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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.09,Tue


閑話   砂漠の少女のはなし       (3話と4話の間辺りになります)

 


 
「あっちー! マント取っちゃダメか?」
「髪を晒してはダメです。日差しが強いので、むしろ着ていた方が涼しいですよ?」
ばてるルークに濡れタオルを渡しながらシリウスが笑う。

「あ~ずるい! ルークばっかり! アニスちゃんにもお水ちょうだい!」
「砂漠で水を無駄にするわけにはいかないんですけどねぇ」
「わたくしにもお水をいただけるかしら」
「ちょっとあなた、女の子にももっと気を払ったらどうなの! ナタリアにマントを貸したらどうかしら」

不満げな同行者ににっこり笑う。
「私はルーク様の護衛ですから、他の方のお世話は職務に含まれておりません。砂漠越えは初めからわかっていたでしょう? 何故準備しなかったのか理解できませんね。それにルーク様の髪を人目に晒す愚行は犯せません。水はこうして・・・」
小さく呟く詠唱とともに手の中の鍋に氷が降り注いだ。
「作っていますから、水筒の水を無駄にしている訳では有りませんよ。さあ、休憩にしませんか」
 

ローストチキンをベーグルに挟み、一口齧ってルークに渡す。スープも同じようにして渡すとむっとしていたアニスが声をかけた。
「主人より先に食べちゃっていいのぉ~?」
シリウスは何を言われているか解らず、振り向いた。
「は? ・・・もしかして導師守護役は導師の毒見をした事が無いんですか?」
「ええ?そんなの・・・だって」

目を白黒させるアニスは放って、周りに声をかける。
「皆さんもどうぞ。今回は私が準備しましたが、これからどうしますか? ルーク様の分は私が作りますが、さすがに全員分の食料を携帯してはいませんから」
「ルークの分を作るんなら、ついでに作ってくれないか? すごく美味しいし」
ガイの言葉に頷き、続ける。
「じゃあ、料理中の警戒は頼みます。食料は分担して持って、その都度渡してください」

ベーグルサンドをぱくついていたルークが機嫌よく話しかける。
「シリウスって料理も上手いんだな! すっげえ美味しい」
「この間は急すぎて準備できず、腕を揮えませんでしたね。料理は昔から得意なんですよ。昔、傭兵部隊に居た頃、部隊中の食事を作っていましたから」
「へぇ、傭兵だったんだ」
「ええ。ファブレ公にも作った事ありますよ」
「ええ?シリウスって何歳なの?」
「27です」
「父上が最後に戦争に行ったのは、15年も前だって聞いたけど? ・・・確か」
「ホド戦争だ」

僅かに硬い表情でガイが口を挟む。
「あんたはホド戦に参加したって言うのかい?そのころはまだ子供じゃないか」
「私は両親が傭兵だったので、走れるようになった頃から戦場に居ましたから。戦闘以外にもけっこう子供がやれる事は多いんですよ」
「ホドはどうだった?」

皮肉げなガイの言葉に、遠くを見たシリウスは微笑を浮かべながら歌うように続けた。
「とても綺麗なところでした。ホドが落とされると知った母は、私を本陣まで走らせました。そして、私と同い年の子供を助ける為に行きました。それきり戻ってはきませんでした」
シンとなってしまった周囲に振り帰り、ルークの頭を撫でて苦笑する。
「ああ、そんな顔しないで。母は自分の選択を後悔しないでしょう。私もね。こんど公爵様の話をお聞かせしましょうね」
 

場を和ませようとしたのか、ナタリアが手を打って声を上げた。
「そうですわ、シリウスばかりに料理を任せては悪いですし、次はわたくしもお手伝い致しますわ!」
廃工場で、ナタリア持参の手作りサンドイッチに悶絶した一行は(もちろんルークには食べさせていない)顔を引きつらせた。

「・・・ナタリア様、一つお話を致しましょう」
「なんですの? シリウス」
「ある砂漠の村に、女の子が居ました。女の子は町に隊商が来たせいで父親が遊んでくれなかったと、腹いせにおなかを壊す木の実を隊商の水樽に混ぜてしまいました。隊商はそんな事も知らず、砂漠を進んでいきました。途中、一人倒れ、二人倒れ、気付いたときには砂漠の真ん中でみんな倒れてしまいました。お腹を壊して脱水症状をおこした人達は、すぐに水を飲みきってしまったのです。隊商は皆干からびて朦朧と死を待つばかりになりました」
「そ・・・それでどうなりましたの」
「ちょうど通りかかった傭兵が、水と薬をあげて助かりましたよ」
「良かったですわ!」
「ナタリア様。この話の教訓は、『砂漠で腹を壊すと死ぬ』です」
 
 
ガイが笑いながら近寄ってきた。小声で話しかける。
「なあ、さっきの隊商の話、作り話だろう?」
「・・・・・・本当ですよ。通りかかったのは私ですから。とても聞かせられなかったけど、あの話には実は続きがあるんです」
「なんだい、教えろよ」

「私が通りかかったとき、隊商の半分の人がすでに死んでいました。木の実を入れた女の子の家族は村を追放されました。女の子の父親は、水に毒を入れたものは殺すという村のおきてに従い、泣きながら女の子を砂漠で殺しました。おしまい」

青ざめたガイを残してシリウスは歩き出した。
 


 

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