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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2025.04.23,Wed
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Posted by tafuto - 2007.10.12,Fri

 

 
「フッ・・・二人で手を取り合いながら来るとはな。おまえ達は全ての屍を踏み越えてきた。さあ、私と共に来い、『ルーク』。星の記憶を消滅させ、ユリアが残した消滅預言を覆すのだ」

シンクがヴァンに向って叫んだ。
「レプリカを道具としか見ないあんたがなに言ってる! ・・・こんな計画、成功するはず無いんだ!」
ルークが、真っ直ぐにヴァンを見ながら強く言った。
「俺たちは未来が選べると信じている」
「私は未来が定められていると知っている。やはり・・・互いに相容れぬようだな。剣を抜け、まとめて相手をしてやろう」
「ヴァン・・・覚悟!」
 

 
最後の戦闘が始まった。
ローレライの力を手に入れたヴァンとの戦闘は、激烈を極めた。
激しい剣戟が繰り返され、技や譜術が飛び交った。
ヴァンの回復量は凄まじく、傷をつけた傍から直ってゆく。
こちらは繰り出されるヴァンの奥義にティアやナタリアの回復が追いつかない。
 

アッシュがヴァンと切り結びながら叫んだ。
「人はもう、預言から外れる事を自ら選んだ。あんたが願った事は叶ったのに、何故こんな馬鹿な事を続ける! あんたは預言が憎かったんじゃない。預言に従ってきた愚かな人間に復讐したかったんだろう!」
「黙れ! 私はこれに全てを捧げて生きてきたのだ。もう後戻りは出来ん!」

ヴァンの光龍槍がアッシュを吹き飛ばした。
すかさずナタリアが回復をかける。
戦闘は、膠着状態に陥っていた。皆激しく息を切らしている。
ヴァンも髪が解け、荒い息をしている。第七音素を取り込み過ぎた身体が両腕を変形させていた。
 
 
「大譜歌を謡って、ヴァンに封じられているローレライを目覚めさせよう」
息を切らしたシリウスが、近くの仲間に囁いた。
「私が謡うわ」
「ティア、俺にはもう、戦いに参加できる体力は残っていないんだ。戦闘での回復を頼む」

シリウスの、覚悟を秘めた真剣な眼に、ティアは数瞬のためらいの後頷いた。
「・・・分かったわ」
「大譜歌を謡い出したら、俺は他に何も出来ない。皆、援護は頼んだ」
「任せて」
皆、強く頷くと、ヴァンに相対する二人に向って駆け出して行った。
 

 
シリウスの歌う大譜歌に、囚われていたローレライが力を増し、体内で暴れ始める。
ヴァンは力が抜けてゆくのが解った。
そのチャンスに、アッシュとルークが切りかかる。二本の剣を剣で受け止め、振り払う。
その剣戟にルークがよろめいた。ヴァンがルークに向って振りかぶる剣を、アッシュが弾く。
体勢を立て直したルークが下から飛び込む。激しい剣戟が続いた。
 

大爆発で体力の低下していたアッシュが、激しく喘いで膝を突いた。
アッシュを狙ったヴァンをルークが剣で止めるが、弾かれ、剣は飛ばされていった。
にやりと笑ったヴァンが剣を振りかぶったとき、ルークは後ろに引き倒された。

アッシュが前に出る。

 
ヴァンの剣がアッシュの胸を貫いた。
そのヴァンの手を剣ごと捕らえ、数瞬遅れてアッシュの剣がヴァンの腹に突き込まれる。

「・・・師匠・・・預言は覆されたんだよ・・・・・・」

血を吐きながら、アッシュは囁き、ずるずると崩れ落ちていった。
ヴァンは腹を貫く剣に手をやり、よろめきながら後ずさっていく。俯いた顔から血の筋が落ちる。

「アッシュ!」
(・・・・・・あとは・・・頼む・・・)

駆け寄ろうとしたルークは瞠目した。
アッシュから朱金の光が立ち上り、自分に吸い込まれていったからだ。
体中にアッシュの存在が感じられる。
 
そして気付いた。 ・・・・・・アッシュの死に。


「あ・・・ああぁ!!」

慟哭するルークを優しく、そして厳しい気配が取り巻く。
(まだ、終わっちゃいねぇぞ。 ・・・行け!)
(わかった・・・アッシュ!)

ヴァンに駆け寄ると、力を最大限に集める。そして叫んだ。
「ロスト・フォン・ドライブ!!」
眩い光がヴァンに向って集約し、弾けた。

ヴァンが乖離してゆく。
・・・その顔は、微笑んで見えた。幼い頃、自分を誉めてくれたときの顔だった。


「ありがとうございました、せんせい」
 
 

譜歌を終えたシリウスが、アッシュの傍らに倒れこみ、血を吐くのが見えた。
ルークは震える身体を押さえながら、ゆっくりとアッシュの側に戻る。
ぺたんと座り込み、アッシュを抱き起こすとその口の端の血を拭い取る。

そして、抱きしめた。
 

言葉を失った仲間たちが、周囲に集まる。
ナタリアが、嗚咽を漏らした。
「馬鹿燃え滓・・・」
シンクが俯き、アリエッタがシンクの腕にしがみ付いて涙を堪えた。
 
 
 
「俺はこれから、ローレライを解放する。 ・・・みんなは、戻って」
「あなたは・・・!」
「大爆発は、もう、止まらない。 ・・・さあ、早く行って。時間がないんだ」

静かに微笑んだルークの表情に、身を引き裂かれそうになりながら皆はその場を後にした。
何度も振り返りながら、去って行く。
それを微笑みながら見送ったルークは、傍らのシリウスに話しかけた。

「シリウスも・・・」
「俺は、魂のひとかけらまで君のものだよ。さあ、一緒に終わらせようか」
「・・・・・・うん」
ルークの笑顔に、涙が一滴こぼれた。
 
 

アッシュを抱きとめて静かに譜歌を謡うシリウスの前で、ルークはローレライの鍵を地に突き立てた。カチリと回すと、譜陣が現れる。

栄光の地は、静かに崩壊を始めた。
譜陣に守られて、大地をどこまでも下がっていく。


掠れた声が途絶え、シリウスがゆっくりと倒れこんでゆく。
それを支えようとしたルークは、自分の体が光の粒となって透け始めた事に気付いた。

膝を突き、今はもう物を言わなくなった二人を透ける腕で抱きしめる。


「ありがとう・・・アッシュ、シリウス」
 
 
 
突然、朱金の焔が辺りを舞い、声が響いた。

(世界は消えなかったのか・・・我の見た未来が、僅かでも覆されるとは・・・驚嘆に値する)

「ローレライ? ・・・俺、解放できたんだ」

(礼をしたい。乖離した身体を作ってやろう)

「アッシュは? 大爆発はどうなったの?」

(それはヒトの技。我には手出しできん。作った身体に二つの記憶が入る事になろう)

「俺は、アッシュと一つになりたいんじゃない! 二人で居たいんだ。シリウスと、皆で、一緒に暮らしたいんだ」

(・・・・・・我は、時間と記憶を司る。二人で存在できる時間に遡って、やり直してみるか?)

「そんな事が出来るの?」

(我が力を取り戻すまで、暫しかかるがな。それまで音符帯にいれば良い。そのユリアの子孫にも世話をかけた。三人とも連れて行ってやろう)

「皆一緒なんだね・・・うん!」
 

 

幸せそうな笑顔が、光に解けていった。
 
 

 

 

 


 
崩れ行くエルドラントから、光の柱が天に立ち上った。
少し離れた所から、仲間たちはそれを見守り、泣き崩れた。


マルクトからも遠く光の柱が見えた。研究室の窓からそれを見たジェイドは机を叩きつけ、俯いた。
その頬を流れるのは、彼が生まれてはじめて流した命を悼む涙だった。
 
 
 
 
 
 
一年後、最終戦を共にした者達がタタル渓谷に集まった。
崩れたエルドラントを一望できる此処で祈りを捧げたいと思う者たちが集まったのだ。
静かにティアの大譜歌が流れる。皆、思い思いの場所でそれに聞き入っている。
歌が終わり、皆が背を向けようとしたとき、セレニアの花畑の真中に朱金の光が踊った。
その光は言葉を発した。
 

(我はローレライ)
「ルークは、ルークはどうなったの?」
(焔たちは、二人で存在できる所に旅立った。ユリアの子孫も一緒だ。我は、焔の言葉を伝えに来た。・・・嘆くなと)
「・・・ルーク、アッシュ」

(残った焔の音素で、我は新たな存在を作り出した。ヒトの世よ、この存在が必要か?)
すう、と光が集まると、そこに小さな赤子の姿があった。
(これは二人の焔のどちらでもない。それでも受け入れるか?)
「ええ、きっと幸せにしてみせる!」
「守ってあげるよ」
「いっぱい遊んであげる、です」
皆口々に答える。
(それならば、この存在を預けよう・・・)
ティアの腕に赤子を託し、光は消えうせた。
 


ほの白く光るセレニアの中で、無邪気に笑う赤毛の子供。
寄り集まった者達は、その笑顔を守ろうと誓いあった。
どの顔も、優しい微笑みに彩られていた。
 
 

 
                                                                                      END







 その後の彼ら
     ※蛇足です。残された人々がその後どうなったか気になる人だけ御覧下さい。

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Posted by tafuto - 2007.10.12,Fri

 

 
シリウスと共にベルケンドで検査を受けていたアッシュとルークが、意外な事を知らされた。
アッシュの音素が乖離しているというのだ。

「何でレプリカの俺じゃなくアッシュが!」
シュウ医師はすまなそうに言った。
「私には、原因が解りません。ですからカーティス大佐をお呼びしました」
やがてやって来たジェイドは、じっと検査結果を見ていると、やがて話し始めた。

「私の構築したフォミクリー理論に、完全同位体の大爆発と言うものがあります。完全同位体が出来なかった為、いまだ理論だけなのですが・・・完全同位体はいずれ、オリジナルが急速に乖離が進み、レプリカを取り込んで融合、再構成が行われるコンタミネーション現象を起こしてしまう。これを大爆発と言うのです。私の理論では、レプリカにオリジナルの精神が上書きされ、レプリカは記憶しか残らないはずです」
 
「な・・・んだって」
「そんな! どうにもならないのか?」
「冗談じゃねぇ! お前の身体を奪い取って、俺だけ残されるなんて真っ平だ!」
 
「落ち着いてください。私はマルクトに戻り、大爆発の研究を進めてきます。止める方法が見つかったら、ご連絡します」
ジェイドは急いで帰国していった。軍を辞めてまで研究に専念したが(話を聞いたピオニーが許可した)研究は遅々として進まなかった。
 

アッシュの体力は少しずつ衰えていった。
クリムゾンは肩を落とし、何故お前達ばかりが・・・と呟いた。
シリウスが二人に内緒でもう一つ宝珠を作り上げ(すごく怒られた)アッシュに持たせたが、余り効果は無かった。
 
 
 
上空でバリアに守られていたエルドラントが、ついに行動を開始した。
対空迎撃装置が起動し始めたのだ。それと同時にレプリカの魔物が地上を襲ってくる。
 もう、待っている時間は無かった。

エルドラントを監視していた者が、あることに気が付いた。
魔物が出てくる僅かな間は、バリアが途切れるのだ。
 

キムラスカ、マルクト連合軍は、アルビオールによる進入を決意した。
ギンジが決意のこもった目で特攻を志願した。
乗員人数に限りがあるため、少数精鋭で望む事になる。
ローレライを封じたヴァンを倒し、その場でローレライを解放するために、アッシュとルーク、シリウスは外せない。ユリアの子孫であるティアも加わった。回復の為にナタリア、前衛にガイ、シンク、アスランが志願した。エルドラントが崩壊したときの為に、アリエッタが飛べるお友達を連れて参加した。
ジェイドは最後の最後まで諦めないと言って、寝食を忘れて研究を続けていた。
 

作戦決行の前日、ガイとナタリアがアッシュとルーク、シリウスを尋ねて来た。
今までの自分の態度を心から反省し、仲間として助け合いたいと頭を下げて謝罪した。
3人は顔を見合わせ、笑い合った。
 
 
 

 
ついに最終決戦の日が訪れた。
アルビオールが対空迎撃装置を避けながら旋空していると魔物が飛び出してきた。
身の軽いフレスベルグに乗ったアリエッタが先行し、秘奥義のイービルライトで迎撃装置を破壊した。その瞬間をついて、アルビオールはエルドラントに進入を果たした。
曲芸のようなその連携に、連合軍の兵たちは見蕩れていたが、将軍達の檄が飛んだ。
「わしらもぼやぼやして居れんぞ! 魔物を撃退するのだ!」
 
 
胴体と翼を擦り付けるように着陸させたギンジは、怪我を負いながら気丈に叫んだ。
「おいらは此処でこいつを直せるだけ直してます! 皆さん、頑張ってください!」
アリエッタがグリフォンを一頭残すと、一行は奥へと向かった。

途中、地下まで深く繋がっている所で、シリウスが何かをぽいっと落とした。
しばらく時間をおいたあと、ゴゴーンと鈍い音が響き、エルドラントは降下を始めた。
「な・・・何したんだ?」
引き気味に問いかけるガイににっこり笑ってシリウスは答えた。
「ジェイド特製のフォニム爆弾。 ・・・多分エルドラントは落下するはず」
その言葉と共に衝撃が襲った。しりもちをついた一同が、恨めしそうにシリウスを見た。
 

しばらく進んで行くと、広場になった所にリグレットとラルゴがいた。
預言の為に大切な者を失い預言を憎む彼らは、説得に耳を貸そうとはしなかった。
リグレットを姉のように慕っていたアリエッタは、泣きそうになりながら攻撃をかわす。
ティアも、決意を秘めた目で立ち向かっていった。
 

攻防は長く続いた。やがて二人が膝を突いた。自らの信念の為に、散ったのであった。
・・・死に顔は安らかだった。
 
二人の顔を拭い、手を組ませると、皆はその場を後にした。
 
 
 
長いダンジョンを魔物を狩りながら行くうちに、アッシュの体力が落ちてきた。
荒い息を吐いている。大爆発の乖離が随分と進行してきたのだ。
アッシュと歩いていたルークが、落とし穴にはまった。
アッシュを支えていた為、二人とも避けきれなかった。すぐにシリウスが飛び込む。

「先行ってて・・・!」
遠く声が響いてきた。
 
 

そこは白い石造りの広い部屋だった。石像が出口を守るように並んでいる。
部屋の中央で一人が超振動を使わないと出られないようになっていた。
「お前らが行け! 俺はこんな体力じゃ使い物にならねぇ」
そういうアッシュにシリウスは首を振った。
「そのうちどっか開いて、敵がローレライの鍵を取りに来るよ。そいつらを倒してそこから出ればいい。戦力の分断をする必要は無い」

果たしてその通りになった。
続々と湧いて来るレプリカ兵を相手にする。
「くそ、埒が明かない。 ・・・メテオスォーム、ミスティック・ケージ!」
上級譜術と秘奥義のコンボで、やっと敵が一掃される。
やっと部屋を抜け出すと、シリウスは荒い息を吐き座り込んだ。隣にアッシュが膝を突く。
「ごめん・・・ 10分でいいから休ませて。TPからっからだ」
「俺もだ、すまん」
 
 
 
長い通路と階段を抜けた先で、仲間と合流した。そこには、ホドのガルディオス邸のレプリカが有った。バテバテの3人に休息を取らせながら、ガイが言った。
「俺は、父は正しいと信じていたんだ。けれど父は自分のしてきた事で恨まれ、殺された。俺は馬鹿だった。同じ事を繰り返す所だったんだ。どこかで断ち切らないと憎しみの連鎖は永遠に続くんだよな。 
・・・アッシュ、ルゥ。俺はもう一度初めから、お前らと友達になりたいんだ」
「うん、よろしくな! ガイ」
「ふん、しかたねぇな」
破顔するルークとそっぽ向いて耳を赤くしているアッシュ。ガイは心から笑みを浮かべた。
 
 
 
 
少し元気を取り戻した一行は、先に進んでいった。
そして、エルドラントの最深部にヴァンはいた。
 
 

Posted by tafuto - 2007.10.12,Fri

 
 

瘴気中和決行の日となった。
フェレス島の近海にはキムラスカの陸艦が海上停泊して控えている。
なんと、ファブレ公爵自身が乗りこんでいた。
シンクは来たがったが、レプリカである身に危険である為留守番を言いわたされた。

アルビオールで島に降り立ったジェイド、ガイ、アスラン、ティア、ナタリアは、まず島の魔物の掃射を図った。中和中に襲われるのを防ぐ為である。
アッシュとルークは体力の温存の為、アルビオールに残った。
シリウスは、戦闘に参加出来る状態ではなかった。部屋の隅で咳き込み、血を吐いているのを目ざとく見つけたジェイドが、ドクターストップをかけた。
 

 
島に繁殖した魔物は強く、一行は手を焼いた。疲れたナタリアが愚痴をこぼす。
「シリウス、あんなに強いのですから手伝ってくれればよろしいのに」
「そうだなぁ、あのすごい譜術で吹き飛ばしてくれれば楽なのに。幾らルークの護衛って言ったって、少しぐらい手伝ってもいいよな」
ガイが笑いながら便乗する。
 
笑いあう二人に、硬い顔のティアが口をはさんだ。
「あなたたち、何故そんな事がいえるの? 彼がどんなに身を削っていたか、知ろうともしなかった癖に」

ティアは二人の軽口が許せなかった。
身体中ボロボロになるまで、二人を生き延びさせる為に尽くしているシリウス。
自分はそんな事も理解しようとせず、傲慢な言葉を吐き続けていた。
自分はあのときの自分が許せない、しかし彼は笑って許してくれたのだ!
 
「ティ・・・ティア?」
ティアの剣幕に、二人が驚いたように声をかける。
「彼はこの10日、それこそ命を削っていたのですよ。彼の身体は今、戦闘が出来る状態ではありません。それともあなた達は、自分が楽をしたいから死に掛けのシリウスを使おうと言うのですか? それほどルーク達の為に働くのが嫌なら、帰ってもらって構いません」
表情をけしたジェイドが続ける。アスランも不快気に見ている。
「・・・ごめんなさい」
口々に謝った二人は、言葉少なに魔物の掃射にかかった。
 
 
やがて魔物の殲滅も終わり、3人は島に降り立った。
入れ違いに他の者がアルビオールに乗り込んでゆく。

「死なないで下さい」
ジェイドが一声かけて行った。
アリエッタが上空にグリフォンで待機している。
 
 

 
ローレライの宝珠は、クリムゾンに預けてある。
アッシュとルークは、シリウスが作ってくれたお互いのペンダントを交換した。

「第七音素を呼び込みやすくするため、これから大譜歌を謡う。終わりそうになったら、始めて」
島の中央の広場になったところに三人は向かい合って立った。
「超振動を使い出したら、眼を閉じて。終わるまで開いてはダメだよ」
そう言うと、一つ深呼吸した後にシリウスは大譜歌を謡いだした。

澄んだ声に聞き惚れていたルークは、自分の手をきつく握ったアッシュにハッとした。
フェレス島のフォニムが大譜歌に引かれてざわめいている。
二人できつく握りしめたローレライの剣を、歌の終了と同時に大地に突き立てた。
溢れた光が、縒り合わさるように上空に立ち昇っていく。
 


シリウスは譜歌を、フォニムの収束を司るものに変えた。
フェレス島が端から光になって分解されてゆく。それを引き込み、纏め上げ、ローレライの剣に流してアッシュの負担を減らす。
同時に、拡散しようとするルークのフォニムを全力で引きとめた。

全身が引き千切られる様に痛む。背中の譜陣が裂け、滴る血液が足を濡らした。
右の譜眼が、負荷に耐えられず破裂した。それにも構わず、謡い続けた。
 

喉元に込み上がって来た血に、譜歌が途切れる。咳き込んでシリウスは多量の血を吐き出した。
霞む片目で空を見上げる。
それは、青空を取り戻していた。そのままシリウスは意識を失った。
 

 
歌が止んで、アッシュとルークは眼を開いた。その目に真っ青な海と空が映った。
フェレス島は中央部分を除いて分解されていた。目を遮るものは無い。
「や、やった! 成功した!」
喜びの声を上げたルークは、足元に倒れるシリウスに息を呑んだ。
身体を血に染め上げ、呼吸も微弱だ。
アッシュが抱き起こし、叫ぶ。
「アリエッタ!すぐ来てくれ! 早く!」
 
 

 
シリウスはグリフォンでキムラスカ艦に運び込まれた。
甲板にはアルビオールも着艦している。
アッシュとルークの姿を見て、喜びに沸いた一同は、続いて降ろされたシリウスの無残な様子に息を呑んだ。

「早く回復術をかけてくれ!」

ナタリアとティアが呼ばれる。リジェネレイトの詠唱が、その場に響いた。
ナタリアは、声が震えてうまく詠唱が紡げなかった。やっとの事でヒールを唱える。
血まみれで片目をなくしたシリウスの姿が目から離れない。
アッシュと協力して必死に指示を出すルークの姿も。

「わたくしは、何も分かって、いえ、分かろうとさえしていなかった・・・なんて愚かだったのでしょう・・・あんなに皆、教えてくれていたのに・・・」

 
シリウスが運ばれていった後も、ガイは甲板から動く事が出来なかった。
彼がガイに言ってきた事を思い返す。
反発を覚えてきたそれは、守るべき者として当然のことばかりだった。

「俺は何もわかっちゃいなかった・・・守る事、教える事、ルークの事も。ほんとうに馬鹿で情けない男だな、俺は・・・」
 
振り返ったそこは、綺麗な青空を取り戻していた。
 
 
 
 
昏睡でベルケンドに運ばれたシリウスは、5日後に意識を取り戻した。体表面の傷は癒えている。
うわーんと泣いてしがみ付くルークの頭をぽんぽん撫でる。

「何でこんなに無理するんだよ!」
「そうだ! てめぇは、心配させるのも大概にしやがれ!」
「いや、まだ死ぬ気は無いし。結果オーライなんだから、いいじゃないか」
 

そこに、連絡を受けたクリムゾンが入ってきた。
「おお、シリウスよ、目が覚めたか。 ・・・礼を言う。息子達はこのように生き残った。何か礼がしたい、欲しい物は無いか」 
「じゃあ、お言葉に甘えて。 ・・・かっこいい眼帯が欲しいです」
にっと笑ってシリウスが答える。
クリムゾンは微妙な顔をしたが、二日後に眼帯は届けられた。
 

 
「あ、ホントにかっこいい」
黒地に銀で控えめに模様が入ったそれは、シリウスに良く似合っていた。
嬉々として当ててみている。

(父上自らデザイン、とか言ったら笑うぞ俺は・・・)
(いや、シリウスを知ってるバチカルの職人にわざわざ誂えさせたと言っていた)

「アッシュ、ルーク、あげたのに悪いんだけど、収束の方の石、返してくれるかな?」
すまなそうなシリウスに、アッシュはペンダントを外し、渡した。
「もともとお前んだ、かまわねぇ。もうこんな事は無いだろうしな」

アッシュに笑いかけると、シリウスは石を取り外し、えいっとばかりに右目に押し込んだ。
即座にヒールを唱えると、何事も無かったように眼帯を付け始める。
「おお、海賊みたい?」
 

肝を潰した二人は、能天気な言葉に我に返った。
「なっ・・・な、なにしやがった、いま!」
叫ぶアッシュに、あわあわするルーク。

「なにって、収束の譜眼の代わりに収束の宝珠入れてみた。これで差し障りは無いはずなんだ。それより、かっこいい?」
ハァ、と深い溜息を吐いた二人は、口々に言った。
 

「かっこいいよ・・・」
「イカス・・・」
 

 

※幻水5のゲオルグさんみたいな眼帯希望v(笑)

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