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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.05.03,Sat


・・・来た。

かすかに聞こえてきた譜歌にルークはほくそ笑んだ。
周囲の白光騎士達がばたばたと倒れていく。目の前のヴァンがよろけて膝を突きながら襲撃者に叫んだ。
「ティア!」
「ヴァンデスデルカ、覚悟!」
まるで攻撃を知らせるように、わざわざ叫んでティアがヴァンに切りかかる。
(傲慢女、ヴァンを殺す気が無い事なんかバレバレだぜ?)
ルークは木刀を投げ捨て、素手でティアのナイフを捕らえた。掌が切れ、血が滴ってゆく。
ティアが眼を見張った時、光が溢れその場から二人の姿は消え去った。

 

「起きて! 起きてちょうだい」
肩を揺する手と不愉快な声にルークは目覚めた。
「どうやら貴方と私の間で擬似超振動が起きたみたいね。うかつだったわ、あなたも第七譜術師だったのね」
ふーん、とルークはティアを見た。ファブレ家を襲撃した時点で『うかつ』どころじゃねぇだろ、と思いながら。
口には出さない。何度くり返しても、何度言っても解ってはもらえなかったから。
「いつまでも此処に居てもしょうがないわ。川沿いに下れば道があるはずよ、行きましょう。
・・・貴方はルークね? 私はティアよ。貴方を連れ出してしまったのは私の責任だから家まで送るわ」
ティアはさっさと渓谷を降り始めた。


「魔物よ! 構えて!」
繁みから小さな魔物が顔を出す。ティアはルークに指示すると自分は譜歌を詠い始めた。そんなティアを無視してルークは後ろに下がった。
「構えるって、何をだよ。・・・俺は素手。オマケに民間人。責任持って家まで送ってくれるんだろ? ダアトの軍人さん」
ぶらぶらと手を振りながらやる気の無いルークにティアの眦がつり上がった。
「そんな事言ってる場合じゃないでしょう! 戦わなければ死ぬのよ!」
「ああ、だから足手まといの民間人はおとなしく守られてやるよ。素手で何しろって言うんだよ。・・・ナイフも貸してくれなくて結構。俺、ナイフは使えないから。誰かさんの所為で怪我もしてるしな」
自分のナイフを渡そうとしたティアがぐっとつまる。自分が怪我を負わせた事を忘れていたらしい。
ルークは軍人の前衛にされるつもりなどこれっぽっちも無かった。だからあえて木刀を捨てて来たのだ。
あんなちゃちい木刀を持っていたくらいで『剣を持っているなら子供でも戦う』なんて言われるのはうんざりだ。
いざとなったらルークは譜術が使える。繰り返した人生の中で役立つ知識はすべて詰め込んできた。
・・・こいつらに教えてやるつもりは無いが。


魔物が去ってゆくとティアはルークに治癒をかけた。
「怪我をしてるなら早く言ってちょうだい。・・・ナイフを素手で止めるなんて無茶だわ」
「襲撃した奴に言われたくないな」
「あれは、そんなんじゃないわ! 個人的なことよ」
「・・・・・・馬鹿だろ、お前。 ほら、さっさと行こうぜ」
ルークの嘲笑にティアは思い切り噛み付いてきたが、もう気にも留めずにルークは歩き出した。

 

渓谷を降りると辻馬車が休憩していた。
二人を見て始め警戒した御者は、旅人と分かると馬車に乗ってゆく事を勧める。
その金額にティアが思案している所にルークが自分のしていた指輪を差し出した。
「一人分ならこれで足りるか? あ、お釣りはくれよな。あとマントか何か売ってくんないか? ティア、俺は乗っていくからお前は好きにしろよ。」
突き放したようなルークの言葉に、ティアの顔に怒りが浮かぶ。
「ルーク!」
「何? お前の分まで払わせようって言うのかよ? あいにく俺も持ち合わせが無いんだ。自分の分は自分で払ってくれよな」
「・・・・・・」
悔しそうなティアを後目に、ルークはさっさと馬車に乗り込んだ。しばらく思案していたティアは、ペンダントを御者に渡し乗る事を決めたようである。・・・まあ、どうでもいいが。
ルークの目的はアッシュに会うことなので、あえて行き先の勘違いも訂正しない。エンゲーブに行かなくてはアッシュに会えないからだ。
ルークは鼻歌を歌いながら馬車の座席にごろりと横になった。
ただひたすら、あの深紅に会う事が待ち遠しかった。

 

夜半、カチリと何かが填まるお馴染みの感覚がして愛しい半身の声が聞こえてきた。
(おい、今どこだ)
(ん? エンゲーブに向かう馬車ん中。うるせー女がやっと寝たとこ)
(ほっといたって親善大使には任命されるんだ。馬鹿正直に飛ばされたりしないで、あんな女放っときゃ良かっただろうが)
アッシュの呆れたような感情が伝わってくる。ルークは馬車の座席に身を横たえたまま頬を膨らませた。
(せっかくアッシュに会えるチャンスじゃんか! ずっとバチカルに居たってつまんねーもん。 ・・・もうすぐ会えるな、アッシュ)
(ああ。・・・それまでおとなしくしてろよ?)
苦笑するように甘いアッシュの声に、髪を撫でられているように感じる。
(会ったらいっぱいシような! あ、考えたらムラムラして来ちゃった。 ・・・ねぇアッシュ、ちょっとだけで良いからしようよ)
(こら、そんな所でやる気か。女が起きてもいいのか?)
(え~! ちょっとだけだからぁ)
アッシュが溜息をつくのが解った。アッシュは基本的にルークのおねだりは断らない。舌なめずりをして返事を待つ。
(・・・解った。同調するからこっちに『来い』よ。気持ち良くしてやる)
(アッシュ、アイシテルよv)


同調が深まり、精神が引き寄せられるのを感じる。ルークは眼を閉じて身体から離れた。
アッシュの身体の中に『入る』のはとても心地良い。包まれるような安心感を感じる。
眼を開けると浴室が見えた。アッシュが服を脱ぎシャワーを浴びている。
手が身体を滑り、絡みついた。突き抜けるような快感が伝わってくる。

(アッシュ・・・気持ち良い、もっと・・・・・・)
手の動きが早まり快感が強くなる。溢れ出しそうな快楽に身を任せながら、ルークはなおも強請った。
(アッシュ・・・後ろも欲しいよ・・・ねぇ、ちょうだい)
(・・・っ、この、淫乱レプリカ!)
吐息交じりの罵声と共にぬらりと指が入ってきた。慣らし、指を増やしてイイ所を刺激する。
同じ身体だ、ポイントなど知り尽くしている。
前と後ろを同時に弄られてルークは喘いだ。
アッシュが自分の為にここまでする事に、言い知れぬ満足感を感じる。
(アッシュ・・・! イイよぉ!)

悲鳴のような喘ぎと共に頭が真っ白になり、虚脱感に襲われたアッシュは足元をふらつかせた。
激しい吐息を押し隠し片割れに呼びかける。
(ルーク? おい、人の『中』で寝るなよ。満足したか?)
(ん・・・アッシュ、気持ち良かった。・・・早く会いたい、もっともっと気持ち良いことしたいよ)
擦り寄る猫のように淫蕩な笑みを漏らすルークにアッシュは苦笑する。早く繋がりたいのは自分も同じだからだ。
(もうすぐ会える。・・・それまで良い子にしてろ)
(うん、待ってる)
名残惜しげに優しく回線が切られ、ルークはうっすらと眼を開けた。馬車のゴトゴトと言う振動が伝わってくる。

・・・もうすぐアッシュと会える。それまでせいぜいアイツラで遊ばせてもらおう。
くすくすと笑いながらルークは眼を閉じた。

 


途中タルタロスに追い立てられ、橋を壊されて辻馬車はエンゲーブへと着いた。
行く先の勘違いに落ち込むティアを置き去りにし、ちゃっかり乗車賃の差額を受け取ったルークはマントを着けて買い物をしていた。食材をいくつか買い、宿に足を向ける。
「ちょっとルーク! 一人で出歩かないでちょうだい! 聞いてるの、ルーク!」
金切り声が追いかけてくる。煩そうにルークは振り返った。
「おい、俺の名を連呼するな。此処がどこだか解ってんのか、お前」
『聖なる焔の光』と言う名を持つ者はキムラスカではたった一人だけだ。赤い髪に碧の目を持つ『ルーク』が何者かなど、少し詳しい者なら誰でも知っている世界の常識だ。

言い返そうとしたティアを村人が取り囲む。ティアとルークのやり取りを不審そうに聞いていた村人に、盗人の疑いをかけられたのだ。
ローズの家に連れて行かれた二人はそこでジェイドとイオンに会う。
胡散臭く微笑みながらジェイドが自分をじっと観察している。ティアは全く気にも留めていない。

何度も繰り返したルークは気付いていた。会った瞬間からジェイドはルークが『ルーク・フォン・ファブレ』である事など解っていた。
そして解った上でイオンを追ったルーク達を監視していたのだ。
隠密行動には素人のイオンをまともな軍人が見失うなど有り得ない。
それもイオンを失えば和平どころか世界規模で戦争が起きるかもしれないこんな時に。
放って置いてもイオンに危害が加わることは無い。
ルークは数度目に繰り返した時からライガとチーグルの問題には関わらないことに決めていた。薄笑いしながら傍観する。
茶番のような一連のやり取りが終わり、疑いが晴れて詫びにと宿を提供された二人は早々に休む事にした。

 

明け方、ルークはティアにゆり起こされた。
「ルーク、イオン様が一人で森に向かって行ったの。危険だわ、後を追いましょう!」
眠そうに顔を上げたルークはひらひらと手を振った。
「ああ? 勝手に行けよ。許す」
「何言ってるのよ! イオン様を放っておけって言うの? 我侭言わないで!」
「あのなぁ、あれはダアトの導師、お前はダアトの兵士。・・・俺は何者だ? ちなみにここはマルクトだ。俺が手ぇ出す義理なんかこれっぽっちも無いだろ? どこが我侭だよ、俺が絡んだらキムラスカからの内政干渉も良いとこだぜ」
呆れたように肩を竦めながら自分を指差すルークに、ティアの眼はつり上がった。世間知らずのお坊ちゃんが我儘を言って手伝いを拒んでいるとしか思えないらしい。
「・・・! もう勝手にしなさい!」
「ふ~ん、いいのか? 早く行かないとイオンを見失っちまうぜ? ああ、一人で行けないなら導師守護役でも見つけて連れて行けよ」
そう言うとルークは布団に包まり、さっさと二度寝の体勢になってしまった。
ティアはルークを睨みつけると音を立てて部屋を出て行った。

 

数時間後、惰眠を貪っていたルークは部屋を取り囲む兵士の気配に眼を覚ました。同時にマルクト兵が部屋に踏み込んでくる。
「おい、お前。カーティス大佐の命令でタルタロスに連行する。来い!」
「ああ、良いぜ。ちょっと待ってくれよ、着替えるからさ。ついでに朝食を頼んどいてくれないか?」
悠然と着替え始めたルークを、マルクト兵は呆気に取られて見た。というか、『もう昼食だろ!』と言いたい。
「早くしろ。食事はタルタロスで取ってもらう」
「まあまあ、カーティスが何考えて俺を『連行』しろって言ったか知らねえけどさ、俺の色見りゃいろいろヤバイの分かるだろ? あんまり強制すると拙いんじゃないの?」
にんまり笑ったルークの言葉に顔を見合わせたマルクト兵たちは、打って変わって丁重にルークを案内したのだった。
顔を洗ってさっぱりしたルークは、朝食の包みを手に持って堂々とマルクト兵を従えるようにタルタロスへと乗り込んだ。
(チーグルの森に行かなくても、ジェイドが俺を逃すはず無いよな。・・・まあ良い、これでアッシュに会える)
エンゲーブチキンのベーグルサンドを優雅に口に運びながらルークはくすりと笑った。


しばらくの後、タルタロスはエンゲーブの北の森の近くに停止した。すぐにジェイド達が乗り込んでくる。
タルタロスの一室でルークは彼らと引き合わされた。
森での出来事をイオンがルークに説明する。ライガクイーンはジェイドとアニス、ティアによって斃されたという。
ミュウはティアを主人と定め、同行していた。

 

「ふうん・・・自分の失態を償う為に人間を連れて行ってライガを始末したのか。上手くやったな、チーグル族は」
「ち、違います。僕たちは交渉しようと・・・」
慌てたようにイオンが反論するが、ルークの言葉にミュウは涙を浮かべて項垂れた。
ティアが憤慨したように叫ぶ。
「何言ってるの! ミュウは悪くないわ、人里に近い場所に居るライガは殺さなければ大変な事になるのよ!」
ルークは薄く笑って肩を竦めた。
「殺る気満々な奴を連れて行った時点で交渉が成立するわけ無いんだよ。 お前初めからライガを殺す気だったろ? それをチーグルも分かってたはずだ。分かってて自分たちの為にライガを殺しに行ったんだよ。自分たちの害になるものは最小限の労力で排除する、上手いやり方だって誉めてんのさ」
「貴方って、最低ね! ミュウの気持ちも考えて! イオン様だって交渉に力を尽くしたわ!」
「ははっ、そんでお前が交渉をぶち壊したわけか。お前には森を焼いたそのブタザルの気持ちが分かるのか? 住処を追われ、殺されたライガの気持ちは考えもしないくせに」
「ご主人様、やめて下さいですの。ルークさんの言うとおりですの。ミュウが悪いんですの」
ミュウがティアに縋って泣き出し、イオンが項垂れた。ティアは言い返そうと睨んでいる。

 

「その辺にしませんか? 済んだ事をあれこれ言っても仕方ありません。まずは貴方のフルネームをお聞かせ願えませんか」
ジェイドがうんざりしたように話に割って入った。
「・・・ルーク・フォン・ファブレだ」
「ルーク! そんな簡単に名のるなんて軽率だわ!」
「ちょっとお前黙ってろよ。元はといえばお前がエンゲーブで俺の名を連呼したんだろ? キムラスカ王族の色の『ルーク』が何者かなんてこいつはもう知ってるよ。だから俺が今此処にいるんだろうが」
表情の読めない笑みを浮かべてジェイドが進み出た。
「話が早くて助かります。私達は極秘任務でキムラスカに向かっています」
「まさか戦争?」
「違いますよ~ あたしたちは和平の為にキムラスカに向かってるんですよ、ルークさまぁv」
蒼褪めて言葉を発したティアにアニスが返事を返し、媚びたようにルークを見た。
「アニース、いけませんね。機密事項をぺらぺら話しては。・・・ルーク様、あなたに和平の取次ぎの為の協力を仰ぎたいのですよ」
「・・・断ったら?」
「機密事項を知ったからには拘束させていただきます」


頬に手を当て下を向いたルークは、やがてくっくっと笑い出した。
「・・・それって交渉じゃねぇよな。さすが交渉の場でライガクイーンをブチ殺しただけあるわ。・・・いいぜ、引き受けてやるよ。和平に向かう先の王位継承者に礼も取らない奴を王に取り次ぐのは不安だが、断ったら何されるか分かんねぇからな」
「いえいえ、協力していただけるならこのくらい朝飯前ですよ。そんな安っぽいプライドは持ち合わせておりませんので」
ジェイドはそう言うとルークに向かって跪いた。そして許しも得ずにすぐに立ち上がるとポケットに手を突っ込んでルークに話しかけた。

「これで良いですか? ルーク様」
「・・・お前、本当に名代かぁ? 信じらんねぇ。 マルクトの皇帝はキムラスカに喧嘩売って来いって言ったんじゃねぇの? それともマルクト皇帝は礼儀も弁えない奴を名代にするような公私混同の激しい奴なのか?」
ルークは鼻で笑うと席を立ち、ドアに手をかけた。
「待ちなさい、どこへ行くのです」
ルークの言葉に不愉快そうに無表情になったジェイドが引き止める。
「犯罪者と同じ席になど着いていられるか。取次ぎは引き受けたんだからどこに行こうと良いだろ? 俺は部屋で休ませてもらう」
「ルーク、あれはそんなんじゃないって言ったでしょう!」
「黙れ襲撃犯。お前が俺を呼び捨てにする時点で十分犯罪者なんだよ」
背後でティアが慌てて言い訳をしている。
あんな馬鹿げた言い訳を信じるなんてどうかしている。それとも『今回の件には関係ないと思いましたので』か?

やり取りに蒼褪めていた兵士に個室に案内させると、ルークは備え付けのベッドにごろりと横になった。そのまま眼を閉じる。
愛しい焔の片割れが近づいて来る気配が感じられる。他の事なんかどうでも良かった。

(・・・もうすぐアッシュに会える)

 


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自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

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