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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.28,Sun

 
                              ※ルーク・・・!ごめんっ!あああ・・・
 

 

「俺はヴァン総長から離反する。」

第一、第四師団が動いた導師イオン奪還作戦をこっそり覗きに行ったあと、しばらく個人行動をしていた特務師団長は、帰ってくるなり特務師団全員を集めて言い放った。
「俺はヴァンの企みを探っていた。奴はアクゼリュスを皮切りに、世界を崩落させ、人間を皆殺しにして預言を覆そうとしている。俺はそんなことに使われるのは真っ平だ。ヴァンの計画をぶっ潰してやる。」

そして自分がルーク・フォン・ファブレでありヴァンに誘拐された事、自分に詠まれた預言、パッセージリングと世界の成り立ち、レプリカの事など、知っている限りの事をぶちまけた。
驚愕に声も出ない団員達にあっさりと別れを告げると、部屋を出て行こうとする。
 

「まあ、待てよ。」
硬直が解けたノールがアッシュを引き止める。
「俺たちだって、死ぬ為に良いように使われんのはもう真っ平だ。俺はお前についていく。俺たちはお前の兵隊だって言っただろ。・・・ヴァンに付きたい奴はさっさと出て行け! ここに残る奴はこれからアッシュ団長の私兵になる!」

部屋を出て行く者は誰もいなかった。皆、強い目でアッシュを見ている。
教団の裏の姿を知っている特務師団が離反すれば、追っ手が出されるのは必至だ。捕まれば粛清されるだろう。しかし、躊躇う者はいなかった。
アッシュは苦笑すると、声を上げた。
「てめぇらも馬鹿な奴らだな。 ・・・各自、退職届を書いておけよ。まとめてどっかに突っ込んできてやる!」
 

その日のうちに、特務師団は任務を装い全員出奔したのだった。
ちなみに退職届は写筆のプロがヴァンのサインを真似て受理のサインをし、モースの普段使っていない机の引き出しの奥に突っ込んだ。
逃げのびる為とヴァンの動きを探る為、数人ずつに別れ各地に散らばせる。皆、隠密行動はお手の物だ。
その指揮をノールに取らせ、アッシュは一人アクゼリュスに向かった。
 
ヴァンの手の者をかわし、魔物を切り伏せ坑道の奥に走る。
しかし少しの差で間に合わず、アクゼリュスはヴァンに落とされてしまったのだ。
 
 

 
魔物に捕らえられ、ヴァンに一撃も食らわせられなかったアッシュは、悔しがりながらユリアシティに辿りついた。その間、こっそりとレプリカに回線を繋いで見ていたが、あまりに子供っぽいレプリカの言い草と、自分達の無能さを棚上げしてレプリカに全てを押し付け責め立てる同行者に呆れ返り、苛立ちが止まらなかった。
ユリアシティに、タルタロスが入港して来る。
『ルーク』は俯き、のろのろと歩いていた。アッシュはそこにツカツカと歩み寄っていった。
 
 
「この馬鹿野郎! ヴァンに良い様に使われやがって!あいつが怪しいのなんかすぐ解っただろうが! ・・・俺が10才の時、ヴァンに誘拐されてお前が作られた。超振動を利用する為にな。何で同じ顔してると思う? お前は俺のレプリカなんだよ!」
 

「ええ~じゃあ、このお坊ちゃん、人間じゃなかったの?」
「では、あなたが本当のルークなのですね!」
レプリカと解ったとたん、侮蔑の表情でルークを見る同行者達に苛立ちはつのる。
レプリカでなくても、アッシュは特務師団以外では人間扱いされた事など無かった。

「う・・・嘘だ、嘘だ嘘だー!」
動揺し剣を抜いて切りかかって来たレプリカを軽く沈める。
八つ当たりだと解ってはいたが、自分が血反吐を吐いて這い上がって来た間、七年も有ったのに何一つ学ぼうとせず、やすやすと騙されたレプリカが許せなかった。
 
 

テオドーロに会い、タルタロスを使って上へ戻る算段を付けたあと、ルークの意識を同調させる。これ以上現実逃避させる気は無かった。
眼を覚まし、驚くル-クに強制的に世界を見せ付ける。同時に自分がレプリカである事も理解させた。
こんな所で偽りを言っても何にもならない。
驚いたことに、今まで行動を共にしてきたルークの同行者達が、掌を返したように話しかけてくる。ルークに対して嘲笑や侮蔑の言葉が吐かれ、どんどん落ち込んでゆくルークに苛立った。
無知ゆえの傲慢さから一転して、自分を卑下し始めるルークを怒鳴りつける。
 

ナタリアがアッシュにルーク、と呼びかけた。
「ルーク・・・約束を覚えていらして・・・?」
「俺はアッシュだ。・・・そんな約束、覚えてねぇな。」
そんな約束した奴なんか、もうとっくに居ないんだよ、と素っ気無くするアッシュの態度に、ナタリアはショックを受けたように青ざめ口を覆った。

(アッシュが本当のルークなのに! 約束したの、アッシュだろ?)
(うるせぇ! 黙ってろ!)
(アッシュ・・・ 俺の事嫌いだもんな・・・)
(俺がてめぇにムカつくのは、てめぇが7年間も有ったのに自分を高める事を何一つせず、ぐだぐだ愚痴言って暮らしてきたからだよ!)
 
 
 
ベルケンドでスピノザに会った後、こっそり潜入していた特務師団員に会ってワイヨン鏡窟の情報を聞く。ヴァンは巨大なレプリカを作ろうとしているらしい。崩落させる大地の変わりを作ろうとしているのだとあたりをつけた。
外殻大地に戻った以上、ジェイドたちと行動を共にする理由は無いので、ここで分かれることにした。
一応ワイヨン鏡窟に何かあるぜ、くらいの情報を与えておく。
ワイヨン鏡窟にいこうとするジェイドから、ガイが離脱した。ルークを迎えに行きたいらしい。
まあ、俺と一緒に居たく無いのも有るんだろうよ、と皮肉気に考えるアッシュに、ルークが疑問を投げかけた。
 
(ガイは俺を育ててくれたんだ。アッシュも幼馴染なんじゃないの?)

子供のように無邪気な言葉に、アッシュはやっと得心が入った。ルークが何も学ばなかったのは、学ぼうとする心を巧妙に潰されてきたのだ。おそらくヴァンの手駒にするために。
ヴァンに対する怒りと、レプリカへの呆れと少しの同情が湧き上がる。
充分現実は見せた、もうこれ以上は意味がないだろう。あとは自分で自分の存在を掴み取るしかない。
 
(・・・まあ、おまえがガキなのはしかたねぇか、7才だしな。ガイとヴァンに育てられたってんなら、手駒にするために何も教えなかっただろうからな。 良い事教えてやるよ。ガイはてめぇが『ルーク』じゃないことを知ってたぜ。俺の誘拐の手引きしたのは、あいつだからな。 ・・・これで同調を切る。あとはてめぇのしたい事をやれよ。)

驚きと、信じられないという気持ちで一杯のルークを残して、同調は切られた。
 
 
 
 
そのあとは立て続けに大変な事が起こり、ルークとアッシュとはしばらく会う事は無かった。
テオルの森でガイに切り付けられ、カースロットについて説明された時にはルークは悲しかった。ガイはガルディオス家の因縁を話して謝ってくれたが、アッシュの誘拐の事については触れなかった。
ルークは、ガイに問いかける事ができなかった。真実を知るのが怖かったのだ。


セントビナーの住民を助け、戦争を食い止めようと走り、ルークは無我夢中で行動していた。
バチカルでナタリアと死を強要された時には、アッシュの部下らしき人達が逃げるのを助けてくれたが、『アッシュはバチカルに顔を出すのは嫌だってさ』と言ってすぐに居なくなってしまった。
ルークは連日の戦闘の疲れで深く考える事も出来ず、ただ罪悪感にさいなまれて夢中で行動し、悪夢に魘される日々が続いていた。
仲間に見捨てられるのが怖くて、我侭を言わないように、貼り付けたような笑顔で過ごしていた。
 
 


しばらくヴァンの足取りを追うことに専念していたアッシュは、身体の不調を感じた。
どうも疲れやすい。時々めまいもする。
ダアトに潜入していた団員から受け取った創世記時代の歴史書を持ってベルケンドに来た時、スピノザを捕まえて検査をさせると、スピノザは驚くべき事を言った。
完全同位体との間に大爆発という現象が起きる可能性があるというのだ。

ベルケンドの文献を漁り、読みふける。そして大爆発の正確な情報と、フォンスロットを開いた事に関わりが有るのだという事を突き止めた。
フォンスロットを閉じれば、一時的にでも大爆発を遅らせる事が出来るかもしれない。
そんな時、ヴァンがベルケンド入りしたと報告された。ルークも近くにいるらしい。
ヴァンとルークたちの会話を回線で聞いていたが、目新しい情報は無いようだ。
ヴァンの部下で一杯のベルケンドでやり合うのは不利すぎる為すぐに逃げ出すと、宿でルーク一行を捕まえた。
 
 
歴史書を渡し、ジェイドがそれを解読する間にコーラル城にルークを誘う。アルビオールならそれほどかからない。明日の昼までには帰ってこれるだろう。
ルークの仲間達は難色を示したが、無視する。レプリカの乖離を防ぐ為だと言って強引に連れてきた。
大爆発について聞きたかったら、ルークの仲間達はジェイドに聞けば良い。奴はジェイド・バルフォアなのだから。
コーラル城に着き、譜業に詳しい特務師団員のユーリにフォミクリーを操作させて、まず自分のフォンスロットを閉じる。頭を振って起き上がったアッシュを、ルークがじっと見ていた。
 
「なあ、なんで俺の乖離を止めようとしてくれるんだ?」
「てめぇだけじゃねぇんだよ。同位体の間には大爆発って現象が起きる。俺にもフォニムの乖離が起きて一旦死に、最終的にはお前の身体を乗っ取って融合する。二つの存在が混ざったら、俺はもう俺じゃねぇ。そんなのは真っ平だ。その辺はジェイド・バルフォアが専門だろう。何にも教えてくれなかったか?」
眼を見張って聞いていたルークは、俯いた。
「・・・知らなかった。」
「その様子じゃ、ガイに自分がルークじゃないって知ってたか、聞いて無ぇだろ?」
「・・・うん・・・」
「卑屈になってんじゃねぇよ。知りたいんなら、聞きゃ良いだろ。 ・・・さっさと其処に寝ろ。」

 
ルークのフォンスロットを閉じると、すぐにベルケンドに戻る事にする。
アルビオールに乗り込むと、アッシュは睡眠を取りにいった。もっとアッシュと話したかったルークは残念そうだ。しゅんとしているルークにユーリが話しかけた。

「寝かせてあげてよ。アッシュは大爆発の兆候が出始めてたんだ。体調が悪かったんだよ。」
その言葉にルークは驚き、振り返った。
「えっ、大丈夫なの?」
「大丈夫にする為に、フォンスロットを閉じたんだよ。 ・・・でも完全には防げないかもしれない。いつか根本的な解決方法を見つけないとね。君も休みなよ、少しふらついてるよ?」
「うん・・・ありがとう。」

自分を馬鹿にせず全てを教えてくれるアッシュたちに、ルークは暖かいものが胸に溢れるのを感じた。
そして対等に話し合い、信頼し合っているアッシュたちが羨ましかった。
ルークの『仲間達』は皆、何かを隠しているかルークを下に見て馬鹿にする態度を取る。
自分は罪を犯したんだから、信頼されないのもしょうがない。ルークはそう思っていたが、内心は深く傷ついていたのだった。
 
 

アルビオールを降りる時、アッシュがルークに向って言った。
「てめぇは、なに罪悪感に漬け込まれて良い様に使われてんだよ。馬鹿じゃねぇのか? アクゼリュスを落としたのはヴァンと預言に踊らされたキムラスカじゃねぇか。マルクトだって救出にも来なかったろ。お偉いさん達は住民がどうなろうとどうでも良かったんだよ。あそこは罪人の町だからな。あいつらだって自分の罪をぜんぶお前に擦り付けて、暗示にかけられたお前だけを責めたんだろ?」
 

ルークは驚いた。皆、ルークだけが悪いと言って責めた。そんな事を言われた事が無かったのだ。
アクゼリュスににそんな事情があることも、何一つ知らなかった。 ・・・誰も、何も教えてくれなかった。

しかし大勢の人を殺してしまった罪悪感は消えはしない。贖罪をしたいという気持ちも。
俯いてしまったルークを呆れたように見ると、アッシュは街のほうに歩いて行ってしまった。
ルークはアッシュの後ろ姿を目で追い続けていた。
 

 

ベルケンドに着くと、ジェイドの解読は終わっていた。
盗み聞きして逃げたスピノザを追うために、アッシュは離れていった。

ルークに『まあ、償いたいというんなら、おまえの気が済むまでやってみろ』という言葉を残して。
 
 
 
 

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