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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.05.05,Mon


翌朝、出発の前にルークはクリムゾンに面会を求めた。
書斎に通されると、目を合わせようともしない父に構わず話しかける。
「父上、白光騎士を数名貸してくれませんか? あんな役立たずの護衛じゃアクゼリュスに着くまでに死んでしまう」
「・・・お前が道中に死ぬことなど預言に詠まれてはいない」
どこか後ろめたそうに言葉を発するクリムゾンに、ルークは笑いかけた。
「ええ、だから行くまでに死んだら困るでしょう? 『聖なる焔の光』はちゃんと鉱山の町で死ななきゃならないんだから。
腕は立つけど俺と一緒に死んでも構わないような、後腐れの無い騎士を下さいとお願いしてるんですよ、父上」
その言葉にクリムゾンは愕然としてルークを見た。ルークがこの部屋に入って初めて目を合わせる。
「お前は・・・知っていたのか」
「ええ、もちろん。あなたたちが死ねと言うから死にに行くんですよ、キムラスカの繁栄の為にね。その為の仕上げくらい手を抜かないでやって下さい」

絶句したクリムゾンは暫くして騎士団長を呼ぶと何事か言い付けた。敬礼した騎士団長が部屋を出て行く。
にっこりとほほ笑んだルークは、部屋を出る前に振り返った。

「今まで俺を生贄の家畜のように大事に飼っていて下さってありがとうございました、父上。もうお目にかかる事はありませんが、お元気で。さようなら」

バタンとドアが閉まる音が響いた。
クリムゾンは顔を手で覆い、項垂れた。そしてそのまま暫くの間動く事が出来なかった。

 

ファブレ邸を出たルークは同行者のもとへと向かった。
ジェイドとティア、ガイがルークを待っている。そこにヴァンが現れた。
海路は襲撃される恐れがあるからと、先遣隊を率いて囮としてヴァンが海路を行くと言う。
二つ返事でルークは頷いた。どうせ自分が何を言ってもすでに決まっている事なのだ。


ヴァンが出港してすぐアニスが息を切らせて走り寄って来た。
「朝起きたらイオン様が居なくなっちゃってたんです! 門には六神将がいて外に出られないの、お願い、あたしも連れて行って!」
「きっと六神将が攫ったのよ! イオン様に何かあったら和平に差し支える可能性があるわ、探しましょう!」
ティアの言葉にルークは肩を竦めた。
「何言ってんだよ。俺は王命で親善大使としてアクゼリュスに行くんだぞ。導師を教団の人間が連れていったからって、なんで俺が探さなきゃならないんだよ」
「えぇ~! そんなこと言わないで一緒に探して下さいよ~ ついででも良いですから!」
「貴方って自分の事しか考えられないの! 最低ね!」
「そうだぜ、こんなに頼んでるんだ、探してやれよ」

ティアがルークを罵り、ガイが無責任に言葉を発する。ジェイドは我関せずという顔をして笑みを浮かべていた。
「門の外までなら着いて来ても構わない。しかし救出の為の手は貸さない。・・・さて、陸路を行くなら準備があるだろ? 30分自由行動にするから各自でやって来てくれ」
「おや、急ぎの旅なのにこれから支度ですか?」
一度ファブレ邸に戻ろうとしたルークにジェイドの馬鹿にしたような声が掛けられる。ルークは振り向きもせずに答えた。
「海路と陸路じゃ準備も違うだろ? 立派な軍人さんはもう砂漠越えの支度もしてるんだろうけどさ。俺はそこの護衛兼使用人が何も準備をしてくれないもんでね」
ガイは離れたところで怒っているティアを宥めるように談笑している。自分の準備すらしようとはしていない。
一連のやり取りを聞いていた門番の兵士が、口を開けて驚愕しながら一行を凝視していた。

 

ルークはラムダスに言いつけて砂漠越えの準備と馬車を用意させた。クリムゾンに借りた騎士も私服に着替え準備を済ませて集まって来た。
ルークが同行者を連れてバチカルの外門に集合する頃には全ての準備が整っていた。隊商と傭兵に見せかけてある。
ぶつくさ言いながらも早速乗りこもうとしたティアとアニスをルークは手を上げて引きとめた。
「なんでお前らが乗るんだよ。護衛は外にいるもんだろ? 自分の役目を果たせよ。 ・・・アニス、もう六神将はいなくなったぜ。イオンを探しに行くなら勝手にしろ。ついてくんなら外で護衛をしろよ」
「ルーク、女の子にそれは酷いんじゃないのか? 乗せてやればいいじゃないか」
ガイが取り成すように声を掛けるが、ルークは冷たくガイを見た。
「ガイ、俺は親善大使としてここにいる。口のきき方に気をつけろ」
一護衛として外の守りを命じられたガイは不満そうにルークを見た。自分は馬車でルークの世話を焼くと思っていたらしい。
世間知らずのふりをすれば見下し、貴族として当然の態度をとれば憎悪する。そんな奴の事はもう構っていられない。
マルクト皇帝の名代であるジェイドだけをルークは慇懃に馬車へと誘った。

 

馬車が動き出してバチカルを出たころ、馬車に積んであった水樽の後ろからごそごそと這い出して来る人影があった。
「ルーク! 私も参りますわ!」
やっぱり付いて来たか、とうんざりしてルークはナタリアを見る。
「お前、国王陛下に来るなって言われただろ。許可は取ったのか?」
「お父様ならきっとわかって下さいますわ! こんな時に王女である私が行かなくてどうしますの!」
使命感に燃えたナタリアを、ルークは冷笑するように見た。
「親善大使としては許可しない。出奔する覚悟で着いてくるなら勝手にしろ」
王命に逆らう事を軽く考え、ルークの同意を得たと思いこんだナタリアは顔を輝かせた。
「分りましたわ! これから私の事は王女と思わないで下さいまし」
二人の会話を馬車の外から漏れ聞いていた護衛の騎士だけが顔色を青褪めさせていた。
それはそうだろう、ナタリアは王女であることを辞めるとはっきり言ったのだから。

 

ケセドニアまでの陸路の途中、オアシスに立ち寄ることにした。
案の定、砂漠越えの準備をしていなかったティアとアニスが脱水を起こし、水樽の水を必要以上に消費していたからだ。
特別扱いするなと言ったはずのナタリアは、外を歩けと言われるとルークに猛烈に抗議してちゃっかり馬車に同乗している。
それを見たアニスがずるいと騒ぎ、ティアがルークを非難した。
自分達の準備不足を棚に上げルークを責める女性陣や、それを止めもせず一緒になってルークをたしなめるガイを護衛の騎士たちは苦々しげに見つめていた。
王命で旅立った自分達の次期国王が、たかが一兵卒や使用人に蔑ろにされているのだ。
長い間敵国であったマルクトの軍人であるジェイドがルークを馬鹿にした言葉に、思わず剣の柄に手をかけた騎士もいる。


「良いのですか? ルーク様、あの様な事を言わせておいて」
野営の時、護衛騎士にそっと囁かれたルークは、笑って答えた。
「俺は王命に従い、親善大使としてアクゼリュスへと赴き全力を尽くすだけだ。あいつらを裁くのは俺の役目じゃない」
ルークの貴族らしい態度に感心した騎士は、せめてこの事実をキムラスカに知らせようと報告書を作成していた。
騎士は同行者が行ったルークに対する不敬な態度やナタリアのとった行動の全てを記した。それだけ彼らへの怒りが深かったのだ。

どっちにしろアッシュとの約束でオアシスに向かうつもりだったルークは、同行者たちが自らどんどん墓穴を深くして行くのを冷笑しながらただ眺めていた。

(俺はお前たちに何もしない。何をしてやる気もない。お前たちを破滅させるのはお前ら自身の傲慢さだ。・・・早く気付けよ、もっとも気付いた時にはもう全てが遅いだろうけどな)

 


オアシスで一泊して休息を取っていたルーク達の前に、イオンが姿を現した。
驚いて尋ねる皆にイオンは、六神将が用があって自分を連れ出し、用が済んだのでここに自分を連れてきたと答えた。
皆の追及をかわし、疲れているだろうと言ってルークは自分の部屋にイオンを案内する。
騎士が守るルークの部屋にアニスは近寄る事も出来ない。二人きりになるとイオンはためらいがちに話しだした。

「ルーク・・・貴方は知っているのですか? 僕と貴方が同じだって事を。・・・・・・アッシュやシンクと少し話しました」
疲れたように俯き話すイオンを、面白そうにルークは見た。
「知ってるぜ。・・・俺はね、イオン、預言も人間も大嫌いだ。あいつらはいつでも俺たちを犠牲にし、搾取するばかりだ。イオンだってそうやって扱われて来たんだろう? 傲慢な被験者どもに」
「・・・でも、僕は・・・・・・」
「まあ、考えればいいさ。・・・最も、あんまり時間は無いけどな」
逡巡するイオンをルークは見つめた。
その優しさのせいで裏切られ、使い捨てのように殺されたイオンをこれ以上被験者どもの好きにさせるつもりは無かった。


ケセドニアでイオンはルークに切り出した。
「僕もアクゼリュスへと連れて行ってくれませんか?」
「駄目だ、身体が弱いお前をあんなとこに連れて行く事は親善大使として許可できない。俺が行けば良いんだから、お前はおとなしくダアトへ帰れよ」

「あんた馬鹿ぁ? イオン様がいなくてどうするのよ!」
「そうね、今の言葉は傲慢だわ。貴方、いつか痛い目見るわよ」 
ぶっきらぼうなルークの言葉の中に自分への気遣いを感じ取っていたイオンは、アニスとティアの言葉に顔を歪めた。
自分の身体にとって、瘴気の中に行く事が自殺行為である事など自分にも解っている。それを止めもせず、ルークの言葉だけを捉えて非難するアニス達に不信感が募る。

今まで自分が守ろうとしていた、信じたいと願っていたものが砂の城のように脆く感じられる。
人を信じたい、信頼に値する存在であるともう一度自分に確かめさせて欲しい。

「・・・お願いです、ルーク。僕は見届けたいんです。・・・・・・この顛末を」
じっとルークの眼を見つめ何かを決意したようなイオンの真意を、ルークだけが見抜いていた。
「・・・・・・わかった」


デオ峠からは馬車が使えないため、歩きになった。
せめて自分の為に遅れないようにと頑張って歩くイオンを、アニスたちは気にもしない。護衛の隊列を組むわけでもなく談笑しながら歩いている。
イオンの為に頻繁に休憩をとるルークを、世間知らずの我儘なお坊ちゃんだと嘲笑している。
自分達がどれだけ傲慢な言葉を発しているか、気付きもしない。
イオンは耳を塞ぎたくなった。

途中、ティアを連れ戻す為にリグレットの襲撃があった。
ルークを庇って護衛騎士の一人が怪我さえしたのに、ティアは『個人的な事で貴方には関係ない』と言い放ち、謝罪の言葉もない。
人の傲慢さは、イオンの心を少しずつ蝕んでいった。

 

峠の奥に紫色の靄が立ち込め、一行は立ち竦んだ。・・・アクゼリュスに着いたのだ。
街のあちこちに人々が倒れ伏し、その殆どはすでに絶命していた。
「しっかりして下さいまし! キムラスカの王女ナタリアがあなた方を助けに来ましたわ!」
ナタリアが倒れた人に駆け寄って回復術をかけた。ティアが、アニスが、ガイがそれぞれ倒れた人のもとへ走って行き介抱している。
イオンやルークは放置だ。
彼女らは病人に手を出そうとしないルークを『役立たず』とまで罵倒した。

護衛騎士たちは唖然とした。
王に勅命を受けた親善大使より先に名乗りを上げる王女。守るべき主を蔑にし放置し罵倒する護衛。
一人二人に回復をかけて何になるというのだ。リーダーの指示も待たず好き勝手に行動するのでは、助かるものも助けられない。
それにこれではもはや手遅れだ。なぜマルクトはもっと早く手を打たなかったのか。街道使用許可は出ているのに。


ルークが騎士たちを振り返った。
「誰か責任者を呼んで来てくれ。それからおまえ、此処の状況を今すぐキムラスカに知らせに走れ。・・・お前の書いてたものも忘れずに王に届けろよ」
道中の報告書を書いていた騎士をルークはアクゼリュスから離脱させた。
生き残って王に報告するのは一人いれば充分だ。
きっとすぐにでも戦争が始まるような素敵な報告をしてくれるだろう。


アクゼリュスの責任者に『死にたくなかったらすぐにここから離れろ』と指示を出し、ルークは坑道の奥へと向かって行った。
遥か前方をイオンが守護役も連れずにたった一人でふらふらと歩いている。イオンの姿は坑道の奥へと消えていった。
「イオンを保護しろ。俺は平気だから全員で行け」
騎士達はルークの命に従いイオンの後を追って行った。 

・・・程なく坑道に絶叫が響き渡った。

 

ゆっくりと歩み寄っていったルークは、ヴァンに抱えられたイオンとその足元に騎士達の亡骸が転がっているのを見た。
「来たか、ルーク。・・・・・・さあ導師、この扉を開けて頂きましょう」
暗示でぼんやりと放心していたイオンは、その言葉にはっと正気に返った。
「ここは・・・ なぜこのような所を開ける必要があるのです」
戸惑うイオンにルークは笑いかけ、ヴァンに聞こえないように小さく囁いた。
「なぁ、イオン。心は決まったかい? タイムリミットだぜ。さあ、俺を取るかあいつらを取るか決めてくれよ」
目を見張ったイオンは、一瞬の逡巡の後に扉に手をかざし封印を解いた。

「さあヴァン師匠、早く行きましょう!」
ニコニコと笑うルークに手を引かれるようにヴァンはパッセージリングに向かった。
ふらつくイオンを少し離れた所に座らせて、二人はパッセージリングの前に立った。
「さあルーク、手を前に翳しなさい。私が居るから大丈夫だ」
素直に従うルークを後ろから抱き込むように抱えると、ヴァンは暗示の言葉をささやいた。


・・・・・・何も起きない。

慌てたヴァンがルークを覗き込むと、ルークは下を向いて肩を震わせていた。
「くっくっ…あは、あははははははは!!」
ヴァンは信じられないものを見るように、哄笑を続けるルークを凝視した。
「馬鹿だなぁ、ヴァン師匠。俺に暗示なんか効くと思ってんの? 俺にパッセージリングを破壊させたかったら、そう言えば良かったんだよ。『世界に復讐したいからここを破壊しろ』ってさ」
そう言うとルークはくるりとパッセージリングに向き直った。両手を上げて力を集めるとその両手の間に光が溢れる。

「さあ、終わりの始まりだ」

超振動はパッセージリングを貫いた。振動とともに細かいヒビがパッセージリングを覆ってゆく。
「ヴァン師匠、俺もローレライに復讐したいんだよ。あんたの役に立ってやるよ」
驚愕してそれを見ていたヴァンは、ルークの言葉に歪んだ笑みを漏らした。
「この私が騙されていたとはな・・・・・・良かろう、来い」
準備していた魔物にルークとイオンを乗せると、ヴァンはその場を飛び立った。

 

 

 

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作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

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