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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.12.06,Thu

 

ND2014、マルクト皇帝にピオニーが即位した。


マルクトの上位王位継承権を持つものたちは、皇帝の座を狙ってお互いに暗殺合戦を繰り広げ、遠くケテルブルクに追いやられていたピオニーだけが生き残ったのだ。
王家の血を濃く継ぐ者は、もうピオニーしかいない。後は似たり寄ったりの血の薄さだ。


前皇帝に疎まれていたガルディオス家は、即位したピオニーより正式に領地を受ける事になった。
キムラスカに近いため誰もが領主になる事を躊躇っていた、ケセドニアからローテルロー橋の間を拝領したのだ。
ホドの崩落から逃れていた民たちも、噂を聞きつけてガルディオス家の下に集まってきた。
同時に、身体の不自由になってしまった伯爵の代わりに、ガイラルディアが正式にガルディオス家を継ぐ事になった。
城からあまり動けないアッシュとピオニーの間の連絡を取り持ってくれる事だろう。

 

和平の準備は、秘密裏に進められていった。しかしまだ即位したばかりのピオニーには、キムラスカとの和平をマルクト貴族達に納得させるだけの決定打に欠けていた。
長年争ってきた民の感情を変えるのはたやすい事ではない。ピオニーは自分の発言力を上げる為、しばらくの間は実力を見せ付けることに奔走するしかなかった。


その間キムラスカでは、地核の流動化を止める装置が研究されていた。アルビオールの完成ももう間近だ。
ピオニーと連絡を取りあい、イオンの協力の元にパッセージリングの調査も進められていた。
その結果、ホドとアクゼリュスが落ちる事によって、他のパッセージリングのアルバート式封咒が解かれることが判明した。
アクゼリュスの崩落はどうしても必要だった。しかしその兆しも無いアクゼリュスを落とす事など、住民は納得しないだろう。

・・・今は準備を整え、時を待つしかなかった。

 

一年後、イオンが病に倒れた。どんどんやつれていく導師に、モースはレプリカを作る事を持ちかけた。承諾を返したイオンに悲痛な顔でアリエッタが問いかける。
「どうして・・・! イオンさま、ルークたちと一緒に戦うって、言った、です!」
「僕は諦めたわけじゃない。・・・アリエッタ、パッセージリングの封咒を解く為に、ダアト式譜術はどうしても必要なんだ。それに、僕も兄弟たちが欲しくなったんだよ。きっと仲良くなれる。そう思わないか?」
「イオンさま・・・」
やつれた顔で、それでも楽しそうに笑うイオンにアリエッタはもう何も言う事が出来なかった。
悲しみをこらえて、キムラスカへとその事を伝えに行く。


城の私的な応接間でその事実を聞いたアッシュとルーは、顔を見合わせて叫んだ。
「アッシュ! シンクが!」
「ああ、早くしねぇと。レプリカたちがザレッホ火山に落とされちまう!」
驚いて問いかけるアリエッタやルークたちに、アッシュは手早く説明した。
「レプリカは何体か作られたんだ。不要になったそのレプリカを、モースはザレッホ火山の火口に破棄するつもりだ。」
その言葉に、ルークとエステルが手を取り合って叫んだ。
「父上! 俺たちに行かせてください! イオンの兄弟を、絶対助けて見せる!」
「アリエッタも、手伝う、です!」
「・・・分かった、頼んだぞ。気を付けて行って来い。」
「はい!」

 

ザレッホ火山の火口では、4人目のレプリカが落とされた所だった。目を見開き、声も出せずにマグマに飲まれてゆく。
「イオンさま! ・・・許せない!」
「ちきしょう!エクスプロード!」
真っ直ぐに突っ込んでゆくフレスベルグの上から、ルークは譜術を放った。譜術はモースの手下達の服を焼き、一瞬で気絶させる。
後には気を失ったレプリカが、二人残されていた。エステルが急いで回復術をかける。
「ルーク、全員いっぺんには、乗れないです。はじめに一人連れて行ったら、ベルをこっちに帰して、ください。」
「分かった。行くぞエステル、しっかり支えてろよ。」
「うん!」


フレスベルグの帰りを待っていたアリエッタは、人の声にとっさに身を隠した。
自分の体力ではレプリカを抱えあげることが出来ない。アリエッタは祈るようにレプリカを見つめた。彼を殺すつもりなら、ダアトに居られなくなっても助けるつもりだった。

「ああ、何だぁ? マグマの爆発にでも巻き込まれちったか。」
「おい、このレプリカ生きてるぜ。こんなしぶといんじゃ、何かの役に立つかもしれん、連れて行こう。」
「物好きだなぁ!」
笑い声と共に、倒れていた人たちと一人だけ残されていたレプリカが連れて行かれた。
(イオンさま・・・ごめんなさい。)
アリエッタは唇を噛んだ。


戻ってきたフレスベルグは、アリエッタをダアトの近くの森に連れて行った。
「ルーク、エステル、ごめんなさい。もうひとりは、連れて行かれちゃった、です。」
「そうか・・・ 殺されて無いなら幸いだった。きっと手駒に使おうと言うんだろう。」
「ねぇルク兄、この子、バチカルに連れて行く?」
「そうだな・・・アリエッタ、連れて行かれたほうはきっとオラクルの兵になる、そっちを頼む。この子は俺たちが連れて行って休ませるよ。」
「分かりました、お願いする、です。」

 

フレスベルグに乗ってバチカルに向かう3人を見送って、アリエッタは導師イオンのところに報告に向かった。

力無く横たわり、報告を聞いていたイオンが、不意に咳き込んだ。
アリエッタは慌てて医者を呼びに行こうとした。それをイオンのかすかな声が呼び止める。
ベッドサイドに膝を付いて手を握り締めたアリエッタに、イオンは優しく笑いかけた。
「ねえアリエッタ・・・ルークたちに伝えて。僕は最後まで諦めなかったって。僕は、僕の兄弟たちに未来を托したんだ。・・・僕の兄弟たちと、ルークとエステルみたいになりたかったな・・・」
「なれるです、イオンさま!」
「ごめんね、アリエッタ。みんなを頼むよ・・・」
ふっと眼を閉じたイオンの手から、力が抜けていった。


イオンは亡くなった。しかしその死が公表される事は無かった。『導師イオン』は存在し続けたからだ。
亡骸は、ダアト近くの森にひっそりと埋葬された。
花を手向けるのは、アリエッタただ一人だった。
夜の森に、嗚咽がいつまでも響いていた。

 

泣きながらイオンの最後の言葉を伝えるアリエッタの言葉に、ルーク達は悲しみに包まれた。
「アリエッタ、もう泣くな。未来を托したあいつらを頼まれたんだろう?俺たちも最後まで諦めない。イオンの分まで頑張ろう。」
アリエッタは、赤い眼をして自分に誓うように話しかけるルークと目を合わせた。
「アリエッタ、導師守護役を解任された、です。」
「でもまだあいつらの為に、やれる事はあるだろう?残りの二人を守ってやってくれ。」
「はい・・・! 頑張ります、です。」


アリエッタは第三師団長の任に付きながらも、時折アッシュと連絡を取っていた。
ついでにバチカルに保護されたレプリカイオンと遊んでいく。
レプリカイオンはフローリアンと名付けられた。はじめは無表情だったがルークやエステルと過ごすうちにだんだんと感情豊かになっていた。子供っぽいが、優しい良い子だ。

 

マルクトとダアトが動けない今、出来ることは限られている。
水面下で準備を進めながら、アッシュ達は時が来るのを待っていた。
アクゼリュスの崩落の兆し、瘴気の出現を。


そしてND2018、ピオニーからついに報告がもたらされた。
アクゼリュスから瘴気が噴出する兆しが見えると。
和平に向けて動き出すのは、もう間近だった。

 

アッシュは時折ヴァンに面会しに行っていた。
その日も牢の扉越しに話しかけていたが、ヴァンは頑なに口を開こうとしない。
彼は憎しみに心を閉ざし、全てを拒絶していた。


溜息をついて踵を返すアッシュが広間に出ようとした所にルークの声がかかった。
「父上! お時間があると聞いて・・・ 久しぶりに剣の稽古を付けてくれませんか?」
「父上! お願いします!」
すっかり大きくなった子供たちが、木刀を持って笑いかけてくる。
(こいつらも、もう17か・・・俺も年取ったな。)
逞しく成長した子供達は剣の腕もなかなかだ、うっかりすると一本取られてしまう。
ルークにしごかれたエステルは、勉強も出来るようになった。譜術にも才がある。
アッシュは苦笑して木刀を受け取った。
「まだまだ若いもんには負けん!」
「今日こそは父上から一本取って見せる!」

 

・・・その時だった。

聞き覚えのある歌が聞こえてきて、アッシュは自分の体が重くなるのを感じた。
「何者だ!」
ふらつく身体を叱咤し、ルークが膝を付いたアッシュを庇うように前に出た。
長い髪の少女が、こちらに向かって迫ってきた。眠らされた番兵が倒れているのが見える。

「兄さんはどこ! 預言を蔑ろにするキムラスカは、罪も無い兄さんを陥れたんでしょう!」
「それは違う。」
言葉を返すアッシュをキッと睨みつけると、ティアはナイフを振りかざした。
「兄さんを帰して!」
「止めろ!」


ティアは気付いていなかった。自分が誰に向かって攻撃を仕掛けたかを。
現在、王族の証である赤い髪と緑の瞳を持つものは、キムラスカ王とその家族だけである。
狭い世界で育ったティアは、その色が何を意味するのか解ってはいなかった。


父親を庇って、エステルがとっさにナイフを木刀で受け止めた。
そのとたん、眩い光が辺りを包み込んだ。
・・・光が消えた時、そこに二人の姿は無かった。

 

「エステル!」
「くそッ・・・! 油断した。やはり預言の強制力は侮れないな・・・ 落ち着けルーク、行き先はわかっている。」
アッシュは強い瞳でルークを見据えた。
「いよいよ始まるんだ、預言との戦いが。・・・ルーク、正念場だぞ。」

 

 

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