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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.01.16,Wed

 

ルーク・フォン・ファブレ救出の功績により、ジョゼットは白光騎士に取り立てられ、ルーク付きの教育係となった。
ルークを守りたいと言うジョゼットの願いと、『ルーク』の状態を知る者を屋敷内で監視したいと言うファブレ公爵の思惑が一致した結果だ。
『以前』は家を再興したいと、我武者羅になっていた。それこそ“女の武器”を使い、利用できるものは何でも利用して権力者に取り入った。
(今考えると、虚しいだけだったな・・・)
無邪気に笑うルークの髪を梳きながらジョゼットは思う。

(この方は、これほど純粋で優しい方だったのだな・・・)
『以前』のルークに初めて会ったとき、正直ジョゼットはあまり好きになれなかった。
傍若無人ですぐに癇癪を起こす彼は、権力を嵩にきた貴族の馬鹿息子にしか思えなかったからだ。
しかし、内情を知るにつれて、この環境で良くあそこまで真っ直ぐに育ったものだと感心した。
使用人たちは腫れ物を触るように接し、メイドなど部屋に寄り付きもしない。
昼時にラムダスに呼ばれたジョゼットは、部屋に帰ってきた時、冷め切った昼食がテーブルに放置されたまま空腹で泣き喚くルークを見て愕然とした事がある。

誰もルークを見ない。声をかけない。 
これでは人との付き合いの方法を学ぶ事など出来ようはずが無い。
ジョゼットはルークといつも共に過ごし、声をかけ、抱き締め、さまざまな事を教えていった。
無知ゆえにまねいた不幸な出来事を繰り返させるつもりは無かった。


ルークが話せる様になった時、以前来ていた家庭教師が付けられるようになった。
(まだ早いというジョゼットの声は無視された)
教師は、まだ字もろくに書けないルークに分厚い本を与え、癇癪を起こしたルークを侮蔑の表情で見た。ルークの瞳が傷つき曇る。
その教師は、二度とファブレ邸に来る事は無かった。
心臓発作を起こして死んだそうだ。


何度かそう言う事が続いた。そういえば、ルークに対して陰口を言っていたメイドもいつの間にか居なくなった。休暇で帰郷したさいに事故で死んだらしい。
(・・・ルークを貶める者は全て殺してやる。)
“彼”の声が脳裏に蘇る。
ジョゼットは首を振って、その考えを振り払った。
・・・考えてはいけない。どんなに本能が、そう告げても。深夜、寝入ったはずのルークの部屋で“彼”の気配がしても。

今では『以前のルーク』を知らない温厚な教師がついてルークは楽しそうに勉強しているし、メイド達は気立ての良いほがらかな子ばかりだ。ルーク様にとって最良の環境が整った。

・・・・・・考えるな。“彼”がルークの害になりそうな者を殺して回っているなんて!

 


ルークは図書室から自室への道を急いでいた。もうすぐ教師が来てしまう。
楽しみにしていた地理の勉強なので、関連した書物を読んでおきたかったのだ。
廊下を曲がった時、前方から父親がラムダスを伴って歩いて来たのに遭遇した。
ルークの身体が一瞬強張る。
「お、おはようございます。父上。」
クリムゾンは、少しだけ頷くとルークから視線を外し、ラムダスと話しながら歩み去った。
「・・・・・・ふう・・・」
父親の姿が角を曲がると、ルークは溜息を吐いて身体の力を抜いた。

昔からダメなのだ。あの深紅の髪が、・・・怖くて。
父や母にも、何処か引いたように接してしまう。
ルークは赤い物が怖かった。部屋を覆う赤い壁紙やカーテン、そして深紅の髪。・・・血。
(怖いだけじゃ、無いんだけどな・・・怖いけど、惹かれる。どこか暖かい気がするんだ・・・)


誘拐されたルークは、それまでの記憶を一切失い、赤子のようになって戻ってきた。
何があったか、詳しくは知らされていないが、よほどの事が有ったらしい。
あまりの凄惨な現場に、気を病んだ兵士も居たと聞く。全てを忘れて幸せだったとルークに言うものさえいたのだ。
無理も無いと皆口々に言う。あの現場を少しでも見たものは。
医者にも、思い出そうとするなと言われている。
来るたびに『約束を思い出してくださいませ!』と言い続けたナタリアは、シュザンヌの懇願でファブレ邸への出入りを制限されたほどだ。(年に2度ほど顔を合わせた時には必ず言われるが)

また誘拐される事を恐れてルークは成人までファブレ邸から外へ出られないが、一から学び直している最中のルークは、けっこう有意義に毎日を過ごしていた。知らない事を知るのは楽しい。
ジョゼットや白光騎士に習った剣も、上達してきた。

「ジョゼット、遅くなった。ほら、これでいいんだよね?」
持ってきた本を見せるルークの笑顔が少し硬いのに気付いたジョゼットが、心配そうに問いかける。
「はい、ルーク様。・・・何かありましたか?」
「いや、途中で父上に会っただけ。いきなりだったから、びっくりした。」
苦笑しながら机に向かうルークを、ジョゼットは微妙な表情で見守る。

(この方をこんなに真っ直ぐに優しく育てたのは、全身を血に染め上げた“彼”なのだ。)


時々全てを告げてしまいたくなる。
自分を闇に堕としながらこの小さな光を守る“彼”が哀れで。

 

「よぉ、ルーク!頑張ってるな。」
「ガイ!」
慌てたようにルークが手を振るのに気付かず、ガイが窓を乗り越えて入ってきた。どうやら部屋の隅に控えていた自分に気付かなかったらしい。
「ガイ!公私の区別を付けろといつも言っているだろう!ドアから入って来い!」
「うわっ!ジョゼット様、いたんですか。」
首を竦めて謝罪するガイと、苦笑してジョゼットをなだめるルークを見て、ジョゼットは溜息をついた。

初めの頃、ガイは時折酷く冷たい眼でルークを見ていた。
『ガルディオス』の因縁を知っているジョゼットは、ルークの側に近寄らせなかったほどだ。
しかし年齢の近かったルークは、頓着せずにガイに懐いていった。
ルークが15才になる頃には、親友と言っても良い関係になっている。
どんなにルーク様を大切に思っていても、自分は臣下にしかなれない。友人の存在はルーク様に必要だ。そう思って黙認していたジョゼットだが、ガイは公私混同があからさますぎる。
「ガイ、二人だけのときにルーク様が許可されているなら、私は何も言わん。仮にも親友を名乗るなら、ルーク様の立場をお守りするのもお前の役目だろう?公私の区別も付けられない者がファブレ家の使用人を名乗る事も、ましてや親友を名乗る事など許さない。」
表情を消したガイが、頭を下げる。その眼にちらりと憎悪の炎が灯ったのをジョゼットは見た。
まだまだ本当の親友には程遠いらしい。

 



オラクルで若くして主席総長まで上り詰めた兄は、たった一枚の紙切れと、一つまみの遺髪になって戻ってきた。手紙には一言『任務中に殉職』と書いてあった。
自分と同じ色のその髪を握り締めてティアは泣き明かし、涙が止まったときにはオラクルへの入団を決意していた。
あんなに強く、優しかった兄がむざむざと殺されるはずが無い!何か、私たちに言えない事情があったに違いない。ティアの心にはそれしかなかった。
必死に止めるテオドーロを説き伏せ、それでも許可しないテオドーロの目を盗んでユリアシティを抜け出した。

テオドーロはティアの願いを聞き入れるわけには行かなかった。
彼の所には、導師エベノスからもう少し詳しい手紙が来ていた。
ヴァンは、ダアトの許可もキムラスカの許可も得ず国境を越え、コーラル城で惨殺されたそうだ。
ヴァンにはキムラスカからルーク・フォン・ファブレの誘拐の嫌疑も掛かっている。
戦争を防ぐ為にも、この事は公にする訳には行かなかったのだ。
ティアを連れ戻す為に人を差し向けたが、その行方は突き止められなかった。

 

ティアが孤児を装ってオラクルに入団してすぐ、リグレットがそれに気付いた。
ヴァンの計画に賛同し協力してきたリグレットには、ティアはヴァンが計画を続行する為に天から寄こしたのだとしか思えなかった。
そうして、亡きヴァンへの妄執は深まり、ティアを加えて計画を続行する事で己の愛は昇華されるのだと思い込んだ。
リグレットもラルゴも、主君と定めたヴァンが預言に詠まれた存在によって死に至らしめられた事で、預言に対する憎しみはよりいっそう深まっていた。

主席総長になっていたリグレットはティアを引き取り、ティア・オスローを名乗らせて育てた。
そして、兄を殺したのは預言に詠まれたものであると話し、預言に対する憎しみを吹き込んだ。
預言を覆して世界を救おうとした英雄を、預言が殺したのだとティアに言い続けた。
そしてティアは、それを信じた。
兄の代わりにリグレットを妄信し、厳しい訓練を耐え、数年後には導師イオンの導師守護役にアニスと共に任命された。

「いよいよ計画の開始ですね、リグレット総長!」
ティアの顔は誇りに輝いていた。それに対するリグレットの顔も。
「ああ、これであの方も喜んでくださる。ティア、やっと兄の仇が討てるぞ。」
「はい、頑張ります。」

 

嬉しそうに笑い合う二人の女を、教会の尖塔の上から赤い髪の男が見ていた。
皮肉気に顔を歪めた男は、深淵の瞳を嘲りに細めた。
「くっくく・・・なあ、世の中で一番始末に負えないモノを教えてやろうか? ・・・それはな、自分が正しいと思い込んでいる狂信者だよ。」
男は顔を上げ、遠くバチカルの方角を眺めた。
「待っていろ、ルーク・・・・・・もうすぐ、全てが始まり、そして終わる・・・」
男の姿は薄く光り、大気に紛れるようにその場から消えうせた。

 

そして、運命の時が巡ってくる。

 

 

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