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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.30,Tue
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Posted by tafuto - 2008.05.04,Sun


辺りが騒がしくなり、タルタロスが地響きを立てて停止した。主砲が発射される振動が聞こえる。
いよいよ襲撃が始まったのだ。
ルークは愉しげに笑うとドアに鍵をかけた。そして更に第七音素で目くらましをかけ、此処に部屋がある事が分からないようにする。
ルークを探すティアの声が廊下を過ぎて行った。遠くに事切れるマルクト兵たちの絶叫が聞こえる。
襲撃に直接関わらないアッシュは真っ直ぐにここに来るだろう。同位体のアッシュにだけは眼くらましは通じない。
ルークは鼻歌を歌いながらお茶を準備し、アッシュの訪れを待った。

 


コンコン、と小さくドアを叩く音にルークはいそいそとドアを開けた。
愛しい深紅が後ろ手にドアを閉めながらルークを抱きしめる。
「アッシュ! 会いたかった・・・」
飛びついて来て自分の口を貪るルークに苦笑しながら、アッシュはルークの背を宥める様に軽く叩いた。
「がっつくなよ。ちょっと待て、あいつらに邪魔されんのは真っ平だからな」
ドアに鍵をかけなおすと、アッシュは更に部屋に防音の呪譜を張った。
引き離されて不機嫌になったルークが横目でアッシュを睨む。
「特務師団長サマがこんなとこでサボってて良いのかよ?」
「拗ねるなよ、ルーク。・・・来い、抱いてやる。 ・・・会いたかったぜ」
腕を引かれ、強く抱きしめられたルークはすぐに機嫌を直した。アッシュに縋り付き、その首筋に顔をうずめる。
「俺も。・・・ああ、アッシュの匂いだ。ねぇ、はやく繋がりたいよ」

 

お互いに服を脱がせ合い、狭いベッドに転げ込む。
くすくすと笑いながらお互いの身体を弄り、舌を這わせて齧り合った。
精神(こころ)も身体も繋げて揺れながら快楽に蕩ける。

鋼の打ち合う音も断末魔の悲鳴も人の焼ける匂いもここには届きはしない。
焔が一つに繋がる歓喜の声が外に洩れ出る事も無い。
ただ二人は快楽によってその存在を確かめ合っていた。

 

満足した猫のようにシーツに身体を伸ばすルークを苦笑しながら眺めていたアッシュは、タルタロスの動力が止まった事に気付いた。
同時にルークがつまらなそうな顔になる。
「さあルーク、お楽しみはしばらくお預けだ。着替えろ、外まで送ってやるから」
「えぇ~、・・・もうちょっとだけ」
すり寄って来るルークの唇を啄みながら、もつれた髪を指で梳いてやる。その優しい指にルークがうっとりと吐息を洩らした。
「・・・どうせまたすぐに会える。破滅はもう始まっているんだからな」
「・・・・・・うん、楽しみだね」


リグレット達がタルタロスに閉じ込められる少し前に、アッシュはルークを連れてそっと艦を抜け出した。
ガイと合流したジェイド達がタルタロスを離れようと動き出した時、アッシュはルークを物陰からそっと押しやった。
(さあ、行け。さっさとここから離れろよ。髭の命令で俺はしばらくダアトから動けねぇ、しばらく辛抱しろよ)
(・・・ん、早くまた会いたいな)
アッシュに一つ口付けを送ると、ルークはガイ達の方へと歩いて行った。

 

「貴方、今までどこに行ってたのよ! 戦いもしないで隠れているなんて卑怯だわ!」
「おやまぁ、あれだけの騒ぎの中を隠れていたというわけですか。さすがは貴族のおぼっちゃまですね」
早速始まった罵倒と見下した言葉に、ルークは嘲笑を返した。
「和平先の王位継承者を敵襲から守ろうともしない立派な軍人の手を煩わせることもないかと思ってね」
ムッと表情を消したジェイドの後ろからガイが進み出てきた。
「ルーク、無事だったか! 心配したぜぇ」
肩を抱いて笑いかけてくるガイの手をさりげなく離しながらルークは笑いかけた。
「ガイが迎えに来たのか。じゃあ家まで俺の護衛をよろしく頼むな」


数頭の魔物に遭遇したあと、ティアが堪りかねたように怒鳴った。
「ルーク! なぜ貴方は戦おうとしないの? 剣が持てるなら戦うべきだわ!」
「なんで? その為にガイが来たんだろ?」
ルークは心底理解できないと言った風に首をかしげる。
「ガイ一人に前衛をさせるつもりなの?」
「あたりまえじゃないか、護衛を守って主が戦うなんて聞いたことないぜ。軍人を守って民間人が前衛に立つなんてのもな。
ガイ、大変ならそいつらまで守ることないぞ。そいつらは軍人なんだから。お前も一人で俺を守る事も出来ないなら数人で組んで探しに来るべきだったと思うぜ?」
ガイの実力不足を憐れむように、ルークは笑って肩を竦める。
「はは、焦って飛び出して来たんでね、精進するよ」
爽やかに笑い返すガイの眼が一瞬憎悪に彩られていたのを、ルークは楽しげに見ていた。

 

無事にセントビナーへと辿り着き、一行は老マクガヴァンと対面することになった。
髪を隠しもしないで通りを歩くルークを、ぎょっとしたような兵士が幾人も眼で追っている。ジェイドやティアは気付かない。
ガイはルークに髪を隠すよう注意する事も無く、ティアと楽しげに雑談しながら前を歩いていた。こいつが襲撃犯だと言う事は言ったはずだが。
一行は軍施設の部屋に通され、ジェイドと老マクガヴァンのやり取りが続いた。

話も終わり皆が退室しようとしたところで、不意にルークはマクガヴァンに話しかけた。
「マクガヴァン殿、俺や俺個人の護衛がこいつら軍人の前衛に立たなくても済むように、兵を貸してくれませんか? 人手が足りないから前衛を務めろと言われているのですが、いきなり屋敷から誘拐されたので使い慣れた剣も持っていませんし、何より俺は怪我をしてはいけない身であるとこの人達には解って貰えないようなのです」
にっこりと微笑みながら告げたルークの言葉に、マクガヴァンは唖然とし、みるみる蒼白になってゆく。
ルークは返答も聞かずに笑いながら部屋を後にした。


国境までは数人の兵士が同行することになった。ジェイドとマクガヴァンの間でどんなやり取りがあったのかはわからない。
ジェイドの事だからうまいこと丸めこんだに違いない。名代をそのまま続けているのだから。
宿でジェイドに嫌味を言われたルークは、回線でアッシュに告げ口して二人で嘲笑いあっていた。
ルークがここに居る事を不思議にも思わず、ジェイドを咎める事もしない。まったくマルクトはどこまで身内贔屓なんだか。


一行は特に何事もなく国境まで辿り着いた。なにかあったのは護衛に付いて来た兵士たちの胃袋くらいだろう。
一介の兵士である彼らには、皇帝の名代に意見することなど出来はしなかった。彼らの地位では許されて初めて口を開けるのだから。
これから和平を結ぶ先の王位継承者に不敬な発言を繰り返す一行に、彼らは冷汗を垂らしながら胃痛をこらえていた。
ちなみにフーブラス河でアリエッタは襲ってこなかった。きっとアッシュが「機会を待て」とでも言ったんだろう。

 

「月夜ばかりと思うなよ」
お馴染みのセリフが聞こえてきて、ルークは口元を歪めた。イオンが諫めるように声を掛ける。
「アニス、ルークに聞こえてしまいますよ」
「きゃわぁ~んv ルークさまぁ!」
飛びついて来たアニスをすっと避けたルークは、ガイに話しかけた。
「何してんだよ、ガイ。不審人物が俺に向かって飛び掛って来てんのに、何でただ見てるだけなんだよ」
「えっ、イオン様が導師守護役だって言ったじゃないか」
慌てたように答えを返すガイに、頬を膨らませたアニスが同意する。
「そうですよ~ 不審人物なんて酷いなぁ」

うんざりした様なルークがアニスを無視してガイに話しかける。
「何言ってんだ、こいつ今『自分の利益にならない者は闇討ちする』って言ったんじゃねぇか。そんな物騒な奴を傍に近付けるのは俺は御免だ。だいたい俺の身分を知って媚びて来るような奴をお前は信用できるのか? 見失った導師を心配もしないで、守護役が聞いて呆れるぜ」
ルークの言葉にアニスが立ち竦み、蒼褪めた。イオンがおろおろと取り成そうとし、ティアが大声で怒鳴った。
「なんて失礼な人なの! アニスに謝りなさい!」

セントビナーから付いて来た兵士たちは気が遠くなった。ここは国境である。キムラスカの兵士たちが不審そうに注視している。
こんなところで王位継承者を罵倒するなど、最悪全員打ち首だ。
誰か何とかしてくれ! そう神に願った時、助けが現れた。


「ルーク、無事だったか」
「ヴァン師匠!」
にっこりと笑ったルークがヴァンに近付いていく。
「ああ、旅券を持って来てくれたんですか? ガイもジェイドも俺の分の旅券すら持ってないからどうしようかと思いましたよ」
その言葉にガイはばつの悪そうな顔になり、ジェイドは表情を隠すように眼鏡に手をやった。
「それじゃぁ、さっさとカイツール港に向かいましょうか。ヴァン師匠、兄妹喧嘩は人に迷惑をかけないように向こうで好きなだけやって下さい」
スタスタと国境を抜け歩き出すルークを唖然と見送った後、一同は慌てて後を追った。

後には汗をぬぐいながらため息を吐くセントビナー兵が残された。
セントビナーに帰還した兵は、名代の態度を何と報告して良いのか途方に暮れ言葉を濁した。そしてジェイドはタルタロスへの襲撃を極秘任務だからとマクガヴァンに伝えなかった。マクガヴァンは子供の頃から知っているジェイドを信用しすぎていた。
結果的にジェイドの失態がピオニーに報告されることは無かった。

 

船旅は順調だった。襲撃もなく、途中のローレライからの干渉をルークは鼻で笑ってねじ伏せた。
地殻に封じられたままのローレライなどより、今のルークとアッシュはよほど強い力を持っているのだ。
甲板に佇むルークのもとにヴァンが近づいてくる。
耳元で囁かれる言葉をルークは冷めた思いで聞いていた。
(残念だけど師匠、俺にもう暗示は効かないぜ? まあいい、今はあんたの望み通りに動いてやるよ・・・)


バチカルが目前に近付いてくる。笑いが出るような茶番が行われる場所だ。
王に礼も取らない名代や護衛やなぜか付いてくる使用人。自分のした事も理解出来ない襲撃犯、しゃしゃり出る大詠師。それを許す馬鹿な王。
馬鹿な王の馬鹿な娘。
(せいぜい爆笑しないように頑張るとするか)

 

「勅命、承りました。このルーク・フォン・ファブレ、一命を賭して全力を尽くす所存でございます」
優雅に膝をついて完璧な作法で親善大使の任を受けたルークに、インゴベルトは呆気に取られた。側らのファブレ公も瞠目している。
ルークがごねるだろうとせっかく用意した譜石の立つ瀬がない。
「・・・実はこの度の事は預言に詠まれておってな。・・・モースどの、譜石を」
「その必要はありません」
譜石を持って得意気にしゃしゃり出てきたモースを遮るようにルークが言葉を発した。
「預言などが有ろうと無かろうと、国王陛下の命に従うのが臣下の勤め。たとえ『死ね』と言われても笑って死んで見せましょう。
私が行動するのは預言の為ではありません。ただ陛下の御言葉のみ。私の忠誠心を御疑いであれば、どうぞ預言をお聞かせ下さい。」

満面の笑みを浮かべたルークの言葉にインゴベルトは固まった。公式の場で自ら任命した親善大使を信用できないなどとは言えるはずもない。そしてインゴベルトにはルークを国の繁栄のための生贄にするという負い目があった。
「・・・・・・いや、そちの忠誠心は欠片も疑ってはいないぞ。モース殿、譜石はもうよい」
肩透かしを食ったように唖然とするモースを尻目に、優雅に退出の礼をしたルークは謁見の間を出て行った。

 

(あっははは! アッシュ、見てたぁ? あのモースの顔! 父上も陛下もポカンとしちゃってさ!)
(・・・ああ、傑作だったな。楽しませてもらった)
(預言だからなんて言い訳、許さない。俺たちを殺すのは人なんだから。・・・・・・俺を殺したいなら自分の口で死んで来いって言えばいいんだ!)

気が狂ったように笑い続けるルークの心が悲痛に軋んでいるのが分かる。
優しい半身の心はこうして何度も何度も『殺されて』きた。その度毎に歪みひび割れていく半身の心をアッシュはそっと抱き締めた。
(ルーク、俺はお前のものだ)
涙を流して笑い続けるルークに口付けてやれないのが口惜しい。せめて精神を寄り添わせる。
(永遠に俺はお前を離さない)
(アッシュ・・・アッシュだけだ。もう俺はアッシュしかいらない)
(ああ、分かっている。俺も同じだ。・・・・・・さあ、もう眠れ。イオンは攫って行くがオアシスで帰す。心配するな)
縋り付くようなルークの心を抱き締めるように宥めていたアッシュは、やがてルークが寝息をたてだしたのを感じてそっと回線を切った。


ルークの心をここまで壊した世界など、何千回でも滅びてしまえばいい。

 


 

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