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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.12.04,Tue



生体情報を抜かれ、酷い実験を受けたルークは、ひと月も起き上がることが出来なかった。
やっと歩けるまでに回復したルークを、アッシュはレプリカに会わせた。
「父上・・・これは・・・」
顔色を変えてしがみ付いてくるルークに、アッシュはゆっくりと話しかけた。
はじめて自分のレプリカを見せ付けられたときの衝撃と絶望は、今でも忘れる事は出来ない。
息子にはそんな気持ちを持って欲しくは無かった。


「この子はお前の分身。お前の生体情報から作られた。」
「人間ではないのですか?」
「お前にはどう見える?・・・人間だよ。生まれ方が違うだけだ。まだ生まれたばかりの赤子のようなものなんだ。」
恐る恐る近づいて行くルークに、レプリカは無垢な笑みを向け手を伸ばしてきた。

「この子はお前の完全同位体、お前の半身だ。世界でただ一人だけだったローレライの同位体は、世界で二人のローレライの同位体になったんだ。・・・お前が孤独を感じていた事はわかっていた。」
驚いたように振り返ってアッシュを見たルークは、視線をレプリカに移した。
レプリカはルークに笑いかけ、無邪気に手を伸ばしてくる。ルークはそっとその手を取った。

「・・・父上。俺はもう一人じゃないんですね。」
「ああ。その子もお前と同じく、俺たちの子だ。・・・お前が名前をつけてやりなさい。」
「・・・はい、父上。」
ルークはレプリカの手を、優しく握り締めた。

 

ルークは古代イスパニア語の辞書を何日も調べて、レプリカにエステル(希望の星)と言う名を贈った。良い名前だねvとルーに誉められて真っ赤になって照れている。
歩行訓練や言葉の練習に付き合ったりして、結構良いお兄ちゃんぶりだ。
アッシュはルーとも相談し、考えた末にエステルを愛人に生ませた事にして届け出た。
年もND2001の初めに生まれたことにして、『聖なる焔の光』とは違うと周囲に思わせた。
レプリカである事を知らせたり、ルークと双子だったという事になどしたら、預言を妄信するインゴベルトに危害を加えられる恐れがあったからだ。
(ファブレ公の愛妻家ぶりは有名で、愛人の存在など信じるものは居なかったが、エステルがクリムゾンに似ていた為、誰も否定できなかった。)


「初めはどうなるかと思ったけど、仲良くなって安心したぁ~v」
「そうだな。自分の半身を、憎ませたくは無かったからな。」
「アッシュ ・・・ありがとう。」
テラスで仲の良い息子達を眺めながら、夫婦はお茶をしていた。
エステルはやっと歩けるようになって、片言の会話が出来るようになっていた。
我慢強く会話に付き合っているルークに笑みが漏れる。

 

突然ルーが口元を押さえた。
「アッシュ・・・なんか気持ち悪い・・・」
「大丈夫か! ルー」
すぐに医者が呼ばれた。ドアの前で診察が終わるのを待っていたアッシュは、思いもかけない事を聞いた。
「おめでとうございます、クリムゾン様。シュザンヌ様は妊娠しておられます。」
「本当か! ・・・いや、その大丈夫なのか?シュザンヌの身体は・・・」
「シュザンヌ様はすっかり健康にならせられたので、ご出産も差し支えない事と思われます。」
「そうか・・・!」


誘拐の後、あまりに酷いルークの様子に泣き止まないルーを眠らせる為、頑張ったあの時か・・・!
とりあえず労わろうとルーの所に向かうと、微妙な顔をしてこっちを見ている。
「アッシュ~ ・・・凄く嬉しいんだけど、またあの痛い思いするのかと思うと素直に喜べない・・・」
「頑張れ。二度目の出産は初めの時より楽だと聞くぞ。」
「えっ、そうなの? ・・・うん、頑張る!俺とアッシュの子供だもんね!」
二人は抱きしめあい、微笑んだ。

預言は確かに覆されつつある。預言に詠まれていないこの子供の誕生がそれを証明していた。

 

8ヵ月後、ファブレ家はいきなり賑やかになっていた。
ルーは何と双子の女児を出産したのだ。
(ちっとも楽じゃ無かったよー!と後でアッシュは怒られた。しょうがないだろ、双子なんて知らなかったんだし!)
ちなみに今回アッシュは叫びまくってぶっ倒れるような事は無かった。
父親ぶりも板についていたようだ。


生まれたての双子の妹達と、幼い子供のようなエステルに、ルークは戸惑いながらも結構楽しそうだ。妹達にかかり切りになっている両親の代わりに、エステルの勉強を見てやっている。
たっぷりと構われて育ったエステルは、素直で明るい子だ。ちょっと飽きっぽいのは、まあしょうがないだろう。だいぶ長男としての自覚が出てきたルークは、生真面目で頑張り屋だ。(でも照れ屋でちょっとツンデレだ)
双子はルーシア(未来への光)とエルウィング(希望の翼)と名付けられた。
どちらも将来美人になりそうだ。
ちょっと癖っ毛で良く笑うのがルーシア、深紅の直毛で物静かなのがエルウィングだった。

 

幸せの絶頂に有ったファブレ家だったが、ある日衝撃が訪れた。
王城へ呼ばれたアッシュを待っていたものは、理不尽なインゴベルトの命令だったのだ。
「クリムゾン、そちに再び子が生まれる事など預言に詠まれておらん。その双子を殺せ!愛人に産ませたと言う子も殺してしまえ!」
「何をおっしゃいます、陛下!これでやっとキムラスカの後継者が安泰になったと言いますのに!」
周囲の貴族達が驚愕して諌めるが、インゴベルトは聞き入れようとしない。

 

最近のインゴベルトは、常軌を逸していた。
国の重鎮達を蔑ろにしてモースを重用し、預言に詠まれたといっては必要の無い大規模工事に大金を投じ、軍備を過剰に備え、その都度税金を上げていった。
預言に詠まれていないと言う理由で流行り病を放置され、滅びた村も有る。
虐げられた国民の不満はもう爆発せんばかりだというのに、気にしようともしない。
ただ連日のように教団に大金を払い預言を詠ませ続けていた。


「わしの子は死んだと言うのに!クリムゾン、お前の子になどキムラスカを継がせるものか!
わっはははは!早く殺してしまえ!」
唾を飛ばし、笑いながら国の後継者の死を命じる王の姿は、もはや正気ではなかった。
(このままではキムラスカは滅びてしまう・・・)
キムラスカの重鎮達は、決意を込めた表情でそっと目を見交わしあった。


次の日、インゴベルト六世の崩御が国民に伝えられた。


ND2012、キムラスカの新王にはクリムゾン・ヘアツォーク・キムラスカ・ランバルディアが立った。
戦争前から国内外にその実力を知らしめてきたファブレ公爵の即位に、異を唱える者は居なかったのだ。


預言を妄信し、自分達を虐げ国を傾けてきたインゴベルトを憎んでいた民衆は、クリムゾンの掲げる『預言からの脱却』を喜んで受け入れた。
増長するローレライ教団を苦々しく思っていた貴族達も、それに賛同するものがほとんどだった。

こうしてアッシュとルーが思っても見なかった方法で、キムラスカは預言からの脱却に向かって行ったのだった。

 

「へ・い・かv お疲れ様!」
傾いたキムラスカの建て直しと、連日の頭の固い年寄りどもとの攻防に、アッシュはぐったりしていた。即位からこっち、ゆっくりする暇も無い。
ソファにへばるアッシュをルーは後ろから抱きしめた。
アッシュは王妃を抱きしめ返した。疲れが取れる気がする。
アッシュもルーも、王と王妃の猫被りが結構板についてきた。その分プライベートではこうしてスキンシップに明け暮れている。ファブレ邸からついてきた使用人達は慣れたものなので驚きもしない。微笑ましく見守ると、邪魔をしないようにそっと退室して行った。


アッシュが即位した為、ファブレ一家は城に引越しをしていた。
使用人たちは半数が城に移り、白光騎士団は王の親衛隊として身辺警護を司っていた。
公爵邸は現在、迎賓館として利用している。いずれ子供たちの誰かがファブレを継ぐだろう。

「子供たちの為にも、頑張らないとな。」
アッシュは気合を入れなおした。キリッとした顔付きになり、背筋がしゃんと伸びる。
ルーはそんなアッシュに惚れ直した。
・・・と言うか、この夫婦、毎日のようにお互い惚れ直しているわけだが。

 

 

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