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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.31,Wed

 

 
「お父様!王位継承者を二人も失うと仰いますの!」

驚いたように王に詰め寄るナタリアに、アッシュは軽蔑の視線を向けた。
「わかんねぇ女だな・・・ナタリア、お前もし10歳で娼館に売られて、汚れ仕事をしてきて、そこいら中の男がお前の身体を知ってたら、それを国中の人間が知ってるとしたら、それでも私は王女です、次の国王です。なんて言えるのか?」
「あ・・・そんな・・・」
「特務ってのはそういう場所なんだ。・・・俺に王位継承権なんて、もう無ぇんだよ。」
ナタリアは青ざめ、膝を突いた。
 
 
 
 
「俺は付いて行くぜ、ルーク。親友だからな!」
「そうね、私達も力を貸すわ。一緒に行きましょう。」

進み出た『仲間達』に、ルークは怯えたように後ずさった。
 
 
「俺は貴方達といるのが、ずっと怖かった。嫌だった!だけど、これが俺の罰なんだと思っていたんだ。・・・ティア、まだ足りない?まだ見張っている必要がある?俺は見限られない為に、後どのくらい頑張ればいいの?・・・ガイ、アッシュの誘拐に手を貸して、暴行されるアッシュを笑ってみていた癖に、それを俺に言う事も出来ない癖に、なんで俺を親友なんて言えるの?俺はそんな親友なんて要らない。・・・アニス、俺のたった一人の友達のイオンを死なせたアニス。君にとってレプリカは道具でしかないの?・・・いつまでも俺を複製品としか見ないナタリア。・・・色んな事知ってたのに何も言わないジェイド、俺を死なせたがってるジェイド。・・・お願いだから、もう俺を自由にして。」
 
 
いつも浮かべていた笑みはもう其処には無い。
ルークの顔に浮かんだ怯えと拒絶の色に、『仲間達』は立ち竦んだ。そしていつもの笑みが諦めたような作り笑いだったと、始めて気が付いた。誰も、動く事が出来なかった。
自分達は何一つ、理解しようとさえしていなかった事に、やっと思い至ったのだった。
 
 
 
「話はついたようだな。最も、たとえこいつが良いと言ったって俺はお断りだ。なあ、復讐者、裏切り者、髭の妹、胡散臭い死霊使い、俺を殺す為に飼ってた国の姫。お前らを信用出来る要素なんて、何一つ無ぇじゃねぇか。・・・それじゃあ戻ってくるまでに、コーラル城直しておいてくれよ。」

アッシュはルークを連れて踵を返すと、腹の底から響くような声で命令を発した。
「行くぞ!野郎ども!ノール、シャーラ、アーヴィン、ファガル、チェイス、同行しろ。A班はケテルブルグに待機。B班はコーラル城に向かえ。てめぇらの巣になるんだ、しっかり監督しとけよ!」
「「「了解しました!団長!」」」

特務師団がザッと音を立てて敬礼を返す。
一糸乱れず付き従う一団を付き従えたアッシュは、誰よりも王に相応しかった。
インゴベルトは、キムラスカが失ってしまったものを思い知り、青ざめた顔を手で覆い深く溜息をついた。
 
 


団員の半数を後方支援の為ケテルブルグに待機させた一行は、アブソーブゲートへとアルビオールを向わせた。
精鋭の特務師団たちの前に、魔物はあっけなく倒れていく。
やがてパッセージリングの前にたどり着いた一行を少し離れたところに待機させ、アッシュとルークはローレライの鍵を床に突き立てた。鍵を回すように動かすと、光が地の底から湧き上がって来た。朱金の光が人の形に集まっていく。アッシュがにやりと笑った。
 
 
「てめぇがローレライか。開放してやったんだから、瘴気を中和しろ。あと俺たちの大爆発も何とかしろ。只働きなんぞさせやがったら、もう一遍地核に閉じ込めるぞ。」
(注文が多いな・・・わかった、まず瘴気を中和してやろう。二人とも、力を貸せ。力を合わせよ)

アッシュとルークは強く目を見交わし、手を握り合った。
ここが正念場だ。
回線など無くとも、お互いの心が手に取るように分かる。
 

(生きたい・・・ この世界に存続し続けたい。・・・もう一度、あの青空を!!)
 

凄まじい光が溢れ、二人の真上の天井を一瞬で消失させた。
白光に朱金が煌き踊る。光は真っ直ぐに空へと向って立ち上っていった。
光が消えた後には、はるか遠くに見える天の穴から青空が見えた。
 
 
アッシュは荒く息を吐きながら、にやりと笑う。
ルークは疲労のため座り込んでいた。その頭をくしゃっと撫でてやる。
「よし・・・後はもう一つのほうだ。」

(大爆発を防ぐには、二人が存在を異にする必要がある。)
「ああ?そんな事か。俺の髪でも眼の色でも変えていいぞ。かえって好都合だ。」
撫でられた事に真っ赤になって固まっていたルークは、その言葉に我にかえった。
「ええっ、ダメ!絶対ダメ。せっかく綺麗な色なのに!そんなら俺の色を変えてよ!」
「うるせぇな。俺はこんな色、どうでもいいんだよ!」

突然勃発した口喧嘩に、おずおずとローレライが口を挟んだ。
(・・・悪いが色ぐらいでは大爆発は防げんのだ。性別を変えるか、歳を離すか。)
その言葉に少し考え込んだアッシュは、ルークのほうをちらりと見た。
「てめぇはもういっぺんガキからやり直したらどうだ?7歳児。しっかり教育してやるぞ。」
「どうせ、俺はガキですよ!・・・え?それって、一緒にいてくれるの?うん!俺、アッシュと居られるなら、何でもいい!」
「ビシビシしごいてやるからな!」
「うん!」
 

ふわりと朱金の光に包まれると、ルークは7歳ほどの姿に変化していった。
服がぶかぶかになり、ズボンがずるりと落ちる。
(では、さらばだ・・・)
光が渦を巻きながら天に昇っていった。
 
 
「わーん!ローレライー、服くらいどうにかしろー!」
「ぶっ、くくく・・・情けねぇカッコだな!」
「アッシュ!笑ってないで、何とかしてくれよー!」
「ほら、抱いていってやる。それじゃあ靴も履けねぇだろ」

ひょいっと抱き上げられたルークは、一瞬驚いた後、アッシュの首に抱きついた。
「アッシュ。大好き!」
それはルークが今まで見せた事のないような子供っぽい満面の笑顔で、アッシュは少し照れたのであった。
何の打算も無い、無償の好意。・・・ただ『好きだ』と言う感情。
無邪気に寄り添う半身に、暖かなものがアッシュの心に溢れる。
 
そんなアッシュとルークを、団員達が楽しそうに見守っている。
今までただひたすらに前を向いて走ってきた子供の、強く張り詰めた心が、今、柔らかく解けたのだ。
優しい表情のアッシュが皆を振り返り、笑顔で告げた。
 

「よし、帰るぞ!皆、ご苦労だったな!」
 
 
 
 
ケテルブルグに待機させていた団員達を拾いに行くと、ピオニーが来ていた。
「コーラル城は修繕に向かわせたそうだ。暫くかかるだろう。その間ここに滞在してもらって構わない。おお、お前ルークか?ちっこくなっちってまあ!」
撫でようとするピオニーからルークは逃げてアッシュの後ろに隠れた。苦笑するピオニー。
「まあ、仕方ないよな。俺たちはお前達を生贄にして、全てを押し付けてきたんだからな。」

アッシュが冷笑する。
「それをわざわざ言いに来たのか?今さら何の用だ。」
「いや、報酬の件について3国で話し合ったことを伝えに来た。そっちの要求は全て呑んでいる。文書として形にしてきた。・・・感謝の念がこんな物とは、味気ないがな。」
「そんなモンは必要ない。俺は自分達の為にやったんだからな。」
「たとえそれでも、俺の民を救ってもらった事には変わりないさ。・・・後は各地のレプリカの問題をどうにかすれば、世界の混乱は収まるだろう。」

その言葉にアッシュはニヤッと笑った。
「レプリカって、1000人ぐらいだろう?何なら面倒見てやるぜ。俺達には偏見は無いし、人手が欲しい所だ。レプリカ教育の為の人手と資金を回してくれんなら、コーラル城周辺にレプリカの住む町を作ってもいいぜ。」
眼を見張ったピオニーは、暫く考え込んだ。
「そうだな、いい考えかもしれん。キムラスカやマルクトでは、差別や暴動が起きかねず、思案していた所だ。キムラスカとも話し合ってみよう。」
 
 
 
ひと月ほど後にコーラル城の修理も終わり、城の周りに小さな町が出来た。
各地に散らばって保護されていたレプリカたちが集められたのだ。
レプリカ達は、最低限の刷り込みをされている為、言われた事を行う事は出来る。教育の為に各国から派遣されてきた人々と協力して、農地を開墾したり町を作ったりする仕事をして行くうちに、自我に芽生える者も多くなってきた。
 
ルークはレプリカ教育に率先して関わり、レプリカの自我の芽生えを促していった。
ルークが楽しそうに笑うと、レプリカたちの瞳にも表情が灯るのだ。
屈託の無いルークの態度は、レプリカと人間の間の溝を埋めていった。

特務師団達は、魔物を退治したり護衛をしたり、剣の腕の有るレプリカの教育をしたりと忙しくしていたが、やがて家族を呼び寄せたり、所帯を持ったりして、人口が増えていった。
教育の為に派遣されて来たが、居心地の良さから家族を呼び寄せて定住を希望してきた者もいる。
アッシュはルークとコーラル城に暮らしながら、この地を治めていった。
 
 

人口の増加と共に、農地も拡大していった。もともとこの一帯は乾燥地帯であるが、アッシュとルークがコーラル北部の山から水を引いて灌漑したのだ。

視察に行った二人は、アクゼリュスの崩落で川の流れが変わって海に注いでいる所を見つけた。
「なぁ、あれを平野に向けて流せば、灌漑出来るんじゃない?」
ルークが滝を指差しながら提案した。
「ちっとは頭使える様になったか。いい考えだな。」
ルークの頭を撫でながらアッシュが答える。連日のどつき漫才のような勉強は、身になっているらしい。
「でも、人手がいるよね。回せる人材、いたっけかな?」
「俺達には、コレが有るだろう?水路を決めて、超振動で岩肌を削ってやればいい。」
「さっすがーアッシュ!超振動の平和利用だ、すげぇ!」
「使えるモンは何でも使うんだよ。覚えとけ。」
 
今まで海に注いでいた豊かな水は、平野を十分に灌漑するに余りあった。
こうして数年後、コーラル城周辺は豊かな穀倉地帯となったのであった。
平野には小麦畑が金色に広がり、山側では果樹が栽培され、素晴しいワインが産出された。レムの塔近辺は漁業資源の宝庫だった。

其処ではレプリカも人も差別されずに幸せそうに暮らしていた。
レプリカと人は子が出来、交じり合っていった。飢えに苦しむ民など、一人もいなかった。
農地は広がり、各地から移住してきた人々で活気が溢れた。
 
ルークは人とレプリカ、そして自然との調和を願い、その小さな国に『ハルモニア』と名付けた。
アッシュは微笑み、良い名だな、とルークを抱きしめた。
そして皆に望まれて、その国の建国の王となった。
 
 
 
時が経ち、後継者に恵まれなかったキムラスカは、貴族達の内部分裂によって崩壊した。
マルクトは民主主義国家へと変貌していった。
小国に分裂したキムラスカは、穀物資源の少なさから飢え、競ってハルモニアへと隷属し庇護を求めた。
アッシュは飢えた民に援助を行いながら、積極的に農地の開墾、資源の開発を行っていった。
軍による強制ではなく、その政治的手腕で国土を拡大していった。
一国の軍隊を瞬時に壊滅させるだけの力を持ちながら、その力を人に向けて使う事は無かった。
 
 
そしていつしかハルモニアは世界の三分の二を占める巨大な王国へと成長していった。
 
 
 
 
 
代々その地を治める王は、小さな頃から語り聞かされる。
再生の灰と称えられる建国の王の、数奇な運命とその一生を。
自らの手で道を切り開き、人に幸福を与えながら自らも幸せを掴んだ王の生涯を聞き、自分も建国の王に恥じない施政者になろうと思うのだった。
 
 

 

 
 
 
美しい海と金色に光る小麦畑を望む小さな丘に、その石碑は立っている。

 
『聖なる再生の灰と聖なる焔の光は、生涯決して離れる事は無かった。そして今でも。』
 
 
 
 
その古い墓標に花を手向け、小さな赤毛の子供は微笑みながら傍らの存在に振り返った。
「いこっか、アッシュ兄さん!」
「そうだな、ルーク。」
 
 

 
双子の赤毛の子供たちは、手を繋いで走り出した。
 


 
 
                                          完
 
 

 

ちょっとしたあとがき

偉人伝記みたいな終わり方になっちゃってすみません;   ・・・これが限界でした。
ちなみに最後の子達は生まれ変わりだと思われます(笑)
記憶があるわけではありませんv 多分。

 

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自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

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