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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2009.04.26,Sun

ED後二人帰還  超素直になったアッシュ

※アッシュとルークは兄弟的に仲良し。 仲間厳しめ、のような。



 

『正直者のススメ』

 

ローレライを解放して2年後、タタル渓谷に集まった仲間達は、そこで奇跡を見た。

「・・・それに、約束してたからな」

木霊のような最後の一音を残し暗闇に沈む大譜歌に導かれるように、二つの焔がセレニアの野に降り立ち皆の前に姿を現した時、歓喜に包まれて二人はもみくちゃにされた。
ルークが微笑み、アッシュが軽く肩をすくめて苦笑する。
哀しみの涙は喜びの涙に変わり、その余韻はなかなか覚める事が無かった。
やっと、誰かが場所を移すことを提案する。

連れ立って渓谷を降りようとする一行に爽やかに笑いかけたアッシュは言った。

「じゃあ、俺はここから別行動にするから元気でな。頑張れよルーク!」

手を振り去っていこうとするアッシュに、ぽかんとしていた仲間達はあわてて引き留めた。

「待てよアッシュ! どこへ行こうって言うんだ」
「まぁ、なぜですの! せっかくこうして帰って来れたのに。伯父様たちもきっと喜んで下さいますわ」
「せっかく二人で帰ってきたのだから、ルークもきっと一緒に居たいはずよ」
「そうだよ~、アッシュ。いい加減に素直になったらぁ?」

振り向いたアッシュは眉間にしわを寄せる。そんな不機嫌そうな顔は以前と変わりない。しかし飛び出した言葉は以前からは考えもつかないものだった。

「ああ? 俺はこのうえもなく素直だぞ。こいつと音譜帯に居る時に、俺はこれからは自分に正直に生きると心に誓ったんだ」

アッシュが素直? それは何の冗談だと(ルーク以外の)一同があっけにとられる。
しばしの沈黙の後アニスがおずおずと問いかけた。

「・・・んじゃ、何でよ?」
「・・・・・・それを聞きたいのか?」
「う、うん」

真面目な顔で一同を見つめてくるアッシュにたじろぎながらも言葉を返す。
何か嫌な予感がする。


「・・・・・・実はな。お前らと居るのは苦痛なんだ。だからあんまり顔を合わせたくねぇんだよ」

アッシュは腕を組みちょっと遠い目をした後に、真っ直ぐに皆の方を見るといきなり話し出した。
超真顔のマシンガントークに口をはさむ隙もない。

「俺は厭味交じりにからかわれるのは嫌だし、高飛車に罵られるのも嫌だし、隠し事されたあげくに小馬鹿にされるのも嫌だし、ガキの頃の口約束をいつまでも盾に取られるのも嫌だし、俺の所為でもない事でいつまでも恨まれるのも嫌なんだよ。だからお前らとは極力会いたくねぇ。
ついでに言うと、あの堅苦しい家で腫れものにでも触るような扱いをされるのも嫌だ。ルークと比べられるのも嫌だ。お互いの足を引っ張る事しかしねぇ貴族どもと腹の探り合いをするのも嫌だしキムラスカの為だなんだと色々我慢するのも嫌だ。国を治めるなんて面倒な事、御免被る。
・・・・・・んなわけで俺はトンズラさせてもらう」

あまりのぶっちゃけように唖然としていた一同をすっきりした顔で眺め、スチャッと片手を上げたアッシュに、ハッと己を取り戻したナタリアが追いすがる。

「酷いですわ、アッシュ!」
「そんな言い方はないだろう、アッシュ」

憤慨するナタリアを宥めるようにガイがアッシュに言葉をかける。どうもアッシュの言った内容は彼らの頭には届かなかったようだ。あまりに素直な言葉は、廻りまわってひねくれて聞こえるらしい。
相変わらず口が悪いな、と苦笑したガイは、肩をすくめて困惑したように続けられたアッシュの言葉に固まった。

「や、だいたいナタリアやルークはともかく、初めからお前らと仲間とか友人とか言った付き合いはしてねぇだろうが。眼鏡や導師守護役や髭の妹なんか数回しか話した事もねぇぞ」

まぁそうですね・・・とジェイドは眼鏡に手をやったが、誰も聞いていない。

「まぁ! ガイはこれから貴方と新たな関係を作りたいと言っていましたのよ!」
「そうなんだ、アッシュ。俺はお前と新しい関係を作ろうと思って・・・」


自分がアッシュを許しさえすれば対等な友人関係を築けると思っていたガイは、思いもかけないアッシュの言葉に茫然となった。
アッシュは心底不思議そうに首を傾げながらガイに質問を投げかけたのだ。

「・・・・・・ガイ。お前の後悔や自己満足になんで俺がつきあわなければならないんだ? だいたいファブレ家と縁を切った俺に、おまえと何のかかわりがあるんだ。何もないじゃないか。一から関係を作りたいほどの何かが俺とおまえとの間にあったか? 俺はお前に憎まれてた記憶しか無ぇぞ」

「ガイは幼馴染ではありませんか!」

「ナタリア・・・ 幼馴染だと思っているのはお前だけだ。だいたい夜中にナイフを握り締めて枕元に立たれてみろ。ちょっとしたトラウマだぞ? トラウマを克服するなんて多大な努力を、何で俺がこいつの為にしてやらなければならないんだ。そこまでしてやるほど俺はこいつを好きじゃねぇよ。
新たな関係を作るなら、俺はもっと気の合う奴らと友人になりたいぜ。
ナタリア・・・お前の事は大切な幼馴染だと思っている。だけど悪いな、俺はもうお上品な貴族には戻れねぇ。お前は王女である事を選んだんだから、一般人を選んだ俺とはもう釣り合わない。初恋は実らないもんだって言うだろ? お前もガキの頃の約束なんかにいつまでもこだわってるなよ、10年もそればっか言い続けられたら普通の男は引くぜ? 俺の事は忘れて早く良い人見つけろよ。・・・幸せにな」

アッシュはとてつもなく素直だった。
主に眉間の皺あたりにため込んでいた『ずっと言いたかった事』を爽やかな笑顔でとうとうと喋りまくった。
アッシュは言葉でコミュニケーションをとるのが苦手な事を自覚していた。今まで言いたいことが言えない環境で育ってきた弊害だ。その結果はどうだ! 皆に恨まれ、必要な事も聞き入れてもらえず、イライラだけが貯まり自ら全てを抱え込んで自滅した。
ハッ! 馬鹿くせえ!
 
とてつもない正直野郎になったアッシュは無敵だった。言いたい事を心置きなく喋りまくるアッシュの顔は晴天の青空の様に晴れやかだ。
どんどん皆が無言になって行く。

苦笑しながら無言でやり取りを聞いていたルークが、耐えきれないように笑い出した。
身体が出来るまでの2年間、音譜帯で二人で言いたいことを遠慮なく言い合ってきたのだ。
アッシュが本当はどんな奴かなんて、ちゃぁんと分かっている。

「アッシュ・・・お前ちょっと素直すぎねぇ? 俺にばっかキムラスカを押しつけるのかよ。それに文無しで一人旅って辛くね?」

ちょっと片眉を上げたアッシュは、ぽんとルークの肩に手を置くと真面目な顔で視線を合わせた。

「ルーク、ちょっと考えてみろ。俺がファブレ家に戻るのと、キムラスカと縁を切って気ままに生きていくのと、どっちが幸せだと思う? 俺がこの腕一本で食っていけねぇ甲斐性無しだと思ってんのか?
戻れば俺は犯罪者だぞ。ヴァンの部下であり、カイツールの襲撃もしている“六神将、鮮血のアッシュ”はエルドラントで罪を背負って死んだ。それをみんな知ってるんだろう? 俺が戻らなければ全て丸く収まるじゃねえか。お前と違って俺はがっつり死んでたんだし」

「・・・・・・それもそうなんだよな。でもなぁ~アッシュばっかずりぃ。それに寂しいよ、せっかく仲良くなれたのにさ」

不貞腐れたように唇をとがらせながら恨みがましい眼で睨んでくるルークに、苦笑したアッシュが肩を抱いてぐしゃぐしゃと髪を掻き雑ぜた。

「ルーク、そんな顔すんな。何もお前が嫌いなわけじゃねぇよ。だがな、四六時中一緒に居なくても良いだろ? お互い元気にやって、時々連絡でも取ればいいじゃねぇか。それが普通の兄弟の付き合い方ってもんだろ? お前はお前だ、もう俺にこだわる必要なんかねぇんだよ」

手荒く頭を撫でられたルークが嬉しそうにアッシュに抱きつく。

「アッシュ、本当に俺の事兄弟だって思ってくれてるんだな・・・」
「ああ。・・・俺の事は家を飛び出した不肖の兄貴とでも思えよ。どこに居たって兄弟の絆は切れやしねぇ」

穏やかに笑って抱擁を返したアッシュは、活を入れるようにルークの背中を叩いた。

「今まできつい事言って悪かったな。本当は前からお前の事は認めていたんだ。お前は十分ファブレの跡取りとしてやっていける。実力はあるんだ、堂々とそれを示せ!」
「よっしゃわかった! キムラスカは俺に任せろ、アッシュ!」

激励されたルークは拳を握り締め、堂々と胸を張って叫んだ。やる気がぼうぼうと燃えている。
満足そうにその姿を見たアッシュは、笑いながらひらひらと手を振った。

「あんま、責任がどうのとかうるさい事言いやがったら、おまえも逃げてこいや。身体壊すほど無理すんじゃねーぞ。じゃーな、ルーク」

「おう! アッシュもたまには顔出せよ! じゃぁまたな!」

満面の笑顔で手を振りながら去って行くアッシュを、こちらも満面の笑みで見送ったルークは笑顔のまま一同を振り返った。

「さ、みんな。さっさと帰ろうぜ!」

無言だった一同からおずおずと声が掛る。
「あの・・・ルーク。アッシュのあれ、冗談か何かよね・・・?」

ルークはぴたりと真顔になった。

「や、あれ、アッシュの超本気。 音譜帯で俺たち記憶を共有したから」


にやり、と黒く笑ったルークはすたすたと渓谷を降りていく。あわてて後を追った一行に、上機嫌なルークの声が届いた。

「俺、戻ってくるまでの2年間、音譜帯でアッシュと二人で言語スキル磨いてきたんだ。・・・・・・楽しみにしててよ、みんな」


なぜだろう、悪寒がする。
何かとてつもないものを召喚してしまったような嫌な予感に苛まれながら、一行は無言のまま歩きだした。

 

 


 

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