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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.01.22,Tue

 

報告を受け、考え込むピオニーの眼が人影を捉えた。ジェイドが槍を出し警戒する。
「ジェイド、彼は敵ではない・・・今のところは。」
小声で注意したピオニーは、男に向かって話しかけた。
「よお、アッシュ。丁度良い、聞きたいことがあるんだが。」
あらためて正面からアッシュと呼ばれた男の顔を見て、ジェイドは驚愕した。
ルークにそっくりだ。年齢はこちらの方が上のようだが。
暗く濁った瞳が、ジェイドを見て皮肉気に細められた。血で染めたような深紅がさらりと肩を流れる。

「何だ、導師の事か?あれを攫ったのはリグレットに命じられたティアだ。リグレットは外殻大地全てを崩落させようとしている。パッセージリングに手出しする為に導師を攫ったんだろう。」
「何、それはまずいじゃないか!早く見つけないと。」
アッシュはピオニーの言葉に嘲笑するように鼻を鳴らした。
「ふん、ほっとけ。あんな小物どもに何が出来る。」

聞きたいのはそれだけか。そうジェイドを見たアッシュに、問いかける。
「何故ガイはルークを襲ったのです。」
「カースロットを知っているか? 人の憎悪を増幅するダアト式譜術だ。ガイはそれを掛けられた。あいつはガルディオスだからな、ファブレが憎かったんだろうぜ。」
暗く嗤うアッシュに皆声が出ない。

「聞きたい事はお終いか?ならこっちの話を聞け。・・・ルークを傷つけるなよ。あいつがキムラスカの王だからな。そのうち知らせが届くだろう。」
その言葉に、背筋が凍ったピオニーが声を振り絞った。
「まだナタリア殿下が居るではないか・・・・・・」
「あんな女、王家の血など一滴も引かない犯罪者の娘に過ぎない。ルークを襲った髭の大男があいつの父親だ。・・・あんな愚かで鬱陶しい女、ルークの伴侶には相応しくない。ナタリアは先にキムラスカに送り返せ。俺はそれを言いに来たんだ。」

「・・・何を、するつもりなのです。」
きつい視線を向けたジェイドをアッシュは嘲笑った。
「知りたいのか?ネクロマンサー。聞かない方が良いんじゃねぇのか? 後になってから『確証が持てませんでした』とか言ってみろよ。」
「貴様!」
「止めろ、ジェイド!それは俺たちが口を出してはいけない問題だ! ・・・すまないアッシュ殿。情報に感謝する。ナタリア殿下は即刻キムラスカにお帰り願おう。」
嘲笑に激高するジェイドをピオニーがとっさに止めた。
表情を消したジェイドを愉快そうにながめると、アッシュは歩き出した。
「・・・・・・忘れるなよ。俺はルークを傷つける者を許さない。」
くっくっと響く低い笑い声が消えるまで、誰も動く事が出来なかった。

 


疲れきったルークが微熱を出し、与えられた部屋で仮眠を取っている間、ジョゼットは続き間の個室に控えていた。一人になりたかったのだ。
身体は休息を欲しているのに、乱された精神が眠りを許さない。
ベッドに腰を下ろし、顔を覆って蹲る。

「ジョゼット。」
不意に掛けられた声にびくりと顔を上げる。 ・・・・・・“彼”だ。
「お前はよくやっている、これからもルークを守れ。あいつはもう、王なのだから。」
かけられた言葉の意味を一瞬考え、ぞっ、とした。
「インゴベルト様を・・・どうなされたのだ。ファブレ公は・・・」
震える声の問いに、アッシュはつまらなそうに答える。
「預言に踊らされて戦争を望む愚か者を、一掃してやっただけだ。」
「・・・!!」

青褪めて目を見開くジョゼットに、アッシュは心底不思議そうに尋ねる。
「預言に頼りきりの愚かな王が必要か? 息子を生贄にするような父親を残しておいて、ルークが幸せになれると思うのか? 利を貪るだけの頭の固い貴族どもなど、居ない方が国が荒れないだろう?」
くすくすと笑いながら、アッシュは隣室へと足を進めた。
「ルークの治める国に、愚か者など必要ない。」


静かに隣室の扉を開くと、薄暗くした部屋のベッドにルークが眠っているのが見えた。
アッシュはゆっくりとベッドの傍らに跪き、布団に投げ出されたルークの右手を取った。

「お前に祝福を・・・・・・」

ルークの指にそっと口付けるアッシュを、声も無くジョゼットは見つめていた。
朱金の光がアッシュから溢れ、一ヶ所に集まって行く。
唇を離すと、ルークの指に朱金に光る指輪が現れた。

静かにベッドから離れたアッシュは、そっと呟いた。
「この指輪は音素乖離を防ぐ。これから俺がすることからこいつを守るだろう。」
動く事が出来ないジョゼットを後に残して、アッシュは部屋から出て行った。

 

部屋から出て一人になったアッシュは、苦痛に膝を付いた。
レプリカであるルークの音素乖離を防ぐ為、自分の音素を引き剥がして指輪としてルークに渡したのだ。
あの指輪をしている限り、ルークが乖離を起こす事は無い。たとえ死んでも消えてゆく事はない。
ルークは人として生き、死ぬ事が出来る。

(おまえに、俺の全てをやろう・・・)

深淵を呑んだ瞳が哀しく微笑った。

 


王命の無いまま城を飛び出したナタリアは、急ぎバチカルへと送還される事になった。(というのは表向きだが。キムラスカからあるという『知らせ』の前に帰さねば、“彼”との約束を破る事になるからだ。)
ぷりぷりと怒りながらバチカル港へ降り立ったナタリアは、迎えの兵士の混乱した様子に気付かなかった。

王宮前で見慣れない貴族がナタリアを迎えに走ってくる。
「あら、大臣達はどうしましたの?」
「姫さま! ご無事のご帰還をお喜び致します。・・・こちらへどうぞ。お話せねばならない事がございます。」
ナタリアが案内されたのは、城にある聖堂だった。
たくさんの棺が並んでいる。


立ち竦むナタリアに、貴族は告げた。
「インゴベルト陛下を初め、主だった貴族はみな殺害されました。残っている王位継承者はルーク様だけなのです。」
「お父様が・・・!そんな事、嘘ですわよね・・・」
ふらつくナタリアを抱え、貴族は一際立派な棺の前に立った。
「ああ・・・お父様!」
棺に縋りつくナタリアを、貴族は痛ましそうに見つめ、ためらいながら口を開いた。
「ナタリア様・・・先ほど私は、王位継承者はルーク様だけ、と申しました。・・・・・・貴方様には、王家の血が流れていない事が判明したのです。乳母が、貴方は乳母の娘の子であると・・・」
泣き崩れていたナタリアは、その言葉に呆然と振り返った。
「嘘をおっしゃらないで!」
「・・・証拠が、あるのです。死産した赤子の遺体が発見されました。」
言い辛そうな貴族を突き飛ばしてナタリアは叫んだ。

「嘘よぉ!」


そのまま聖堂を飛び出し、自室まで駆け戻る。
メイドを追い出して部屋の鍵をかけ、ベッドに突っ伏した。
「みんなで嘘をついているんだわ!お父様はわたくしがお母様とお父様にそっくりだって言って下さったもの。」

「聞きたい事しか聞かない愚かな所はそっくりだな。」

ナタリアはびくりと顔を上げた。
テラスに立っていた赤い髪の男が、歌うように呟いた。
「・・・いつか俺たちが大人になったら、この国を変えよう。貴族以外の人間も貧しい思いをしないように、戦争が起こらないように。死ぬまで一緒にいて、この国を変えよう・・・」
ナタリアは飛び起きて、テラスへと走り出た。
「ルーク!思い出して下さったのね!」

そこにいたのは、ガイを殺したあの男だった。
「貴方は・・・貴方が本当のルークでしたの?」
おずおずと近づくナタリアを、男は嘲笑った。
「またルークを偽者と言うのか・・・偽姫の分際で。なぁ、あの時のルークがどんな気持ちでこの言葉を言ったかわかるか? 辛い人体実験を民や国の為だと耐え続けた子供の、死にたがる自分への戒めの言葉だったんだぜ。・・・・・・お前は浮かれていたようだけどな。」


青褪めるナタリアの手を取り、男はテラスの手すりにナタリアを腰掛けさせた。
まるで口付けでもするかのような体勢に、ナタリアの顔が赤くなる。
男が顔を寄せて囁いた。
「お前のような愚かな女はルークに相応しくない。目障りだ、さっさと消えろ。」

そのまま、とん、と肩を押した。
ぽかんと口をあけたナタリアが真っ直ぐに落ちてゆく。ドレスがふわりと広がった。

遠くで、ぐしゃりと言う音が響いた時、そこにもう男はいなかった。

 


眼を覚ましたルークが己の指にある見慣れない指輪に首をかしげていると、ジョゼットが微笑んで言った。
「それは守護の指輪です。貴方を心配する方が下さいました。どうかずっと着けていて下さい。」
自分の髪と同じ色の宝石をくり抜いたようなそれはとても美しく、ルークは心が温かくなるのを感じた。礼を込めてそっと指輪に口付ける。
「くれた方にお礼を言いたいな・・・」
「ルーク様がお元気ならば、その方も嬉しいでしょう。」
少し哀しげなジョゼットの笑みに、ルークは『誰がくれたの?』と言う言葉を呑み込んだ。

・・・きっと、答えてはもらえない。

 

 

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