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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2026.04.03,Fri
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Posted by tafuto - 2007.10.09,Tue


バチカル港に着くとゴールドバーグ将軍とセシル少将の出迎えが有った。
労いの言葉と会見の承諾を伝えられ、罪人を引き渡すとシリウスはほっと胸をなでおろした。
王城の門前で、ルークに話しかける。
「ルーク様、一介の騎士である私はここより先に入る事が出来ません。ファブレ邸に戻り、公爵様へ報告をして参ります」
「え・・・行っちゃうのか?」
不安そうなルークに微笑みかけ、そっと言葉を続ける。
「大丈夫です。ここは守りも堅いし、国王陛下が会見を決められたのですから。礼を失しない様に行動し、堂々としていれば良いのですよ」
表情を引き締めたシリウスは跪き、一分の隙も無い見事な騎士の礼を取って一行を見送った。
 

 
「顔を上げよシリウス、ご苦労だった。ルークを無事に連れ戻してくれた事、礼を言う」
「勿体無いお言葉です、クリムゾン様。後ほど報告書を提出いたします」
「うむ」
「騎士団の処分の方は、どうなされたでしょうか」
「まだ決めておらん。ルークは無事戻ったが、メイドはともかく護衛騎士が眠り込んで処分無しと言うわけにはいかんからな」
「あの襲撃犯が使ったのはユリアの譜歌だと思われます。普通の騎士程度では抗えないでしょう。・・・今回の事は、騎士団の教育担当である私の責任です。白光騎士団副団長を解任して下さい」
「お前に抜けられるのは正直痛いのだが・・・」
「団長や、せっかく育てた騎士がごっそり居なくなるよりはましかと思われます。それに、お願いがあるのです。私をルーク様の護衛兼教育係とさせて頂けないでしょうか。あの方には、導く者が必要です」

その言葉に瞠目したクリムゾンは、じっとシリウスを見つめた後、ひどく辛そうに眉を寄せシリウスに背を向けた。
「この時をもって、シリウス・ブレイズを白光騎士団副団長より解任する。
騎士団を解任した者を私が教育係に任命するわけにはいかん。 ・・・しかしルークが自分で護衛として雇う分には問題ないだろう。 ・・・・・・息子を、頼む・・・」
シリウスはその言葉に深く礼をすると、静かに部屋を後にした。
 
 

無事大役も果たし、イオン達をつれて屋敷に戻ったルークが見たものは、私服姿で荷物を纏め、門前に立つシリウスの姿だった。
「どうしたんだよ、そんなカッコで」
「今回の騒動で白光騎士団をクビになりましたので」
「な・・・! 何でそんな事になってんだよ!! 俺、父上に言ってくる!」
「ルーク様」

駆け出そうとしたルークをシリウスは引き止めた。
「今の私は一介の傭兵です。ルーク様はご自分の護衛をお雇いになる気は御座いませんか?」
はっとしてシリウスの目を見詰めたルークは破顔しながら勢い込んで言った。
「や・・・雇う雇う!」
「私は高いですよ」
「どうせ小遣いの使い道なんて無ぇんだから、かまわねぇ! ・・・やった!」
飛び付いて来たルークを宥めて立たせると、シリウスは静かに跪き頭を垂れる。

「今この時より、傭兵シリウス・ブレイズはあなたに御仕えする。私の全てをもってあなたの命と立場をお守りすることをここに誓う。主が解約を望まぬ限り、私はあなたのものだ」

剣をかしゃんと一度鳴らし、ルークの服の裾に口付ける。騎士の礼とも違うその優雅な所作に回りの者は息を呑んだ。
真っ赤になって言葉も無く立ち尽くすルークに、同じく赤くなりながら門前の白光騎士が話しかけた。
「あの・・・とりあえず屋敷にお入りになりませんか・・・」
 

 
翌日、王城に呼ばれたルークは驚くべき話を持ってきた。
親善大使になって、アクゼリュスに赴くという事だ。しかもメンバーは数人のみで、モースの命により襲撃犯が同行している。襲撃に加担したと疑われていたヴァン謡将もメンバーに入っている。
疑問を投げかけたルークに預言に詠まれていたから、だけで済ませたという。

話を聞くとシリウスは頭を抱えた。
「なんですかそれは。国王も貴族達もなにを考えているのか。こんな少人数で行って何をしろと言うのか。いやこちらはあくまで親善大使なのだから救助はマルクトが行うのだろう。しかし外交初心者のルーク様が選ばれるのは不可解だ。預言預言と胡散臭すぎる ・・・ヴァン殿と襲撃犯も何故無罪放免なんだ」
「師匠は巻き込まれただけで関係無いじゃん! それに師匠は無事にやり遂げて英雄になったら、外に出られるって言ってた。私とダアトに来いって」
「!!(亡命を勧めたのか!?)・・・そうですね。まずは王命の親善大使を見事やり遂げて、その後で考えることにしましょう」

アクゼリュスへの親善こそが最大の危機であるとこの時まだシリウスは気が付いていなかった。
 
 

翌日集まった一行に、過激派が危険な為自分が囮として船で行くとヴァンは言った。
冷ややかにそれを聞いていたシリウスはにっこりと笑って言った。
「ヴァン謡将、いったい誰が過激派を操っているんでしょうね、困ったものです。幸い今バチカルにはオラクルの導師と大詠師と主席総長がおられるのだから、ちょっとその、おいたなさってる方たちに止めろと言ってはくれませんか?」

少したじろいだヴァンは、気を取り直したようにルークに向かう。
「・・・かならず処罰すると約束しよう。だが今は危険だから、陸路を行ってくれ、ルーク」
「わかったよ、師匠」

ヴァンが去って行き、こちらも進もうとした矢先に、アニスの声が響いた。
朝起きたら導師が居なくなっていた。バチカル入り口には六神将がいて出られないから、同行してついでにイオンを探してくれと言う言葉に殴りつけたくなる衝動を堪える。
「モース殿に指示を仰ぎなさい。大詠師に言われれば六神将も引き上げるでしょう」
「そんなヒマありませんてば~、連れて行ってくださいよ~」
そこにティアやガイが口を挟む。
「イオン様に何かあったら、和平が壊れる可能性も無いわけではないわ。探しましょう」
「バチカル廃工場に、外に抜ける道があったはずだぜ」
ジェイドはまるで他人事のようにルークに問いかける。
「まあ、アニスの同行を許可するかどうかは、親善大使様がお決めになればいいんじゃないですか?ねえ、ルーク様。それでは、排工場に向かいましょうか」
「わあったよ! 勝手にしろ!」

混乱したルークは不機嫌に叫ぶ。
身分や立場を理解していない同行者の、あまりに非常識な発言の数々に呆れ返りながら、そっと溜息をついてシリウスはルークの後を追った。
廃工場でもまたひと悶着起きる。ルークの婚約者であるナタリア殿下が王命に背き後を追ってきたのだ。ルークが遠くにひっぱって行き会話しているナタリアの唇を読んで、シリウスは驚いた。

「(連れて行ってくれなければ、ヴァン謡将との事ばらしますわよ。ダアトに行っても、約束を思い出してくだされば私は良いのです)」

結局ナタリアも同行することになった。私を王女とは思わないで下さいませ! と宣言するナタリアにシリウスはもう止める気にもなれなかった。
 

廃工場を抜けた所で、六神将に連れられたイオンを発見した。雨にぬれるイオンを見たルークは激高して切りかかっていく。その後を追い、反撃された刃を受け止めたシリウスは驚愕する。
緋色の髪と深緑の瞳。その顔はルークと瓜二つだった。ルークも呆然と立ちすくむ。
憎しみと悲しみが綯交ぜになった視線がルークを射抜く。
「導師を返して欲しかったら、ザオ遺跡に来い」
彼が身を翻し、イオンを連れて去っていくまで、ルークは動く事が出来なかった。
「ルークにそっくり・・・」
「あれが六神将、鮮血のアッシュですか・・・」
眼鏡を押さえながら呟くジェイドの声が、小さく響いた。
 

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Posted by tafuto - 2007.10.09,Tue


数日後、熱も引き明日はバチカルに出航しようとする時に、ルークは町が見たいと言い出した。
「なぁ、お願い! こんな機会もう無いんだから、少しだけ!」
縋る様に両手を合わせたルークの願いは溜息が出るほどよく解り、認めざるを得なかった。
けして離れないように言い聞かせ、髪を隠して二人は街を歩いた。
珍しい物に目を輝かせるルークに微笑みながら説明していると、突然声がかかった。

「ルーク! こんな所にいたのか! 探したぜぇ!」

こんな街中で大声で『ルーク』の名を呼ぶな! と振り返ると、ファブレの使用人であるガイ・セシルが居た。
「ガイ、控えなさ「ガイ!久しぶりだな! 何でお前がこんな所にいるんだよ」

咎めようとした矢先に雑談がはじまってしまい、溜息をつきながらシリウスは周囲を警戒した。
少し先にオラクル兵とマルクト兵が一緒に立っている。
不審に思い注視したシリウスは導師イオンの存在に愕然とした。そして聞くとも無しに聞いていた会話に驚愕する。

「いや~カイツール側からお前を探してたんだが、途中でイオン様を助けてさ。何でもマルクトがキムラスカと和平を結びたいんだそうだ。お前、口利きしてやってくれないか?」
「ガイ!!」

びっくりして振り向くガイを睨み付け、低い声で咎める。
「黙りなさい。ここが何処だと思っている。続きはアスター殿の屋敷で聞きます」
さすがにまずいと思ったのか、ガイはすまなそうに小声で返した。
「す、すまない。だけどあいつらも連れてっていいか?」と、導師一行を指差す。
ガイのあまりの非礼ぶりに絶句したシリウスに、マルクト軍人か近寄ってきた。
シリウスを無視してルークに話しかける。

「はじめまして、ルーク様。私はマルクト軍大佐、ジェイド・カーティスと申します。私達もアスター殿の屋敷までご一緒してもよろしいですか?」
どこか冷たい笑みに気圧されたようにルークは頷いた。
「え・・・いいんじゃねぇの、別に。用事があんなら」
先に主に許可を出されては、咎めるわけにはいかない。シリウスは表情を隠しルークを守るように付き従った。

(ジェイド・・・ネクロマンサーか。・・・厄介だな。奴の譜術は侮れない。これがマルクトの謀略なら、ネクロマンサーを国内に引き入れたルーク様の責になってしまう)
 

アスターの屋敷に戻ると、会談が持たれた。
「はじめまして、ルーク。僕はイオンです。聖なる焔の光、いい名前ですね」
「あ、ああ。俺はルーク・フォン・ファブレだ」 
「はぅわ! ルーク様って公爵家のお坊ちゃまなんですか~! すてき~v あたしは導師守護役のアニスちゃんで~す」
「私は我がマルクト陛下の名代として、キムラスカと和平を結ぶべく、このように導師イオンをお連れして親書を携えてまいりました。どうか和平に協力して下さいませんか」
 
礼も取らず、前置きも無く話し始めるジェイドや、許可されてもいないのに導師やルークと同じ席に着いて勝手に話し始める同行者の非礼に、ルークの背後に控えていたシリウスはどんどん不機嫌になる。顔には出さないが。

「和平って言ったって、記憶喪失になって以来屋敷から出た事無い俺に、何が出来るんだよ」
不貞腐れたように顔を背けるルークにジェイドは言葉を重ねる。
「なに、あなたの地位が必要なだけです。私たちが国王にお目通りできるよう、口利きしていただきたいのですよ。簡単でしょう? どんな世間知らずでも出来ますよ。それとも王位継承者のルーク・フォン・ファブレ様は、戦争をお望みですか?」
「んなわけないだろ! 嫌味な野郎だな!」
挑発した物言いにルークが怒鳴る。
「まあまあルーク、怒るなよ。大佐も悪気は無いんだからさ。ルークだって戦争は嫌だろ?」

ガイが宥めるように口を出した所で、シリウスに限界が訪れた。
「ルーク様。発言をお許しいただけますか」
「ああ。許可する」
そっと背後から話しかけると、ほっとしたようにルークが振り向く。

「ガイ、使用人であるあなたが何故国家の重大事に口を挟めるのです。控えなさい。それからカーティス大佐。これは余りに重大で、個人で判断して良い事ではありません。まずバチカルに伺いを立てる時間を戴けますか?」
「おやおや、ルーク様は、護衛に判断を任せますか。街道を塞がれ、キムラスカ側からの助けを待つ多くの住人が一刻も早い和平を望んでいるのですがねぇ」
嘲笑をこめた言葉にルークがキレた。
「わかったよ! 取り次いでやるよ!」
「ありがとうございます、ルーク様。それでは明日バチカルに出航しましょう」
 


「あーもームカつく!」
足音も荒く頭を掻き毟りながら部屋に戻ったルークは、ひとしきり悪態をつくと急に静かになった。
「シリウスが止めたのに、俺すげえ頭きちゃって我慢できなかった。 ・・・でも何で止めたんだ? 戦争が起こらないって、良い事だろ?」
「もしこの和平が偽りであったら、すぐにでも戦争が始まるからですよ。カーティス大佐は『ネクロマンサー』の二つ名を持つ譜術師です。拝謁中にその場の者を皆殺しにするだけの実力があるのです。もしそうなったら、そんな者を引き入れたとルーク様は処罰されるでしょう」
「ええっ、どうしよう!」
青ざめるルークに苦笑しながら続ける。
「まあ、親書も本物の様ですし、私はイオン様の顔を拝見した事がございますから、間違いないとは思うのですが。彼らの態度があまりに和平の使者らしからなかったので不審を抱きました。私はこの事をバチカルに知らせる鳩を飛ばしてきます」
ちょうどやって来たガイにルークを任せ、シリウスはキムラスカ領事館へと歩き出した。
 

戻ってくると応接間でちょっとした騒ぎが持ち上がっていた。オラクルの制服を着た長髪の少女がルークと怒鳴りあっている。
「あなたなんでこんな所に居るのよ! 一人で行動するなんて、なんて非常識なの?」
「お前いきなり何なんだよ。どっかで見た事あるな」
「呆れた。物覚えも悪いのね」
「うるせーな! 名前は何つーんだよ」
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものよ」
「何言ってんだよ! ・・・あー!! お前は屋敷を襲撃してきた奴じゃないか! 何でヴァン師匠を襲ったりしたんだよ!」
「兄さんとの事は、あなたには関係ないわ!」
「関係なく無いだろ! 俺は死にかけたんだぞ!」
「あなたが勝手にふらふら何処かに行くからじゃない!」
 

「そこまでです」

シリウスはルークを庇うように自分の後ろに押しやり、剣を少女の咽喉下に突きつけた。
「おやおや何事です?」
騒ぎを聞きつけてぞろぞろとやって来た和平の使者一行にシリウスは低く問いかけた。
「この女はファブレ邸の兵を眠らせて押し入り、ルーク様を誘拐した襲撃犯だ」
「あれはそんなつもりじゃ! 兄さんとの事は個人的なことで・・・!」
「私が見つけるのが後10秒でも遅かったら、ルーク様はお命が危なかっただろう。それに跳ばされた先が上空や海上だったら? 奇跡のような確率でルーク様はここに御無事でいらっしゃるのに、個人的なことだと? ふざけるな。
襲撃犯が何故和平の一行に同行している。オラクルとマルクトは手を組んでキムラスカに戦争でも仕掛けるつもりか? ガイ、お前はファブレ邸に居たのだろう。何故気付かなかった」
「い・・・いや、ヴァンの妹だって言ってたから・・・」
「ティアは僕が魔物に襲われそうになっていた所を助けてくれて、それから同行してくれているんです」
「この女がファブレ邸襲撃犯だという事を、導師は知っておられたのですか?」

おろおろと言葉を挟むイオンに、シリウスは冷たく問いかけた。そこにジェイドが口を出す。
「私たちはエンゲーブで合流し、タルタロスでカイツールへ向かう最中、イオン様を取り戻そうとする六神将に襲われました。連れ出されたイオン様を奪還するのにティアとガイが協力してくれたのです。戦力が不足していた為そのまま同行してもらいました。ファブレ邸襲撃犯だということは知りませんでした。衛兵!この女を捕らえなさい」
「ちょ・・・大佐! 私ははぐれたルークを送り届けようと思って探していただけです!」
「その判断をするのは、キムラスカです。 ・・・これでよろしいですか? 護衛騎士殿」
表情の読めない笑みを浮かべるジェイドを一瞥すると、シリウスは軽く礼を取りルークをつれてその場を離れた。
 

「ここで悩んでも答えは出ません。詳細を鳩で飛ばし、バチカル港で国王のの指示を仰ぎましょう」
「うん・・・なあ、あの女、どうなるんだ?」
気になる様にちらちらと振り返りながらルークはそっと聞いた。
「公爵邸襲撃と謡将への攻撃、王位継承者の誘拐、不敬罪。普通ならどれをとっても極刑は免れませんが・・・グランツ謡将の妹と言っていましたね。どのように襲撃したのですか?」
「師匠と稽古してたら歌声が聞こえてきて、急に眠くなったんだ。そんであの女が「ヴァンデスデルカ、覚悟!」って師匠に切りかかってきたんだ」

「歌声? ・・・こんな歌ですか?」
そう言ってシリウスは小声で短く歌を紡いだ。
「あ、そんな感じ。似てる気がする。シリウスも歌えるんだ、それなんてゆーの?」
「これは母から教わったもので、歌える者はあまり居ないと思うのですが・・・ユリアの譜歌と言います。しかしユリアの譜歌・・・ヴァンデスデルカ(栄光をつかむ者)何かが起きている気がする・・・」

考え込むシリウスの言葉の後半は呟きに隠されルークには聞き取れなかった。
 

 

Posted by tafuto - 2007.10.09,Tue

                 
       『貴方に守り慈しむ存在があれば、世界はどのように変わっただろうか』
.

 

 

 

「うわああ!!」
「ルーク様!」

一瞬の出来事だった。
ルークが屋敷から飛ばされてから、こんな大きな魔物を見たのは初めてだった。
気付いたときにはもう避け様の無い位置で、月明かりに鋭く光る爪が振りかぶられるのを動くこともできずに見ていた。爪が真っ直ぐにルークの首に向かって振り下ろされる。
そのとき、轟音とともに魔物の身体が吹き飛んだ。
へなへなと崩れ落ちるルークの身体をしっかりと抱きとめる腕があった。

「良くぞご無事で・・・! ルーク様。良かった」
「あ・・・お前は?」

緊張で上手く動かない顔をやっと上げると、紺色の髪と赤い目の青年が心配そうに見ていた。
細身だがしなやかで力強い筋肉を纏った身体が、危なげなくルークを抱き上げ木陰へと移動させる。

「私は白光騎士団副団長、シリウス・ブレイズと申します。休暇中でケセドニアに居ました。ルーク様が屋敷から消えたと鳩により知らされ、第七音素の異常な収束がこのあたりに感じられたので、急ぎ駆けつけたのです。ご無事で何よりです。いったい何があったのですか?」
「俺にもわかんヌぇーよ。変な女が屋敷に入ってきて、ヴァン師匠に切りかかろうとしやがったから、木刀で受け止めたら光って・・・ 気が付いたらあのへんに居た」

ルークは頭を振りながら、不機嫌そうに言い放ち、背後の暗闇にかすかに見える山を指差した。
「白い花が咲いてるところで眼が覚めた。近くに襲撃犯が倒れてたけど、危ないと思ってそっと逃げてきた」
「タタル渓谷ですね。第七音素が反応し擬似超振動が起きて飛ばされたのでしょう。 ・・・夜は魔物も多うございます。ご無事で本当に良かった」
自分を見つめて優しく微笑む騎士に、ルークは少し赤くなりながらそっぽを向いた。
「せぶんすなんとかってのはわかんねーけど。あれくらいなんともねーっての。 ・・・さんきゅー、助けてくれて」
 

「ルーク様、動けますか? 少し移動しましょう。血の臭いのする所に何時までも居ると、魔物が寄ってきます。少し先に水辺がありましたから、そこまで参りましょう」
「一人で歩けるっつーの!」
抱き上げようとする腕を振り払い立ち上がるが、よろめいてしまったルークにシリウスは笑って手を貸した。
「命の危険から助かって、ほっとしたときに力が抜けてしまうのは、当然のことです。ましてルーク様は初めて外に御出になられたのですから」
「そういう・・・もんなのか? お前も?」
「ええ、初めてのときは腰を抜かしました。何度も危ない目にあっていると、危険を回避する為に身体が動くようになります」
談笑しながら素直に手を取られて歩き出す。繋がれた手はとても暖かかった。
 

水辺に着くと野営の準備をしながらシリウスは自分のマントを差し出した。
「もうすぐ夜明けです。少しでも睡眠をおとり下さい。ここまでは騎獣を駆って来たのですが、先程の騒ぎで逃げられてしまいました。明日はケセドニアまで歩かなければなりません。幸いなことに荷物は持っていたので野営は出来るのですが、しばらくの間ご不自由をお掛け致します。申し訳ありません」
心底すまなそうに膝を突き頭を下げるシリウスに、あわててルークは言った。
「い・・・いいよそんなの。顔上げろよ。俺、不謹慎かもしんねぇけど、こういうの初めてだからちょっとだけわくわくしてる。外ってずっと見たかったんだ」
「ありがとうございます。ルーク様はお優しいですね。見たことの無い物も沢山有るでしょうね。ルーク様がお知りになりたいことで、私が知っていることは何でもお教えいたしますよ。
そして、この命に代えましてもルーク様に傷一つ付けさせません。必ずお守りいたします」
「ああ。・・・・・・でも、お前も怪我とかすんなよ」
やがてマントを被って丸まるルークの寝息が聞こえてくる。シリウスは剣を抱きあたりの気配を窺いながら静かに身体を休めていた。
 
 
煩いほど鳴き交わす小鳥の声と、顔を照らす光にルークは目を覚ました。
「ルーク様、もう少し御休みになっていてもいいですよ。まだ夜が明けたばかりです」
「ん・・・」
目を擦りながら身体を起こしたルークは目前の景色に瞠目した。

「な・・・んだよ、これ。どこまで続いてるんだ・・・なあ、あの光ってるのは、なんだ?」

そこには一面に続く草原と所々に林があり遠くに小高い山、そして上り始めた朝日にきらきら光る海と朝焼けのグラデーションを纏ったラベンダー色の空に白く浮かぶ雲があった。
シリウスにとっては日常である風景に呆然と見蕩れるルークのその様子に、初めてシリウスはルークの境遇がどんな物であるか思い至った。この何も知ることを許されなかった子供に、今だけでも出来るだけ沢山の物を見せてあげたいと、そう思った。

「あれは海ですよ、朝焼けに照らされてとても綺麗ですね。遠くに見えるのがローテルロー橋、そこを越えてずっと行くとエンゲーブ、マルクト有数の穀倉地帯です。そしてこっちの街道を行くとケセドニア。キムラスカとマルクトの国境があります」
ぼうっと聞いていたルークは、その言葉に吃驚して振り返った。
「ええっ? てことはここマルクトかよ!」

ぼんやりと景色に見蕩れていたルークが自分の言葉を理解していたことにむしろ驚いてシリウスは答えた。
「はい、そうです。ですから、あまり騒ぎを起こすわけには参りません。旅券はあなたの分も私が預かっていますが、その御髪を隠さねばなりませんね」
「何で?」
「赤い髪と翡翠の瞳はキムラスカ王家の象徴です。王家の者だと大声で触れ回っているようなものです。マルクトでなくても王家やファブレ家に恨みを持つ者やテロの標的になることを防ぐ為に、出来るだけその髪は隠された方がいい」
「ふうん、そういうもんなのか」
「あなたの髪はあの夜明けの太陽の様に綺麗な焔の色で、隠してしまうのはちょっと残念なんですけどね」
微笑むシリウスの言葉に、ルークは真っ赤になりながら照れたように笑った。虚勢を取り払ったそれは、とても子供らしい笑顔だった。
 

携帯食料で朝食を済ませると、二人はケセドニアに向けて歩き出した。旅慣れないルークに合わせてゆっくりと歩を進める。「なあなあ、あれ何だ?」と無邪気に聞いてくるルークに丁寧に答えながら、地形の特色や土地にまつわる歴史を面白おかしく話してやると、ルークは目を輝かせた。

「シリウスの話はおもしれーな! 俺、今まで『そんな事も知らないのか』とか『そんな事知らなくていい』しか言われたこと無いぜ。屋敷の教師の話もそんなふうに面白けりゃよかったのに。皆、昔のあなたはこれ位覚えていたって、ちんぷんかんぷんな事覚えろって言うばっかでさ。昔どんだけ優秀だったかなんて、知んぬぇーっての」
自分の言葉に傷ついたように俯いてしまう。

「・・・あなたは優秀ですよ? 私が言った事はすぐ理解するし、覚えもとても良い。ただ、記憶を失ったあなたに勉強が苦痛であると思わせてしまった周囲の態度が原因です。屋敷に戻ったら、ルーク様付きになれるか、公爵様にお願いして見ます。あなたに知識を得る楽しさを知って頂きたくなりました。ルーク様はお嫌でしょうか」
「そんな事ねえ! すっげえ嬉しい! ホントにそうなるといいな!」
 

ケセドニアに着くまでに、何度か魔物と戦闘になった。
シリウスは素早く双剣を振り魔物を弾き飛ばすと、群れごと纏めて譜術で吹き飛ばす。
その鮮やかな手並みにルークは見惚れた。
「すっげえ!強いな! 早くて見えなかったぜ。あの吹き飛ばした奴、なんなんだ? 俺も早く強くなりたいな。今度俺も戦ってみたい! 教えてくれよ」
「木刀で魔物を倒すのは難しいです。それに剣の流派が違いすぎて、せっかくグランツ殿に習った剣筋が乱れてしまいますよ? 私に教えられるのは、気配を読む事、敵の動きを知り、急所を突く事、それと心構えでしょうか。ルーク様、見て下さい。私たちが生き残るために殺した敵の姿を」

その言葉にルークは辺りを見回し、屍骸と血の散らばる様子に愕然とした。
「あ・・・俺・・・戦うって・・・死ぬ事、殺すってこと分かってなかった・・・!」
「生き残る為に戦うことは、生物として当然の本能です。その結果相手が死んだとしても、命を懸けて相対しこちらが勝ち残っただけの事。
しかし相手も命あるものだと忘れてはなりません。たとえあなたが直接手を下さなくとも、あなたのために散った兵士や倒された敵の上にあなたの命がある。それをしっかりと胸に入れて生き抜くことが、あなたのすべき事です」
「うん・・・ごめん」

消沈してしまったルークを宥める様に背中を撫でると、シリウスは言った。
「謝る必要はありません。これは兵士や人の上に立つ者が目を逸らしてはならない事。此処で御教え出来て良かった。 ・・・それじゃあ、今日は譜術についてお話しましょうか」
「うん!」
 

ケセドニアに着き無事国境も越えると、シリウスはルークをアスターの屋敷に連れて行った。
旅の疲れからか、ルークが熱を出してしまったからだ。
「アスター殿、旅券や騎獣をありがとうございました。騎獣は逸れてしまい、申し訳ありませんでした。こちらがルーク様です。警備のしっかりした所で休息していただきたいのですが、こちらに滞在させていただけないでしょうか」
「いえいえ、ご無事で何よりです。騎獣は戻ってまいりました。何かあったかと心配しておりましたよ。どうぞ何時までもご滞在下さい、ヒッヒッヒ」

癖のある笑い声にビクッとなるルークに笑いながら話しかける。
「(大丈夫ですよ、アスター殿は見掛けに寄らず大変良い方です)ルーク様、私はあなたのご無事を鳩で知らせて参ります。しばらくこちらでご滞在下さい」
「(シリウスも悪人ヅラって言ってるようなもんだろ)分かった。あの、さ。俺は無事だったんだから、騎士やメイドたちを・・・その、父上に言ってさ」
「分かりました、皆喜ぶでしょう。ルーク様は本当にお優しい方だ。アスター殿、しばらくお頼みいたします」

 

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