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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.09,Tue


数日後、熱も引き明日はバチカルに出航しようとする時に、ルークは町が見たいと言い出した。
「なぁ、お願い! こんな機会もう無いんだから、少しだけ!」
縋る様に両手を合わせたルークの願いは溜息が出るほどよく解り、認めざるを得なかった。
けして離れないように言い聞かせ、髪を隠して二人は街を歩いた。
珍しい物に目を輝かせるルークに微笑みながら説明していると、突然声がかかった。

「ルーク! こんな所にいたのか! 探したぜぇ!」

こんな街中で大声で『ルーク』の名を呼ぶな! と振り返ると、ファブレの使用人であるガイ・セシルが居た。
「ガイ、控えなさ「ガイ!久しぶりだな! 何でお前がこんな所にいるんだよ」

咎めようとした矢先に雑談がはじまってしまい、溜息をつきながらシリウスは周囲を警戒した。
少し先にオラクル兵とマルクト兵が一緒に立っている。
不審に思い注視したシリウスは導師イオンの存在に愕然とした。そして聞くとも無しに聞いていた会話に驚愕する。

「いや~カイツール側からお前を探してたんだが、途中でイオン様を助けてさ。何でもマルクトがキムラスカと和平を結びたいんだそうだ。お前、口利きしてやってくれないか?」
「ガイ!!」

びっくりして振り向くガイを睨み付け、低い声で咎める。
「黙りなさい。ここが何処だと思っている。続きはアスター殿の屋敷で聞きます」
さすがにまずいと思ったのか、ガイはすまなそうに小声で返した。
「す、すまない。だけどあいつらも連れてっていいか?」と、導師一行を指差す。
ガイのあまりの非礼ぶりに絶句したシリウスに、マルクト軍人か近寄ってきた。
シリウスを無視してルークに話しかける。

「はじめまして、ルーク様。私はマルクト軍大佐、ジェイド・カーティスと申します。私達もアスター殿の屋敷までご一緒してもよろしいですか?」
どこか冷たい笑みに気圧されたようにルークは頷いた。
「え・・・いいんじゃねぇの、別に。用事があんなら」
先に主に許可を出されては、咎めるわけにはいかない。シリウスは表情を隠しルークを守るように付き従った。

(ジェイド・・・ネクロマンサーか。・・・厄介だな。奴の譜術は侮れない。これがマルクトの謀略なら、ネクロマンサーを国内に引き入れたルーク様の責になってしまう)
 

アスターの屋敷に戻ると、会談が持たれた。
「はじめまして、ルーク。僕はイオンです。聖なる焔の光、いい名前ですね」
「あ、ああ。俺はルーク・フォン・ファブレだ」 
「はぅわ! ルーク様って公爵家のお坊ちゃまなんですか~! すてき~v あたしは導師守護役のアニスちゃんで~す」
「私は我がマルクト陛下の名代として、キムラスカと和平を結ぶべく、このように導師イオンをお連れして親書を携えてまいりました。どうか和平に協力して下さいませんか」
 
礼も取らず、前置きも無く話し始めるジェイドや、許可されてもいないのに導師やルークと同じ席に着いて勝手に話し始める同行者の非礼に、ルークの背後に控えていたシリウスはどんどん不機嫌になる。顔には出さないが。

「和平って言ったって、記憶喪失になって以来屋敷から出た事無い俺に、何が出来るんだよ」
不貞腐れたように顔を背けるルークにジェイドは言葉を重ねる。
「なに、あなたの地位が必要なだけです。私たちが国王にお目通りできるよう、口利きしていただきたいのですよ。簡単でしょう? どんな世間知らずでも出来ますよ。それとも王位継承者のルーク・フォン・ファブレ様は、戦争をお望みですか?」
「んなわけないだろ! 嫌味な野郎だな!」
挑発した物言いにルークが怒鳴る。
「まあまあルーク、怒るなよ。大佐も悪気は無いんだからさ。ルークだって戦争は嫌だろ?」

ガイが宥めるように口を出した所で、シリウスに限界が訪れた。
「ルーク様。発言をお許しいただけますか」
「ああ。許可する」
そっと背後から話しかけると、ほっとしたようにルークが振り向く。

「ガイ、使用人であるあなたが何故国家の重大事に口を挟めるのです。控えなさい。それからカーティス大佐。これは余りに重大で、個人で判断して良い事ではありません。まずバチカルに伺いを立てる時間を戴けますか?」
「おやおや、ルーク様は、護衛に判断を任せますか。街道を塞がれ、キムラスカ側からの助けを待つ多くの住人が一刻も早い和平を望んでいるのですがねぇ」
嘲笑をこめた言葉にルークがキレた。
「わかったよ! 取り次いでやるよ!」
「ありがとうございます、ルーク様。それでは明日バチカルに出航しましょう」
 


「あーもームカつく!」
足音も荒く頭を掻き毟りながら部屋に戻ったルークは、ひとしきり悪態をつくと急に静かになった。
「シリウスが止めたのに、俺すげえ頭きちゃって我慢できなかった。 ・・・でも何で止めたんだ? 戦争が起こらないって、良い事だろ?」
「もしこの和平が偽りであったら、すぐにでも戦争が始まるからですよ。カーティス大佐は『ネクロマンサー』の二つ名を持つ譜術師です。拝謁中にその場の者を皆殺しにするだけの実力があるのです。もしそうなったら、そんな者を引き入れたとルーク様は処罰されるでしょう」
「ええっ、どうしよう!」
青ざめるルークに苦笑しながら続ける。
「まあ、親書も本物の様ですし、私はイオン様の顔を拝見した事がございますから、間違いないとは思うのですが。彼らの態度があまりに和平の使者らしからなかったので不審を抱きました。私はこの事をバチカルに知らせる鳩を飛ばしてきます」
ちょうどやって来たガイにルークを任せ、シリウスはキムラスカ領事館へと歩き出した。
 

戻ってくると応接間でちょっとした騒ぎが持ち上がっていた。オラクルの制服を着た長髪の少女がルークと怒鳴りあっている。
「あなたなんでこんな所に居るのよ! 一人で行動するなんて、なんて非常識なの?」
「お前いきなり何なんだよ。どっかで見た事あるな」
「呆れた。物覚えも悪いのね」
「うるせーな! 名前は何つーんだよ」
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものよ」
「何言ってんだよ! ・・・あー!! お前は屋敷を襲撃してきた奴じゃないか! 何でヴァン師匠を襲ったりしたんだよ!」
「兄さんとの事は、あなたには関係ないわ!」
「関係なく無いだろ! 俺は死にかけたんだぞ!」
「あなたが勝手にふらふら何処かに行くからじゃない!」
 

「そこまでです」

シリウスはルークを庇うように自分の後ろに押しやり、剣を少女の咽喉下に突きつけた。
「おやおや何事です?」
騒ぎを聞きつけてぞろぞろとやって来た和平の使者一行にシリウスは低く問いかけた。
「この女はファブレ邸の兵を眠らせて押し入り、ルーク様を誘拐した襲撃犯だ」
「あれはそんなつもりじゃ! 兄さんとの事は個人的なことで・・・!」
「私が見つけるのが後10秒でも遅かったら、ルーク様はお命が危なかっただろう。それに跳ばされた先が上空や海上だったら? 奇跡のような確率でルーク様はここに御無事でいらっしゃるのに、個人的なことだと? ふざけるな。
襲撃犯が何故和平の一行に同行している。オラクルとマルクトは手を組んでキムラスカに戦争でも仕掛けるつもりか? ガイ、お前はファブレ邸に居たのだろう。何故気付かなかった」
「い・・・いや、ヴァンの妹だって言ってたから・・・」
「ティアは僕が魔物に襲われそうになっていた所を助けてくれて、それから同行してくれているんです」
「この女がファブレ邸襲撃犯だという事を、導師は知っておられたのですか?」

おろおろと言葉を挟むイオンに、シリウスは冷たく問いかけた。そこにジェイドが口を出す。
「私たちはエンゲーブで合流し、タルタロスでカイツールへ向かう最中、イオン様を取り戻そうとする六神将に襲われました。連れ出されたイオン様を奪還するのにティアとガイが協力してくれたのです。戦力が不足していた為そのまま同行してもらいました。ファブレ邸襲撃犯だということは知りませんでした。衛兵!この女を捕らえなさい」
「ちょ・・・大佐! 私ははぐれたルークを送り届けようと思って探していただけです!」
「その判断をするのは、キムラスカです。 ・・・これでよろしいですか? 護衛騎士殿」
表情の読めない笑みを浮かべるジェイドを一瞥すると、シリウスは軽く礼を取りルークをつれてその場を離れた。
 

「ここで悩んでも答えは出ません。詳細を鳩で飛ばし、バチカル港で国王のの指示を仰ぎましょう」
「うん・・・なあ、あの女、どうなるんだ?」
気になる様にちらちらと振り返りながらルークはそっと聞いた。
「公爵邸襲撃と謡将への攻撃、王位継承者の誘拐、不敬罪。普通ならどれをとっても極刑は免れませんが・・・グランツ謡将の妹と言っていましたね。どのように襲撃したのですか?」
「師匠と稽古してたら歌声が聞こえてきて、急に眠くなったんだ。そんであの女が「ヴァンデスデルカ、覚悟!」って師匠に切りかかってきたんだ」

「歌声? ・・・こんな歌ですか?」
そう言ってシリウスは小声で短く歌を紡いだ。
「あ、そんな感じ。似てる気がする。シリウスも歌えるんだ、それなんてゆーの?」
「これは母から教わったもので、歌える者はあまり居ないと思うのですが・・・ユリアの譜歌と言います。しかしユリアの譜歌・・・ヴァンデスデルカ(栄光をつかむ者)何かが起きている気がする・・・」

考え込むシリウスの言葉の後半は呟きに隠されルークには聞き取れなかった。
 

 

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