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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.12.01,Sat

                                『 幸せ家族の作成法 』






アッシュとルークは音譜帯で、そりゃあもう幸せに暮らしていた。
ローレライを解放したあと、二人で戻ることが出来ないと知ったアッシュとルークは、地上に戻ることはすっぱりと諦めた。
というか、もはや二人は、他人のことなんか眼中に無かった。
音譜帯の片隅に小さな家を作ってもらい(ローレライに強請った)、ラブラブ新婚生活を送っていたのだ。


その日もルークはアッシュの膝の上で「はい、あ~んv」とかしていた。
音譜帯で何を食うんだよ! とか言うツッコミは無しだ。何事も精神力だ。
そこにいきなりノックの音が響く。
やって来たのはローレライだった。・・・それも二人も。

「やあ、元気だったか。我の同位体たちよ。」
にこやかに挨拶するローレライの横から、もう一人のローレライがいきなり土下座をかましてきた。
「頼む! 我を助けてくれ! この通りだ!」
ルークを膝に乗せたまま吃驚して固まっている二人に、(こっちの)ローレライは苦笑しながら話しかけた。
「あ~ ・・・こいつは別世界の我だ。話だけでも聞いてやってくれんか?」


土下座を続けているローレライ2号(仮名)を、とりあえずテーブルに付かせると、2号は泣きながら話し出した。

「我の世界ではな・・・どうやっても『聖なる焔の光』が生まれんのだ! 何遍繰り返したことか! シュザンヌの体が弱くて、妊娠しないか、妊娠しても生まれる前に母子共々死んでしまうのだ。クリムゾンも『聖なる焔の光』と王妹を死なせた罪で、死罪になってしまう。何度、何度やり直してもだ! 頼む、力を貸してくれ! 地上にも戻らず暇そうにしているのはお前達だけなのだ!」
さり気なく暇人と言われ、ちょっとムッとしたアッシュの横で、ルークは目を丸くしながら訊ねた。
「そりゃあ大変だねぇ・・・だけど俺たちに何が出来るんだよ。」
2号は待ってました! とばかりに目を輝かせた。
「シュザンヌの体に入って、『聖なる焔の光』を生んで欲しいのぐぼげはぁ!!
言い終わる前に2号はアッシュに蹴り飛ばされた。
「てめぇ、俺だってまだこいつを孕ましてないのに、何言いやがる! ふざけんな!」

宙を飛んで行った2号が、ずりずりと這いずって戻ってくる。
「・・・ならばアッシュ・・・お前が孕ませれば良いだろう? お前はクリムゾンに入ってしまえば良い。どうせ聖なる焔が生まれなければ死罪になるのだ、かまわんだろう?」
「そりゃあかまわないが(ヒデェ)・・・父上の姿で母上の姿のこいつをを抱くのか? お互いかなり微妙な気持ちになると思うぞ。」
アッシュがものすごい下世話な事を真顔で言った。
「な・・・なら、お互いの目には今の姿がそのまま年を重ねて見える様にしてやる! ルークは女になるが、それくらい良いだろう?」

ゾンビのように足にすがり付いてくる2号を、すげなく蹴り飛ばしながらアッシュはルークに向かって訊ねた。

「どうする? ルーク。 ・・・お前、俺の子供が欲しいなんてこの前言ってなかったか?」
「も~馬鹿アッシュv こんな所で言うなよ~vv」
いきなりイチャイチャしはじめた二人に、ローレライ(1号)は溜息をついた。
この二人、ここに来て以来ずっとこうなのだ。

「頼むぅ~・・・ 世界を救ってくれぇ~・・・」
2号が泣きながら再び土下座を開始しだした。
「ん~・・・まあ、いいんじゃない? きっと楽しいと思うよ? 子育ても。」
「俺はお前と一緒なら、どこでも楽園だがな。」
アッシュはもう、何か全てを吹っ切ったようだ。

「ありがとうありがとう! じゃあ、善は急げという事で、行っきま~す!」
2号は二人の気が変わらないうちに!と勇んで力を解放した。
二人と2号の姿は、そこから消えうせた。


ルークは精神年齢8才だ。女になる苦労も生みの苦しみも理解してはいなかった。
そしてアッシュは、ラブラブな日々の中、自分たちがどんだけ苦労して世界を滅亡から覆したか忘れていた。


・・・あとのまつりだった。




「ああっ・・・うひゃあ!」 「うっ・・・どわああ!」
二人が送り込まれたのは、父母の愛の営みの真っ最中。
まさに子作り弾丸が発射されるタイミングだった。
達すると同時にうひゃあ・どわああなんて言い合うカップルはそういないだろう。
(妊娠するちょっと前に送ってあげたからねえ~頑張ってね~!)
「ちょっと前過ぎるぞ! この馬鹿ローレライ!」
「あああアッシュ! 俺!おっぱいついてる! どうしよう!」
「どうもこうもねぇよ! 俺が今お前のどこに入ってると思ってんだ。」

口をパクパクさせたルークが、そっと手を伸ばした。・・・繋がっている所に。
「・・・・・・ひゃああああ! 何これ! 信じらんない!」


絶叫するルークに、メイドが何事かとドアをノックしてきた。
「旦那様! 奥様! 何事ですか?」
「何でもない! 邪魔するでない、しばらく近づくな。」
あわててアッシュはルークの口を塞ぐと、メイドに答えを返した。メイドは恐縮して去っていった。


「落ち着け。お前は女になっても良いって言ったんだろ?」
「あっしゅ~・・・俺、変じゃない? アッシュ、俺のこと嫌いにならない?」
べそべそしながらルークが問いかける。
「当たり前だ。おれはお前の姿に惚れた訳じゃねぇ。おまえ自身に惚れたんだ。」
「俺も・・・アッシュはアッシュだよ。ちょっと年食ってもかっこいいv アッシュ、大好き!」
いきなり元気になったルークが抱きついてくる。
それに口付けを返しながらアッシュは思った。
(父上、母上・・・スマン。でも好きな奴と抱き合って、イク瞬間消えられるなんて、最高の死に方だと思うぞ? 世界は救ってやるから勘弁してくれ。)


気を取り直すとアッシュは、ルークに女の体が何たるか教えるべく、頑張る事にした。
激しい勉強は、明け方まで続いた。
一晩たっぷりかけてルークに女の身体を覚えこませたアッシュは、満足の吐息をついた。
腕の中にはくったりとしたルークが眠り込んでいる。
こんだけヤッて、妊娠しなかったら嘘だ。『聖なる焔の光』は絶対生まれるに決まってる。
疲れ果てたアッシュも眠りについた。
翌日、二人のラブラブぶりとシーツの惨状に、昨夜のメイドが顔を赤らめたのは、ここだけの話だ。


「さて、これからどうするか・・・」
アッシュはルークと二人きりで朝食を取りながら呟いた。召使は別室に控えさせてある。
ルークはドレスを着せられて拗ねている。
ズボンをはきたがるルークをなだめすかすのが大変だった。
『当たり前だ! 母上は淑やかな貴婦人だったのだから。いきなり変わったら変だろう?
とりあえず慣れろ! 言葉遣いも注意しろ、母上の評判を落とすつもりか?』
これから毎日この戦いが繰り返されると思うと頭が痛い。
今日は休日だが、明日からアッシュも登城しなければならない。
(ん・・・? 何で俺は今日が休みだって知ってるんだ?)
考え込んだアッシュは、自分が今までのクリムゾンの記憶も持っていることに気付いた。
自分の記憶と混ざる事は無いが、引き出しにしまってある感じである。

「おい、ルーク。記憶を探ってみろ。俺の中に父上の記憶もあるが、お前はどうだ?」
「・・・・・・あ、母上の記憶がある!」
「良かった・・・これで日常生活や仕事に困る事は無いぞ!」
「何で?」
「いきなり母上の知りあいだなんて奴が尋ねてきたら、困るだろう?」
「そっか!」
「そっか、じゃねぇよ。ボロ出さないように気を付けろよ?俺は明日から仕事なんだからな。」
「ええ~一人にしないでよ~」
「世界の滅亡を防ぐ為に来たんだろ?・・・・・・そのかわり毎晩可愛がってやるよ。」
真っ赤になったルークの鼻先にちゅっと口付けを落とす。
「お前はこれから『ルーク』を産む事になる。紛らわしいからこれからルーって呼ぶからな。」
「うんv『ルーク』は子供にあげようね。・・・・・・だんなさまv」
「(ゲホッ!////)・・・・・・アッシュで良い。」
「も~・・・照れちゃってv」

うっかり窓越しに遠くからそれを見てしまった警護の騎士が、微妙な顔で目をそらした。



しばらくは平穏な日々が続いていた。
アッシュは仕事にも慣れたし、ルーは淑やかな仕草も板についてきた。(二人きりのときは元のままだが)
「アッシュ~ ・・・なんか、気持ち悪い・・・」
「ルー、大丈夫か?・・・おい、医者を呼べ。」
ピンと来たアッシュは、すぐに医師を呼びにやらせる。
(ちなみにお互いの呼び名は、公式でない限り『アッシュ』と『ルー』だ。
ハァ?という顔をする使用人達には『・・・愛称だ、気にするな。』の一言で済ませた。
良い使用人は主のすることに余計な突っ込みはしないものである。)


「おめでたです。・・・お慶び申し上げます、ファブレ公爵様。」
「うむ、良き子が生まれるよう、母子共々宜しく頼むぞ。」
ヒャッホー! とか言いたいのをぐっとこらえてアッシュが重々しく言った。
さすがにこれ以上、父の評判を落としたくない。・・・まあ、もう遅い気がするが。
「シュザンヌ様も、見違えるようにお元気になられて・・・子を持つという事は、女性を御強くさせるものだと言うのは、まことで御座いますなあ。」
「・・・・・・そうだな。」


シュザンヌがルーになってからは、そりゃあもう元気だった。
アッシュにつき合わせて剣の稽古をしたり、中庭で譜術を炸裂させたり。
今まで譜術の使えなかったルーは、シュザンヌが強い譜術師と気付いてからは凄く楽しそうに稽古している。今ではラスボス戦のナタリア並だ。
アッシュもルーも超振動は使えなくなったが、戦闘力はなかなかのものだ。(アッシュはちょっと父親を見直した。ルーも『母上、身体弱くなかったらラスボス行けたんじゃね?』と思った。)


「え~ちっとも元気じゃないよ~ ・・・うえ~気持ち悪いよ~ご飯いらない~」
ルーはクッションを抱えてソファーにへばり付いていた。
「・・・・・・シュザンヌは、マタニティブルーのようでな。(ルー!しゃんとしろ!医者の前だぞ!)」
貴婦人と名高いシュザンヌの態度に口をあけて固まっていた医師は、すぐに口を閉めると思い切り作り笑いをした。
「そ、そのようですな! なんにせよ、お元気なのは良い事です! それでは私はこれで!」
そそくさと帰っていった医師を見送ると、アッシュはルーを撫でてやった。
「アッシュ~・・・俺、こんなに辛いなんて知らなかったよ~。」
「頑張れ。俺の子供を産んでくれるんだろう?・・・愛してる、ルー。」
賢明にもアッシュは「産むときはもっと辛いぞ」とは言わないでおいた。


被っていた猫のボロボロ剥がれ落ちたルーの態度は、『妊娠して性格が変わった』という事で落ち着いた。というか、みんな慣れた。
つわりもおさまり、元気にニコニコ話しかけてくる『シュザンヌ』は、以前よりずっと微笑ましかったし、笑ったり焦ったりと感情を露にする『クリムゾン』は付き合いやすかった。
四六時中べたべたイチャイチャしている夫妻も、もう見慣れたもんだ。
人々は「子供が出来ると、人は変わるもんだなぁ」と感心し、噂していた。


そんなわけで、二人の交代劇は誰にも気付かれる事は無かった。

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