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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.12.13,Sat

2008、クリスマス スペシャル!

拍手にしようとして、長くなりすぎて断念。  厳しめ無しの、ほのぼのファブレ家。 
たぶん「カボチャの王子さま」の時系列の人たち。・・・のような気がする。

 

 

 

『聖者の贈り物』

 


ローレライを解放して、いろんな事があって俺とアッシュが無事に地上へ戻ってから、俺達は二人だけであちこち旅をしていた。
今まで知らなかった事、世界の事をただのアッシュとルークとして見てみたかったから。
ばれたら連れ戻されちゃうのが分かってたから、誰にも知らせずに二人だけで旅をした。

アッシュは時々悩んでいたけど、俺はアッシュと一緒にいられて嬉しかったんだ。
だってアッシュ、戻ってからすごく優しいんだ。
ときどきゲンコツ貰ったりするけど、知らない事はちゃんと教えてくれる。
だって戻ってから俺を育ててくれたの、アッシュなんだぜ!
アッシュは料理も裁縫もすっかりプロ並みになっちゃって、こう言うトコ頑張り屋さんだなって思う。
オカンみてぇ、とか言うと真っ赤になってゲンコツが降ってくるから言わないけどな。

 

ケセドニアでしばらくこっそりと暮らしていた俺達は、港を歩く人々を見て今年も終わりに近づいている事を感じていた。
バチカルから来た旅人が、どこかしらに赤と緑をあしらったデザインの服を着ている事が多いんだ。
この時期バチカルはキムラスカの始祖を讃えて赤と緑で街中が飾られる。
もうすぐバチカルは聖人のお祭りが始まるんだ。


「娘はこの贈り物を気に入ってくれるかなぁ」
「そりゃあもう! こんな良い品物はなかなかありませんぜ?」

嬉しそうに髪飾りを選ぶ気の良さそうなお父さんと愛想の良い商人のやり取りを、カフェのテラスに座ってぼんやりと聞いていると、アッシュがためらいがちに小声で聞いてきた。

「・・・バチカルに帰りたいか?」

びっくりして振り返ると、アッシュが静かな瞳でじっと俺を見ていた。
「帰らないのは俺の我儘だ。・・・お前まで付き合う必要は無いんだぞ?」


母上や父上に会いたくないと言ったら嘘になる。けど、それよりアッシュと一緒に居たかった。
「俺達が戻ったって国に知れたらもう自由になれないってことは、俺にも分かるよ。
・・・薄情かな? 母上にくらいは俺達が戻ったことを知らせたいけど、俺は、アッシュと離れたくないんだ」

アッシュは少し困ったように苦笑すると、俺の頭をポンポンとなでてくれた。

「なら、母上に挨拶だけしに行こうか。他の奴らに見つからないようこっそり行って、すぐにバチカルを出ればいい。母上なら俺たちが戻らない事も分かって下さるだろう」


俺はびっくりしちまった。今まで決してバチカルには近づかなかったアッシュがこんな事を言うなんて!
それに今バチカルはお祭り騒ぎで人がたくさんいるんじゃないのか?

「今、だからだ。今ならバチカルは赤と緑に溢れている。赤毛の髭や鬘を付けた仮装の奴も多い。俺達がバチカルに行って一番目立たないのが今なんだよ」
「アッシュ! ・・・あったまいい~!」

嬉しくって、大声を出してアッシュにしがみついた俺は、「うるせぇ!」とげんこつを喰らってしまった。

 

んでもって俺達は今、バチカルに居る。下町の小さな宿屋で計画を練っているところ。
今日は聖人の祭りの前夜祭。街は赤や緑の服、聖人の扮装の赤い鬘の人々で溢れ、全く目立たずにここまでこれた。けれどバチカルの上層部はさすがにこんなわけにはいかないからな。
ファブレ家に入るのはどうしたらいいかな・・・?

「そうだ、アッシュ! いっそ聖人のカッコして『シュザンヌ様にプレゼントをお届けに来ました~』って言えばいいんじゃね?」

ハァ? って顔してため息をついたアッシュが、しばらくすると真面目な顔になった。

「・・・いい考えかもな。いっそラムダスあたりを巻き込んで母上に会う段取りをつけてもらえばいいか。しかしラムダスに会うのだって大変だぞ?」
「だからそこを扮装して、ラムダスにお届けものですって言えばいいじゃん!」
「・・・・・・そうだな、それしかないか」


それからちょっと大変だった。
俺が買ってきた聖人の服は、なんというか・・・ ファーの付いた真っ赤な服にお揃いの帽子。お揃いのブーツ。でっかいプレゼント用の袋。

・・・つまり、すっげぇ派手だった。
 
こんなカッコの奴が始祖ってどうなの? って小一時間問い詰めたいくらいだ。 
だって派手な方が目立たないと思ったんだよ! いてっ、殴るなよ~アッシュ!

「こんな恰好するの、俺は嫌だぞ! お前が着ろ!」
「え~・・・じゃあ、アッシュが俺に担がれる方が良いのかよ」

一人はプレゼント用の袋に入って荷物さながらに運び込まれる手はずになっている。
アッシュは派手な仮装をするか袋に入って担がれるかの二択に苦悩してる。

も~、アッシュの見栄っ張り。どっちでもいいじゃん。
俺、アッシュなら担いじゃっても担がれちゃっても良いぜ? 

がっくりと脱力したアッシュが赤い服を手に取るのを見て、俺はちょっと舌を出した。
そっちを選ぶと思ったぜ! だってアッシュ、いつも地味なカッコしかしないから、派手な格好のアッシュが見てみたかったんだもん。

 


ファブレの屋敷は、以前と変わりなかった。
でも祭りだというのに飾り付けも慎ましく、街のうきうきとした雰囲気からは浮いている。
使用人や騎士たちも皆、少しだけ悲しそうに静かに歩いている。

俺は門番に見つからないように隠れて袋にもぐりこんだ。
俺を担いだアッシュが、裏口の門番にラムダスに取り次いでもらおうと声をかけているのが聞こえる。

うるさそうにアッシュを追い払おうとした門番が、急に口をつぐんだ。
しばらく沈黙していた門番は、震える声でアッシュに声をかけた。
「・・・・・・しばらくお待ちを。今ラムダスに取り次いでまいりますゆえ」

ばれたかな。アッシュの背中も強張っている。
アッシュが一歩後ずさったとき、息を切らせたラムダスが飛び出してきた。

「・・・! それは確かに私が取り寄せたものです。さあ、早くこちらに運び込んでくれませんかな」

アッシュがほっと息をつくのが布越しに感じ取れた。俺はもぞもぞ動かないようにギュッと体を縮めて、そっと息を吐いた。


誰も居ない小部屋に案内すると、ラムダスは震える声で話しかけた。
「・・・もしや貴方はルーク様ではありませんか?」

俺を床に下ろしたアッシュが静かに答える。
「俺はアッシュだ。ルークは・・・・・・ここに居る」

「アッシュ様! ・・・お亡くなりになったとナタリア様から聞いておりました。・・・よくぞご無事で! おお、ルーク様も・・・ご帰還、お喜び申し上げます・・・!」
袋からもぞもぞ顔を出した俺は、ラムダスが顔をぐちゃぐちゃにして泣いているのを見てビビった。

「ごめんな、ラムダス。でも俺たち、自由に生きて行きたいんだ。・・・だから母上にだけ、生きてる事を伝えようと思ってこんなことしたんだ」
「王族の責務を果たさず、すまないと思う。だが、どうか母上に取り次いでもらえないだろうか」

俺の隣でアッシュが神妙に頭を下げる。そのアッシュの手をラムダスが取った。

「いいえ、生きていて下さっただけで良いのです。御顔を見せて頂けて、こんな嬉しい事はございませぬ。
・・・しばしお待ちを」

 

夜も更けた頃、俺たちは父上と母上の私室に通された。俺はまた袋に潜り込んでアッシュに担がれている。
ラムダスに続いて部屋の中に入ったアッシュが息をのむ音が聞こえた。

「良くぞ、会いに来てくれたな・・・ アッシュ、ルークよ」
「さあ、顔を良く見せてちょうだい・・・ ああ、ルーク、アッシュ」

アッシュがゆっくりと歩いていく。声は母上と、・・・父上のものだった。


無言のままアッシュが俺を降ろし、袋の口を開いて俺を立たせた。
立ち竦んで声も出せない俺たちに二人は歩み寄ってきて、交互にギュッと俺たちを抱き締めた。

「聖夜に、なんて素敵な贈り物でしょう・・・ねぇ、あなた」
「・・・うむ。息子たちが生きていてくれた、それだけで何にも代え難いことだな」

優しく微笑む父上と母上に、胸がいっぱいになる。アッシュも耳を赤くして涙をこらえている。


「父上、母上・・・今まで帰らなくてすみませんでした。でも、俺、アッシュと一緒に世界を見たかったんです!」

「今まで生きていたことも伝えず、申し訳ありませんでした。・・・しかし俺は、俺たちは王族として生きて行くより人々の中で生きて行きたいのです。どうか、帰らぬ事を御許し下さい」


優しく微笑みながら俺たちの言葉を聞いていた父上が、手を伸ばしてアッシュの頭を撫でた。
まるでアッシュが俺にするみたいに。

「お前たちは、その命をかけてもう十分立派に王族としての責務を果たしたではないか。良いのだ、もうお前たちの望むように生きなさい」
「二人とも、何処に居ても私たちの自慢の息子達ですよ。今まで苦労をかけてごめんなさい。あなた達が幸せになってくれれば、それで良いのですよ」

アッシュが父上に縋り付いて泣いている。ラムダスが貰い泣きしながらそっと部屋を出て行ったのが見えた。
母上が、俺を抱き締めて、そっと背中をさすってくれた。

あとはもうぐちゃぐちゃに泣いちゃって、なんにも見えなかった。

 

俺とアッシュは父上と母上の部屋で一晩中話をした。
疲れちゃうからベッドに横になった母上の周りで、ワインや暖かいココアを飲みながら。

今までどんな事があったとか、俺とアッシュは交互に話した。(アッシュが俺を育ててくれた話をしたら、真っ赤になったアッシュに殴られた)
先に休んだ母上を起こさないように、父上が小さな声で話をしてくれる。
俺たちは小さな子供に戻ったみたいに、並んでベッドに肘をついて父上といろんな話をした。


・・・なぁアッシュ、俺たちって、愛されていたんだな。

 

緊張してたのか、いつの間にか俺は寝てしまって、気付いたら自分の部屋でアッシュと一緒に寝てた。
どうもアッシュが俺を担いで連れてきてくれたらしい。(・・・姫抱っこでない事を祈る!)
回らない頭でもぞもぞ起き上がったら、まくら元に綺麗なリボンのかかった箱が二つ置いてあった。

「なあなあアッシュ、これ何だろう?」
「ん~・・・?」

眠そうなアッシュが起き上がる。俺の持つ箱を見て首をかしげた。
俺たちは箱に添えてあったカードを見て、そろって顔を見合わせた。

 

『アッシュ、ルーク。貴方達はきっと帰ってくると思って、毎年贈り物を用意していたのです。
受け取ってくれると嬉しいわ。 今日は一緒に朝食をとりましょう。  

聖者に感謝を・・・ 
シュザンヌ・クリムゾン   』



照れくさそうに笑って包みを開けるアッシュ。
中にはお揃いのペンダントが入っていた。
ロケットになっていて、蓋を開けると俺とアッシュの子供の頃の精密画が描かれている。
良く見ると、蓋の部分は赤い繊維のようなものでファブレの家紋が形作られている。

「これは・・・髪だ。この色は父上と母上のものだな」

アッシュは瞬きもせずにそれを見つめている。俺も指先でなぞりながら、そのロケットを握り締めた。

父上と母上に包まれて、小さい頃の俺とアッシュが笑っている。
・・・・・・嬉しかった。

 

部屋を出ると、使用人や騎士たちは何も言わないまま、優しい目で俺たちを案内してくれた。
俺たちの事は、気付かないふりをしてくれるらしい。
皆、泣きそうな顔で嬉しそうに微笑みながら俺たちを見守っていてくれている。


朝食の席には父上と母上が待っていてくれていた。
俺たちが部屋に入ると、席を立って迎えてくれる。

「聖者に感謝を・・・ おはよう、アッシュ、ルーク。 今日は大切な人と過ごす日なのよ」

そう言って母上が俺とアッシュの頬に交互にキスをした。

「アッシュ、ルーク。生まれてきてくれてありがとう」

父上も同じように俺とアッシュにキスをして、おまけに母上の頬にもキスをした。
「お前たちが生まれてきてくれたことに感謝する。・・・シュザンヌ、この子を産んでくれてありがとう」

俺は嬉しくなって、父上と母上にキスを返したあと、真っ赤になってるアッシュにもキスをした。

「アッシュ、俺、生まれてきて良かった。アッシュも、生まれてきてくれてありがとう」

アッシュはびっくりしたように俺を見て、ふわっと解けるように微笑んだ。
頬に優しく唇が降ってくる。


「ルーク・・・生まれてくれて、ありがとう」

 

俺は生まれてきて良かったと、そのとき心の底から、そう思った。


 

みんなに感謝と、ありったけの愛を!

 



 

 2008 メリークリスマス! でしたv 

 

 

※メリークリスマスって言わせるのも変かと思ったので「聖者に感謝を」と言ってもらっています。
 そして良く考えると、アッシュはサンタさんの格好で両親と会っています(笑)


 

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