拍手再録です。 仲間厳しめ? ギャグ。
『 月華幻想 』
セレニアの野に降り立った赤い髪の男は、呆然とこちらを見るかつての『仲間』たちを無表情に見つめた。
長い髪の少女が感極まったように震える声でその名を呟く。
「・・・ルーク・・・・・・!」
金髪の青年が、人形を持った少女が、涙を浮かべた王女が走り寄ろうとしたその時。
駆け寄る仲間たちの前で、紅い髪の男はセレニアの花に埋もれるようにゆっくりと倒れていった。
月の光の下白い花に囲まれて眠る『ルーク』は、透き通るように美しく、まるで今にも消えてしまいそうに儚げに見えた。
ジェイドが手早く診察し、ガイがそっと抱きあげてタタル渓谷を抜けていく。
ナタリアが、ティアが涙を浮かべてそっと寄り添い、アニスは無理に微笑んで明るくふるまっていた。
やはりルークはどこか悪いのかしら・・・
でも少しくらい体に異常があっても、ルークは自分たちの所に帰って来てくれたのよ。
やっと戻って来てくれた。これからは精一杯支えてあげよう。
ルークは私たちの仲間なんだから!
「ウゼェ・・・! やっぱお前が帰れ! 俺はもうあんな所に戻りたくねぇ!」
「ええぇ~ 俺だってヤダよ! アッシュの根性無し! 10秒しかもたなかったぞ!」
「顔合わせた瞬間に人のトラウマ刺激してくれやがって! お前の『仲間』、ホントに区別つかねぇんだな!」
「あいつらが自分の見たい物しか見て無いのなんて、今更だろ?」
「・・・・・・次はお前が行け。俺はしばらくあいつらの顔は見たくねぇ」
「ええぇ~! ずりぃ!」
「「ったく、ローレライの野郎! 余計なことしやがって!」」
実のところ、死んだアッシュも乖離したルークも生き返ろうとはこれっぽっちも思っていなかった。
大爆発? それってなに、俺たちに関係あんの? ってなカンジである。
二人とも、勝手なことばかり言う人間たちにもういい加減うんざりしていたのだ。
音譜帯でふよふよと微睡んでいた二人の、余りに潔い死にっぷりに涙したローレライが(おせっかいな事に)足りない音素をかき集めて、やっとの事で一人分の身体を作り上げて二人を目覚めさせた時、返ってきたのは盛大なブーイングだった。
すんごい嫌そうに生き返ることをなすりつけ合う二人にローレライは別の意味で涙した。
腕相撲から始まって剣の勝負、殴り合いでも決着はつかず、結局ハシゴみたいなあみだくじで負けたアッシュが地上に降りる事になったとき、恨みのこもったアッシュの視線にびびったローレライはしばらく雲隠れしてしまったくらいだ。
そんでもって、戻った早々ルークに間違えられたアッシュは、あまりの拒否感から身体から抜けて戻って来てしまったのだった。
ベルケンドで診察を受けたルークの身体に、異常は見られなかった。ただ眠っているだけなのだが眼を覚ます気配が無い。
ジェイドは昏々と眠るルークをバチカルに連れ帰ることを提案する。それに反対する者はいなかった。
鳥籠のような離れの部屋の広いベッドに、長い赤い髪をした青年が横たわっている。
父と母が見守るなか、その瞼が震えうっすらと翡翠が現れた。
「おお・・・ルーク!」
泣き崩れる母や硬く手を握りしめる父に苦笑するような笑みを浮かべたルークは、そっと身体を起こした。
報告を聞き集まってきた仲間たちが、手荒くルークを歓迎する。
どの顔も泣き笑いで嬉しそうに輝いている。
そんな中、一人壁際に立っていたジェイドが近付いてきてルークに小声で問いかけた。
「・・・あなたは、アッシュですね?」
一瞬目を見開いた『ルーク』は、ゆっくりとその場に崩れ落ちていった。
「うあぁ~! 間違われんのって、ホントに不快だわ! アッシュの気持ちがわかったぜ!
俺ももうあんな所に戻りたくヌェー!」
「っだろ? お前だって10分しか持たなかったぜ。人の事笑えねぇな!」
バリバリと頭をかきむしるルークを鼻で笑うアッシュ。
二人は顔を見合わせると心底嫌そうに溜め息をついた。
拳を握りしめるとお互いに睨み合う。決闘の時より真剣だ。
・・・・・・この勝負、負けられない。
「「せ~の! じゃんけんぽん!あいこでしょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!・・・」」
あの瞼が閉じられてしまう前に一瞬見せた、傷付いたような瞳の色が胸に刺さる。
音も立てずに倒れ込んだルークは、聞こえないほどのかすかな吐息を漏らして身動き一つせずに横たわっている。
日に焼けていない白い肌は、まるで雪で作られた人形のようだ。
今にも溶けてしまいそうだという不吉な考えを振り払う。
まさかこのまま・・・ いや、そんなことはあるはずが無い。
またあの無垢な微笑みを見せてくれよ。
俺たちがきっとお前を助けてみせる!
46回のあいこの末にじゃんけんで負けたアッシュが下界に降り、戻ってきたのは降りてから三秒後の事だった。
眼を開けた瞬間、枕元のガイに「ルーク」と呼びかけられ、その場で昏睡状態になったのだ。
次に取っ組み合いの末にアッシュから引き抜いた髪で作ったくじではずれを引いたルークが嫌々ながら身体に戻り、やっぱり10秒で帰って来た。
不機嫌そうに眉間にしわを寄せて眼を開けたルークに、ナタリアがアッシュと呼びかけて手を握ったのだった。
「うあああ・・・もう耐えらんねぇ! 俺はあいつらの顔を見るだけで条件反射的にこっちに戻って来ちまうぞ!」
「そりゃ、俺も同じだよアッシュ。もー、あいつらの顔見たらムカついてムカついて・・・
一瞬で現実逃避に陥るぜ。 あいつらさっさとどっか行きゃ良いのに、いつまでもいつまでも居やがって!
俺たちに恨みでもあんのかよ、ってんだ!」
微かに目を開いたルークは、私たちを見て何か呟きかけるとすぐにまたその眼を閉じてしまった。
一体、彼の身体に何が起こっているの?
ルークは一瞬覚醒しては昏睡に陥ることを繰り返している。
身体を調べても異常は見つからず、ただ眠り姫のように静かに眠り続けている。
仲間たちは彼がいつ眼を覚ましても良いように、交代でルークを見守ることにした。
私達が、絶対あなたを救ってみせる!
ずっと貴方の傍に居るわ・・・ルーク。 だから、早く眼を覚ましてちょうだい。
・・・無理。
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