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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.03.01,Sat

 

俺はダアトで拾われた、って事になってる。
なぜなら俺には10才(推定)以前の記憶が無いからだ。
ある日眼を覚ましたら、すっかり何にも覚えちゃいなかった。
銀髪の煩い男がしきりに話しかけてくるからちょっと話したら、そいつは慌ててどこかにすっ飛んで行った。
俺は言葉と、日常生活が何とか出来る位の事しか覚えてなかったんだ。

次にはヴァンと言う男を連れてきた。
どうやらヴァンはダアトの近郊で俺を拾ったらしい。意識不明だった俺を治療していたと言う。
「おまえはどうやら孤児らしい。記憶を失うほど辛い眼にあったのだろう。・・・どうだ、行く所が無いなら私の元で働かんか? きちんと教育も受けさせてやるぞ」
何も覚えて無くても、ここから放り出されたら野垂れ死ぬだろう事は俺にもわかる。
ヴァンの言葉に俺は速攻で頷いていた。


俺はアッシュと言う名を貰って、しばらくは下働きみたいな事をして過ごしていた。
ヴァンはローレライ教団のけっこう偉い奴で忙しいらしく、基本俺はほったらかしだ。
ヴァンに引き取られた俺はやっかまれて苛められたりしたが、そんなの構っちゃいられなかった。
世界の名も国の名も、文字さえも忘れていた俺には覚える事がたくさん有ったからだ。
こまごまと雑用を押し付けられながら、空いた時間に俺は銀髪の男(ディストと言った)の所で読み書きを習った。

ちなみに俺は左利きだ。ペンを持とうとしてとっさに左手が出たから、きっとそうだと思う。
しかしあまりに下手な字なんで、今まで俺は読み書きを習った事が無いんだろうと思っていた。
一年もすると読み書きもけっこう達者になって、難しい本も読めるようになってきた。まあ、相変わらず字は下手だが。
勉強させてもらえるうちに出来るだけ色々学んでおかないと、ガキが一人で生きてくのは大変だからな。
ここから追い出されても生きていけるように、働きながら俺は夢中で勉強した。

 

俺がダアトに来て1年半ほどたった頃、ヴァンが俺に剣の稽古をしろと言ってきた。
ヴァンは俺を神託の盾騎士団に入れたいらしい。騎士団員は(比較的)高給取りなんで、俺は一も二も無く頷いた。地位が上がれば食いっぱぐれる事は無いからな。

剣もやっぱり素人らしく、利き腕でも上手く扱えない。
大人に混ざってへたくそな素振りをする俺は、散々馬鹿にされるか生意気だと叩きのめされるかだったが『目指せ高給取り!』精神で頑張った。
ガキになんか誰もちゃんと教えてくれないので、変な癖のある自己流の剣になっちまったが、素早さを生かした先手必勝の俺はけっこう強くなっていった。

ある日試合中に利き腕を強かに打たれた。仕方なく右手に剣を持ち替え、相手に向かって行った。
・・・あれ? 身体がスムーズに動くな。
剣先がぶれない綺麗な動きで俺は相手から一本奪った。
試合のあと、左手が腫れ上がっていたので右手で字を書いてみた。何か凄く綺麗な字が書けた。
もしかして俺は右利きだったのか! と思ったが、とっさに出るのは左手だ。
・・・まあいいか、両方使えるにこした事は無いからな。
俺は気にしない事に決めた。正式な書類なんかは右で書けばいいから便利なもんだ。

 

ダアトに来て3年目、俺は神託の盾の試験に受かった。これで晴れて騎士団員だ。下っ端と言えどもちゃんと給料は出る。嬉しかった。

ある日教団内部の歩哨をしていたら、緑色の髪のガキに話しかけられた。
ピンクの髪の女のガキを連れている。どっかの貴族の子供が迷ったか?
そのガキは俺に、訳のわかんねぇことを訊いてきた。
「君がアッシュ? ねえ、預言についてどう思ってる?」
何で俺の名を知ってるんだこいつ、と思いながら俺は素直に答えた。
「預言? どうも思わねぇ。そんなもん詠まれた事無いからな。預言なんて詠まれたって、給料が上がるわけじゃねぇだろ? そんな事に金を使うなら、俺は旨いもんでも食いに行くぜ」
俺の言葉にそいつはきょとんとした後、腹を抱えて爆笑した。
ヒーヒー笑い転げてるガキに、心配そうに女のガキが話しかける。
「イオンさま・・・大丈夫、ですか」

イオンだってぇ! やばい、俺は教団の導師に今何て言っちまったんだ。クビになる!
慌てて跪く俺に、笑いすぎて涙を浮かべた導師は言った。
「ああ、気にしないで良いよ。立って立って! ・・・気に入ったよアッシュ。そうだよね、普通に暮らしてたら預言なんて要らないよね」
導師は笑いながら俺にひらひら手を振るとお供を連れて行っちまったが、俺は気が気じゃなかった。
しかしその一件後、なぜか俺は頻繁に導師の護衛に付く事になった。

歳も近い俺たちはすぐに仲良くなった。イオンとアリエッタしかいないときはタメ口だ。
時にはアリエッタと一緒に勉強させてくれたり、本を貸してくれる。
俺は下働き生活で培ったイジメ返し・嫌がらせ倍返しなんかを教えたり、イオンの慇懃無礼10倍返しなんかを教わったりして楽しかった。


俺は剣の稽古も毎日熱心にしていたから、やがてそこらの雑兵より強くなった。
ついに騎士団の剣の大会で上位に食い込むようになると、ヴァンは色々話しかけて来る様になった。
どうもヴァンは預言が嫌いらしく、預言からの脱却を図りたいらしい。預言を覆す為に俺に手を貸せと言ってくる。
俺は預言なんて心底どうでも良かったから、適当に頷いておいた。
このごろ体調を崩しがちなイオンの側に早く行きたかったんだ。

アリエッタを使いに出し、二人きりになった部屋でやつれたイオンは俺に囁いた。
「アッシュ・・・僕には死の預言が詠まれているんだ。でも僕はこの預言を覆したい。だからヴァンに協力したんだよ。アッシュ、・・・もうすぐ僕が死んでも、アリエッタには知らせないで。兄弟たちが代わりにイオンになるから」
俺はびっくりしてイオンの手を握り締めた。痩せて力の無い手に悲しくなる。
「代わりは代わりであってお前じゃないだろ! いくら似てても別人だ。・・・そんなのアリエッタもお前も、身代りにされる奴もかわいそうだ」
目を見開いたイオンは、しばらくして声を絞り出した。
「・・・・・・そうだね。・・・別人か・・・ アッシュはいつも真っ直ぐに僕の考えを変えてくれる。僕の兄弟たちをよろしく頼むよ。・・・そして君は預言なんかに負けないで」

アリエッタが戻ってきたので話はそこで終わりになった。俺は部屋を出て、廊下の警備に付いた。
かすかにアリエッタの泣き声が聞こえてきた。イオンから全てを聞いたのだろう。

 

順調に昇進していた俺は、大抜擢されて特務師団を任されることになった。若すぎる師団長に喧嘩を売ってくる奴もいたが、叩きのめして従わせた。今ではもう俺に勝てる奴は教団で数人だ。
用兵術や戦術、戦略の勉強も頑張っていたから特務師団はそれなりに成果を上げ続け、俺は六神将として『鮮血』の二つ名が付いた。(給料も上がった)
六神将にはアリエッタも入っていた。アリエッタが導師守護役を外されるなんて、やっぱりイオンは死んでしまったのか。俺は黙って泣きそうなアリエッタを撫でてやった。


参謀にシンクと言う名の仮面で顔を隠した男が入った。髪の色とか体型がイオンそっくりだ、イオンの兄弟かも知れねぇ。俺は人気の無い所でそいつに訊いてみた。
「よぉ、シンクって言ったか。おまえ前のイオンの兄弟か?」
「ちょ・・・何でそれを知ってんのさ!」
そいつは慌てたように掴みかかってくる。ああ、秘密だったっけ?
「いや・・・イオンに兄弟たちを頼むって言われたからさ。今導師してるのもイオンの兄弟だろ?」
「イオンが・・・僕たちを頼むって・・・ そう言ったの? 何で」
呆然としているそいつに困惑して言葉を返した。
「何でって・・・兄弟だからだろ? 身代りしてたって別人じゃねぇか。心配だったんだろ?」
きょとんとしていたシンクはいきなり笑い出した。似てねぇと思ったけど、こう言う所はイオンとそっくりかもしれない。

シンクはひねくれた野郎だが、こいつと口喧嘩するのは嫌いじゃない。毒舌を叩き合ってストレスを発散したら、タッグを組んでイヤミな狸野郎(モース)に悪戯を仕掛けたりすると楽しい。
まあ、悪友って奴だ。
あんまりやりすぎると、リグレットに譜銃をぶっ放されたりラルゴに諌められたりしたけどな。

同僚の六神将は皆一癖も二癖もある奴ら揃いだが、面白い奴らだ。
リグレットは思い込みが激しくてちょっとヒステリー気味だがけっこう面倒見が良い。どうやらヴァンに惚れてるらしくて、たまに(命がけで)からかうとスリルが味わえる。
ラルゴには用兵を習ったり剣の稽古に付き合ってもらったりしているが、どっしりしていて父親ってこんな感じかとも思う。融通が利かないのが難点だが。
ディストには昔から勉強を見てもらっていたが、とにかく煩い奴だ。いつ見ても嬉しそうに高笑いしながらわけのわかんねぇもん作ってやがる。まあ頭は良い奴だが、変人だ。
直属の上司であるヴァンは俺を拾ってくれた恩人だが、いまいち何考えてるのかわからねぇ。
たまに預言からの脱却について俺達に熱く語ったりするが、脱却したかったらグダグダ言って無ぇでさっさとすれば良いじゃねぇか、と思うんだが。
イヤミな狸野郎のモースよりは遥かに付き合いやすいがな。

まあそんな感じで、俺のダアトでの生活はけっこう充実していたわけだ。


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