忍者ブログ
同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.30,Tue
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by tafuto - 2007.12.05,Wed
 
そんな折、ダアトに帰っていたモースが新しい導師を連れてキムラスカにやって来た。
新王のクリムゾンに取り入ろうとでも言うのだろう。
導師はまだ9歳の少年だった。

「ようこそ御出で下さった。導師イオン、大詠師モース。まずはごゆるりと寛がれると良かろう。導師イオン、お初にお目にかかります。それでは城をご案内しましょう。シュザンヌ、ルーク、導師のお相手をして差し上げてくれないか。」
「はい、父上」
「分かりましたわ。」
ルークとイオンは歳も近く、すぐに打ち解けた。
ルーはさり気なくモースとイオンを引き離すと、イオンを庭園に案内して行った。


海を見渡す事が出来る美しい庭園の東屋でお茶をしていたイオン達の所に、アッシュがやって来た。モースの相手は他のものに任せてある。
見晴らしの良い東屋では隠れて立ち聞きする事はできない為、ここを選んだのだ。
「こんな所で失礼した。導師イオン、モース殿には聞かれたくない話があるのです。・・・キムラスカは預言から脱却するつもりです。ルーク、お前にも深い関わりのあることだ、一緒に聞いて置きなさい。」

そうしてアッシュは秘預言の全てをイオンに告げた。イオンに死の預言が詠まれている事も。
青褪めたイオンが悲鳴のように問いかける。
「何故それを知っているのです・・・!」
「それを言う事は出来ない・・・しかし、私たちはこの預言を覆すつもりです。黙って滅亡などするつもりはないし、我が子を生贄に捧げるつもりなど、これっぽっちも有りません。導師イオン、貴方は御自分の死の預言を黙って受け入れるおつもりか?」
「預言は・・・覆せないものでしょう?」
「そんな事はありません。現に私には預言に詠まれない我が子が3人もいるのですから。・・・もう、預言は覆されつつあるのだと思っています。」
「・・・・・・・・・」

黙り込むイオンにルークがきっぱりとした表情で話しかけた。
「導師イオン、俺にも死の預言が詠まれています。だけど、俺は諦めない。父上や母上や兄弟たちと一緒に戦うつもりです。貴方にも諦めて欲しく無い! ・・・俺の、はじめての友達なんだから。」
俯いてしばらく無言だったイオンは、ふと顔を上げた。今までの達観したような表情が嘘のように輝いている。
「・・・そうですね。僕も、最後まで諦めたくない。貴方達に協力させてください。ルーク、僕の初めての友達。君と一緒に戦いたい。」
「ああ、頑張ろう!」
少年達は、硬く握手をして笑い合った。


アッシュはイオンにヴァンがやろうとしていた事を伝えた。そして大地を支えるパッセージリングが耐用年数を越えている事を話し、協力を仰いだ。
アッシュが話す秘預言に、導師のお墨付きが有れば信憑性が高まる。それを見ればマルクトも預言を覆す事に賛同すると思ったのだ。大地の降下は一国だけで決められる事ではない。

真剣な表情で頷いたイオンは、その後エステルに紹介され、レプリカについての偏見を払拭した。
天真爛漫なエステルは、子供でいる事を許されなかったイオンにとって眩しいほどの存在だった。
3人はすぐに仲良くなった。
妹達を見に行ったり、エステルに付き合ってかくれんぼをしたり。(結構楽しかった)
イオンやルークがただの子供でいられる唯一の場所がエステルなのだった。


ダアトに戻ると、イオンは導師として『預言は指標である』と言う立場を明確に打ち出した。
モースとは対立を深めたが、導師に賛同するものはローレライ教団の中にもしだいに数を増やしていった。預言の為に弟を失ったリグレット、オラクル最大の第六師団を率いるカンタビレ、ラルゴと名を変えたバダックなどがそれに含まれていた。
ラルゴはメリルを育てる為に、オラクルに入団していた。『アッシュ』と言う人物を長年探していたが、クリムゾンの愛称が『アッシュ』だと導師に聞いて腑に落ちるものがあったのだ。


数ヵ月後に導師守護役についたアリエッタと共に、禁書の保存してある棚でパッセージリングについて調べるイオンの姿があった。
アリエッタは時折キムラスカにやってきて導師からの報告をしてゆく。ルークやエステルとはすっかり打ち解けた。こちらからの連絡用にお友達を貸してくれたくらいだ。
ルークとエステルはベルケンドから足を伸ばしてこっそりイオンに会いに行ったりしていた。
(アッシュが即位して超振動の実験は中止になったが、超振動の制御の訓練に、月に何日か護衛と共にベルケンドに行っていた。)
そしてある日、地核の流動化に関しての古文書がアッシュに届けられた。


「ルー、これで証拠が揃った。マルクトとの話し合いの為に、和平が是非とも必要だ。・・・しかし現皇帝は頑なに預言を信じ、キムラスカを敵視している。いっそケテルブルクのピオニー皇太子に持ちかけてしまったらと思うんだが・・・」
イオンが書いた秘預言を記した書類と古文書を前に、アッシュは難しい顔をしていた。
『以前』の歴史をなぞるなら、来年辺りにはピオニーが即位するはずだ。
自分が行きたい所だったが、王が簡単に城を離れるわけには行かない。ルークはまだ若すぎる。
そんなアッシュに、ルーがにっこり笑いながら抱きついてきた。

「・・・なら、俺が行ってくるよ!」
「お前だって王妃なんだから、簡単に出歩けるわけねぇだろ。」
「そんなの、体調が優れないとか言っときゃ良いじゃん。昔身体弱かったんだし。・・・ねぇ、たまには俺にも手伝わせてよ。いっつもアッシュばっかり苦労しててさ。」
「お前・・・大丈夫かぁ?」
「長年培った、淑女の猫被りをなめんな。絶対説得してみせる!」
「・・・わかった、任せる。気をつけろよ、ジョゼット・セシルを連れて行け、あいつは計画も知っているし腕が立つ。(男どもなぞルーに付けられるか!それでなくてもあのピオニー相手だしな!)」
「うんv(も~アッシュ、やきもち焼いちゃってvバレバレだよ?)」



数日後、ルーはこっそりと旅立った。しっかりと変装している。
まずダアトへと向かい、導師にダアトの身分証明書と旅券を書いてもらうと、それを使ってケテルブルクへと向かった。
ちらちらと雪の舞う光景に、懐かしさがこみ上げる。
「ケテルブルクか、懐かしいな・・・」
「シュザンヌ様はケテルブルクにいらしたことがあるのですか?」
妙にケテルブルクに詳しいルーに怪訝そうなジョゼットが問いかける。
「え!いえいえ、本で読んだのです。(ヤバイ!気をつけなきゃ。)それより、ピオニー皇太子はどこにいらしゃるのかしらね?」
「はっ、調べてまいります!」
「セシル、お忍びですからもっと楽に話してくださいな。」
「はい、シュザ・・・奥様。安全な所でお待ちになっていて下さい。」


ケテルブルクホテルのラウンジでジョゼットを待っているルーの目に、金髪の少年が映った。
父親らしき車椅子の紳士の側を、姉らしき人と連れ立って歩いている。
(え・・・?ガイ!あっちはマリィさん?・・・するとあれはガルディオス伯爵か・・・!)
驚愕に固まるルーに、車椅子の紳士はふと眼を止めた。
「こんにちは、ご婦人。私はジグムントと言う。ケテルブルクは初めてですかな?」
「ええ、はじめまして。わたくしはシュザンヌと申します。」
その名に眼を見張ったガルディオス伯は、ルーの翡翠の瞳を凝視するとゆっくりと微笑んだ。
「ここは療養には良い所です。お時間が有れば、一度ゆっくりと話したいものですな。」
「ええ、そうですわね。楽しみにしております。」
ラウンジを去ってゆくガルディオス伯爵に、ルーはそっと息をついた。
(バレたよな・・・けど、伯爵は友好的だった。上手くすれば仲間に引き込めるかもしれない。)


次の日の晩、面会の約束を取り付けたルーとジョゼットは、ピオニーの家へと訊ねて行った。
「俺に用が有るというのは、貴女ですか?ご用件は何でしょう。」
『以前』とほとんど変わらなく見える(不思議だ!)ピオニーが、僅かに硬い顔つきで訊ねた。
「・・・まずはこれを御覧下さい。」
ルーは導師イオンのサインの入った秘預言の全文をピオニーに差し出した。
それを読み進めるピオニーの顔が、見る見るうちに強張ってくる。
「これは・・・!」
「世界を救う為に、協力して頂きたいのです。」
話を続けようとするルーを、ピオニーは手で遮った。
「ちょっと待ってくれ。まだ貴女が何者なのかも聞いていない。・・・それに、ほかにも聞かせたい者がいるんだ。」


ピオニーが奥の部屋に声をかけると、剣を手にしたガイとガルディオス伯爵、それに車椅子を押すマリィの3人が現れた。
「すまん、さすがに正体不明の者とたった一人で同席するわけには行かなかった。」
「わかっています。」
席についた3人を含めて、ルーはその名を明かした。
「わたくしは、シュザンヌ・フォン・ファブレ。今はキムラスカの王妃です。」
するりと鬘を取ったルーに、ガルディオス伯が微笑みかけた。
「やはりな。クリムゾン殿といい、何とも似たもの夫婦の豪胆さですな。その節はクリムゾン殿に世話になりました。改めて感謝申し上げる。」
「ホドの事では、クリムゾンが心配しておりましたわ。・・・今から申し上げるのは、その事とも関わりが深い事なのです。」

後から席についた3人にも秘預言を読ませると、ルーは蒼白になっている一同に話し始めた。
世界の構造とパッセージリングについて、ヴァンが行ってしまった事、レプリカの事。
信憑性を高める為に、古文書を見せて説明を続ける。
そして預言を覆す為に協力をして欲しい事を告げた。


驚愕して聞き入っていたピオニーが、しばらくして考え込むように訊ねた。
「・・・協力はしたいが、何故俺に?俺は一介の皇子で、継承権もそれほど高くは無いですが?」
「それは・・・ 次の皇帝が貴方になるからです。」
「そんな事が何故分かるのです。」
「ただ、知っているのだ、としか言えません。・・・協力のお答えは、貴方が皇帝になった時にお聞きしましょう。・・・キムラスカは、和平を望んでいます。世界を滅亡から救う為に。」
ルーは微笑んだ。

「ただ一つ、今お願いしたい事があります。ジェイド・バルフォア博士に、被験者と完全同位体のレプリカとの間に起こる『大爆発』を防ぐ方法を考えて欲しいのです。二人とも、私の可愛い子供たちですから。」
「分かった。ジェイドには必ず伝えましょう。・・・次は和平の席でお会いしたいものだ。もっとも俺が皇帝なんぞになっていればの話だが。」
ピオニーはにやりと笑うとルーに握手を求めた。


席を立とうとするルーに、躊躇いがちにガルディオス伯が問いかけた。
「ヴァンデスデルカは、死罪になってしまったのですか?・・・私はあの時奴を助け出そうとしたのですが、それは叶わず、このような身体になってしまった。それ以来会ってはいないのです。」
「いいえ、ユリアの子孫であるヴァンは死罪は免れました。しかし、彼はまだ憎しみを捨ててはいない。復讐を諦めてはいないのです。考えを変えない限り幽閉は続く事でしょう。」
「そうですか・・・いつか彼とも話してみたいものだ。早く和平が成ると良いですな。
・・・ガイラルディア、シュザンヌ様をホテルまで送って差し上げなさい。」
「分かりました、父上。」


ホテルへの道すがら、ルーはガイを懐かしそうに眺めた。
我侭な自分に手を焼いていた年頃のガイだ。前よりだいぶ礼儀正しいが。
視線に気付いたガイが、緊張に耐え切れず話し始めた。
「崩落したホドから生き残ったガルディオス家は、皇帝に疎まれました。新たな領地も貰えず、こうして転々として父上の療養をしていたのです。何故なのか、今日やっとその疑問が解けました。皇帝は預言どおりホドを滅ぼすつもりだったのですね。」

「マルクトの皇帝が何をお考えになったかは、私には分かりません。」
苦笑するルーに、ガイは真剣な表情で続けた。
「ヴァンは、俺の兄のような存在でした。いつか必ず、彼に会いに行って話を聞こうと思います。」
その言葉に柔らかく微笑むと、ルーはガイを抱擁した。
「ええ必ず。お待ちしております。」
ちょっと吃驚したガイは、嬉しそうに抱擁を返した。



ホテルに着き、帰ってゆくガイの後ろ姿を、ルーは感慨深そうに見送った。
(うわ~・・・女性恐怖症じゃないガイって、新鮮だなぁ~!すっげえスケコマシになりそう!)




スパにゆっくりと浸かり、夫と子供たちにお土産を買い込んだルーは、収穫物と共にるんるんとキムラスカに帰っていった。
王妃への見舞い客を必死になって止めていたアッシュが、心からほっとした事は言うまでもない。
PR
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
はくしゅ
気に入って下さいましたら、 ぜひぽちっとな
プロフィール
HN:
tafuto
性別:
女性
自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

当家のPCとセキュリティ
Windows Vista  IE8
Norton Internet Security 2009
GENOウィルス対策↓
Adobe Reader 9.4.4
Adobe Flash Player WIN 10,3,181,14
メールフォーム
カウンター
アクセス解析
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]