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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.05.15,Wed
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Posted by tafuto - 2007.11.02,Fri

 


近くに待たせてあったアルビオールに向かう。ギンジがぎょっとしたようにこっちを見た。
「・・・アッシュ、さんですか・・・? 」
「・・・ああ」

穏やかに微笑むその瞳からは、とめどなく涙が落ちていた。
「あいつらと会いたくねぇんだ、出してくれるか?  ・・・どこでも良い」
遠くから走ってくるルークの仲間たちの姿を見て、慌ててギンジはアルビオールを発進させた。
 

アッシュは部屋に篭ったまま、長い間出てこなかった。
 
 
 


 
 
「どうして一緒に行動しないというの! 」
「我侭もいい加減にして欲しいですね」
「なんで先に行ったんだよ! 」

ティアが激高し、ジェイドが冷たく言った。ガイはアッシュを睨みつけている。
 


アッシュは丸一日後にダアトに戻ってきた。
各国の王や重鎮達と今後の事について話し合っているところだ。
アッシュはルークの仲間たちとの同行を拒否した。
「おれはルークじゃない。お前達の仲間じゃない。 ・・・昨日一日ルークの記憶を見ていた。それで俺なりに出した答えだ」
「何故だ! 」
ガイがアッシュに詰め寄った。
 
「お前がそれを言うのか?  復讐者ガイラルディア。俺に対する憎しみは強く残っているくせに。俺は後ろから刺されるのはごめんだ」
ガイがぐっと詰まる。
「眼鏡、お前ずっと前から大爆発の事知ってたろう。なんでその時手を打たなかったんだ。
・・・お前は俺達なんかどうでも良かったのさ。自分の研究が立証されるのが見たかったんだろ? そんな奴と行動出来るかよ。ルークの無知を嘲笑いながら、何も教えなかったくせに」
「・・・・・・一人でなにが出来るのです」
 
無表情で言葉を返すジェイドにアッシュは笑った。
「否定はしないんだな。・・・いい事に気付かせてくれた、死霊使い。別に俺がヴァンを倒さなくても良いんじゃないか。お前らがやれよ、俺は護衛を借りてローレライの開放をするから」
「なに言ってるのよ。あなたが来ないと前衛が足りないわ! 我侭言わないで」
ティアが詰め寄る。アッシュはこらえ切れないように大声で笑い出した。
 
「ははははっ! 結局ルークは良いように使われてただけか。前も言ってたな、剣を持ってるなら戦うのが当たり前と、ままごとの剣しか習ってない、王族で民間人のルークを自分の盾にしたな。・・・お前は一体何様なんだ。俺はお前の勝手な常識とやらに振り回されるのはごめんだ」
眼を吊り上げるティアを放置して、アッシュは振り返る。
「導師守護役、お前分かっててタルタロスの140名を死に追いやったのに、なんでルークをあんなに責められるんだ。導師イオンまで殺して、なんでお前は罪を償わない? 」
青ざめるアニスからナタリアに視線を移す。
「約束を思い出せの一点張りで、ルークを追い詰めていたナタリア。アクゼリュスの後の掌の返しっぷりは俺でも唖然としたぜ? お前、バチカルでヴァンがルークに亡命を勧めてたの知ってて、それを脅迫のネタにしたろ。その時にヴァンが捕まってたら、とか思わないか? ・・・そんな奴と約束した自分が阿呆らしいぜ」
口を覆って青褪めるナタリアから、アッシュはピオニーとインゴベルトへと向き直った。
 


「こいつらと同行できないのは、今言った理由からです。俺は、信用できない連中とは行動を共にしたくない。ヴァンの討伐は勝手にやってください。ヴァンが死んだらローレライを解放します」
ルークの仲間たちの態度と、アッシュが語った内容に唖然としていた王達は、深く溜息をついた。
アッシュが同行を拒否するのは仕方が無い事かと思う。ローレライを解放する前にアッシュの身に危険が及ぶ可能性もある。
「分かった、認めよう。アッシュには選りすぐりの兵をつけてやろう。ジェイドたちには前衛を貸してやる。それで良いだろう」
「ちょっと待ってください! 」
言い募るティアを、インゴベルトは冷たく見返した。
「お前は前衛が要るだけと、今言ったではないか。・・・アッシュが言った事が本当なら、お前らは皆、極刑に値するだけの事をしているのだぞ? 不満なら他のことを考えても良いのだが」
 
「感謝します、陛下」
ティアを遮るように進み出、穏やかに笑ったアッシュは、部屋を出て行った。
ルークに良く似た微笑が、こちらを一瞥もせず消えていった。
消えたルークが、自分達の罪を突きつける存在となって帰ってきた。
 


 
不満そうな『仲間たち』にインゴベルトが話しかける。
「ナタリア、亡命幇助は重罪である、それを脅迫などという愚かな事を・・・分かっておろうな。王位継承権剥奪を言い渡す。ヴァンとの戦いに同行して贖罪せよ」
「お父様! 」
インゴベルトに縋るナタリアをよそに、ピオニーも話を始めた。
「ジェイド・・・お前は大爆発のこの結果を初めからわかっていたのか」
「・・・あの論文を書いたのは、私ですから」
「・・・ジェイド、お前って奴は・・・・・・ジェイド・カーティス、軍位剥奪を命じる。ガイラルディア、お前にはキムラスカへの立ち入りを今後一切禁じる」
「ピオニー陛下! 俺が何故! 」
「お前達はこの時期に、二国間の戦争の火種になるつもりか? ガイラルディア、お前がアッシュをいまだ憎んでいることくらい、誰が見たってわかる。二人ともヴァン討伐に同行しろ」
 
「陛下! 私達は世界の為に頑張ってきたんです! 」
ピオニーに向かって叫ぶティアに、疲れた様にトリトハイムが言った。
「皆、ルークには贖罪の為と言い続けてきたのだろう? ルークは罪を償ったではないか。・・・ティア、アニス。教団位の剥奪とダアトからの追放を言い渡す」
「何故です! 」
「まだわからんのか? ティア、うやむやになっていたが、公爵邸への襲撃と誘拐、王位継承者への不敬と戦闘への強制参加は2親等まで死罪になるほどの重罪だぞ。そんなつもりじゃなかったでは許されん事なのだ。アニス、導師イオンの死に関わっていたお前も同罪だ。二人ともヴァンを討つ事で死罪にならずにすむのだ。心して贖罪するように」

納得できないと叫ぶティアたちを、兵士が丁重に部屋から連れ出していった。
後には溜息をつく王と重鎮達が残された。
 


「・・・わしらも同罪だ。何と言ってルークに詫びれば良いのだ」
「アッシュにもでしょう。ギンジが大爆発が完了した時の事を話してくれました。彼は思い出したら泣いてしまいましたよ」
インゴベルトの言葉に、ピオニーが頷く。クリムゾンは深く項垂れた。
・・・もう、取り返しがつかない。
 
 

 

 
エルドラントを望むタタル渓谷の奥に護衛騎士と共にアッシュは来ていた。
 
ケセドニアで突入作戦の打ち合わせが行われたが、ギンジを行かせる事をノエルが嫌がった。
ノエルは同行者達に不快感を抱いていたのだ。
「私は、あなた達の為に自分の命をかけるのも、兄の命をかけさせるのも嫌です。あなたたちのルークさんに対する態度は私から見ても酷すぎました! 」
強い口調で話すノエルに、今まで仲間だと思っていた同行者はショックを受けた。
 
ギンジは苦笑する。
「どうしても行けって言われれば、しょうがないから行きますけど。おいらはアッシュさんしか乗せたくないです」
 

困り果てた各国の将軍達にアッシュが助け舟を出した。
「あのバリアと対空砲火が問題なんだろう? なら、それを何とかしてやるから、後はヴァンのところまで頑張って行ってくれ」
アッシュはギンジのアルビオールに乗って、タタル渓谷まで出向いたのだ。
エルドラントにアッシュが手を翳す。
手の中に膨れ上がった光はエルドラントの譜業砲を貫いた。同時にバリアが無効化される。
アッシュは第二超振動をエルドラントに向けて放ったのだ。
ゆっくりとエルドラントが落下していった。
「さて、これで邪魔はなくなっただろう? 」
 
 
 
譜業砲とバリアの無効化と共に突入作戦が行われる事になっていたが、アッシュが戻るまで、一行はもたもたと留まっていた。
ティアとアニスはアッシュの顔を見るなり怒鳴りつけた。
「あんな力があるなら、最初から手伝ってくれても良いじゃん! 」
「そうよ、貴方だってルークに辛く当たっていたくせに! 」
 
その言葉にアッシュと同行していた騎士達は眉を顰めた。労う事もしないのか、と。
アッシュは笑って言葉を返す。
「お前らは何の為に行くんだ? 」
「そんなの、世界を救う為じゃない! 」
「違うな。お前らは王達の命で贖罪の為に行くんだろう? 俺が手伝ったら何にもならないじゃないか」
詰まるティアやアニスに続ける。
「俺は、俺の半身を世界に捧げたろう? まだ俺から何か奪うのか。今度は俺をお前らの盾にしようというのか? お前はルークに言ったろう、ルークが償うのをずっと見ている、と。今度は俺が見ててやるよ。だけどな、『いつでも見限る事が出来る』ぜ」
「アッシュ! てめぇがルークを乗っ取ったくせに! 」


「・・・大爆発を、俺に何が出来たというんだ。なぁバルフォア。俺が死んでもルークが生きることも出来ないと知ったときの、俺の気持ちがわかるか」
 
 
青ざめ、睨みつける一行に笑いながらアッシュは背を向けた。
剣を抜きかけるガイに、護衛騎士の槍が突きつけられる。アッシュは気にせず、ティアたちの前衛に選ばれた騎士達に近寄った。
「ご苦労だな。大変な仕事をさせてすまない。怪我の無いようにしてくれ。・・・これを持って行け。ヴァンの奥義を無効化するキャパシティコアだ」
「はっ、ありがたき幸せ! でも良いのですか? こんな物を私たちが頂いて」
「良いんだ、俺が作ったんだから。こんな事で死ぬことは無い。生きて戻れよ」
ティアたちには、不満げに見られるだけで感謝される事も無かった騎士達は、感激してそれを装備した。防御力が大幅に上がるそれに感動し、騎士達はアッシュに深く感謝を捧げた。
 
 

 
落下によって開いた穴から、一行はエルドラントに侵入した。
ティアたちに先行させ、アッシュと護衛騎士は魔物を狩りながらゆっくりと進んでいった。
レプリカの魔物はアッシュが手を一振りすると光になって消えていった。役に立たないと恐縮する騎士にアッシュは哀しげに笑う。
「いいんだ。付いて来てくれるだけでルークは喜ぶだろう。あいつは俺がひとりで行動することを嫌がったから」
 


しばらく進んで行くとシンクと戦っている一行がいた。
シンクが荒く息を付きながら奥義を出そうとしている所に、アッシュが歩み寄っていく。
パシンと音がして、アカシック・トーメントが相殺された。
「なあ、シンク。もうほっといても預言は覆されるぜ? こんなところで死ぬなんて、馬鹿みてぇじゃねえか。あんな奴に義理立てするのはお終いにしようぜ」
追い討ちしようとする一行を手を振って止める。
「何いってんのさ、あんた馬鹿じゃないの? 」
 
冷笑するシンクにアッシュは笑いかけた。
「ルークはお前に生きて欲しいと望んでいた。俺と来いよ。一緒にレプリカの町を作ろうぜ」
瞠目するシンクに話し続ける。
「俺の身体も、もうレプリカみてぇなモンだ。けどな、もう利用されんのは真っ平なんだよ。お前も好きに生きちまえよ」
シンクは笑い出した。
「あはははっ! あんたのいう通りかもね、燃え滓」
「うるせぇぞ出来損ない。来んのか来ねぇのかはっきりしろ」
「わかったよ。僕はあんたに付く」
 
力を抜いてアッシュに歩み寄って行ったシンクを、ティア達は唖然として見つめた。
「ちょっと! 勝手な事しないでちょうだい! 」
「そうだよー、こいつは六神将なんだよ! 信用できないよ」
呆れはてたようにアッシュはアニスを見る。
「俺だって元六神将だろうが。それに、元モースのスパイがそれを言うのか? 必要も無い殺しをするのがお前達の正義かよ」
 
 
悔しそうに黙り込むアニス達を置いて、アッシュはシンクと騎士達に回復をかけた。
「もう少しだ。頑張れるか? 」
「「はい、アッシュ様! 」」
心酔していた騎士達はアッシュに礼をとる。
「シンク、お前先に戻ってるか? 」
「楽しそうじゃない、僕も見てたって良いだろ」
一行は最深部へと向かった。其処にはヴァンが待っていた。
 
 


 

戦いが始まった。
アッシュはシンクと楽しそうにそれを見ていた。
前衛の騎士がやられそうになると、さり気なく回復やシールドをかけて助けたりしている。
「燃え滓。随分面白い事が出来るようになったんじゃない? 」
「ああ、ルークと融合して、第二超振動が使えるようになった。前より随分簡単にフォニムを操れるようになったな」
「ふうん・・・あんたと戦っても、勝ち目は無いわけだ」
ガイが切られ、ナタリアとアニスが吹き飛んだ。ジェイドもTP切れをおこしている。皆ボロボロで、膝を付いていた。
ティアが大譜歌を謡い、ヴァンの動きが止まった。
 
「・・・そろそろか。あの髭野郎の最後を良く見ておけよ、シンク」
笑いながらアッシュは進み出ると、第二超振動をヴァンに叩き付けた。
ヴァンは一瞬で弾け飛び、後には何も残らなかった。
 
 

「兄さん! ・・・アッシュ! なんで初めから手伝ってくれなかったのよ! 」
「手伝ってたろ? お前ら誰も死んで無ぇじゃねぇか。さっさと此処から離脱しろ。俺はこれからローレライを解放する。・・・お前らご苦労だったな」
アッシュは疲れた騎士達に回復をかけ、労いの言葉をかけた。
「いえ・・・アッシュ様のお力を何度も感じました。手助けをありがとうございました」
騎士達がアッシュに跪く。ティア達は何も言えずに黙り込んだ。
 
 
「さあ、ここから離脱しろ。シンク、すまないがこいつらを無事に外まで連れて行ってくれ」
「分かったよ」
「アッシュ様は・・・その、大丈夫なのですか? 無事戻ってこれるのでしょうか」
アッシュは心配そうな騎士達に微笑みかけた。
「さあな、どうにかなるだろうさ。失敗してもルークのところに行くだけだ。・・・俺が帰らなくても、シンクの事を王達に進言してくれ」
騎士達は泣きそうになりながら頷いた。
「心得ました。必ずや」
「アッシュ、レプリカの町を作るんだから、さっさと戻ってきなよね」
物言いたげなティア達を連れて、騎士達は戻っていった。シンクもアッシュに声をかけると、それに続いた。
 

 

 

 
誰もいなくなった回廊に、アッシュはローレライの鍵を突き立てる。
譜陣が浮かび、エルドラントがゆっくりと崩壊していった。

朱金の光が寄り集まり、人型を取る。
アッシュはそれに話しかけた。
「ローレライ、ルークを戻せないか? 」


(焔は大爆発という人の技を経て一つになった。我に手出しをすることはもう出来ない。しかし、焔の片割れの心は我が持っている。我の第七音素でこれに身体を作ってやろう。お前に協力してもらわねばならないが、良いのか? )
「構わない。あいつが戻るなら俺は何でもやる」
(焔の記憶はお前が持っている。作れるのは何も知らない赤子のようなものだぞ)
 


「あいつの魂が有るのなら、記憶なぞ無くても構わない。・・・ルークなのだから」
 


(分かった・・・暫し時が掛かる。それまで我と共に音譜帯で休んでいるが良い)
光に包まれたアッシュの姿は、その場から消失した。
 
 
 
光が天に立ち昇り崩れ去るエルドラントを、王達や同行した騎士達は涙ながらに見守った。
あれほど崩れてしまった所に人が生きていられるとは、とても思えなかった。


ルークと融合したアッシュは、穏やかで、いつも哀しそうだった。
半身を失ってしまった悲しみが、痛いほど伝わってきた。
それに気付かずアッシュを責め続けたのは、ルークの仲間達だけだったのだ。
 
 
 


 
そして、一年がたった。
シンクはアッシュに免じて自由になる事を許され、レプリカの保護に力を貸していた。
各国の援助を受けて、レムの塔の周辺には小屋が立ち並び、レプリカの町が出来ていた。
 
ふと、人形のようだったレプリカ達がざわめき出す。
シンクは胸騒ぎを感じ、レムの塔を見た。そして駆け出していった。
 
 
朱金の光が降りてくる。
「アッシュ! 戻ってきたのか? 」
其処には、小さな子供を抱いたアッシュがいた。
「よう、シンク。ちゃんと戻ってきただろう? ルークも連れてきたぜ」
「まったくもう、吃驚させないでよね! ・・・焔は随分縮んだんじゃない? 」
 

 

 
アッシュは晴れやかに笑う。
「記憶は俺が持ってるが、こいつはルークだ。俺の半身の魂を持ってるからな」
 


 
 
愛しそうに抱きしめるアッシュに、腕の中の存在は無垢な笑顔を返した。


ただそこには、『あいしてる』という気持ちだけが、溢れていた。
 
 

 

 

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HN:
tafuto
性別:
女性
自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

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