忍者ブログ
同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by tafuto - 2007.12.14,Fri

 

※このティアが一番反省するのは兄に諭された時だと思います。二人とも真人間になってもらいました。
アッシュもルーも王(王妃)が長いので、私情を挟んではいけない時が有るのは良く分かっています。けして非情では有りませんが・・・

 


 

キムラスカ王の御前にティアは引き出された。
『説明もせずいきなり拘束なんて失礼だわ!』などと騒いでいるティアに周囲の目は冷ややかだ。
あまりに無礼な言動に、怒りのあまり剣に手をかけている者もいる。
すぐにでも首を刎ねろと言う声を宥めるのに、ルーは随分苦労していた。


ティアの預言妄信は変わらなかった。頑なにキムラスカに陥れられたと思い込んでいる。
導師イオンのサインのある秘預言を見せても、『でたらめよ!そんな事あるわけないわ!』の一点張りだった。
「預言を蔑ろにするキムラスカは、ユリアの子孫である私たちが邪魔だから陥れようとしてるのよ!」
良く通る声で叫んだティアに、アッシュは深い溜息をついた。

城への無断侵入と王の暗殺未遂、皇子誘拐、数々の不敬罪と公式の場でのこの暴言。
仮に自分への暗殺未遂を入れなくても、死罪は確定だ。
この女は自分の首に自分でロープをかけてしまった。もうどうにもならない。
ルーが悲しそうにティアを見ていた。

「ヴァン・グランツをここへ通せ。」
アッシュが命じると、隣室に控えさせていたヴァンが通された。
隣室からでも聞こえていた今までの妹の発言に蒼白になっている。
ヴァンにも分かっているのだ、ティアがもう死罪以外は有り得ない事が。


「兄さん!やっぱりキムラスカに捕らえられていたのね!」
「メシュティアリカ、何と言う事をしたのだ。」
「私は兄さんを助けようと思ったのよ!」
「私は罪を犯してここにいるのだ。そう説明されたであろう?」
「だって、兄さんがそんなことするはずが無いわ!」
「陥れられたのではない、私は預言を憎み、確かに自分の意思でルーク様を誘拐したのだ。
・・・そしてその事を後悔している。」
「兄さん・・・!」


信じられないと言うように首を振るティアに、アッシュは処分を言い渡した。

「メシュティアリカ・アウラ・フェンデ。この者に死罪を申し渡す。
だが、パッセージリングのユリア式封咒を全て解呪し生き残っていたら、その罪は免じよう。
しかし封咒を解く事によって重い瘴気障害に陥るであろうことは申し添えておく。・・・・・・選べ。」


「なぜ私が!納得できないわ!」
半狂乱になるティアに、ヴァンは憔悴したように話しかけた。
「まだ分からないのか、自分の罪が何であるかあれほど説明されただろう?」
「私はそんなつもりじゃ・・・彼が王なんて、知らなかったのよ!」

ヴァンはティアと眼を合わせ、静かに諭した。
「メシュティアリカ、お前は今まで何を学んできたのだ。城に無断で侵入するだけで首が飛ぶほどの重罪なのだぞ。それを一国の王に刃を向けるなど・・・知らなかったですむ問題ではないのだ。
私もお前も、死をもってでしか償えないほどの罪を犯したのだよ。」
「あ・・・そんな・・・」
兄の言葉に、ティアは崩れ落ちて嗚咽を漏らした。
ようやく、自分のしてしまった事を思い知ったのだ。もう、取り返しはつかないが。


「・・・いや、憎しみに捕らわれお前に構わなかった私の責任か。・・・王よ、この者の処分、私が変わってお受けいたします。なにとぞメシュティアリカの命ばかりはお助けください。」
ヴァンは覚悟を決めたように王座へと跪いた。

「預言は覆される。それなら私に、思い残す事はありません。喜んでこの身を捧げましょう
・・・王よ、なにとぞこの願い、お聞き届け下さい・・・」
無言でヴァンを見ていたアッシュが、頷いた。

「・・・許可する。」

「そんな!償いは私が!兄さんは助けてください!」
縋るよう仁王座を見るティアに、悲痛な顔をしたルーが静かに言葉をかけた。
「あなたを助けたいから二人分の罪を引き受けた、ヴァンの気持ちが分からないの?」
ヴァンが深く王座に頭を下げた。
「クリムゾン王、シュザンヌ王妃、感謝いたします。・・・メシュティアリカ、お前は生きて罪を償うのだ。」


「兄さん・・・!ごめんなさい兄さん・・・」
連れて行かれたティアの泣き声が、石造りの廊下にいつまでも響いていた。

 

 

一行はアクゼリュスへと入っていった。
ルークとエステル、ガイとジェイド、そしてヴァン。ほかに十数名の兵士達。離脱用にアリエッタとお友達の一団。

アクゼリュスは無人だった。瘴気が出始めてすぐピオニーは住民を避難させたのだ。
崩落の危険があるから地下から瘴気が出現したと説明されて、残る者はいなかった。
瘴気はまだそれほど濃くなってはいない。
兵士達はパッセージリングまでの魔物を殲滅すると、速やかに離脱していった。


ダアト式封咒は被験者イオンが生前にもう解いてある。
一行はパッセージリングの前へと進み寄った。
ジェイドは振動数を測定する装置を手にしている。
ヴァンがユリア式封咒の前に立ち、封印が解かれる。ヴァンは呻いて膝を付いた。

ガイがヴァンに肩を貸して立ち上がらせた。
「・・・すみません、ガイラルディア様」
「良いんだ。・・・お前の覚悟、最後まで見届けてやる。」
よろめくヴァンを連れてガイが先に離脱して行った。残る人数は少ないほうが良いのだ。


ジェイドの指示の元に、パッセージリングの切り離しが書き込まれていった。僅かな振動音と共に切り離しが完了する。
「さあ、正念場です。パッセージリングを破壊したらすぐ、フレスベルグに乗ってこの場を離れますよ。」

アリエッタが魔物をジェイドのそばに整列させた。
ルークとエステルは頷いてパッセージリングに近づいていった。
ぎゅっと手を握り合い、パッセージリングに向かって超振動を解き放つ。
出来るはずだ、この為に何年も訓練してきたのだから。
必要以上に崩壊を招かないように注意深く超振動をコントロールする。

やがてパッセージリングが細かく崩れ始めた。
「もう良いでしょう。後はほっておいても崩れます。離脱しますよ!」
ジェイドの号令に、一同は魔物に乗り込んで坑道を後にした。地響きが追いかけてくる。
一行が空に舞い上がった時、地鳴りと共にアクゼリュスはゆっくりと崩落していった。

 

相乗りしている魔物の上で、エステルの体が震えているのが分かる。
この大地の崩壊を引き起こしたのが、自分の持つ力だと実感して恐れ戦いている。
「・・・怖いよ、ルーク。」
「ああ、俺もだ。・・・お前一人じゃない、二人で分け合おう。」
後ろから自分を抱きしめてきたルークの身体もまた、細かく震えていることにエステルは気付いた。触れ合っている所から、少しずつ恐怖が癒されていく。
「・・・一人じゃないんだね・・・」
(二人でいれば、きっと何でも出来る。俺はお前の半身なんだから。)

 


外殻大地降下作戦は始動された。
アクゼリュスの崩落後、すぐにベルケンドとシェリダンの技術者たちが、アルビオールと共に、完成した地核の流動化を止める装置を沈めに行った。

ダアトからはイオンとフローリアンがダアト式封咒を解きに各地を回っていた。アリエッタ、シンク、アニス、リグレットが護衛をしている。
その後を追うようにヴァンがユリア式封咒を解いて回っていた。
ガイとガイの姉のマリィが、ヴァンの償いを見届ける為に志願して同行していた。
護衛として両国の選りすぐりの兵士と、ダアトからラルゴとラルゴの娘のメリル、カンタビレがついている。
・・・それに歩けないほど憔悴したヴァンを運ぶ為のアリエッタのお友達数頭が。

パッセージリングを全て起動させてしまえば、指示は一箇所で書き込める。
ルークとエステルはジェイドと共に、アブソーブゲートへと向かうことになっていた。

 

明日はアブソーブゲートへと向かおうという日、ティアが王との面会を求めてきた。
アッシュとルーが連れ立って幽閉場所へと向かう。
残り少ない日々を過ごす為、ヴァンとティアは同じ一室に入れられていた。

ティアは今までの態度が嘘のように平伏して話しかけて来た。
「今までの態度を、幾重にもお詫びいたします。お詫びしてすむ問題でないのはわかっています。でも、どうか私を兄の代わりに連れて行ってください!兄はもう瀕死です。動かせる状態ではないのです。どうか、どうかお願いいたします!私にも罪の償いをさせてください!」

難しい顔でその様子を見ていたアッシュの袖を、ルーが軽く引いた。小声で話しかける。
「アッシュ・・・俺からも頼むよ。師匠を、せめてベッドで死なせてあげて・・・」
「・・・わかった。そうしよう。」

 

その晩遅く、キムラスカに3人の客人が訪れた。
3人は王と王妃自らに案内され、ヴァンの元へと向かっていた。
女性に押された車椅子に乗った初老の男が、ベッドに臥しているヴァンの手を取った。
ヴァンが、目を見開いてその人物の顔を見た。

「ヴァンデスデルカ、すまなんだ、わしがお前を救えなかったばかりに・・・」
ヴァンはふっと微笑んだ。
「いいえ、貴方がたを信じられなかった私が愚かだったのです。ありがとうございました、ジグムント様、ガイラルディア様、・・・マリィベル様。最後に一目、お会いしたかった。王と王妃にも感謝いたします。・・・これでもう思い残す事はありません・・・」


ガイがヴァンの肩に顔を伏せ、涙を落とした。

「お前は俺のただ一人の騎士で、俺の兄だった。ヴァン、もうゆっくり休んでくれ・・・」

 

明け方、ヴァンデスデルカは静かに息を引き取った。
その顔は、満足そうな微笑を浮かべていた。

 


PR
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
はくしゅ
気に入って下さいましたら、 ぜひぽちっとな
プロフィール
HN:
tafuto
性別:
女性
自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

当家のPCとセキュリティ
Windows Vista  IE8
Norton Internet Security 2009
GENOウィルス対策↓
Adobe Reader 9.4.4
Adobe Flash Player WIN 10,3,181,14
メールフォーム
カウンター
アクセス解析
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]