閑話 ご主人様とメイドごっこ ※R-15・・・なんだろうか?どう見ても馬鹿二人としか。
「ヴァン謡将、お着替えをお持ち致しました」
俺がノックして部屋に入ると、ヴァンが微妙な顔でこっちを見ている。
「? 何だよ」
「いや・・・ ちょっと、ヴァンデスデルカ様、とかご主人様、とか呼んでみてくれんか」
あ・き・れ・た! 超・呆れた。
「あんたもしかして、あの真面目な話の最中、そんなことばっかり考えてたんじゃないだろうね!」
「ちゃんと聞いていたではないか!ただちょっとお前のクリムゾン殿に対する態度に、思うところがあっただけだ」
「思うところって何だよ、このエロ魔人!」
本当に呆れた。こいつの頭ん中は下半身の事しかないのか?
「たまには優しくしてくれても、良いではないか・・・」
こんどは泣き落としかよ。 ・・・もう溜息しか出ないよ。しょうがない、付き合ってやるよ。
「ご入浴の準備が出来ました。お手伝いさせていただきます、ご主人様」
なんかとたんに嬉しそうになってんですけど。ちょっと腹立つな。
俺は磨き上げたプロの腕前でヴァンを脱がしていく。ふん、プロは肌になんて触れないんだぜ?
脱衣所の椅子に腰掛けさせて、跪き、ブーツを脱がせる。頭の上でフフッとか笑うな!
もう良いかなーと思ったら、にやけて「背中を流せ」と来たもんだ。
ああもう、わかった、分かりました。お付き合いさせていただきます、ご主人様!
俺は薄いシャツ一枚になると、ヴァンに付いて浴室に入った。
良く泡立てたタオルで背中を洗う。 ・・・・・・広い背中だよな。身体は良いんだよ、身体は。
ああそう、前もですか。はいはい分かりました、ご主人様。
腕から胸、腹へと洗っていく。ちょっとためらって一部分抜かして両足にかかる。跪き、ヴァンの足を膝に乗せて丁寧に洗う。
「・・・上手いな。まさかクリムゾン殿にやっているのではないだろうな」
馬鹿か。そこで何でルゥって思わないかな。俺はルーク様付きなんだぜ? この色ボケが。
まあ、クリムゾン様にだったら喜んでやっちゃうけど。
・・・残るは、なぜかそそり立ってるソコだけなんだが。俺に洗えってか?
「其処は口でやってもらおうか」
お前がやりたいのは、『ああんっお許し下さいご主人さまぁ』ってそっちかい!
俺のプロの誇りを返せ! ・・・・・・しょうがないなぁまったく。
身体の泡を流し、ヴァンの足の間に四つん這いになって舌を這わせた。
湯が掛かり肌に張り付いたシャツ越しに、ヴァンが舐めるように視線を這わせてくる。ヤバイ、俺もその気になって来てしまった。
もうすぐかな、と思っていたら、髪を掴まれた。
「残さず呑め」
こいつ、鬼畜モードに入りやがった。やべぇ、大丈夫か、俺!
奥まで突っ込まれたソレを一生懸命銜え、吸い上げた。ごくりと飲み下す。口を離し、唇に付いたものまでぺろりと舐めとる。
「よしよし、ご褒美をやろう」
うわっ、笑顔が怖い。膝に抱え上げられると下着を取られて足を開かされた。石鹸をつけた手がソコに伸びてくる。
「お前も洗ってやろう」
いや結構ですから! 指を突っ込まないで下さい!
・・・しかし演技モードに入ってしまった俺は、気持ちとは裏腹にノリノリな台詞を口にしてしまった。
「ああっ、お戯れはおやめ下さい、ご主人様ぁ」
耳元でむっふーと荒い鼻息が聞こえてきた。しまったノリすぎた。
気持ち良い所をぐちゅぐちゅとかき回されて、俺も限界だ。ひゃあん、なんて可愛く鳴いて、達してしまった。
「む・・・汚れてしまったではないか。これはお仕置きだな。手を前に付いて腰を高く上げろ」
来たよ、ご褒美とお仕置きの無限ループ! 勘弁してくれ!
このまま朝までコースは絶対阻止しなければ!
・・・と思いつつ、ついノッてしまうのだった。 俺って馬鹿?
「ああんっ、お許し下さい、ご主人様ぁ!」
邪魔者も居なくなったので、そろそろヴァンがアッシュを連れてくる事になった。
ルークは浮かれて騒いでいたが、アッシュとシリウスは此処が正念場とばかりに緊張していた。
夜、ヴァンがフードを被った人物を連れてファブレ家を尋ねる。あらかじめクリムゾンから言われていた番兵は、二人を応接間に通した。部屋から退室し人払いをする。
人を遠ざけた部屋には、クリムゾン、シュザンヌ、シリウス、ルークが居た。
シュザンヌにはクリムゾンが話をしていたのだ。
フードがはらりと取られる。深紅の髪が現れた。
「お久しぶりです、父上、母上」
「アッシュー!! あいたかったぁ~v」
一礼するアッシュに我慢できなくなったルークが飛びついた。
「アッシュだー。ああっ、背がこんなに違うー! 足が浮く、ほら!」
「・・・いいからてめぇちっとは黙れ! おとなしくしてろ!」
首にしがみ付かれて騒がれて、感動の対面を粉々にされたアッシュはキレた。
ごつんと拳骨を食らわせて、ひょいとソファーに座らせる。
涙目で拗ねたように見上げてくるルークの頭に口付けて撫で撫でしてやると、とたんに笑顔がこぼれた。
ちょっとあっけに取られたクリムゾンとシュザンヌは、気を取り直してアッシュに近寄った。
「良くぞ戻った、息子よ」
「お帰りなさい、ルーク」
二人に抱擁されたアッシュは恥ずかしそうに目を泳がせている。
「父上、母上私は今、アッシュと言う名を名乗っています。どうぞアッシュとお呼び下さい」
「ちちうえ、ははうえ、俺たちは二人で『ルーク』なんだ。俺のことは、ルゥって呼んで欲しい。アッシュが付けてくれたんだよ、ルーシェルって!」
誇らしそうなルークの言葉に、二人は微笑して頷いた。
そして、長い長い話が始まった。
「・・・そして、預言は覆され、世界は存続したのです。ただ、『聖なる焔の光』は生き続ける事が出来なかった。ローレライにも、最終段階を迎えた大爆発を止める事が出来なかったのです。
私もその時に死を迎え、ローレライの力で音譜帯に迎えられました。そして、三人で戻ってきたのです。
・・・生きるために」
「・・・・・・そんな事が・・・あったのか」
長い沈黙の後、クリムゾンが搾り出すように言った。
「お疑いなら、第七音素の濃いところでローレライを呼び出すことが出来ます」
「いや、信じる。シリウス、お前はそれほどに前から息子達を守り続けてくれていたのか・・・」
「ルーク様は我が主。魂の一片まで、私はルーク様に捧げているのです」
微笑むシリーに、ずっと無言だったヴァンが話しかけた。
「・・・私は、実行してしまったのだな、あの計画を。憎しみを消せなかったのか。 ・・・そしてお前達に敗れた。 ・・・何故、私を引き入れたのだ。もっと前に、幾らでも私を消す手段はあっただろう?」
シリウスは苦笑して返した。
「何か、憎めなくってさ。 ・・・前のあんたには、誰もいなかったんだろう? おまえは馬鹿だって言ってくれる人が」
「確かに・・・お前に言われて、迷いはだんだん大きくなっていったよ」
ヴァンも苦笑すると、晴れやかな顔になった。
夜も更けて、シュザンヌが名残惜しそうに退席した。長く話し込んで疲れてしまったからだ。
アッシュを抱きしめると、また顔を出す事を約束させて部屋に戻っていった。
「さて、これからどうするか決めねばなりません」
皆は顔を見合わせて、うなづきあった。
クリムゾンは、秘預言をインゴベルトにも話すことを勧めた。シリウスとリオが協力する。
世界の消滅を知ってまで、預言を守ろうとする事は無いだろうと判断したのだ。
アッシュは自由に動く為、教団に在籍を続け、時々任務と称してバチカルに赴く事になった。
シリウスは通信機があることをクリムゾンとヴァンに見せ、緊急時には連絡が取れると教えた。
(二人にちょっと恨まれた)
インゴベルトがマルクトとの和平を決めた後なら、使者を送ることが出来る。
その使者にヴァンとリオが着いて行けば、秘預言をマルクト皇帝に見せる事も出来るだろうと言うことになった。ヴァンにローレライの宝珠を貸して持って行けばいい。
「なんだ、お前は行かんのか?」
つまらなそうに言うヴァンにシリウスは苦笑した。
「俺がマルクトに行ったら、ネクロマンサーに八つ裂きにされるよ」
「シリウスは『冥王』だからな。マルクトは何度も煮え湯を飲まされておる」
クリムゾンの言葉に、ヴァンは驚いた。
「な・・・『冥王』? そんな事言っていなかったではないか!」
「何だ、謡将は知らなんだか。ダアトも勿体無い事をすると話しておったのだ」
「いや、別に言う必要ないだろう、傭兵の二つ名なんて。ちなみにはじめて会った時にはもう『冥王』だったけど」
クリムゾンの言葉にがっくりと脱力したヴァンは恨めしそうにシリウスを見た。
「私は『冥王』に2年も調理人をさせたと言われ続けるのか・・・」
閑話 アッシュとルゥ
アッシュはその晩ファブレ家に泊まる事になった。ルゥが強請ったのだ。
「アッシュー会いたかった! コーラル城で触ってくれたろ? 嬉しかったんだ」
アッシュの膝に乗り、ぴったり張り付いて離れない。
アッシュも好きにさせて、時々髪を撫でたりしている。
「でもアッシュと身体つきが違っちゃって、ちょっと残念だな」
「いや、俺は抱き心地が良くて満足だ」
「アッシュ、前の時より、背ぇ伸びんの早くない? 凄く差が付いた気がする」
「・・・(シリーの食事が効いたか?感謝!)お前もそのうち伸びるだろう・・・」
抱き合ったまま、ぺたぺた触りあっている。まるで猫の親子だ。
一緒に風呂に行って、あちこち比べっこなんてしてみてから、呆れたシリウスにベッドに突っ込まれた。
「一緒でいいよね、おやすみ」
アッシュは以前のときより食事をバランス良くしっかり取っていたので、幾分成長が早い。
あと少しで前回の身長を越えられると喜んでいたのだ。きっと180㎝は越えるだろう。
ルゥは2年時が止まっており、好き嫌いもあって食が細く、まだ成長期の急激な伸びは迎えていない。鍛えはじめの柔らかな体をしていた。
ベッドに寝転がり、抱きしめあう。華奢なルゥはすっぽりアッシュの腕に収まった。
お互いの心臓の音が聞こえ、例えようも無く幸せな気持ちになる。
悪夢を見てしまった時など、こっそり深夜に通信してしまう事もあった。お互いの声を聞くと、安心して眠れるのだ。
アッシュはルゥの頬や額に口付けを降らせた。ルゥもお返しをする。
欠けていたものがぴったりと合わさったような充足感に満たされ、二人はお互いの目を見つめて微笑み合った。
そして、もう対称では無くなった半身たちは、寄り添いながら幸せな眠りについた。
ちなみにその頃シリウスはヴァンにあてがわれた客間の浴室で『ご主人様とメイドごっこ』をして戯れていた。
閑話 ご主人様とメイドごっこ ※R15・・・なんだろうか? どう見ても馬鹿二人としか思えない。
バチカルサイド
イオンが助かって一ヶ月。
そろそろ計画を進めたい、と言って、シリウスはダアトに行った。
戻ってきたときにはヴァンを連れていた。剣の稽古の日だったからだ。
稽古しながらルークは不思議に思った。ので、訊いてみた。
「師匠、なんか疲れてません? 体が重そうだ」
「い、いや、そんな事はないぞ!」
「シリーもぐったりしてて、船旅が疲れて・・・なんて言ってたけど、嵐でもあったんですか?」
「う・・・うむ。局地的にな・・・」
「そうかーじゃあ、今日はもうお終いにして、お茶にしませんか?」
「そ、そうしようか」
お茶を飲んでいると、シリウスがヴァンを呼びに来た。
「ヴァン謡将、クリムゾン様がお話があるとの事です。御出でになって頂けますか」
す、と一礼を取る。新鮮な気持ちでそれを見ながら、ヴァンは立ち上がった。
「行ってくる、ルーク、すまないな」
「いえ、はやく疲れが取れると良いですね」
汗をかきながらヴァンは立ち上がった。シリウスの目が怖い。
誰もいない所まで来ると、ボソッと呟かれた。
「誰のせいだ? 船の間中犯りまくって自分で勝手に疲れておいて、稽古をサボるとはいい度胸だな」
「い、いや、すまん」
「まあ、おいといて。クリムゾン様に計画を説明したいんだけど、アッシュの存在を教えたいんだよ。アッシュを誘拐したのはあんただから、自分で言い訳して。もっと早く教えたかったんだけど、あんたが優柔不断だからここまで伸びたんだからね」
「言えば良かったろう?」
「誘拐犯として、どう転んでもあんたの処分は確実だったからだよ。あんたを引き入れる為に、こんなに待たせたんだ。あんなに二人とも会いたがっていたのに」
「すまん・・・ しかし、少しは自惚れて良いのかな?」
ヴァンは、睨みつけるシリウスに人目を盗んで軽く口付けた。
「クリムゾン様、ヴァン謡将をご案内致しました」
「入れ」
ヴァンは執務室に通された。人払いがされる。
「クリムゾン様、ヴァン謡将は、計画に全面的に協力してくれるそうです。つきましては、謡将からお話があるそうでございます」
シリウスは口火を切ると、優雅に一礼し壁際に下がっていった。
「私は、いえ、私もユリアの子孫なのです。本名はヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ。ホドのフェンデ家の生き残りです。私はシリウスとは違った計画の元、預言を覆そうとしました。4年前にご子息を誘拐したのは私なのです」
ヴァンの告白に、クリムゾンの目がきつくなった。
「私は炭鉱の町で死ぬという御子息の預言を覆す為、御子息のレプリカを作ったのです。それが今の『ルーク』です」
「な・・・なんだと!ではあの子はルークではないと申すのか! 私の息子では無いと」
壁際から、静かに声がかかった。
「クリムゾン様は、どう思われますか? あの子は自分の子ではないと、作られたただの人形だと思われますか? ・・・ルーク様は、ご自分がレプリカであると、すでに知っておいでです。それでも、ただ貴方様を慕っているのです」
項垂れたクリムゾンは、やがて顔を上げた。
「あの子も私の子に違いはない。あの子を愛したこの気持ちが、無かった事に出来ようも無い」
「公爵様、私がダアトに連れて行ったご子息は、アッシュという名で暮らしています。一度、内密にお連れします」
「頼んだぞ。 ・・・ルークを誘拐した貴公を許すことは出来ん。だが、貴公も預言を覆す為にやったのであろう。此度の事は不問に処す」
「ありがとうございます」
「シリウス。 ・・・お前はどこまで知っていたのだ」
静かに問いかけるクリムゾンの前に進み出、シリウスは跪き深く頭を垂れた。
「・・・全てを。 告げる事が出来ないことも有るのです。申し訳ありません。しかし、世界を存続させたい、アッシュ様、ルーク様をお守りしたいという気持ちに嘘偽りは御座いません」
「顔を上げよ」
顔を上げたシリウスの頬には、涙が伝っていた。クリムゾンは親指でそれを拭うと、苦笑した。
「そんな顔をするな、責めているのではない。目覚めたばかりの時にそれを知れば、私は浅はかにも『ルーク』を処分してしまったことだろう。ダアトには我が息子を守る為に行ってくれていたのか。・・・これからも息子達を頼むぞ」
「・・・はい」
シリウスとクリムゾンは目を見交わし、微笑みあった。
退室し、暫らく歩いて行くと、ヴァンが堪えきれないように言った。
「・・・私への態度と、随分違うのではないか?」
「当たり前だろう。貴人に仕えているのだから」
「いや、そうではなく。随分しおらしいではないか」
「クリムゾン様は、尊敬できる立派なお方だ。敬愛している方に不遜な態度など取れるはずが無いだろう?言えない事があるのを心苦しく思っていた。 ・・・・・・それとも、何か勘繰ってんのか?」
最後の辺りは、地を這うように低くなった。上目遣いにヴァンを睨みつける。
「・・・スミマセン」
「いやでもさ、俺、実はファザコンなんだ。クリムゾン様は大好きなんだよ」
情けない表情で固まったまま言葉も無いヴァンを置いてシリウスはさっさとその場を逃げ出した。
数日後、アッシュとルゥが仲良く通信している所にシリウスが入ってきた。そのうちアッシュがバチカルに来る事になるだろうと伝える為だ。そのまま、今後の行動を話し合う。
「どうしようね、アッシュ、ルゥ。『戻った』ことまで話す? 隠し事してるのが心苦しいんだよな、俺。 ・・・必要ならためらわないけどね」
珍しく悩んでいる様子のシリウスに、ルゥもうなだれた。
「俺も隠し事、得意じゃないよ」
「でも信じるか? 不審に思われたら、計画は失敗だぞ」
「んーでも、言わなくても『何故そんな事知ってるんだ?』って不審に思われるよ?」
「それは、ローレライに聞いたって事で、済ませられるんじゃねぇか?」
「隠し事してると、態度に出るからね・・・よほど上手く誤魔化さないと、信用されなくなる」
俯いて考えていたルゥが、ひょこん、と顔を上げた。
「ねぇ、言ってみてさ、信用されなかったら、ローレライを呼び出して説明してもらえば?」
「・・・ルゥ、頭いいな」
「良い考えじゃねぇか。それで行こう」
二人に誉められて、ルークは嬉しそうだ。
「ねぇ、忘れてたけど、ナタリアの偽姫問題どうしよう?」
「ああ~・・・」
「放っときゃ、なるようになるんじゃねぇか?」
アッシュは面倒そうに言う。もうナタリアに未練は無いのだ。(ひでぇ!)
「まあ、そうだね。これは彼女と王様が解決する事だしな・・・」
シリウスも、相変わらず『思い出してくださいませ!』一点張りのナタリアが、どうにも好きになれかった。
あれじゃ、施政者は無理だろうなーと、常々思っている。
「あとさ・・・ マルクト、どうしよう。俺はマルクト軍人には睨まれてるから、あの国には近寄りたくないんだ」
「何かやったの?」
「キムラスカ側の傭兵として、散々ぶちのめした。 ・・・特にネクロマンサーを」
「「ああ~(納得)」」
「ピオニーが即位してて、直接会えるならまだしも、今行ったって捕まって拷問だよ」
「マルクトといえば、ガイはどうしてるんだ?」
アッシュの言葉にシリウスとルークは顔を見合わせた。
「忘れてた」
「今回ルゥ付きじゃないから、放置してた」
ひでぇ・・・とか思いながら、アッシュは提案した。
「なら、ガイを巻き込んで、マルクトに送っちまえばどうだ? ウゼェ奴が居なくなるし、丁度良いだろう? あとはヴァンとかリオとかに行ってもらえばいい」
「・・・良い考えだ、それ。何となく言ってみるから、次にヴァンが来た時、フォローするように言っといて」
閑話 ガルディオス
今まで放っといたため、ルゥに絆されてないガイを巻き込むのに、俺は考え込んだ。
仕方ないのでそれとなくクリムゾン様に手伝ってもらう事にした。
クリムゾン様はガイがガイラルディアって知ってるしな。
少々打ち合わせをして、ガイが通りかかる時を見計らって、クリムゾン様に宝刀ガルディオスの前に佇んで貰う。
あ、ガイが案の定凄い目で見てる。
お前な、少しは隠せよ。ずっと気付かれてたんだぞ。
クリムゾン様に、何気なく近寄っていって話しかける。
「また、ご覧になっているのですか?」
「・・・これは私の、戒めだからな」
「ガルディオス家を滅ぼしたのは、貴方様では無いではありませんか・・・」
「止められなかったのは、私の失態だ」
あ、ガイが驚愕してる。ちょっとは人目を気にしろよ、この中途半端野郎。
・・・うろたえてどっか行っちまった。
「・・・これでよいのか?」
「ありがとうございました、クリムゾン様」
「罪滅ぼしと思い、今まで知らぬ振りをしてきたが、ガルディオス家が復興出来るなら本望であろう。 ・・・しかし・・・ あれを戒めなどと思った事は無いのだが」
宝刀を見ながらばつが悪そうにクリムゾン様が言う。
「陛下から下賜されたから無碍に扱う訳にも行かんので掛けてあるだけだ」
ちょっと意外に思い、クリムゾン様の顔を見る。
「戒めに形はいらん。戒めは心にあるものだ」
ちょっと感動してうるっときた、俺はおもわず呟いた。頬が熱い。
「・・・素敵です、クリムゾン様」
咳払いしながら、行ってしまわれた。耳、赤かったんですけど、どうしたんですか?
夕食の後、案の定呼び止められた。ガイとペールの部屋に行く。
ガイは凄いうろうろして、不審人物みたいだ。引きつった笑顔で話しかけて来た。
「ホド戦のこと、なんか知ってるかい?」
・・・・・・何気ない世間話にしたいんだろうけど、それは超!無理があるよ。
すごくツッコミたいが、仕方ないから乗ってやろう。
「ああ、俺は両親が傭兵してた時に、ホドでクリムゾン様に会ったんだ。親を手伝って戦場にいたからホドの崩落の事は良く知ってる。あれ、結構複雑な事情があるんだぜ」
「へぇ・・・教えてくれないかな」
「いいけど、秘密だよ」
前置きして、俺は話し出した。
「ガルディオス家はさ。ファブレに滅ぼされたって事になってるけど、実は公爵様は命じてないんだ。ユージェニー様はシュザンヌ様と友人だったしね。ホド以前の戦いで家族を殺された貴族の若い奴が、復讐の為に命令無視でやっちゃったんだよ。公爵様はその貴族を罰したよ」
ショックを受けるガイに、さらに続ける。
「ホドが崩落したのはさ、ホントはマルクトの所為なんだよ。マルクトが情報漏洩を恐れて、実験で吹き飛ばしたの。俺はそれを知らせに本陣に走ってやっと助かったから、間違いないよ。
・・・あれ、どうしたの? 気分悪いなら、休みなよ」
もう真っ青で倒れそうなガイを、こちらも真っ青なペールに任せて、俺は部屋を出た。
まあ、全部本当の事だしな。
俺、お前みたいな中途半端野郎、嫌いなんだよ。
自分の心の整理は、自分で付けてくれよな。
数日ほっといたらヴァンが来て、なんか話したみたいだ。
すっきりした表情で、ガイとペールはファブレ家を辞していった。多分マルクトに向うんだろう。
あとでヴァンが得意げにやって来て、『無事和平締結となれば、和平立役者のガルディオス家はマルクトでも認められ、宝刀ガルディオスも返却されるだろう』とか言っといた、と言うので、誉めて書庫の影でちょっとサービスしてやった。
・・・・・・顎が疲れた。
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