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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.01.21,Mon

                 ※大変、血まみれな回です。ご注意!

 

 

光の王都の玉座では、今まさに開戦の話し合いが行われていた。
「預言どおり、アクゼリュスは崩落しましたぞ!次はキムラスカの未曾有の繁栄が待っておるのです!」
聖職者の服を着た太った男が、唾を飛ばしながらしゃべっている。
玉座の王も機嫌良く相槌を打った。
「のう、クリムゾン。兵の準備は万全であるか?」
「はっ、ルグニカ平野に集結しつつあります。」
「そちの息子には気の毒だったが、これもわが国の繁栄の為。必要な犠牲だったのだ。」
「・・・名誉な事と、息子も思う事でしょう。」
眼を伏せたクリムゾンが、国王に追従する。その目が見開かれた。

「ルーク・フォン・ファブレは生きているぜ。」

「何者だ! 衛兵、何をしている!」
その場が騒然となり、衛兵が群れを成して駆けつけてくる。
クリムゾンに声をかけた男は、無表情に剣を一閃させた。絶叫と共に兵士の手足が飛び散る。
「ヒィィ!」
モースが腰を抜かしてその場にへたり込んだ。

「何者だ。 お前の持つその色・・・王家の縁者か?」
クリムゾンがインゴベルトを庇って前に出た。剣の柄を握っている。
「俺は誰でもないさ・・・・・・預言は覆されたぜ、ルークは生きている。まだ戦争を望むか。」
「で、でたらめを申すな!預言は絶対なのだ!」
「うるさい、少し黙れ。」
腰を抜かしたまま喚くモースを、虫けらでも見るように眼をやった男は、無造作に剣を振った。
モースの顎から上が放物線を描いて飛んで行く。痙攣した身体はすぐに動かなくなった。

「預言に踊らされる愚かな操り人形ども。生贄のルークに責任を全てを押し付け、滅びると解ると掌を返してルークに縋った卑怯者。」

男が一歩踏み出した。
クリムゾンが剣を抜き、気合と共に斬りかかる。男はそれを軽々とかわすと、クリムゾンを袈裟懸けに切り下ろした。
「老いたな・・・・・・父上。」
男の小さな呟きに、クリムゾンは目を見開いた。
(ルー・・・ク)
ドサリと倒れた身体は何かを呟きかけ、そして動きを止めた。


「止めろ、来るでない!」
震えながら王座に縋りつくインゴベルトは上ずった声で叫んだ。
「衛兵はおらんか!誰か!」
男はゆっくりと近づいて来る。
「誰もいないさ・・・・・・お前に味方する愚か者など、とっくに消してやった。」
インゴベルトの襟首を掴んで王座から引き離すと、足元に投げ捨てた。
「お前はただの、愚かな老人だ。・・・王座になど相応しくない。死ね。」

水袋を投げ捨てたような音が響いた。
アッシュは転がってきた王冠をつまらなそうに蹴飛ばすと、振り向きもせずにその場を後にした。

 


重症の瘴気障害患者をセントビナーで降ろしたタルタロスは、テオルの森にほど近い所で停止した。
ルーク一行を降ろした後、アクゼリュスの住民をエンゲーブに送り届ける為だ。
一刻も早くグランコクマに着きたいルーク達は、先に徒歩で向かうつもりだった。
ルーク達一行とアスランはテオルの森を進んでいた。

ふとティアに話し掛けられたガイが道端の草むらを覗き込んだ。ティアが何か落としたらしい。
屈み込んだガイは、小柄な人影に攻撃されとっさに跳び退った。
腕に焼けるような痛みが走る。
「誰だ!」
ガイの声に、戦闘体制をとる一行の前に、仮面で顔を隠した少年と大柄な髭の男が現れる。
「預言に死を詠まれていた聖なる焔の光が、何で生きてんのさ。」
ルークを庇って、嘲笑う少年の前に出たジョゼットは、気付けなかった。
ルークの後方で腕を押さえていたガイの眼が憎悪に暗く光った事に。


「うわっ!何をするんだ、ガイ!」
ルークの悲鳴が聞こえて思わず振り返ったジョゼットに、髭の男の大鎌が振り下ろされる。
とっさに地に転がってそれを避けたジョゼットは、ガイがルークに剣を向けているのを眼の端に捕らえた。
アスランは仮面の少年を相手取っており、ジェイドはジョゼットを庇って髭の男へと譜術を放っている所だ。ティアは導師を安全な所に誘導している。
(しまった、間に合わない!)
せめて盾になろうと走り出したジョゼットの目前で、ガイの剣がルークに振り下ろされた。


信じられない気持ちで見開いたルークの目に、スローモーションのように剣が迫る。
その軌跡は、直前でありえない方へと曲がっていった。
剣をつかんだガイの腕が、握った剣ごと飛んで行く。少し遅れて血が噴き出してきた。
ガイの絶叫が辺りに響き渡る。

ルークは硬直していた。
飛び散る赤。アカ。自分を庇うようにガイを遮った者の鮮血の色の髪。アカ。
ガクガクと震え始めたルークに、頭からマントが被せられた。
「・・・見るな。」
掠れた低い声がささやく。ルークは身動き一つ出来ずに、暗いマントの中でただ震えていた。
足音が離れて行く。

「こいつを傷つけるものは許さない。」
ザシュッと鈍い音がすると、ガイの絶叫が止まった。
ナタリアの悲鳴が聞こえる。
「ガイ! 貴方、なぜガイを!」
「王位継承者に剣を向けた者を生かしておけると思っているのか。それより、あいつらが逃げるぞ。」

髭の男が撤退を始めている。仮面の少年が隙を作る為に飛び出した。
斬り飛ばしたガイの腕を踏みつけて剣をもぎ離した男は、それを無造作に投げた。
剣は、アスランに蹴りを放った後跳び退ろうとした仮面の少年の胸を、真っ直ぐに貫いた。
落下した少年が血を吐く。
それを振り返りもしないで、男は身を翻した。
通りすがりざまに、マントを被ったまましゃがみこんでいるルークの頭をそっと撫でていった。

 


誰もが無言だった。今あった事が、理解できないのだ。
何故ガイが。襲ってきたのは何者だ。それにあの男は・・・・・・

やっと動けるようになったジョゼットが、ルークの元に這うようにして向かう。
「ルーク様・・・お怪我はありませんか?」
硬直しているルークをそっと立たせると、抱きしめながら血の無い方へといざなう。
「怪我、は・・・無い。ジョゼット・・・あれは、誰?」
マントをそっと外しながら、ルークが呟く。
言ってはならないと言う“彼”の言葉が蘇る。ジョゼットはその問いに答える術が無かった。
悲痛な顔で俯くジョゼットを、ルークはただじっと見ていた。


「ま、まあ!血が怖いなんて、人の上に立つ者として、恥ずかしいですわよ。」
ナタリアが、空元気を振り絞るようにルークに話しかける。
しかしジョゼットは怒りに震えた。あのコーラル城の惨劇を見ていない者が何を言うのか!
キッと睨みつけるジョゼットをなだめる様にルークがナタリアに話しかける。
「ナタリアは知らないと思うけど、俺が誘拐されてコーラル城で発見された時、辺りは血の海だったそうだよ。俺は何もかも忘れてしまったけど、赤い物が怖いんだ。・・・思い出すなと言われているのは、だからなんだよ。」
疲れた様に小さく微笑むルークを見て、青褪めたナタリアは口を覆った。
「ご、ごめんなさい・・・わたくし・・・」


胸を貫かれた少年の死体を調べていたアスランが、驚きの声を上げた。
少年の身体が、光の粒になって消えてゆく。
ジェイドが拳を握り締めて呟いた。怒りで声が震えている。
「彼はレプリカだったのですか・・・・・・一体誰が、あの禁忌を蘇らせた!」

駆けつけてきたテオルの森の兵士達に後を託し、ルーク達は急いでグランコクマへと向かった。
ルーク達を安全な所に保護しなければ、動きが取れないからだ。
イオンとティアがいない。ティアが導師を誘導していたというジョゼットの証言により、周囲を探索したが発見する事が出来なかった。あの騒ぎに乗じて誘拐されたかもしれない。
襲って来た者は、服装からダアトの六神将だと判明した。ダアトの内部分裂も疑われる。
わからない事だらけだった。

 


グランコクマに入ったルーク達一行は、すぐに王宮に案内された。
外壁に水の流れる美しい謁見の間の王座に、ピオニーが待っていた。
ルークの顔を見て一瞬顔色を変えたピオニーは、ルークの怪訝そうな表情に苦笑を洩らした。
「いや、すまん。似ている奴を知っていたものでな。ようこそ、ルーク・フォン・ファブレ。」
「こちらこそ、お初にお目にかかります。インゴベルト王より親善大使の任を承りました、ルーク・フォン・ファブレです。以後よしなに。」

ルークの美しい礼に眼を見張ったピオニーは、破顔した。
「ご無事で良かった。貴公に何かあったらキムラスカに顔向けできない所だったぞ。詳しくは報告を受けてからになるから、今日はゆっくり休んでくれ。」
「・・・あの、アクゼリュスや導師の事は?」
戸惑ったようなルークに、ピオニーは穏やかに微笑みかける。
「アクゼリュスは避難も完了していたし、マルクトの災害にキムラスカの親善大使を巻き込まなくて何よりだった。導師の事も、首都の膝元でマルクト兵士の目の前で居なくなったのだ。貴公の責では無い。むしろ良くやったと誉めたいくらいだぞ。」
ピオニーに笑顔で見送られ、ホッとした表情のルークはジョゼットやナタリアと退出した。


「さあ、報告を聞こうか。こっちも話すことがある。」
別人のように真面目な顔になったピオニーが、ジェイドを振り返った。

 

 

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