忍者ブログ
同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by tafuto - 2007.10.23,Tue

 
 

目覚めると、デオ峠を望むテントの中だった。フリングスが心配そうに俺を見ていた。

「お目覚めになったのですね。・・・あれは一体、なんだったのです。」
「ああ、話すと長くなる。少し待ってくれ。・・・できればマルクト皇帝にも聞いて貰いたいんだが。」

ちょっと眼を見張ったフリングスが、小声で俺に問いかけてくる。
「それは・・・お心を決められたという事でしょうか?陛下は貴方様を受け入れるおつもりですが、もうキムラスカに戻れないのですよ。」
「アクゼリュスはもう落ちない。預言は外れたんだ。今キムラスカに帰れば、俺は預言成就の為に殺されるだろう。・・・戦争の口実に。」
息を呑んだフリングスは、俺を強い目で見た。
「けして貴方を傷つけさせません。」
 
 
俺の周りは、今まで以上に護衛が守ってくれた。一度、キムラスカ人の暗殺者が現れて狙われたが、防いでくれた。同行した兵士に預言成就の為に殺されるかもしれないと伝えたからだ。
 
キムラスカから同行した兵士の一人が、涙ながらに告白してきた。俺が死ななかった時の為に、王に暗殺を命じられていたと。
自分を救ってくれた俺を殺す事は出来ないと泣いて土下座する兵士に、俺は話しかけた。
「俺は初めからわかっていたんだ、気にするな。しかしお前はもうキムラスカに戻れなくなったぞ、どうするんだ。」
「私は貴方の護衛として、どこまでもお供いたします!」
「そうか、宜しく頼む。」
 
 
 
俺たちはアクゼリュス救助の報告と称して、グランコクマへと向かった。眼鏡はパッセージリングを調べる為、技師数人と残ったようだ。
カイツールは避難民にまぎれてそっと抜けさせてもらった。ごったがえしていてそれ所じゃ無いみたいだ。後で大目玉だろうが、知ったこっちゃ無い。
全力でグランコクマへとたどり着いた。これで一安心だ。
ピオニー陛下に謁見し、和平の成立を労われ、住民の避難をいち早くできた事を感謝される。
その後は私室に通され、今後の事を話し合う事になった。
 

「ルーク殿。俺の民達を救ってくれた事を感謝する。マクガヴァンに話してくれた事も。あれは重要な情報だった。」
「まずはアクゼリュスの避難が無事に終わり、私が無事である事をキムラスカに伝えていただけますか?そうすれば開戦の理由にはならない。アクゼリュスは、少なくとも今後数十年は落ちる事は無いでしょう。」
「そうだな、せいぜい大仰に感謝の念を伝えるとしよう。しかし・・・パッセージリングの報告は受けている。あれは何なのだ?」
難しい顔をしたピオニー陛下が俺を見る。フリングスも興味深々だ。

「それをお話しするためにここへ来ました。長い話になります。」
 
 

俺はローレライから聞いたこの世界の構造と、世界を支えるパッセージリングの耐用年数が切れ掛かっている事を伝えた。驚愕する二人に続ける。

「私は、世界でただ一人のローレライの同位体なのです。一人だけで超振動を起こす事が出来る私を、幼い頃からキムラスカは実験材料にしてきました。そして、この力を狙うヴァンに10歳の時誘拐されたのです。ヴァンはフォミクリーで私のレプリカを作り屋敷に返しました。しかし14歳の頃、私の体力は徐々に無くなり、私は一度死を迎えたのです。そして、気が付くと屋敷に戻っていました。その時私の中には屋敷で過ごしていたレプリカの記憶もあったのです。フォミクリーの生みの親であるバルフォア博士の本を読み、それが大爆発という現象ではないかと考えました。」

二人は声も無く聞き入っている。
「それ以来、以前には使えなかった力が使えるようになりました。ローレライからの声も以前より鮮明に届くようになったのです。ローレライは私にパッセージリングの事や、再構築の知識を伝えました。あの力は、第二超振動と言うのだそうです。物質を再構築する力です。」
 
 
「そんな・・・事があったのか・・・」
溜息をつきながらピオニー陛下が言う。フリングスも疲れた様に首を振った。
「しかし、何故それをキムラスカに言わなかった?」
「・・・あの国では、私は預言の生贄の為に飼い殺しにされる家畜でしかありません。誘拐されすり替えられた後も、大爆発の後も、誰一人として気付かなかった。」
俺は薄く笑って目を伏せた。陛下もフリングスも痛ましいような顔付きでこっちを見るが、俺は別に気にしちゃいない。あの国に未練は無いんだ。
 

ピオニー陛下が暗くなった空気を振り払うように、大声を出した。
「よし、まずは和平成立を祝って、親善大使殿に楽しんでもらえるようにしよう!そして留学という形でしばらくマルクトに留まる理由をつけよう。」
「感謝いたします、陛下。」
「そんな畏まるな。公の場でない時は普通でいい。」
「私も、アスランとお呼び下さい。」

俺は少し嬉しくなった。あの冷たい祖国に比べて、敵国だったここはなんて暖かいのだろう。
「とりあえずパッセージリングに関しては至急調べてみる事にしよう。」
「大体の場所はわかります。協力は惜しみません。」
 
 
 
開戦の理由を失ったキムラスカからは、しどろもどろの返答が帰ってきたという。
俺に早く帰れと催促の手紙が来たが、俺は『キムラスカに俺の暗殺を狙う者がいるようですので、先にその者を捕らえて下さい』と馬鹿丁寧な文書で返答を返した。インゴベルト王の困った顔が目に浮かぶぜ。
ついでにヴァン謡将は10歳の時の俺の誘拐に関わっているので決して逃すなと書き添えた。
 

感謝の気持ちとして各地に招待するとの名目で、俺はこっそりセントビナーとタタル渓谷のパッセージリングを再構成した。再構成後のパッセージリングは、俺にしか封印を解く事が出来ないようになっているので、しばらくは邪魔されないだろう。
再構築のたびに力を使い果たした俺がぶっ倒れるから、中衛のジェイドはもはや俺の抱っこ要員と成り下がっている。心して運べよ。
たまにあの暗殺者だった奴(キールと言うらしい)が俺を運ぶが、鼻息が荒くてちょっとキモイ。
良い奴なんだけどな。
 
 
ロニール雪山は魔物が強い為、兵を集めてからいく事になった。
ケテルブルグで休んでいると、アリエッタが訊ねてきた。

「アッシュ!良かった、です。生きてた。」
「心配かけたな。どうした?こんな所まで来て。」
「預言が外れて、モースは、キムラスカで肩身が狭い、です。総長も帰ってこないので、ダアトは、ぐちゃぐちゃ、です。」
其処にもう一人顔を出した。シンクと呼ばれた六神将だ。
「ヴァンを助け出そうという強硬派と、導師を中心とした穏健派と、預言絶対派に分裂しちゃったんだよ。・・・やってらんないよ、まったく。」
 

俺はアスランと顔を見合わせた。それは重要機密じゃないのか?
「僕達は、馬鹿らしいから教団を辞めて来ちゃったのさ。アリエッタがあんたに会いたがってたからつれてきたよ。」
ちょっと面白く無さそうにシンクが言う。・・・ああこいつ、アリエッタに絆されたな。
「アリエッタは妹みたいなモンだぞ。誤解するなよ。」
「な・・・何言ってんだよ!そんなんじゃなくて!」
「はいはい、解った。・・・導師の顔知ってる奴なんかここにはいねぇ。そんな仮面取っちまえよ。そっちの方が目立つぞ。」
諦めたように不貞腐れて、シンクは仮面を外した。

「やっぱ、似てねえな。こんなに違うのに、なんでみんな気付かないんだろうな・・・」
「アリエッタは解ります。シンクもイオン様も、違う、です。」
にっこり笑ったアリエッタを撫でてやって、ついでに眼を見張って固まってるシンクを撫でてやった。すげえ嫌がられたけどな。
 

なぜか協力をしてくれる事になったアリエッタとシンクを連れて、俺たちはロニール雪山のパッセージリングを再構築しに行った。さすが元六神将、強くて楽だった。
再構築の後、またぶっ倒れてジェイドに運ばれる俺を、アリエッタが微妙な顔で見ている。

「アッシュ・・・姫だっこ、です。」
・・・そうだったのか。まあいいか、楽だしな。
 
 
 
ケテルブルグに戻って、ホテルのスパに浸かりながらシンクに問いかける。
「なあシンク、お前これからどうするんだ?」
「さあね。・・・ヴァンはアクゼリュスを手始めに、全ての大地を崩落させる予定だった。その代りにレプリカ大地を作って、人間が滅んだ後にレプリカ達を住まわせる事で預言を覆そうとしていたんだ。でももう予定は狂ってしまった。ヴァンが聖なる焔の光を失った時にあいつの勝機は無くなったんだ。もう預言なんて覆されてしまったのさ。」
「ハッ、あいつも馬鹿だな。そんなこと考えていやがったのか。あいつは俺もルークも区別が付かなかった。・・・もうマルクト側の大地は崩落させる事は出来無い。後はほっときやダアトもキムラスカも無くなるぜ?いっそ、そうするか。」
「あんた、結構えぐいね。」
楽しそうに笑ってるお前に言われたくねぇな。
 
 
 
グランコクマに戻ると、キムラスカの使いが来ていた。ジョゼット・セシル少将だ。俺の顔を見るとあからさまにほっとした顔になった。
「ルーク様!ご無事で何よりです。この度の大任を果たし終えられた事をお喜び申し上げます。つきましては、ぜひキムラスカにお戻りいただきたいと、国王様からのお申し付けで御座います。」
俺はピオニー陛下とそっと目配せする。こいつは何も知らされていないようだ。
 

その晩セシルを内密にピオニー陛下の私室に呼んで全てを話した。
ピオニー陛下は各地のパッセージリングの調査結果を見せた。青褪めて声も出ないセシルに俺は言った。
「キムラスカがあくまで預言を絶対視するなら、俺は協力しない。勝手に滅びてしまえ。だが、もう預言は外れているんだ。今さら戦争を起こしても、キムラスカはマルクトには勝てない。
その前にキムラスカの大地は崩落するだろうな。・・・王にこの事を伝えてくれ。ああ、それから、ヴァン謡将の狙いは外殻大地全てを崩落させる事だ。あいつの本名はヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ。ホドの事を恨んでいる。人間を皆殺しにして預言を覆すつもりだとさ。今のうちに殺っちまっとかないと、ヴァンを取り返しに残りの六神将が来るぜ。」

「・・・確かに、今のお言葉を伝えます。ルーク様、キムラスカにチャンスを戴き、ありがとう御座いました。」
深々と礼をするセシルに、俺はちょっと感心した。
「キムラスカにも、まともな奴がいたんだな。」
つい口にしてしまった台詞に、セシルは居た堪れない様に小さくなった。
 
 
 
その数週間後、キムラスカから返事が来た。キムラスカはダアトの導師と協力してパッセージリングを調べて、俺の言った事が本当だったと思い知ったらしい。モースは預言を漏らした罪で大詠師位を剥奪された。アニスも芋蔓式にスパイだという事が発覚し、投獄された。

ヴァンは牢から脱獄しようとした所を見つかり、助けに来たリグレットと共に殺されたそうだ。
ティアはユリア式封咒を解く為に連れまわされ、瘴気障害で瀕死だそうだが、まあどっちにしろ極刑だし、文句は無いだろ。

父上とインゴベルト王は後悔して、俺に戻って欲しがっているようだが、冗談じゃない。
ナタリアが廃嫡されたからといって(何と王家の血を引かないことが解ったらしい)戻って来いなんて虫が良すぎる。王が俺に暗殺者を差し向けた事を、証拠つきで送りつけてやった。
 
 

俺は、ずっと俺につき従ってくれた兵士達とフリングス、ジェイド、アリエッタ、シンクに守られてキムラスカ側のパッセージリングを再構築していった。
セルパーティクルの始点と終点であるラジエイトゲートとアブソーブゲートへは、キムラスカの誇る空を飛ぶ音機関、アルビオールで向かった。
良いな、これ。疲れているときに寝ながら帰れる。和平の証に一台貸してくれないか交渉してみようか。
ラジエイトゲートは無事に再構築を終え、アブソーブゲートに向かった。面倒くさいダンジョンで参った。何とか最深部へとたどり着き、再構築を行う。
 
抱き抱えられて運ばれながら、(今ではもう結構楽勝なんだが、いいや、楽させてもらおう。ジェイドも暗殺の奴も嬉々として運んでるし。・・・煩いから頭の上で俺の取り合いしないで欲しい。)俺はこれからの事を考えた。

 
・・・さあ、後はダアトだけなんだがな。
 
 
 
預言を絶対視するものが一人でもいる限り、俺はパッセージリングの再構築を行わないと伝えてある。これはダアトどころか世界中に噂が流れるようにしてやった。・・・さあ、どう出るかな。
俺はその時を待った。

預言をただの指針と見るものは、さっさとダアトから逃げ出していった。
イオンたち導師派は、人々の説得に大変そうだ。
ついに地震が立て続けに起こるようになった。
導師派の者達は、ダアトを離れ始めた。イオンは残っているみたいだが、そんな奴らに命をかけることないぜ?
導師が残っていると信者達が離れないからと、ついに導師は島から連れ出された。
後は心の底まで預言を絶対視するものだけが残っている。
 

 
ダアトのある島は、崩落した。
ザレッホ火山のパッセージリングはダアトの東の海を巻き込み崩壊した。
予め他のパッセージリングとの繋がりは切ってあるから問題ない。
その下に、ユリアシティなんてふざけた名前の町があったらしい。
ティアが瘴気障害で死ぬ前にそう言っていた。

まあ、今はもうそんな町、存在しないが。
 
 
 
 
こんなわけで、世界は救われて、預言は覆された。
俺は晴れてマルクトに住むことになった。世界の救世主である俺に、命令できる奴なんかいない。
俺はそれだけの力を見せ付けてきたからな。

名前もルーク・アシュレイ・ローレライと改名して、ファブレから決別してやった。皆にルークかアッシュ、好きな方で呼べといってある。どっちも俺の名だからな。
今はピオニー陛下から貰ったグランコクマの屋敷に、下僕達と住んでいる。(いや、下僕と呼べって言うから呼んでやってるだけだぞ。)
シンクとアリエッタもマルクトで楽しそうに暮らしている。良い事だ。
 
 
 
 
・・・なんか忘れてるなーと思っていたら、一年ほどたったある日、ローレライに泣き付かれた。
わ、悪かった。ちょっと忘れてただけじゃないか。
 
 
俺は首尾よく永久貸借に成功したアルビオールに乗り込んで、シンクとアリエッタとアスランを連れてラジエイトゲートを目指した。
ローレライの鍵を床に突き立てると、譜陣が浮かび上がり、光が溢れた。
光の中に朱金の光が寄り集まって人型を取った。
ちょっと拗ねたようにぶつくさ言うローレライに、俺は早く言っちまえとばかりにひらひらと手を振った。
 
 

 
光が天に昇っていく。

(ひどいっ・・・!)

微かに声が響く。
 
 
 

ローレライが落とした涙の雫が顔にかかったと思ったのは、俺の間違いだろう、きっと。
 
 


 
                                                                    いちおう完!
  
                                    

PR
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
はくしゅ
気に入って下さいましたら、 ぜひぽちっとな
プロフィール
HN:
tafuto
性別:
女性
自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

当家のPCとセキュリティ
Windows Vista  IE8
Norton Internet Security 2009
GENOウィルス対策↓
Adobe Reader 9.4.4
Adobe Flash Player WIN 10,3,181,14
メールフォーム
カウンター
アクセス解析
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]