『change!』の番外編です。
おまけ 『ペロにゃん』
ある日の午前中のこと。
外出したアッシュに置いて行かれてしょんぼりしていたルク猫を、クリムゾンは膝に乗せてブラッシングしていた。
膝の上でゴロゴロ喉を鳴らす可愛い息子に目尻が下がる。
ひっくり返して顎の下や腹まで丁寧にブラッシングしてやると、ルークは『きゅ~v』と気持ち良さそうに前足を伸ばして長くなった。
「にゃぁんv(ありがとう父上!)」
「いや何、気持ち良かったか? ルーク」
「にゃん!(うん)」
どうやらいつの間にかクリムゾンは猫と意思の疎通が出来るようなったようである。
「うにゃ~ん♪(お返しに、父上にもグルーミングしてあげる!)」
猫がお返しをしてくれるのは親愛の表れである。
クリムゾンはデレデレになりながらルークに顔を寄せた。
起き上がって伸びあがったルークはクリムゾンの顎を舐め始めた。
ざり。 ざりざりざりざり・・・
息子のあまりの可愛さに涙を浮かべていたクリムゾンは、そのうちだんだん別の意味で涙目になってきた。
猫の舌というものはざらざらになっている。
ちょろっと舐められるだけなら良いが、本気で舐められると結構痛いのだ。
同じ場所を延々と舐められたクリムゾンの顎は赤くなっていた。
「おいルーク、なにしてやがる」
ルークが振り返ると、帰ってきたばかりのアッシュが呆れたように扉に手をかけていた。
「にゃー!(アッシュおかえり! 父上にブラッシングのお返ししてたんだよ)」
満面の笑みのルークにアッシュはため息をついた。
「・・・おまえな。父上の顎をよく見てみろ、真っ赤じゃねぇか。猫の舌っていうのはざらざらしてるんだよ。ちっとは加減してやれよ」
ルークがクリムゾンに向き直ってみると、クリムゾンはひりひりしている顎をさすっていた。
「にゃ!(ごめんなさい、父上! 痛かった?)」
「いや、大丈夫だぞルーク! お前の優しい気持ちはしっかりと受け取ったぞ」
「にぅ~・・・(ごめんなさい父上。猫の舌が痛いなんてちっとも知らなかったよ・・・)」
ひげと尻尾のしゅんと垂れてしまったルークをアッシュはつまみあげた。
「おまえは猫だろう? それくらいちゃんと把握しておけ。 ・・・あと人間はグルーミングしなくていいから」
「にゃ(わかったよアッシュ)」
赤い顎を撫で回してでれでれのクリムゾンに挨拶すると、アッシュとルークは部屋に向かった。
アッシュの後を小走りで追いかけながらきらきらした目でルークが尋ねる。
「んにゃにゃ!(ねえねえアッシュ、猫の舌が痛いってさぁ、どれくらい痛いの? 皮剥けちゃうくらい?)」
「おまえは肉が見えるまで舐める気か! どんな拷問だよそりゃ。 自分で・・・って、自分じゃ舐められねぇか」
アッシュは部屋着に着替えながらしばし考えた。
昼を告げる鐘が遠くで鳴りだす。
一瞬のめまいのあと、二人の意識は入れ替わっていた。
「にゃう!(丁度良い。ルーク、そこに座って顔をこっちによこせ)」
「えっ、アッシュが舐めてくれるの?」
ルークは『ラッキー!』とばかりににやけながらソファーに座ってアッシュに屈み込んだ。
ふんふんと鼻を近づける小さなアッシュの鼻息とひげがこそばゆい。
ぺろり。・・・ざりざりざりざりざり・・・・・・・・・
満面の笑みのルークの顔がちょっと引き攣ってきた。
初めはくすぐったかった頬がだんだんヒリヒリしてくる。 ・・・これは、意外にばかにならない。
「いて、あ、アッシュ、分かりました。ありがとうございます。もう結構です。・・・いてっ!」
アッシュは聞こえないふりで舐め続ける。ルークの肩に爪を食いこませて逃げられないようにしている。
「ひりひりするよ~! アッシュ、降参。お願いもう止めて~」
アッシュはにやりと笑うと最後にルークの唇をぺろりとなめて体を離した。
(わかったかルーク。猫の舌が痛いって)
「嫌ってほど分かりました!」
半べそのルークを見て鼻で笑ったアッシュは、尻尾をひらりと振ると窓に飛び乗った。
ルークを横目でちらりと見るとツンとそっぽを向き庭に出てゆく。
さあ、散歩の時間だ。
今日も良い天気だった。
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