ダアトサイド
アッシュがダアトで4年目を過ごしている頃、イオンのレプリカが作られた。
イオンは死期を詠まれた前でもけっこう元気だったが、具合が悪そうに見せかけていた。
そんな中、モースが独断でレプリカを作ってしまったのだ。
ヴァンは迷っていたが、もともとの計画にイオンレプリカの作成が有ったので、ディストはモースに言われた事を疑問に思わず作成してしまった。
ディストに聞いたアッシュとアリエッタは4体作られたレプリカを助けに行ったが、シンクを除いた2名は数日後に乖離してしまった。あと一体はモースの手の内にある。『イオン』だ。
こうなると死を詠まれたイオンは殺される危険が高い為、死んだ振りをして逃げ延びる事にした。
青白く化粧をして横たわるイオンは本当に死んでいるように見えた。
後にイオンは語る。
「いや~息止めるのが苦しかったぁ~! 死ぬかと思ったよ」
空の棺が秘密裏に埋葬される中、ほとぼりが冷めるまで、本物はシリウスの家だった所にこっそり隠れていた。シンクも体調が戻るまでイオンと過ごしていた。(火口に落とされてはいないので、消耗しているだけだった)
鍵の隠してある場所はアッシュとアリエッタが聞いており、時々駄弁りに使っていたのだ。
こっそり漆黒の翼と繋ぎをつけていたアッシュは、ダアトに来たノアールにイオンを託してナム孤島に匿って貰った。あそこなら普通の人は入れないし、ダアトからも近いのでアリエッタがお友達を使えばすぐだったからだ。
シンクは顔を隠しオラクルに入団する事になった。
シリウスたちはイオンの生存に喜んだ。同時に預言は覆せるものだと改めて感じたのだった。
イオンがナム孤島に行ってひと月。突然シリウスがダアトに来た。
ヴァンが昼食に食堂に向うとなにやら騒がしい。
気にせず席に着いて配膳を待っていると、突然目の前に親子丼が置かれた。
固まって凝視する中、蒸らし時間は終了し、蓋がとられた。
「どうぞ、召し上がれ。ヴァン総長殿」
無意識のまま箸を取り、口に運ぶ。・・・美味い、完璧だ!
感激して食べている間も、視線ははずさなかった。シリウスは厨房にレシピを渡して感涙されたり、兵士達に話しかけられたりして談笑している。なんとなく面白くない。
百面相しているヴァンは、周囲の者達に生暖かい目で見られていることに気付いていなかった。
食事が終わる頃を見計らってシリウスが戻ってきた。
「さあヴァン総長、デートしようか。返事を聞きに来たよ」
周りからむせる音やおおっ、とかひゅーとか聞こえるなか、シリウスはヴァンを引っ張っていった。
食堂の裏手からシリウスの家に向かう。ドアを開けて中に入る。
ヴァンを座らせると、シリウスは話し始めた。
「あんたがいつまでも答えてくれないから、俺は行動を開始する事にした。今日が最終勧告だ。
俺はローレライを解放して預言を覆すつもりだ。瘴気を中和し、外殻大地を降下させてパッセージリングの2000年問題を片付ける。マルクトとキムラスカにも預言をぶっちゃけて、戦争なんて起こさせない。マルクトは滅びず、疫病も発生しない。みんな幸せに末永く暮らせる。
・・・さあ、この計画に参加する? しない?」
「・・・・・・・」
絶句するヴァンに、イラついたようにシリウスが詰め寄る。
「この計画にあんた的になんか問題あるわけ? 何が不満なのさ」
虚をつかれたように考え込んだヴァンが、やがて笑いながら答えた。
「・・・無いな、問題ない。有るとすれば、私のプライドの問題だけだ」
「そんなモン。俺の親子丼とどっちが重要だよ」
「親子丼だな。・・・・・・参加する」
テーブル越しに触れるだけの口付けを交わすと、さて、とシリウスは立ち上がった。
「んじゃ、帰るわ」
「ま、まあ待て、せっかくここまで来たのだ、ゆっくりして行け」
慌ててヴァンが引き止める。
「俺、忙しいんだけど」
「久しぶりだろう? ちょうどここにベッドもあるし! こんな良い雰囲気なぞ滅多に無かったのに」
「ここはアッシュたちが来るだろう。ヤッてるところに入ってこられるのは流石に嫌だ」
「じゃあ、私の部屋で」
まあ、良いか。久しぶりだし。
とか思いながらヴァンの部屋に向う途中で、シリウスはどうしても聞いて見たくなった。
「なあ、ヴァン。一生俺の親子丼が食べられないのと、一生俺を抱けないのどっちか選べって言われたら、どっちを選ぶ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
汗をだらだら流して考えるヴァンの顔はとても見もので、うっかり通りかかって話を聞いてしまったアッシュは、また部屋に篭って爆笑する羽目になった。
夕食はシリウスの家にみんなが集まった。アッシュ、ヴァン、リグレット、ラルゴ、アリエッタ、
そしてシンク。(ディストはモースにばらされそうなので誘ってない。ごめん)
ご馳走が並べられたテーブルに皆がついたことを見計らって、シリウスが始めた。
「はーいちゅうもくー! 俺たちはこれから預言を覆そうと思いまーす。預言が覆る証拠をお見せします。
どーぞー!」
「こんばんはー。死の預言を覆したオリジナルイオンで~す」
イオンがノリ良く入ってきた。髪を切って、健康そうに日焼けしている。
ヴァン、リグレット、ラルゴはあんぐりと口を開けている。
「紛らわしいから、オリオンって改名しました。リオって呼んでね」
てへっ、と可愛く首を傾げる。
「そこ! 名前が安直とか言わないように!」
随分こなれた性格になったもんだ。
「な・・・何故・・・!」
「いや、モースに毒を盛られてたから、全力で助けてみた」
シリウスの言葉にアリエッタがうんうんと頷いている。
「まあ、冷めない内にご飯にしようよ」
唖然としてた者たちも、食事を始めると落ち着いてきた。アリエッタとリオとシンクは仲がいい。
(おお、あんまり擦れてないシンクだ!)
シリウスはシンクに話しかけた。
「始めまして、シンク。俺はシリウス・ブレイズ。シリーって呼んでくれ。ねえ、君は生まれたことをどう思っているの?」
直球で訊かれた事に、シンクはしばらく戸惑った後答えた。
「わかんないよ、そんなの。勝手に生み出されちゃったんだから」
「・・・それで良いんだよ。人間、生まれた者勝ちだ。生きようとした者が生き、楽しもうとした者が楽しむ。やりたい事なんて、今から探せばいいんだよ」
「そんなモンなの?」
へらっと笑ったシリウスに、シンクは苦笑した。
「それで皆さん。俺は楽しく生きるために、ほっとくと滅亡すると詠まれた預言を覆そうと思います。まず、これを見てください」
手にローレライの宝珠を出現させる。
「触ってみて・・・・・・ユリアは預言を、覆す為に詠んだんだ。正義は我にあり、ってことで、協力してくださーい」
なんだか軽いノリで、世界の存亡をかけた計画が進んでいった。
「あ、ローレライに訊きたい事があったら呼び出せまーす」
アッシュはそっと溜息をついた。
(能天気だと思っていたが、此処まではっちゃけるとは思ってなかったぜ・・・まあ、良いか)
アッシュは自分も結構はっちゃけている事に気付いていなかった。
閑話 ※R-15 最初から最後までやってます。 プチSM? ヴァン×シリー
読まなくても話しは通じますので、苦手な方、義務教育中の方は自己回避で!
腕を掴まれ、部屋に引きずり込まれた。
ご丁寧に扉に鍵をかけられ、その鍵を隠しにしまわれた。
「さて、・・・お前は、何をやっているのだ」
「ダアトでの問いにそっちが答えるのが先だよ」
「体に訊いてやろうか」
「・・・最初からそのつもりの癖に」
シリウスのスカーフを取ると、後ろ手に縛り上げ、シャツを肌蹴た。
ベッドに突き飛ばすとズボンを下穿きごと引き摺り下ろす。靴が飛んだ。足を大きく開かせる。
「いい眺めだ」
「このド変態のサド野郎が」
「硬くしているではないか」
シリウスのそれに舌を這わせる。思わず息を詰めるシリウスの口に節くれ立った指が突っ込まれる。
「濡らせ」
腹いせに軽く噛んでから、舌で舐め上げる。唾液が滴り落ちる。
濡らした指で軽く解されると、すぐに突き入れられた。苦痛の声が漏れる。
「何だ。抱かれるのは久しぶりか?」
「煩い。暇が無かっただけだ。もっと丁寧にやれよ」
睨みつけるシリウスにヴァンは哂った。
「優しくしたら、仕置きにならんだろう?」
抜き刺しを数回繰り返してそこを慣らす。と、いきなり激しく腰を使い始めた。
悲鳴が快楽の色に染まってゆく。やがて、ヴァンの熱が体内に広がった。
達きかけたその時、根元を強く押さえ込まれた。そのまま達けない様に縛り上げられる。
「こ・・・の、ドSめ・・・!」
「なんとでも言え。咥えろ」
シリウスをベッドから突き落とすと、ベッドに腰掛けて足を開く。膝立ちのシリウスの内股に自分が放ったものが白く流れ落ちるのを見て、ヴァンは満足感に満たされた。
シリウスが舌を這わせ、絡め、飲み込んでいく。その頭を掴み、前後に揺さぶった。
苦しげなシリウスの目から生理的な涙が零れ落ちた。喉の奥にぶちまける。
倒れこんで苦しげにむせるシリウスをベッドに引き摺り上げた。口からも股からも征服の証を滴らせた姿は扇情的だった。
「跨って、動け。得意だろう?」
後ろ手に縛られてふらつきながらもヴァンに跨り、腰を落として飲み込んでいく。
腰を揺らし、締め上げる。ヴァンが呻いた。
「も・・・イかせてよ・・・こっちだって溜ってるんだから・・・」
シリウスが息も絶え絶えに喘ぐ。好い所を狙って突き上げてやると、声を上げて崩れ落ちた。
そのままひくひくと体を震わせる。痙攣するように締め上げる中の動きを楽しみながら、ヴァンは耳元で囁いた。
「射精せずに達ったか? まったく、楽しませてくれる」
身を起こし、腕と根元の戒めを解き放って体勢を変えるとゆっくり味わうように中をかき回す。
シリウスは泣くように喘ぎ、白濁をトロトロ流し続けながら男を締めつけた。
そろそろか、とシリウスは思った。
『以前』と比べると、屋敷内の雰囲気が明るい。そして時折クリムゾンが酷く辛そうにルークを見ている。
シリウスはクリムゾンに面会を求めると、人払いをお願いした。そして話し始める。
「以前私は、ユリアの子孫だと言いました。そのことでお話があるのです。・・・預言は絶対であると、信じていらっしゃいますか?」
「・・・・・・うむ」
「ユリアが、預言が覆る事を望んだとしても?」
シリウスは手の中に、宝珠を出現させた。
「これは、ローレライの宝珠。ここに、世界の運命が記されています。・・・そしてユリアの願いも。ご覧になる勇気はありますか」
瞠目したクリムゾンは、恐る恐る手を伸ばした。そして、愕然とする。
キムラスカの繁栄のために生贄に息子を捧げても、待っているのは世界の滅亡とは! こんな事の為に息子は死ななければならないのか!
ガクリと座り込み頭を抱えるクリムゾンに、シリウスは言葉を重ねた。
「クリムゾン様、ユリアは世界の滅亡を望んでいません。覆してくれと預言を詠んだのです。どうか、預言を覆し世界を救う事に、お力を貸していただけませんか」
シリウスにとっても、これは賭けだった。もしクリムゾンが預言を絶対視していたら、ここで処分されるのはシリウスだからだ。祈るような気持ちで、返答を待つ。
やがてのろのろとクリムゾンが顔を上げた。その目には、強い光が宿っている。
「・・・民を救う為に協力する事に否も無い。・・・私は、息子を捧げなくても良いのか。ルークは、生きる事が出来るのだな! シリウス、感謝する」
今まで見たことも無いほど破顔したクリムゾンは、ぐっとシリウスを引っ張ると、強く抱きしめた。
「預言を覆す為なら、何でもしてやろう」
「ありがとうございます。クリムゾン様・・・」
シリウスは、安堵して体の力を抜いた。
ルークが目覚めて、一年後の事だった。
「そろそろ剣の授業を始めたいんだけど、問題があるんだ」
「何? シリーが教えてくれたら良いじゃん」
「俺はアルバート流は使えないんだよ。ルゥがアルバート流を使ってたら、変だ」
「あ、そっか。・・・また師匠に頼むのかなぁ」
「あ~ ・・・それしかないと思うんだけど、ちょっと俺、顔合わせたくないんだよね」
「師匠、知ってんの? あ、アッシュがなんか言ってたっけ?」
「あはは・・・いや~、俺は、隠れてることにするわ」
見付かりたくない時には見付かってしまうもので。
ヴァンがファブレ家に出入りするようになって暫らくした頃、シリウスはたまの休日に私物を買いに町に出ていた。店を物色していたところを、いきなり肩をがしっと掴まれた。
ぎくっとして振り向こうとするが、両肩を掴まれている為動けない。
気配が無かった。こんな事が出来るのは・・・
「久しぶりだな、シリー。何でこんな所にいるのだ」
耳元で低音が響く。
しまった、ガイを放置していた。奴に聞いたに違いない。
「あ、あはは、久しぶりだね、ヴァン。放してくれるかな?」
冷や汗をかいたシリウスが引きつった笑い声を上げる。
「逃がさん。付き合ってもらおうか」
逃さないよう腰に手を回し、宿に向かって歩き出すヴァンに、シリウスはそっと諦めの吐息をついた。
閑話 ※R15 SMプレイ? ヴァン×シリウス
※ 飛ばしてもらっても、これっっぽっちも差し支えありません(笑)
ヴァンシリの爛れた性生活に興味のある方のみお読み下さい。義務教育中の方は回避!
「・・・・・・バチカルで、SMプレイをするとは思わなかった」
「・・・すまん。調子に乗りすぎた」
「どーすんだよ、これ」
手首の擦過傷とドロドロのシャツを示す。キスマーク(というか噛み痕)も満載だ。
「クリムゾン様に、ヴァンにレイプされましたって言っちゃおうかな~ ・・・怒るだろうな~
きっと出入り禁止だよね」
「お前だって、楽しんでいたではないか!」
「あーやだ。強姦魔の言い草だよね、それ。 ・・・とりあえず、後でシャツ買ってきて。これじゃ帰れない。長袖で、立ち襟の奴ね」
「・・・わかった」
シリウスは風呂場でヴァンに洗われている時に気を取り戻し、抱き上げられてベッドに連れてこられた所だ。(もちろん使ってないほうのベッドだ)
「昼間っから、動けなくなるほどやるなよ」
「失神するほど楽しんでもらうとは、光栄な事だな」
色っぽいんだか殺伐としてるんだか、良く判らないピロートークである。
「んでさぁ、答えは出たかい?」
あ~あ、ダアトの聖堂かどっかで、かっこよく訊こうと思ったのにーと、不貞腐れながらシリウスが訊いた。ちなみにここはベッドの上で、ふたりとも裸だ。
「私は、預言を覆す」
真顔になったヴァンの額に、シリウスのチョップが食らわされた。
「そんなもう分かり切った事は訊いてないよ! 俺は、あんたが、この世界で、末永く、幸せに暮らしたいかどうか、訊いてんの! 未練は無いの?!」
額を押さえてヴァンは呻いた。
「未練は、ちょっと有るかもしれん」
「んじゃなんで、ずっと楽しく暮らそうとか思わないわけ? 預言なんてとっとと覆しちゃえばいいだろ。別にいいじゃんか、ムカつく奴らなんて放っとけば」
「それはそうだが」
「焦れってぇな、この陰毛髭!ファブレ家出入り禁止にするぞゴルァ!俺はね!あんたに、生きてて欲しいんだよ! 分かれよ馬鹿!」
脅迫なんだか告白なんだか良く判らなくなったヴァンは、物凄い微妙な表情で(にやけ5苦悩3困惑2くらい)、とりあえずシリウスのシャツを買いに行った。店員にドン引きされた。
もちろんサイズはぴったりだった。
閑話
「おいルゥ、シリーいるか? いるんなら変わってくれないか」
「アッシュ! いるよ、どうしたの? ここですりゃいいじゃん」
「いや、訊きたい事があるんだ。ちっと下世話な話なんで、変わってくれ」
「ぶー・・・いいよ、変わってやるよ。後でちゃんと俺の相手してくんなきゃ、ダメだかんな!」
「どうしたのアッシュ?」
「いや、こないだヴァンがすげえ変な顔してそっちから戻って来たから、何か有ったのかと思ってよ」
「いや~、目ざといね、アッシュ。ここに居るのばれたんだよ。町で捕まって、宿にお持ち帰りされた」
「大丈夫だったのかよ」
「例によってあまり大丈夫じゃなかったけどさ、なんか生きる事にちょっと未練があるって言ってたよ」
「何だよ未練って。お前の身体か? 親子丼か?」
「さあね」
なんとなくヴァンは引き込めそうな気がしてきたこの頃。
ダアトで動きがあった。
イオンレプリカが作られたのだ。
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