邪魔者も居なくなったので、そろそろヴァンがアッシュを連れてくる事になった。
ルークは浮かれて騒いでいたが、アッシュとシリウスは此処が正念場とばかりに緊張していた。
夜、ヴァンがフードを被った人物を連れてファブレ家を尋ねる。あらかじめクリムゾンから言われていた番兵は、二人を応接間に通した。部屋から退室し人払いをする。
人を遠ざけた部屋には、クリムゾン、シュザンヌ、シリウス、ルークが居た。
シュザンヌにはクリムゾンが話をしていたのだ。
フードがはらりと取られる。深紅の髪が現れた。
「お久しぶりです、父上、母上」
「アッシュー!! あいたかったぁ~v」
一礼するアッシュに我慢できなくなったルークが飛びついた。
「アッシュだー。ああっ、背がこんなに違うー! 足が浮く、ほら!」
「・・・いいからてめぇちっとは黙れ! おとなしくしてろ!」
首にしがみ付かれて騒がれて、感動の対面を粉々にされたアッシュはキレた。
ごつんと拳骨を食らわせて、ひょいとソファーに座らせる。
涙目で拗ねたように見上げてくるルークの頭に口付けて撫で撫でしてやると、とたんに笑顔がこぼれた。
ちょっとあっけに取られたクリムゾンとシュザンヌは、気を取り直してアッシュに近寄った。
「良くぞ戻った、息子よ」
「お帰りなさい、ルーク」
二人に抱擁されたアッシュは恥ずかしそうに目を泳がせている。
「父上、母上私は今、アッシュと言う名を名乗っています。どうぞアッシュとお呼び下さい」
「ちちうえ、ははうえ、俺たちは二人で『ルーク』なんだ。俺のことは、ルゥって呼んで欲しい。アッシュが付けてくれたんだよ、ルーシェルって!」
誇らしそうなルークの言葉に、二人は微笑して頷いた。
そして、長い長い話が始まった。
「・・・そして、預言は覆され、世界は存続したのです。ただ、『聖なる焔の光』は生き続ける事が出来なかった。ローレライにも、最終段階を迎えた大爆発を止める事が出来なかったのです。
私もその時に死を迎え、ローレライの力で音譜帯に迎えられました。そして、三人で戻ってきたのです。
・・・生きるために」
「・・・・・・そんな事が・・・あったのか」
長い沈黙の後、クリムゾンが搾り出すように言った。
「お疑いなら、第七音素の濃いところでローレライを呼び出すことが出来ます」
「いや、信じる。シリウス、お前はそれほどに前から息子達を守り続けてくれていたのか・・・」
「ルーク様は我が主。魂の一片まで、私はルーク様に捧げているのです」
微笑むシリーに、ずっと無言だったヴァンが話しかけた。
「・・・私は、実行してしまったのだな、あの計画を。憎しみを消せなかったのか。 ・・・そしてお前達に敗れた。 ・・・何故、私を引き入れたのだ。もっと前に、幾らでも私を消す手段はあっただろう?」
シリウスは苦笑して返した。
「何か、憎めなくってさ。 ・・・前のあんたには、誰もいなかったんだろう? おまえは馬鹿だって言ってくれる人が」
「確かに・・・お前に言われて、迷いはだんだん大きくなっていったよ」
ヴァンも苦笑すると、晴れやかな顔になった。
夜も更けて、シュザンヌが名残惜しそうに退席した。長く話し込んで疲れてしまったからだ。
アッシュを抱きしめると、また顔を出す事を約束させて部屋に戻っていった。
「さて、これからどうするか決めねばなりません」
皆は顔を見合わせて、うなづきあった。
クリムゾンは、秘預言をインゴベルトにも話すことを勧めた。シリウスとリオが協力する。
世界の消滅を知ってまで、預言を守ろうとする事は無いだろうと判断したのだ。
アッシュは自由に動く為、教団に在籍を続け、時々任務と称してバチカルに赴く事になった。
シリウスは通信機があることをクリムゾンとヴァンに見せ、緊急時には連絡が取れると教えた。
(二人にちょっと恨まれた)
インゴベルトがマルクトとの和平を決めた後なら、使者を送ることが出来る。
その使者にヴァンとリオが着いて行けば、秘預言をマルクト皇帝に見せる事も出来るだろうと言うことになった。ヴァンにローレライの宝珠を貸して持って行けばいい。
「なんだ、お前は行かんのか?」
つまらなそうに言うヴァンにシリウスは苦笑した。
「俺がマルクトに行ったら、ネクロマンサーに八つ裂きにされるよ」
「シリウスは『冥王』だからな。マルクトは何度も煮え湯を飲まされておる」
クリムゾンの言葉に、ヴァンは驚いた。
「な・・・『冥王』? そんな事言っていなかったではないか!」
「何だ、謡将は知らなんだか。ダアトも勿体無い事をすると話しておったのだ」
「いや、別に言う必要ないだろう、傭兵の二つ名なんて。ちなみにはじめて会った時にはもう『冥王』だったけど」
クリムゾンの言葉にがっくりと脱力したヴァンは恨めしそうにシリウスを見た。
「私は『冥王』に2年も調理人をさせたと言われ続けるのか・・・」
閑話 アッシュとルゥ
アッシュはその晩ファブレ家に泊まる事になった。ルゥが強請ったのだ。
「アッシュー会いたかった! コーラル城で触ってくれたろ? 嬉しかったんだ」
アッシュの膝に乗り、ぴったり張り付いて離れない。
アッシュも好きにさせて、時々髪を撫でたりしている。
「でもアッシュと身体つきが違っちゃって、ちょっと残念だな」
「いや、俺は抱き心地が良くて満足だ」
「アッシュ、前の時より、背ぇ伸びんの早くない? 凄く差が付いた気がする」
「・・・(シリーの食事が効いたか?感謝!)お前もそのうち伸びるだろう・・・」
抱き合ったまま、ぺたぺた触りあっている。まるで猫の親子だ。
一緒に風呂に行って、あちこち比べっこなんてしてみてから、呆れたシリウスにベッドに突っ込まれた。
「一緒でいいよね、おやすみ」
アッシュは以前のときより食事をバランス良くしっかり取っていたので、幾分成長が早い。
あと少しで前回の身長を越えられると喜んでいたのだ。きっと180㎝は越えるだろう。
ルゥは2年時が止まっており、好き嫌いもあって食が細く、まだ成長期の急激な伸びは迎えていない。鍛えはじめの柔らかな体をしていた。
ベッドに寝転がり、抱きしめあう。華奢なルゥはすっぽりアッシュの腕に収まった。
お互いの心臓の音が聞こえ、例えようも無く幸せな気持ちになる。
悪夢を見てしまった時など、こっそり深夜に通信してしまう事もあった。お互いの声を聞くと、安心して眠れるのだ。
アッシュはルゥの頬や額に口付けを降らせた。ルゥもお返しをする。
欠けていたものがぴったりと合わさったような充足感に満たされ、二人はお互いの目を見つめて微笑み合った。
そして、もう対称では無くなった半身たちは、寄り添いながら幸せな眠りについた。
ちなみにその頃シリウスはヴァンにあてがわれた客間の浴室で『ご主人様とメイドごっこ』をして戯れていた。
閑話 ご主人様とメイドごっこ ※R15・・・なんだろうか? どう見ても馬鹿二人としか思えない。
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