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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.03.06,Thu

 

アブソーブゲートを後にした時には夜も更けていたので、ケテルブルクに一泊してから和平が締結されるユリアシティに向かう事にした。
(ピオニー皇帝からタダ券貰っていたので)ゆっくりとスパに浸かって疲れを取る。
こんな贅沢、初めてだ。一般庶民にはこんなとこ手がでねぇ。つい鼻歌が出る。
ヴァンの奢りの美味い飯食って、高い酒で祝杯を上げる。
ルークの食い方が綺麗なのにびっくりした。さすが貴族の教育をされた奴だ。
俺は正式なディナーの作法なんてしらねぇからな。
いい感じに酔っ払って、ふかふかのベッドで(ふかふか過ぎるぜ!)ぐっすり眠った。

 

翌朝、皆が揃った所に入ってきた奴を見て、俺たちは硬直した。
誰だよ、あれは!
そいつが話し出す。
「あ~・・・・・・ヴァン・グランツは死んだ。ここにいるのはヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデだ」

一瞬の沈黙の後、大爆笑が響き渡った。

髪をさっぱりと切って髭を剃り、ついでに眉毛も整えたヴァンは・・・・・・何処からどう見ても下っ端の新米騎士だった。 
あんたが髭生やしてた理由が、今やっと分かったぜ!
俺とルークとシンクは、その辺を転がりながら一生分くらい笑って、リグレットに譜銃をぶっ放されてやっと笑いを止めた。(ヴァンのアレはリグレット作らしい)

ルークは床に突っ伏して、時折痙攣している。シンクは仮面をすっ飛ばして涙を拭いている。
アリエッタはぬいぐるみに顔を埋めてプルプルしているし、ラルゴとディストは時々ブホッとか言いながら必死に窓の外を見ている。
俺も笑いすぎでぐったりした。
大地降下の時より消耗したんじゃねぇか・・・?
しょんぼりしたヴァンが、リグレットに慰められている。いかん、また笑いが。

「ヴァン、きっと誰もあんたってわかんねーぜ!」
微妙な表情のヴァンに、俺はイイ笑顔で親指を立ててやった。


アルビオールに乗り込もうとしていた俺とルークを、ディストが呼び止めた。
振り返った俺たちに二つの腕輪が差し出された。
「やっと完成したんですよ。これを着けていれば、大爆発は起こりません」
得意そうな笑顔のディストの眼の下には薄っすらと隈が出来ている。
忙しかったのに、俺たちの為に頑張ってくれていたのか。・・・ありがとう、ディスト。
「ああこれはアンチフォンスロットの原理を応用して・・・・・・」
感動したのも束の間、訳の分からん専門用語の嵐のような得意げな喋りと高笑いが響き渡った。
・・・・・・俺の感動を返せ。

「ディスト、感謝する。・・・疲れているんだろう? 少し休んでくれ」
「ありがとうディスト! やっぱテンサイディストサマだな!」
にっこり笑った俺とルークは、ディストを引き摺ってアルビオールに乗り込んだ。(ディストは『少し寝ろ』と個室に放りこんだ)

「へへ・・・アッシュ、おそろいだな! ・・・・・・良かった、これで二人で生きられるんだ」
「ああ、そうだな」
手首を回しながら嬉しそうに腕輪を見ているルークの頭をくしゃりと撫でる。
良かった・・・・・・お前の存在を乗っ取るなんて事が無くて、本当に良かった。

 


「良く来てくれました。・・・世界を救った功労者たち」
ユリアシティの和平締結の場に、イオンは笑顔で俺達を迎えた。
キムラスカ王とマルクト皇帝、ユリアシティの長が円卓を囲んでいる。
俺達は一斉に跪礼を取り、顔を上げた。
髭を剃ったヴァンを見て、ピオニーが口を手で押さえ下を向いた。肩が震えている。
やっぱりあんたも笑うよな!


「良くやってくれた! これで世界は滅亡を免れたのだな!」
インゴベルト王の上機嫌な声に、珍しく真剣な顔のディストが言葉を返した。
「安心するのは少し早いかもしれません。本来の地表を覆っていた瘴気はいまだ存在しています。外殻大地を降ろした事で瘴気をディバイングラインによって封じ込めはしましたが、数百年もすれば瘴気は地表に出てくるでしょう。これから数百年後を見据えて、人間は瘴気中和の方法を考えなくてはならないのです。戦争なんか起こしている暇はありませんよ」
その言葉にインゴベルト王が微妙な表情になった。・・・こいつ、まだ戦争を諦めてなかったのか。

ピオニー皇帝が爽やかな(わざとらしい)笑顔でインゴベルト王を促す。
「そうだな、その為にも恒久的な和平が必要だ。インゴベルト王、さあ、和平を締結しようではありませんか。これからは協力して瘴気中和の方法を考えなければ」
「・・・うむ、そうだな」
残念そうなインゴベルト王が頷く。

俺たちが見守る中、両国の和平は締結された。
これで、瘴気問題が片付かない限り戦争は起こらないだろう。

 

安心した様に微笑んだヴァンが、イオンに跪いた。
「導師イオン、私にはルークを誘拐した罪、アクゼリュスと落とした罪があります。私がダアトに残っては混乱を招きましょう。どうかヴァン・グランツは瘴気障害で死んだと伝えては頂けませんか」
「そんな・・・ヴァン、貴方は世界を救ったのに・・・」
「いえ、アッシュに諭されなければ、私はきっと世界を滅ぼしていた。そんな人間が人の上に立つ事は許されません。ダアトで私がすべき事はもうありません。・・・私はこれからヴァンデスデルカとして、子供たちに剣でも教えて静かに暮らそうと思います」
リグレットがヴァンに並んで頭を下げた。
「導師イオン、私もジゼル・オスローに戻ろうと思います。そしてヴァンデスデルカに付いて行きたいと思います。どうか我侭をお許しください」

何だ、あんた達いつの間に出来上がってたんだよ。・・・まあ良いか。良かったな、リグレット。
苦笑したイオンが頷いた。
「分かりました。・・・・・・お幸せに、二人とも」

「私もレプリカを作ってしまった罪があります。マルクトに帰って、これから瘴気中和の研究にかかりたいと思います。このサフィール・ワイヨン・ネイスの天才的な頭脳が必要とされていますからね!」
ディストがイオンに一礼した。いちいち一言煩い奴だ。・・・でも頼りになったよ。ありがとな。

皆、それぞれの道に進んでいく。
さあ、俺は何をしようか。気ままに旅でもしてみるか。
まだ行った事の無い所を、ルークにも色々見せてやりたい。きっと楽しいだろうな。
その経験が、こいつが立派な王になる為の糧になれば良い。

 

話が一段落して、俺たちが帰ろうとした時だ。
インゴベルト王が俺とルークに話しかけて来た。
「ルーク、アッシュよ。良くやってくれた、礼が言いたい。シュザンヌも顔を見たがっておる、バチカルまで来てくれんか?」
どうしようか考えているうちに俺とルークはヴァン達と引き離され、バチカル行きの船に乗せられてしまった。問答無用って奴だ。ヴァンに言伝をする暇も無かった。
護衛と言う名の見張りが俺達の船室を固めている。
不機嫌になった俺に、硬い表情のルークが話しかけて来た。
「アッシュ・・・俺、また閉じ込められるのかな? そんなの嫌だよ」
「俺だって真っ平ごめんだ。もしそうだったらさっさと逃げ出してやろうぜ。伊達に六神将なんざやってねぇ」
「そん時は、俺も連れてってくれよな!」
・・・お前は、キムラスカの次期国王じゃないのか? 俺だってお前と居たい。しかし・・・・・・


答えの出ないままバチカル港に着き、俺たちは謁見の間に案内された。
そこには王を初めとしたファブレ公爵夫妻や重鎮達が揃っていた。
「アッシュ・・・いや、ルーク・フォン・ファブレよ。良くぞキムラスカに帰還した。世界を救った英雄が次期キムラスカ国王とは鼻が高いぞ。これからはわが国の為に尽くして欲しい」

インゴベルト王の言葉に俺は愕然とした。
「何を言っているのです! ルークならここにいるでは有りませんか。俺はアッシュです!」
「そこのルークはお前から作られたレプリカだ、王位継承権なぞ無い。ようやく本物のルークが戻ってきたのだ、こんなに嬉しいことは無いぞ」
ルークが哀しそうに唇を噛んだ。ファブレ夫妻は複雑な表情でこちらを見ている。

・・・そうか、あんた達はルークを捨てたんだな!!

俺は怒りのあまりブチ切れそうになりながら、懸命に言葉を絞り出した。
「俺には記憶がありません。孤児として育ってきた俺は、もう王族ではありません。王族として育ってきたルークを放逐すると言うなら、俺も出て行きます。」
「な、何を言うのだルーク。国王になれるのだぞ! 施政はゆっくりと学べばよい。後継者はお前しかいないのだ。ナタリアはすでに廃嫡されておる」
俺の言葉にインゴベルトが慌てる。俺が断るとは思ってもいなかった顔だ。
「ルーク・フォン・ファブレは17で死ぬはずだったんだろう? なら後継者のはずが無い。 だったらいなくても良いじゃねぇか。」
俺はルークの手を取って、ファブレ公爵夫妻を振り返った。

「赤ん坊のようなこいつを、あなた方は以前の俺と比べ、勝手に失望してろくな関わりもせずに育て、予言の生贄にしようとした。記憶を失った俺が戻ってもきっと同じ事をしたんだろう?
俺は王族の教育なんかされてない、ただのダアトのアッシュだ! ・・・あんた達には失望した。こんな所にいられるか。 行くぞルーク!」
「アッシュ・・・うん、行こう!」
俺とルークはもう振り返りもせずに謁見の間を後にした。

背後で慌てたように俺を追えと命じるインゴベルトの声がする。俺たちは走り出した。
前方を塞ぐ兵士を避けて、庭園に飛び出す。そのまま壁に向かって突っ走った。


「ルーク、跳べ!」
「おうっ!」
一足先にたどり着いた俺が壁の前で手を組み膝を曲げる。
ルークが走る勢いもそのままに組んだ手に足をかけると、俺はその勢いを利用して手を跳ね上げた。
高い壁に乗り上げたルークが振り向きざまに俺に手を伸ばすと、間髪を入れず地を蹴ってその手に掴まる。引き上げる力と壁を蹴る力が合わさり、俺たちは壁の上に立ち上がった。
追ってきた兵士たちを揃って振り返りにやりと笑うと、俺たちは壁の向こうへと飛び降りた。
捕まってたまるもんか。こんな所はさっさとおさらばしてやる。

慌てふためく番兵や、昇降機に向かって走ってゆく伝令を次々に追い越して俺たちは走った。
誰も追いつけやしねぇよ。
俺たちを引き止められるものなんか、もうここには何も無い。
閉じ込められるのは真っ平だ。
俺たちは、自由なんだからな!


バチカルを抜け荒地に入っても、俺たちは走り続けた。
そのうち笑いがこみ上げて来て、二人でゲラゲラ笑いながら走った。
息が切れ、へろへろになっても俺たちは笑い続け、走り続けた。

ゼーハーしているルークが笑いながら俺の肩に手を掛ける。
「なあアッシュ! さっきのカッコよかった。『俺はただのダアトのアッシュだ!』ってさ。俺も言って良いかな? 」
「何をだ?」

ルークはバチカルに向かって振り返ると、剣を抜いて王族の証である長い赤い髪をばっさりと切り落とした。堂々と胸を張り、それを空に投げ捨てる。
そして自分の置いてきたもの全てに宣言するように高らかに叫んだ。


「俺はただのルークだ!!」




・・・そうだ、お前はただのルークで、俺はただのアッシュだ。

このまま二人で世界を見に行こうか。そんで時々ヴァンたちの所に遊びに行こうぜ。

 



埃っぽい道がどこまでも続いた草原には、気持ちのいい風が吹いている。

 

俺たちは肩を組んで、笑いながら風の中を歩き出した。

 


                                                                                                                                                    


                                                  END


 

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