忍者ブログ
同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by tafuto - 2008.01.14,Mon

 ※残虐描写あり       

                

過去に跳んだアッシュは、コーラル城に来ていた。
『ルーク』が死に、『アッシュ』と『ルーク』が生まれた日だ。
ローレライから力を奪ったアッシュは、超振動を制御する事によって空間の転移を可能にしていた。
ふと集中すると、レプリカの元へ跳躍する。


いきなり表れた人影に、作業していた科学者や用心棒達が色めき立つ。武器を手にこちらへと向かってくる者たちを、アッシュは無造作に切り捨てた。手足や首がその場に散乱する。
悲鳴を上げて部屋から逃れようとする者に手を翳すと、その身体は内側から弾け飛んだ。
血と肉片が次々と壁を染め上げる。
邪魔者が全て居なくなるのに、10秒も掛からなかった。

「ルーク・・・迎えに来たぞ・・・」


生まれたばかりの澄んだ瞳がアッシュを捉える。
そこには、何も無かった。
人形のように横たわるレプリカと視線を合わせたアッシュは、その無垢な眼が告げる真実に絶望した。

・・・・・・何もかもが遅すぎた。 半身がこの手に還る事は、もう、二度と、無い。

 

 

狂人の描いた抽象画の様な赤い部屋に立ち尽くすアッシュに、微かな声が届く。
レプリカがアッシュを見つめたまま、吐息と共に声を出している。
呆然と近寄りながら、アッシュはレプリカの髪に触れた。そのまま頬に手を滑らせる。

・・・・・・暖かい・・・生きている。

「・・・・・・お前は生きているんだな・・・・・・なら、お前は生き続けろ。」

その為なら、何でもしてやるから。
俺の全てをお前にやろう。

ゆっくりとレプリカを撫でながら、アッシュは呟いた。
その瞳はまるで深淵を呑んだように暗く濁っていた。

 


「な・・・これは何事だ! お前は・・・!」
ゆっくりと振り向くアッシュの眼は、かつての師匠の姿を捉えた。
己と半身を利用しつくし、死に追いやった原因となる者が。

「ヴァンデスデルカ・・・憎悪と妄執に捕らわれた、愚かな復讐者。お前は生かしてはおかない。」
「くっ・・・!」
素早く剣を抜いて切りかかってきたヴァンを、片手の剣で止めるとアッシュは嗤った。
数合切り結ぶと、素早く拾い上げた剣でヴァンの身体を壁に縫い止めた。
ヴァンの絶叫が部屋に響く。
「・・・・・・ルークは誰にも利用させはしない。」
薄く笑いながらアッシュはヴァンの手足を切り飛ばしていった。

 

師匠だったものの成れの果てが、壁に巨大な標本のように飾られるのを、小さな『ルーク・フォン・ファブレ』は息を止めて眺めていた。
何処か現実感は無く、まるで夢の中のように近づいてくる赤い髪の男を眺めていた。
男は暗く濁った瞳で話しかけて来た。

「・・・もう、気付いているんだろう? あいつがただお前を利用しようとして優しくしていた事を。」

少年は、表情を消して微かに頷いた。
少年にも本当は解っていた。ヴァンが自分を必要だと言う陰でどんなに冷たく見ていたか。
たった一人、少年を認め必要だと言ってくれた人もまた、己の力を利用したいだけだったのだ。
科学者や王様や、父親のように。
少年の心の、最後の拠り所だった綺麗な幻想は、粉々に砕け散った。
残骸はほら、あそこに、真っ赤な衣装をまとった滑稽な操り人形のように磔られている。


「俺のように利用される前に、気付けて良かったじゃないか。」

自分の髪をそっと撫でてくる男に、少年は瞠目した。
合わせた瞳の中に、深い深い絶望が見える。それは少年と同じ色を宿していた。
男が詠う様に言葉を紡ぐ。
「お前は良く頑張った。・・・もう、楽になるか?」
優しく撫でてくる手に、涙がこぼれそうになる。・・・・・・初めて、理解された。

「お前はずっと死にたかったんだろう?」
「・・・・・・何で、知ってるんだ。」
呆然と呟く少年に、男は穏やかな笑みを浮かべた。
「俺はお前だからな。・・・・・・全てを恨み、憎んで、燃え滓として生きていくより、お前がまだ『ルーク』の内に殺してやるよ。面倒な事は全部俺が引き受けてやる。」

その言葉に、少年の心は安堵に満たされた。もう、頑張らなくて良いのだ。
「俺は・・・もう死んで良いのか・・・?」
「ああ、もう休め。」
ホッとした様に笑って眼を閉じた小さな『ルーク』の胸にアッシュは剣を突き入れた。

「お前の事なら、何でも解るさ・・・・・・俺を一番殺したかったのは、俺自身だ。」

声も無く崩れ落ちる小さな身体。
その身体をそっと抱きとめる。
アッシュは第二超振動でその身体ごと全ての身体構成音素を消失させた。
これでもう大爆発が起きる事は無い。

「・・・お前はルークを傷つけるだろう?」   (おれがそうしたように)

昏い深淵の色を映した瞳を微かに細めてアッシュは嗤った。

 

 

ジョゼットがふと気付いた時、そこはカイツールの軍港だった。
慌ててカレンダーを確認すると、10年前、ちょうど誘拐されたルーク様が発見される前日の事だった。
軍港の東にあるコーラル城でルーク様は発見されたのだ。・・・ヴァン謡将によって。
今なら全てが仕組まれていたのだと解る。誰も彼もが、本当に愚かだった。

この時期自分はカイツールに駐屯していた。今日は数少ない休日で、軍港まで買い物に来ていたはずだ。
今ならヴァン謡将の企みを暴く事が出来るかもしれない。
ジョゼットは宿に戻ると、同僚の兵士に話しかけた。
「コーラル城で、何か光ったような気がする。無人のはずの城に光など、不審すぎる。貴方はすぐ上官に報告をしてくれないか?私はちょっと様子を見てくるから。」
危険だという同僚の言葉を振り切り、応援を呼ぶ事を約束させると、ジョゼットはコーラル城へと騎獣を向かわせた。


コーラル城には何度か入った事がある。ジョゼットは迷わず、奥の部屋に足を進めた。
奥まった場所にある、フォミクリー装置の設置されている部屋から微かな歌声が聞こえてくる。
注意深く部屋に踏み込んだジョゼットはその場に立ち竦んで絶句した。
足が震え、無意識に手が口元を覆った。

・・・・・・赤い、部屋だった。

中央に、愛しげにルークを抱えたアッシュが優しく髪を梳きながら小さく歌っている。
その歌が、ふっと止んだ。
「誰だ。」
ゆっくりと振り返ったアッシュの瞳を見たとき、ジョゼットはもう全てが遅かったのだと悟った。
ふたつの深淵が、そこに有った。

 

「お前も、ルークを利用しようとするのか・・・?」
ゆらりと立ち上がり、剣に手をかけるアッシュに、ジョゼットは叫んだ。
「アッシュ殿! 私はローレライに頼まれここに来た。貴方とルーク様を助けろと!」
瞳を向けられるだけで戦慄する。気に障れば一瞬で殺されることが解る。
アッシュは動きを止めると、じっとジョゼットを眺めた。
「・・・お前はジョゼット・セシルか。お前も未来から跳んで来たのか。」
「・・・・・・そうだ。」
声が震える。ジョゼットはきつく拳を握ると、無理やり平静を装った。
「これは貴方が行ったのか?」
「ああ。・・・ルークを貶める者は全て殺してやる。」
うっとりと笑うアッシュに、身体の震えが収まらない。

「お前はルークを助ける為に来たのか?・・・それならこいつを預けよう。お前はルークを守れ。」
アッシュは抱いていたルークをジョゼットに託した。
「俺の事は誰にも話してはならない。・・・ルークにもだ。」
うっすらと笑ったアッシュは、光をまとって姿を消した。消える間際に、微かな声が残された。

(決して、誰にもこいつを傷つけさせるなよ・・・・・・俺の邪魔をするなら、お前も殺す。)


同僚が応援の兵士を連れて部屋に入って来るまで、ジョゼットはルークを抱き締め蹲ったままその場を動く事が出来なかった。

 

 

PR
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
はくしゅ
気に入って下さいましたら、 ぜひぽちっとな
プロフィール
HN:
tafuto
性別:
女性
自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

当家のPCとセキュリティ
Windows Vista  IE8
Norton Internet Security 2009
GENOウィルス対策↓
Adobe Reader 9.4.4
Adobe Flash Player WIN 10,3,181,14
メールフォーム
カウンター
アクセス解析
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]