※ この作品は、本文中に裏的表現が含まれております。義務教育中の方はご注意下さい。
すみません、ヴァンが復讐に揺らぐシーンだったので、外せませんでした。
あああ・・・なんてこった。
なお、長編2の番外は、別にすると時系列が解らなくなる物ばかりなので、本文中に取り入れることにしました。裏っぽいものは、出来る限り本文中からリンクに貼りたいと思いますが、ご了承下さい。
ダアトに来て一年ばかり経った頃、シリウスは愕然とした。自分の体力の衰えにだ。
一年間料理しかしなかったつけが来た。
ヴァンに寝室に引っ張り込まれ、全力で抵抗したにもかかわらず(さすがに譜術は洒落にならないので使えない)、良い様に喘がされ、失神してしまったからだ。
ヴァンは満更でも無さそうだったが、快楽で失神したわけではない、と思う。
体力馬鹿に付き合い切れなかったのだ。
この絶倫男! と罵りながら、シリウスはトレーニングを開始した。
普段の日は深夜、休日は兵士に混ざって、たまにアッシュに付き合いながら無心に剣を振る。
月明かりの中で双剣を閃かせる様子はとても美しかった。
ふと、剣を収めると、伝い落ちる汗もそのままに歌い出す。シャドウとレムを称える歌だ。
シリウスとしてはそういや歌の練習もしてなかったな、くらいの気持ちだったが、盗み見ていた者の心を捉えるには十分だった。
「・・・美しいな」
「覗いてるなよ、ヴァン謡将。あんただって歌えるだろう?」
「声が違う。 ・・・最近頑張っているではないか。体力をつけて、朝まで付き合ってくれるつもりか?」
「セクハラ発言で訴えるぞ、この絶倫」
水道で水を頭から被る。タオルで拭っていると、後ろから腰に手を回された。
「いいかげん私のものになれ」
大人しく口付けを受けながら、シリウスは言った。
「あんた、いったい何がしたいんだよ」
「説明の前に、抱かせろ」
仕方ないか、とシリウスは力を抜いた。
シリウスを跨らせ、深く貫きながら、ヴァンは話をした。
「私はホドの生き残りだ。預言に詠まれているからと言って、人はホドを見捨てた。預言なぞに縛られている人の世に、未来はない。私は預言を覆したいのだ」
腰を蠢かしながら、シリウスが答えた。
「それは、まったく、同感だけどさ、ハァ、手段が、問題だ、よ」
「それはまだ、言うわけにはいかん」
「俺はさ、俺の好きなやつらと、幸せに、楽しく、暮らしたい、んだよ。それが、出来るのかい?」
「・・・・・・」
不意に起き上がったヴァンが、体勢を変えてシリウスを突き上げる。
堪らず嬌声を上げてしがみついた。
「あんたは、預言を、憎んで、いるのか? それとも、人を、憎んで、いるのか? ・・・どっちだ・・・」
「もう、黙れ」
激しく腰を使われて、息も絶え絶えになりながら、シリウスは続ける。
「・・・答えろ、よ」
一際高く嬌声が上がり、シリウスが達した。しかしそのまま激しく責め続けられる。
ヴァンの背に爪が赤く筋を作った。
ひとしきり縺れ合った後、荒い息をついて身体を離した。
「あんたは、ホドが見捨てられたって言うけどさ、助けようとした奴も居るんだよ・・・間に合わなかったけどさ」
そう小声で言うと、シリウスはヴァンに顔を向けた。
「銀髪の譜眼の女。あんた知らない? ・・・あん時、ホドに俺も居たんだ。俺と同じ位の歳の子供を助けに、研究所に走っていった。そして帰ってこなかった」
その言葉にヴァンは愕然とした。
装置に繋がれたヴァンを助け出して譜歌を謡えと叫び、崩れる瓦礫に飲み込まれた女を思い出したからだ。あの女は美しい青銀の髪をしていた。
「・・・俺の、母親だよ・・・」
そう呟くシリウスに背を向け、服を着たヴァンは黙って部屋を出て行った。
閑話 丼メニュー
「シリー、親子丼作ってくれ」
ある日食堂にやって来たヴァンがいきなり言った。
「我侭だな、俺の今日の定食メニューが気に入らないって言うのか?」
むっとして睨みつけると、おどおどしながら言い訳をする。
「い・・・いや、そうではない。お前の作る親子丼が無性に食べたくなったのだ」
何か可愛いコト言っているな、こないだのご機嫌取りか? しょうがないから作ってやろう。
出してやると、いそいそと蓋を取ろうとするから、俺は待てを出した。
俺の掌を見ながら、情けないツラになっている。
大人しくマテをしている主席総長に、周りの兵が口をあけて固まっている。
「親子丼は、卵の柔らかさが一番のポイントだ。この蒸らし時間によって始めて親子丼が真の完成をみる」
「そ・・・そうか」
「・・・良し。召し上がれ」
蓋を取ってやると、甘みを引き出した中にもしゃりっと感を残した玉葱と完璧な火加減のジューシーな鶏肉、そしてつるっと光り輝く見事な半熟卵のハーモニーが出現した。 ふっ・・・完璧だ。
ヴァンが感激して声も無く丼を食っているのを目前に見ながら、俺は考え込んだ。
「そうなんだよな・・・親子丼は実は奥が深いんだ。多量に作るのには向かないんだよ。適当に作っても不味くは無いんだが、どうしても味は落ちる。不満だ。いっそメニューから外すか・・・」
呟きを聞き取った周囲の兵士(と主席総長)が、ええ~! と声を上げる。
個人的に作ってやるよ、と視線を流して囁いたら、約一名はすぐ大人しくなったが。
・・・そのにやけた顔、止めろ。気色悪い。
「しかし、丼メニューの手軽さは捨て難い。 ・・・これは新たなる丼メニューの開発を急がなくてはならないな。ヴァン、何か食べたいのあるか?」
「お前の作るものなら、何でも」
「いや、あんたの為に作るんじゃないから」
ちょっとヘコんだヴァンを放置して考えていた俺の前に、ラルゴが立った。
「牛丼はどうだ、以前食べたことがあるが、美味かった」
「私はカツ丼と言う物が食べてみたいのだが」
リグレットまで便乗する。 ・・・分かった、頑張るよ。
「出来上がったら、試食頼むな」
頑張った結果、ラルゴとリグレットは感激に打ち震え、メニューが新たに二つ増えた。
親子丼は裏メニューとなった。
閑話 バレた
アッシュにばれた。それはもうしっかりとばれた。
忙しくて暫く相手にしなかった後、ヴァンは遠征に出かけていった。
俺もそろそろ娼館でも行くかなと思ってる矢先に奴が帰ってきた。つまりまあ、お互い溜まっていたのだ。
食堂の裏手で捕まって、いきなり口を貪られた。ちょっとのつもりがいつの間にかシャツのボタンが開けられ、反らした首に噛み付かれた所で目が合った。 ・・・・・・アッシュと。
目を丸くしている。その目がギリギリと釣りあがった。やばい。
まだ貪っているヴァンに一発くれて引き離した所に、アッシュが飛び込んできた。
「ヴァン!てめぇ! シリーに手ぇ出しやがったな!」
(見た目は)11、2才の少年に詰られたヴァンは狼狽していらん事を言った。
「べつに無理強いしたわけではないぞ、合意の上だ。昔からの付き合いだし・・・」
アッシュがキッ、とこっちを睨む。
「てめぇも何好きにやらせてんだ! 抵抗しろよ! 俺の為とか言ったらぶん殴るぞ!」
「いやべつに・・・」
言いかけたら、アッシュの台詞にカチンと来たらしいヴァンがわざわざ挑発してくれた。
「なんだ、母親を取られた子供みたいだな。大人には大人の生活があるのだ。おとなしくあっちに行ってミルクでも飲んでいなさい」
「なんだと、てめぇ!」
ああもう・・・!
秘奥義を繰り出そうとしたアッシュをあわてて引き止める。
「別に取り引きとかじゃないから! ほら、一人でするより相手がいた方が気持ちいいだろ! そんだけだよ、単に」
「ただの欲求不満解消の為だけの付き合いだってのか」
「うん」
精神年齢20歳の、(以前は)経験もそれなりにあるアッシュが納得しかけた所に、聞き捨てならんとばかりのヴァンが口を挟んだ。
「シリー! お前は私をそんな風に思っていたのか。体だけの関係だと!」
ウゼェ。
何だよその捨てられそうな夫みたいな言い様は。こんどは俺がカチンとした。
「何だよ、それ以外に何があるってんだ。俺がいつ、好きとか愛してるとか言ったよ。自惚れんな、この下半身男! 体だけの付き合いが嫌なら惚れさせて見やがれ!」
啖呵を切って踵を返す。少年のアッシュに鼻で笑われて、ヴァンは撃沈した。
こんなヴァン、前のボス戦でも見た事ないぜ。いい気味だ。
足音も荒く室内に入っ・・・た所で気が付いた。ここ食堂だった。 ・・・・・・あ~あ。
静まり返った皆さんの目が痛いぜ。
ヴァンは大人気ない下半身男として株を落としたが、俺はあまり迫害されなかった。
むしろ数名に『ファンになりました!』とか言われてドン引きしたくらいだ。
意外な事に、リグレットが好意的だった。女と生まれたからには、『惚れさせてみな!』なんて台詞を使ってみたいらしい。
「閣下のどこが良くて付き合っているのだ・・・?」
「ん~ ・・・チン○と体力かな?」
聞かれた俺は、つい素直に答えてしまった。 やべ、リグレットが突っ伏してる。
ヴァンは「絶倫男」の称号を手に入れた! 効果>精力増進 戦闘時、抜かずの3回実行可
ダアト組みの日常 ※視点三人称になります
アッシュは、だんだんと頭角を現し始めた。彼の頑張る姿勢や、めきめきと腕を上げていく剣の腕に、初め子供だからと馬鹿にしていた一般兵からも一目置かれるようになった。
もう、リンチを受ける事もない。
アッシュと食事を取ると、時たま美味しいおこぼれが回ってきたりするので、昼時は隣の席の争奪戦だ。大概アリエッタや、時々ラルゴなんかが居て、滅多に有り付けないが。
「バランスよく食べて、夜はちゃんと寝るんだぞー。そしたら背が伸びるよ」
「う・・・うるせぇ!」
なんて微笑ましい会話も聞こえてくる。
シリウスの評判は、至極良かった。食事内容を大幅に改善したばかりか、アンケートを取って郷土料理まで出してくれたからだ。
時々「食べたい物がある奴は、ここに書け」と書かれた紙が食堂に張ってあることがある。多く書かれたものがメニューに追加されるのだ。
食堂に下働きを雇い入れ、見込みのありそうな若者に料理を仕込んだりもしている。
自分で何もかもやっていた時よりは、時間に余裕が出来たシリウスは、アッシュやアリエッタに勉強を教えたり出来るようになった。
ヴァンに言って、新兵に野営の仕方(と野戦料理)を教える事もあった。
これはとても好評で、新兵でない者からも希望者が続出した為、何度かに分けて行ったくらいだ。
なんせ獲物を捕まえて捌く所から始めるので、どんな遠征でも飢えずに済む! と古株たちも喜んだ。
おまけに作り方が単純で美味しいので、ついに指揮官クラスも参加するようになった。
そんなこんなで、シリウスはわりと自由にダアト内を動けるようになっていた。
この、どこにいて誰と話していても不審に思われない存在、というのが大事なのだ。
同じくけっこう自由に外出できるようになったアッシュと夕飯を共にしたり、そこにアリエッタやイオンが乱入したり。作戦会議したり(ライガに見張りをさせて)と楽しく過ごしていた。
イオンの体力増進の為に体術を教えてみたら意外に才能が有り、アカシック・トーメントまで出来るようになったのは吃驚したが。
シリウスとヴァンの仲も、わりと改善した。
『ホドの郷土料理』という本を手に入れたシリウスが頑張った。
ヴァンがこっそりアンケートに書いたメニュー、「親子丼」を作ってやったからだ。
実はメニューが決まる前には、味見と称して何回か試作品が出るのだが、親子丼の試作をうきうきと食べに行ったヴァンが品切れに落ち込んで涙しているのを哀れに思ったシリウスが、ヴァンの部屋に親子丼を持って行ってやったのだった。
感激したヴァンになし崩しに事に及ばれたが、それはまぁ良しとしよう。大人だし。
ある夜、シリウスはアッシュと作戦会議していた。
ヴァンをどうするか、だ。
「以前と比べて、彼の態度はどうだい?」
「前より穏やかな気がするな。もっとぴりぴりしてた気がする。狂信的なところが少ないというか・・・あと前よりうそ臭い笑みじゃなくなった」
「彼を仲間にできた方が、後々楽なんだけどねぇ」
「お前はあいつを殺したくなくなったんじゃねぇか? 随分気に入られてるじゃねぇか」
「いや、君らのが大事だから、君らに何かするなら躊躇わないよ?」
そっぽを向いたアッシュに苦笑したシリウスは『妬くなよ~』と、ちょっと赤くなったアッシュをぐりぐりして嫌がられる。
「いや、マジでさ、あいつを仲間に出来れば、六神将の問題が一気に片がつく。各国の要人ともつなぎが取れるし。イオン様一人だけでは、さすがに連れ出せないからね。ファブレ家に行く前に、一遍声掛けて見ようとは思ってる」
「・・・そうか」
「あと、イオン様の問題だ。毒を盛られるのは阻止できたが、預言を覆して生き延びられるかは正直俺にはわからない。だが、生き延びてもダアトに居たら殺されるだろう。どこかに隠れ場所を探さないと」
しばらく考え込んでいたアッシュはふと思いついた。
「漆黒の翼はどうだ?」
「ああ、いいかも。 ・・・シンクたちは作られると思うかい?」
二人は顔を見合わせた。
「・・・・・・多分な。でも、空っぽなんて言わせねぇよ」
「全力でこちらに引き込め。 ・・・その頃俺は此処に居ない。アッシュにもっと協力者が欲しいな」
「前より数段楽だ。アリエッタも知ってるしな。お前も、ルゥも居るだろ」
自信たっぷりに言い放つアッシュにシリウスは微笑んだ。
ふふっ、と笑っていたシリウスは、突然大声を出した。
「ああっ、忘れてた!ヴァンと知り合うきっかけのユリアシティ行き。何でかって言うと、これを作るために行ったんだよ」
ごそごそ荷物から取り出す。
それはブレスレット型の通信機だった。
「ここをこう押すと、もう一つの方のここが振動する。そしたらここを押すと会話が通じる。切る時はここ」
使い方を説明して使ってみる。結構クリアに聞こえる。
ごそごそ弄っていたアッシュが感心したように言った。
「へぇ・・・良いじゃねぇか」
「これは中に古代の譜業が入ってるんで、量産は出来ないし、この二つの間でしか通じない。
大切にしろよ。まあ、これが活躍するのは随分先だろうけどね」
「こんなのが軍に配備されれば、すげぇ楽だぞ」
「だから、作らせなかったんだよ。パワーバランスが崩れたら戦争だ。配備するなら各国同時じゃないと。和平が成立してからでも遅くないよ」
「・・・そうだな」
アッシュが帰ろうとしたその時、シリウスが引き止めた。
「・・・・・・ごめん、もうひとつ忘れてた」
「何だ?」
「ディスト・・・ってどこにいるの? 見たこと無いんだけど」
「時々、食堂に食いに来てるじゃねぇか」
「ごめん、・・・まったく気付かなかった」
「ウゼェから目ぇ逸らしてたんじゃねぇか?」
「(かも知れない、が)・・・酷いよそれは。ご飯に誘ってあげてよ」
「ぅええ~」
「性格はどうでも、彼は引き込んでおいたほうが良いよ。イオンの事もあるし」
「お前のが酷いぞ・・・分かった。頑張ってやるよ」
嫌そうにアッシュは溜息をついた。
それから少しすると、アッシュやアリエッタと嬉しそうに食事するディストが見られるようになったという。誰よりも年上な癖に『成長期サービス』を貰って嬉しそうだった。
ちなみにあの目に痛い服は、シリウスが騙くらかして止めさせた。
「綺麗な髪ですね。貴方にはすっきりした立ち襟の、そう研究者のような服装がお似合いですよ。知的な貴方にぴったりだ」
にっこり微笑むシリウスの、歯の浮きそうな台詞にディストはころっと騙されたのだ。
・・・彼を引き込むのは、実は一番簡単だった。
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