てきた。
夫は穏やかで理知的な、似合いの夫婦だ。一昨年子供も出来た。
エルウィングは落ち着いた微笑を浮かべて一同を促す。
「新年のお喜びを申し上げます、国王陛下。さあ、お兄様方も一緒にお食事に致しましょう」


久しぶりに揃って朝食を取り、団欒していると来客の知らせが告げられた。
「父上、母上、あけましておめでとうございます! まあ、お兄様たちも一緒だったのね!」
ルーシアが息を切らせて飛び込んできた。ガイは苦笑しながら子供たちの手を引いている。
「久しぶりに皆と会えて嬉しいわ!」
エルウィングと手を取り合いくるりと回ったルーシアを呆れたように見つめたルークは、苦笑するガイに視線を移した。

「ガイ、ルーシアを泣かせてないだろうな?」
「滅相も御座いません、国王陛下。新年の寿ぎを申し上げます。」
演技がかった神妙な挨拶に、ルークが笑い出した。ふきだしたエステルを見て、ガイも照れたように笑い返す。
「普通の言葉で良いぞ、ガイ」
「あはは、いや~、俺が振り回されっぱなしだよ。惚れた弱みって奴かな?」
「そんなの今に始まったことじゃないだろ」
「そうそう! 初めっから尻に敷かれっぱなしの癖に」
軽口を叩いてゲラゲラ笑い合う三人に、屋敷の者はもう慣れっこだ。微笑ましく親友同士のやり取りを見ている。


「それより良いのか? マルクトの方は」
「ああ、陛下からも里帰りついでに挨拶して来いと仰せ付かったんだよ。・・・ジェイドの新しい発明も見せたくてさ!」
満面の笑みでごそごそと譜業を取り出すガイに、ルークとエステルは呆れて顔を見合わせた。
ガイの譜業馬鹿は40才近くになっても直らないらしい。

「じゃ~ん! これは写真機と言って、姿や風景をそのまま描いたように写し取れるんだ!」
「へぇ、面白そうだな」
興味深そうに覗き込む一同に、ガイは得意満面だ。
「みんなで写そうよ!」
エステルの言葉に、皆は笑って頷いた。


「撮りまーす! はい!」
ガイにレクチャーを受けたメイドが写真機のボタンを掛け声とともに押した。
豪華な居間の中央に置いた椅子にアッシュとルークが腰掛け、その両脇にルーとエステルが寄り添うように立った。
周囲には子供を抱いたルーシアとガイ、同じく子供を抱いたエルウィングとその夫が立っている。
みな真面目な顔をして、肖像画に描いたような記念写真だ。


「ねえ、真面目な奴ばっかりじゃなくて、楽しいのも撮ろうよ!」
ルーが突然そう叫ぶと椅子に掛けたアッシュの上に座り、首に手を回した。
苦笑したアッシュがルーを抱きなおし、まるでお姫様抱っこのように膝に乗せる。
ルークが無言で同じようにエステルを膝に引っ張り上げた。
「ルーシーとエルは旦那さまに頑張ってもらうこと!」
ルーの宣言に、情けない顔をしたガイと苦笑したエルの夫が従い妻を抱き上げた。


2枚目の写真は、当然のような顔で笑顔のルーを抱くアッシュ、赤い仏頂面をしながら焦った顔のエステルを抱くルーク、でれでれのガイと嬉しそうなルーシア、照れながら頑張っているエルウィングの夫と動じない微笑のエルウィング。そして周りで楽しそうに笑う子供たち。

 

それは、幸せな笑い声が響いてくるような写真だった。

 


月日が流れ、アッシュとルーが天に召され、ルークとエステルが年老いても。
エルウィングの子供達の、そのまた子供達の代になっても。
その写真はずっとずっと大切に飾られていたという。


・・・今はもう何百年も昔の話。

 


キムラスカ国立歴史博物館の片隅の小さな展示室から赤い髪の青年がゆっくりと出てきた。
青年は室内に声を掛ける。

「おい、ルーク。いつまで写真見てんだよ。さっさとしろ」
「待ってよアッシュ! だってさぁ・・・・・・楽しかったね」

朱金の髪を持つ青年はアッシュと呼んだ青年に抱きつくように腕を絡め、微笑みかける。
青年はその子供のような所作に苦笑を洩らし、朱金の髪をくしゃりと撫でた。

「・・・・・・ああ。 帰るぞ」
「うん!」

やわらかな微笑みの残像を残し、一筋の光が立ち昇った。

人影が消えた廊下には、幸せな気持ちだけがそっと残されていた。

 

 


2008 あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いいたします。 ・・・でした!
オチを付け足してあります。


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