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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.16,Tue

 

 
バチカルサイド
 

 
イオンが助かって一ヶ月。
そろそろ計画を進めたい、と言って、シリウスはダアトに行った。
戻ってきたときにはヴァンを連れていた。剣の稽古の日だったからだ。

稽古しながらルークは不思議に思った。ので、訊いてみた。

「師匠、なんか疲れてません? 体が重そうだ」
「い、いや、そんな事はないぞ!」
「シリーもぐったりしてて、船旅が疲れて・・・なんて言ってたけど、嵐でもあったんですか?」
「う・・・うむ。局地的にな・・・」
「そうかーじゃあ、今日はもうお終いにして、お茶にしませんか?」
「そ、そうしようか」
 

お茶を飲んでいると、シリウスがヴァンを呼びに来た。
「ヴァン謡将、クリムゾン様がお話があるとの事です。御出でになって頂けますか」
す、と一礼を取る。新鮮な気持ちでそれを見ながら、ヴァンは立ち上がった。

「行ってくる、ルーク、すまないな」
「いえ、はやく疲れが取れると良いですね」
汗をかきながらヴァンは立ち上がった。シリウスの目が怖い。
誰もいない所まで来ると、ボソッと呟かれた。

「誰のせいだ? 船の間中犯りまくって自分で勝手に疲れておいて、稽古をサボるとはいい度胸だな」
「い、いや、すまん」
「まあ、おいといて。クリムゾン様に計画を説明したいんだけど、アッシュの存在を教えたいんだよ。アッシュを誘拐したのはあんただから、自分で言い訳して。もっと早く教えたかったんだけど、あんたが優柔不断だからここまで伸びたんだからね」
「言えば良かったろう?」
「誘拐犯として、どう転んでもあんたの処分は確実だったからだよ。あんたを引き入れる為に、こんなに待たせたんだ。あんなに二人とも会いたがっていたのに」
「すまん・・・ しかし、少しは自惚れて良いのかな?」

ヴァンは、睨みつけるシリウスに人目を盗んで軽く口付けた。
 
 

「クリムゾン様、ヴァン謡将をご案内致しました」
「入れ」
ヴァンは執務室に通された。人払いがされる。

「クリムゾン様、ヴァン謡将は、計画に全面的に協力してくれるそうです。つきましては、謡将からお話があるそうでございます」
シリウスは口火を切ると、優雅に一礼し壁際に下がっていった。
「私は、いえ、私もユリアの子孫なのです。本名はヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ。ホドのフェンデ家の生き残りです。私はシリウスとは違った計画の元、預言を覆そうとしました。4年前にご子息を誘拐したのは私なのです」
ヴァンの告白に、クリムゾンの目がきつくなった。

 
「私は炭鉱の町で死ぬという御子息の預言を覆す為、御子息のレプリカを作ったのです。それが今の『ルーク』です」
「な・・・なんだと!ではあの子はルークではないと申すのか! 私の息子では無いと」

壁際から、静かに声がかかった。 
「クリムゾン様は、どう思われますか? あの子は自分の子ではないと、作られたただの人形だと思われますか? ・・・ルーク様は、ご自分がレプリカであると、すでに知っておいでです。それでも、ただ貴方様を慕っているのです」

項垂れたクリムゾンは、やがて顔を上げた。
「あの子も私の子に違いはない。あの子を愛したこの気持ちが、無かった事に出来ようも無い」
「公爵様、私がダアトに連れて行ったご子息は、アッシュという名で暮らしています。一度、内密にお連れします」
「頼んだぞ。 ・・・ルークを誘拐した貴公を許すことは出来ん。だが、貴公も預言を覆す為にやったのであろう。此度の事は不問に処す」
「ありがとうございます」
 

「シリウス。 ・・・お前はどこまで知っていたのだ」
静かに問いかけるクリムゾンの前に進み出、シリウスは跪き深く頭を垂れた。
「・・・全てを。 告げる事が出来ないことも有るのです。申し訳ありません。しかし、世界を存続させたい、アッシュ様、ルーク様をお守りしたいという気持ちに嘘偽りは御座いません」

「顔を上げよ」

顔を上げたシリウスの頬には、涙が伝っていた。クリムゾンは親指でそれを拭うと、苦笑した。
「そんな顔をするな、責めているのではない。目覚めたばかりの時にそれを知れば、私は浅はかにも『ルーク』を処分してしまったことだろう。ダアトには我が息子を守る為に行ってくれていたのか。・・・これからも息子達を頼むぞ」
「・・・はい」
シリウスとクリムゾンは目を見交わし、微笑みあった。
 
 

 
退室し、暫らく歩いて行くと、ヴァンが堪えきれないように言った。
「・・・私への態度と、随分違うのではないか?」
「当たり前だろう。貴人に仕えているのだから」
「いや、そうではなく。随分しおらしいではないか」
「クリムゾン様は、尊敬できる立派なお方だ。敬愛している方に不遜な態度など取れるはずが無いだろう?言えない事があるのを心苦しく思っていた。 ・・・・・・それとも、何か勘繰ってんのか?」

最後の辺りは、地を這うように低くなった。上目遣いにヴァンを睨みつける。
「・・・スミマセン」
「いやでもさ、俺、実はファザコンなんだ。クリムゾン様は大好きなんだよ」
 
情けない表情で固まったまま言葉も無いヴァンを置いてシリウスはさっさとその場を逃げ出した。
 
 

 
数日後、アッシュとルゥが仲良く通信している所にシリウスが入ってきた。そのうちアッシュがバチカルに来る事になるだろうと伝える為だ。そのまま、今後の行動を話し合う。

「どうしようね、アッシュ、ルゥ。『戻った』ことまで話す? 隠し事してるのが心苦しいんだよな、俺。 ・・・必要ならためらわないけどね」
珍しく悩んでいる様子のシリウスに、ルゥもうなだれた。

「俺も隠し事、得意じゃないよ」
「でも信じるか? 不審に思われたら、計画は失敗だぞ」
「んーでも、言わなくても『何故そんな事知ってるんだ?』って不審に思われるよ?」
「それは、ローレライに聞いたって事で、済ませられるんじゃねぇか?」
「隠し事してると、態度に出るからね・・・よほど上手く誤魔化さないと、信用されなくなる」

俯いて考えていたルゥが、ひょこん、と顔を上げた。
「ねぇ、言ってみてさ、信用されなかったら、ローレライを呼び出して説明してもらえば?」
「・・・ルゥ、頭いいな」
「良い考えじゃねぇか。それで行こう」
二人に誉められて、ルークは嬉しそうだ。
 

「ねぇ、忘れてたけど、ナタリアの偽姫問題どうしよう?」
「ああ~・・・」
「放っときゃ、なるようになるんじゃねぇか?」

アッシュは面倒そうに言う。もうナタリアに未練は無いのだ。(ひでぇ!)
「まあ、そうだね。これは彼女と王様が解決する事だしな・・・」
シリウスも、相変わらず『思い出してくださいませ!』一点張りのナタリアが、どうにも好きになれかった。
あれじゃ、施政者は無理だろうなーと、常々思っている。

「あとさ・・・ マルクト、どうしよう。俺はマルクト軍人には睨まれてるから、あの国には近寄りたくないんだ」
「何かやったの?」
「キムラスカ側の傭兵として、散々ぶちのめした。 ・・・特にネクロマンサーを」
「「ああ~(納得)」」
「ピオニーが即位してて、直接会えるならまだしも、今行ったって捕まって拷問だよ」
 

「マルクトといえば、ガイはどうしてるんだ?」
アッシュの言葉にシリウスとルークは顔を見合わせた。
「忘れてた」
「今回ルゥ付きじゃないから、放置してた」

ひでぇ・・・とか思いながら、アッシュは提案した。
「なら、ガイを巻き込んで、マルクトに送っちまえばどうだ? ウゼェ奴が居なくなるし、丁度良いだろう?  あとはヴァンとかリオとかに行ってもらえばいい」
「・・・良い考えだ、それ。何となく言ってみるから、次にヴァンが来た時、フォローするように言っといて」
 
 

 

 
 
閑話  ガルディオス
 
 

今まで放っといたため、ルゥに絆されてないガイを巻き込むのに、俺は考え込んだ。

仕方ないのでそれとなくクリムゾン様に手伝ってもらう事にした。
クリムゾン様はガイがガイラルディアって知ってるしな。
少々打ち合わせをして、ガイが通りかかる時を見計らって、クリムゾン様に宝刀ガルディオスの前に佇んで貰う。

あ、ガイが案の定凄い目で見てる。
お前な、少しは隠せよ。ずっと気付かれてたんだぞ。

 
クリムゾン様に、何気なく近寄っていって話しかける。
「また、ご覧になっているのですか?」
「・・・これは私の、戒めだからな」
「ガルディオス家を滅ぼしたのは、貴方様では無いではありませんか・・・」
「止められなかったのは、私の失態だ」

 
あ、ガイが驚愕してる。ちょっとは人目を気にしろよ、この中途半端野郎。
・・・うろたえてどっか行っちまった。

「・・・これでよいのか?」
「ありがとうございました、クリムゾン様」
「罪滅ぼしと思い、今まで知らぬ振りをしてきたが、ガルディオス家が復興出来るなら本望であろう。 ・・・しかし・・・ あれを戒めなどと思った事は無いのだが」
宝刀を見ながらばつが悪そうにクリムゾン様が言う。
「陛下から下賜されたから無碍に扱う訳にも行かんので掛けてあるだけだ」
ちょっと意外に思い、クリムゾン様の顔を見る。
 
「戒めに形はいらん。戒めは心にあるものだ」

ちょっと感動してうるっときた、俺はおもわず呟いた。頬が熱い。
「・・・素敵です、クリムゾン様」

咳払いしながら、行ってしまわれた。耳、赤かったんですけど、どうしたんですか?
 
 

 
夕食の後、案の定呼び止められた。ガイとペールの部屋に行く。
ガイは凄いうろうろして、不審人物みたいだ。引きつった笑顔で話しかけて来た。

「ホド戦のこと、なんか知ってるかい?」
 
・・・・・・何気ない世間話にしたいんだろうけど、それは超!無理があるよ。
すごくツッコミたいが、仕方ないから乗ってやろう。

「ああ、俺は両親が傭兵してた時に、ホドでクリムゾン様に会ったんだ。親を手伝って戦場にいたからホドの崩落の事は良く知ってる。あれ、結構複雑な事情があるんだぜ」
「へぇ・・・教えてくれないかな」
「いいけど、秘密だよ」
前置きして、俺は話し出した。
 

「ガルディオス家はさ。ファブレに滅ぼされたって事になってるけど、実は公爵様は命じてないんだ。ユージェニー様はシュザンヌ様と友人だったしね。ホド以前の戦いで家族を殺された貴族の若い奴が、復讐の為に命令無視でやっちゃったんだよ。公爵様はその貴族を罰したよ」

ショックを受けるガイに、さらに続ける。
「ホドが崩落したのはさ、ホントはマルクトの所為なんだよ。マルクトが情報漏洩を恐れて、実験で吹き飛ばしたの。俺はそれを知らせに本陣に走ってやっと助かったから、間違いないよ。
・・・あれ、どうしたの? 気分悪いなら、休みなよ」
 

もう真っ青で倒れそうなガイを、こちらも真っ青なペールに任せて、俺は部屋を出た。
まあ、全部本当の事だしな。
俺、お前みたいな中途半端野郎、嫌いなんだよ。
自分の心の整理は、自分で付けてくれよな。
 
 

数日ほっといたらヴァンが来て、なんか話したみたいだ。
すっきりした表情で、ガイとペールはファブレ家を辞していった。多分マルクトに向うんだろう。
 
 
 
 
あとでヴァンが得意げにやって来て、『無事和平締結となれば、和平立役者のガルディオス家はマルクトでも認められ、宝刀ガルディオスも返却されるだろう』とか言っといた、と言うので、誉めて書庫の影でちょっとサービスしてやった。
・・・・・・顎が疲れた。
 
 
 

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