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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2025.04.21,Mon
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Posted by tafuto - 2008.12.24,Wed

拍手再録です。 仲間厳しめ? ギャグ。

 

『 月華幻想 』




セレニアの野に降り立った赤い髪の男は、呆然とこちらを見るかつての『仲間』たちを無表情に見つめた。
長い髪の少女が感極まったように震える声でその名を呟く。

「・・・ルーク・・・・・・!」

金髪の青年が、人形を持った少女が、涙を浮かべた王女が走り寄ろうとしたその時。
駆け寄る仲間たちの前で、紅い髪の男はセレニアの花に埋もれるようにゆっくりと倒れていった。


月の光の下白い花に囲まれて眠る『ルーク』は、透き通るように美しく、まるで今にも消えてしまいそうに儚げに見えた。
ジェイドが手早く診察し、ガイがそっと抱きあげてタタル渓谷を抜けていく。
ナタリアが、ティアが涙を浮かべてそっと寄り添い、アニスは無理に微笑んで明るくふるまっていた。


やはりルークはどこか悪いのかしら・・・
でも少しくらい体に異常があっても、ルークは自分たちの所に帰って来てくれたのよ。
やっと戻って来てくれた。これからは精一杯支えてあげよう。
ルークは私たちの仲間なんだから!

 


「ウゼェ・・・! やっぱお前が帰れ! 俺はもうあんな所に戻りたくねぇ!」
「ええぇ~ 俺だってヤダよ! アッシュの根性無し! 10秒しかもたなかったぞ!」
「顔合わせた瞬間に人のトラウマ刺激してくれやがって! お前の『仲間』、ホントに区別つかねぇんだな!」
「あいつらが自分の見たい物しか見て無いのなんて、今更だろ?」
「・・・・・・次はお前が行け。俺はしばらくあいつらの顔は見たくねぇ」
「ええぇ~! ずりぃ!」

「「ったく、ローレライの野郎! 余計なことしやがって!」」

 

実のところ、死んだアッシュも乖離したルークも生き返ろうとはこれっぽっちも思っていなかった。
大爆発? それってなに、俺たちに関係あんの? ってなカンジである。
二人とも、勝手なことばかり言う人間たちにもういい加減うんざりしていたのだ。
音譜帯でふよふよと微睡んでいた二人の、余りに潔い死にっぷりに涙したローレライが(おせっかいな事に)足りない音素をかき集めて、やっとの事で一人分の身体を作り上げて二人を目覚めさせた時、返ってきたのは盛大なブーイングだった。
すんごい嫌そうに生き返ることをなすりつけ合う二人にローレライは別の意味で涙した。

腕相撲から始まって剣の勝負、殴り合いでも決着はつかず、結局ハシゴみたいなあみだくじで負けたアッシュが地上に降りる事になったとき、恨みのこもったアッシュの視線にびびったローレライはしばらく雲隠れしてしまったくらいだ。
そんでもって、戻った早々ルークに間違えられたアッシュは、あまりの拒否感から身体から抜けて戻って来てしまったのだった。

 


ベルケンドで診察を受けたルークの身体に、異常は見られなかった。ただ眠っているだけなのだが眼を覚ます気配が無い。
ジェイドは昏々と眠るルークをバチカルに連れ帰ることを提案する。それに反対する者はいなかった。

鳥籠のような離れの部屋の広いベッドに、長い赤い髪をした青年が横たわっている。
父と母が見守るなか、その瞼が震えうっすらと翡翠が現れた。
「おお・・・ルーク!」
泣き崩れる母や硬く手を握りしめる父に苦笑するような笑みを浮かべたルークは、そっと身体を起こした。

報告を聞き集まってきた仲間たちが、手荒くルークを歓迎する。
どの顔も泣き笑いで嬉しそうに輝いている。 
そんな中、一人壁際に立っていたジェイドが近付いてきてルークに小声で問いかけた。

「・・・あなたは、アッシュですね?」

一瞬目を見開いた『ルーク』は、ゆっくりとその場に崩れ落ちていった。

 


「うあぁ~! 間違われんのって、ホントに不快だわ! アッシュの気持ちがわかったぜ! 
俺ももうあんな所に戻りたくヌェー!」
「っだろ? お前だって10分しか持たなかったぜ。人の事笑えねぇな!」
バリバリと頭をかきむしるルークを鼻で笑うアッシュ。
二人は顔を見合わせると心底嫌そうに溜め息をついた。

拳を握りしめるとお互いに睨み合う。決闘の時より真剣だ。
・・・・・・この勝負、負けられない。

「「せ~の! じゃんけんぽん!あいこでしょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!・・・」」

 


あの瞼が閉じられてしまう前に一瞬見せた、傷付いたような瞳の色が胸に刺さる。
音も立てずに倒れ込んだルークは、聞こえないほどのかすかな吐息を漏らして身動き一つせずに横たわっている。
日に焼けていない白い肌は、まるで雪で作られた人形のようだ。
今にも溶けてしまいそうだという不吉な考えを振り払う。
まさかこのまま・・・ いや、そんなことはあるはずが無い。
またあの無垢な微笑みを見せてくれよ。

俺たちがきっとお前を助けてみせる!

 


46回のあいこの末にじゃんけんで負けたアッシュが下界に降り、戻ってきたのは降りてから三秒後の事だった。
眼を開けた瞬間、枕元のガイに「ルーク」と呼びかけられ、その場で昏睡状態になったのだ。

次に取っ組み合いの末にアッシュから引き抜いた髪で作ったくじではずれを引いたルークが嫌々ながら身体に戻り、やっぱり10秒で帰って来た。
不機嫌そうに眉間にしわを寄せて眼を開けたルークに、ナタリアがアッシュと呼びかけて手を握ったのだった。

 

「うあああ・・・もう耐えらんねぇ! 俺はあいつらの顔を見るだけで条件反射的にこっちに戻って来ちまうぞ!」
「そりゃ、俺も同じだよアッシュ。もー、あいつらの顔見たらムカついてムカついて・・・ 
一瞬で現実逃避に陥るぜ。 あいつらさっさとどっか行きゃ良いのに、いつまでもいつまでも居やがって! 
俺たちに恨みでもあんのかよ、ってんだ!」

 


微かに目を開いたルークは、私たちを見て何か呟きかけるとすぐにまたその眼を閉じてしまった。
一体、彼の身体に何が起こっているの?

ルークは一瞬覚醒しては昏睡に陥ることを繰り返している。
身体を調べても異常は見つからず、ただ眠り姫のように静かに眠り続けている。
仲間たちは彼がいつ眼を覚ましても良いように、交代でルークを見守ることにした。

私達が、絶対あなたを救ってみせる!


ずっと貴方の傍に居るわ・・・ルーク。 だから、早く眼を覚ましてちょうだい。

 

 

                              ・・・無理。

 

 

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Posted by tafuto - 2008.12.13,Sat

2008、クリスマス スペシャル!

拍手にしようとして、長くなりすぎて断念。  厳しめ無しの、ほのぼのファブレ家。 
たぶん「カボチャの王子さま」の時系列の人たち。・・・のような気がする。

 

 

 

『聖者の贈り物』

 


ローレライを解放して、いろんな事があって俺とアッシュが無事に地上へ戻ってから、俺達は二人だけであちこち旅をしていた。
今まで知らなかった事、世界の事をただのアッシュとルークとして見てみたかったから。
ばれたら連れ戻されちゃうのが分かってたから、誰にも知らせずに二人だけで旅をした。

アッシュは時々悩んでいたけど、俺はアッシュと一緒にいられて嬉しかったんだ。
だってアッシュ、戻ってからすごく優しいんだ。
ときどきゲンコツ貰ったりするけど、知らない事はちゃんと教えてくれる。
だって戻ってから俺を育ててくれたの、アッシュなんだぜ!
アッシュは料理も裁縫もすっかりプロ並みになっちゃって、こう言うトコ頑張り屋さんだなって思う。
オカンみてぇ、とか言うと真っ赤になってゲンコツが降ってくるから言わないけどな。

 

ケセドニアでしばらくこっそりと暮らしていた俺達は、港を歩く人々を見て今年も終わりに近づいている事を感じていた。
バチカルから来た旅人が、どこかしらに赤と緑をあしらったデザインの服を着ている事が多いんだ。
この時期バチカルはキムラスカの始祖を讃えて赤と緑で街中が飾られる。
もうすぐバチカルは聖人のお祭りが始まるんだ。


「娘はこの贈り物を気に入ってくれるかなぁ」
「そりゃあもう! こんな良い品物はなかなかありませんぜ?」

嬉しそうに髪飾りを選ぶ気の良さそうなお父さんと愛想の良い商人のやり取りを、カフェのテラスに座ってぼんやりと聞いていると、アッシュがためらいがちに小声で聞いてきた。

「・・・バチカルに帰りたいか?」

びっくりして振り返ると、アッシュが静かな瞳でじっと俺を見ていた。
「帰らないのは俺の我儘だ。・・・お前まで付き合う必要は無いんだぞ?」


母上や父上に会いたくないと言ったら嘘になる。けど、それよりアッシュと一緒に居たかった。
「俺達が戻ったって国に知れたらもう自由になれないってことは、俺にも分かるよ。
・・・薄情かな? 母上にくらいは俺達が戻ったことを知らせたいけど、俺は、アッシュと離れたくないんだ」

アッシュは少し困ったように苦笑すると、俺の頭をポンポンとなでてくれた。

「なら、母上に挨拶だけしに行こうか。他の奴らに見つからないようこっそり行って、すぐにバチカルを出ればいい。母上なら俺たちが戻らない事も分かって下さるだろう」


俺はびっくりしちまった。今まで決してバチカルには近づかなかったアッシュがこんな事を言うなんて!
それに今バチカルはお祭り騒ぎで人がたくさんいるんじゃないのか?

「今、だからだ。今ならバチカルは赤と緑に溢れている。赤毛の髭や鬘を付けた仮装の奴も多い。俺達がバチカルに行って一番目立たないのが今なんだよ」
「アッシュ! ・・・あったまいい~!」

嬉しくって、大声を出してアッシュにしがみついた俺は、「うるせぇ!」とげんこつを喰らってしまった。

 

んでもって俺達は今、バチカルに居る。下町の小さな宿屋で計画を練っているところ。
今日は聖人の祭りの前夜祭。街は赤や緑の服、聖人の扮装の赤い鬘の人々で溢れ、全く目立たずにここまでこれた。けれどバチカルの上層部はさすがにこんなわけにはいかないからな。
ファブレ家に入るのはどうしたらいいかな・・・?

「そうだ、アッシュ! いっそ聖人のカッコして『シュザンヌ様にプレゼントをお届けに来ました~』って言えばいいんじゃね?」

ハァ? って顔してため息をついたアッシュが、しばらくすると真面目な顔になった。

「・・・いい考えかもな。いっそラムダスあたりを巻き込んで母上に会う段取りをつけてもらえばいいか。しかしラムダスに会うのだって大変だぞ?」
「だからそこを扮装して、ラムダスにお届けものですって言えばいいじゃん!」
「・・・・・・そうだな、それしかないか」


それからちょっと大変だった。
俺が買ってきた聖人の服は、なんというか・・・ ファーの付いた真っ赤な服にお揃いの帽子。お揃いのブーツ。でっかいプレゼント用の袋。

・・・つまり、すっげぇ派手だった。
 
こんなカッコの奴が始祖ってどうなの? って小一時間問い詰めたいくらいだ。 
だって派手な方が目立たないと思ったんだよ! いてっ、殴るなよ~アッシュ!

「こんな恰好するの、俺は嫌だぞ! お前が着ろ!」
「え~・・・じゃあ、アッシュが俺に担がれる方が良いのかよ」

一人はプレゼント用の袋に入って荷物さながらに運び込まれる手はずになっている。
アッシュは派手な仮装をするか袋に入って担がれるかの二択に苦悩してる。

も~、アッシュの見栄っ張り。どっちでもいいじゃん。
俺、アッシュなら担いじゃっても担がれちゃっても良いぜ? 

がっくりと脱力したアッシュが赤い服を手に取るのを見て、俺はちょっと舌を出した。
そっちを選ぶと思ったぜ! だってアッシュ、いつも地味なカッコしかしないから、派手な格好のアッシュが見てみたかったんだもん。

 


ファブレの屋敷は、以前と変わりなかった。
でも祭りだというのに飾り付けも慎ましく、街のうきうきとした雰囲気からは浮いている。
使用人や騎士たちも皆、少しだけ悲しそうに静かに歩いている。

俺は門番に見つからないように隠れて袋にもぐりこんだ。
俺を担いだアッシュが、裏口の門番にラムダスに取り次いでもらおうと声をかけているのが聞こえる。

うるさそうにアッシュを追い払おうとした門番が、急に口をつぐんだ。
しばらく沈黙していた門番は、震える声でアッシュに声をかけた。
「・・・・・・しばらくお待ちを。今ラムダスに取り次いでまいりますゆえ」

ばれたかな。アッシュの背中も強張っている。
アッシュが一歩後ずさったとき、息を切らせたラムダスが飛び出してきた。

「・・・! それは確かに私が取り寄せたものです。さあ、早くこちらに運び込んでくれませんかな」

アッシュがほっと息をつくのが布越しに感じ取れた。俺はもぞもぞ動かないようにギュッと体を縮めて、そっと息を吐いた。


誰も居ない小部屋に案内すると、ラムダスは震える声で話しかけた。
「・・・もしや貴方はルーク様ではありませんか?」

俺を床に下ろしたアッシュが静かに答える。
「俺はアッシュだ。ルークは・・・・・・ここに居る」

「アッシュ様! ・・・お亡くなりになったとナタリア様から聞いておりました。・・・よくぞご無事で! おお、ルーク様も・・・ご帰還、お喜び申し上げます・・・!」
袋からもぞもぞ顔を出した俺は、ラムダスが顔をぐちゃぐちゃにして泣いているのを見てビビった。

「ごめんな、ラムダス。でも俺たち、自由に生きて行きたいんだ。・・・だから母上にだけ、生きてる事を伝えようと思ってこんなことしたんだ」
「王族の責務を果たさず、すまないと思う。だが、どうか母上に取り次いでもらえないだろうか」

俺の隣でアッシュが神妙に頭を下げる。そのアッシュの手をラムダスが取った。

「いいえ、生きていて下さっただけで良いのです。御顔を見せて頂けて、こんな嬉しい事はございませぬ。
・・・しばしお待ちを」

 

夜も更けた頃、俺たちは父上と母上の私室に通された。俺はまた袋に潜り込んでアッシュに担がれている。
ラムダスに続いて部屋の中に入ったアッシュが息をのむ音が聞こえた。

「良くぞ、会いに来てくれたな・・・ アッシュ、ルークよ」
「さあ、顔を良く見せてちょうだい・・・ ああ、ルーク、アッシュ」

アッシュがゆっくりと歩いていく。声は母上と、・・・父上のものだった。


無言のままアッシュが俺を降ろし、袋の口を開いて俺を立たせた。
立ち竦んで声も出せない俺たちに二人は歩み寄ってきて、交互にギュッと俺たちを抱き締めた。

「聖夜に、なんて素敵な贈り物でしょう・・・ねぇ、あなた」
「・・・うむ。息子たちが生きていてくれた、それだけで何にも代え難いことだな」

優しく微笑む父上と母上に、胸がいっぱいになる。アッシュも耳を赤くして涙をこらえている。


「父上、母上・・・今まで帰らなくてすみませんでした。でも、俺、アッシュと一緒に世界を見たかったんです!」

「今まで生きていたことも伝えず、申し訳ありませんでした。・・・しかし俺は、俺たちは王族として生きて行くより人々の中で生きて行きたいのです。どうか、帰らぬ事を御許し下さい」


優しく微笑みながら俺たちの言葉を聞いていた父上が、手を伸ばしてアッシュの頭を撫でた。
まるでアッシュが俺にするみたいに。

「お前たちは、その命をかけてもう十分立派に王族としての責務を果たしたではないか。良いのだ、もうお前たちの望むように生きなさい」
「二人とも、何処に居ても私たちの自慢の息子達ですよ。今まで苦労をかけてごめんなさい。あなた達が幸せになってくれれば、それで良いのですよ」

アッシュが父上に縋り付いて泣いている。ラムダスが貰い泣きしながらそっと部屋を出て行ったのが見えた。
母上が、俺を抱き締めて、そっと背中をさすってくれた。

あとはもうぐちゃぐちゃに泣いちゃって、なんにも見えなかった。

 

俺とアッシュは父上と母上の部屋で一晩中話をした。
疲れちゃうからベッドに横になった母上の周りで、ワインや暖かいココアを飲みながら。

今までどんな事があったとか、俺とアッシュは交互に話した。(アッシュが俺を育ててくれた話をしたら、真っ赤になったアッシュに殴られた)
先に休んだ母上を起こさないように、父上が小さな声で話をしてくれる。
俺たちは小さな子供に戻ったみたいに、並んでベッドに肘をついて父上といろんな話をした。


・・・なぁアッシュ、俺たちって、愛されていたんだな。

 

緊張してたのか、いつの間にか俺は寝てしまって、気付いたら自分の部屋でアッシュと一緒に寝てた。
どうもアッシュが俺を担いで連れてきてくれたらしい。(・・・姫抱っこでない事を祈る!)
回らない頭でもぞもぞ起き上がったら、まくら元に綺麗なリボンのかかった箱が二つ置いてあった。

「なあなあアッシュ、これ何だろう?」
「ん~・・・?」

眠そうなアッシュが起き上がる。俺の持つ箱を見て首をかしげた。
俺たちは箱に添えてあったカードを見て、そろって顔を見合わせた。

 

『アッシュ、ルーク。貴方達はきっと帰ってくると思って、毎年贈り物を用意していたのです。
受け取ってくれると嬉しいわ。 今日は一緒に朝食をとりましょう。  

聖者に感謝を・・・ 
シュザンヌ・クリムゾン   』



照れくさそうに笑って包みを開けるアッシュ。
中にはお揃いのペンダントが入っていた。
ロケットになっていて、蓋を開けると俺とアッシュの子供の頃の精密画が描かれている。
良く見ると、蓋の部分は赤い繊維のようなものでファブレの家紋が形作られている。

「これは・・・髪だ。この色は父上と母上のものだな」

アッシュは瞬きもせずにそれを見つめている。俺も指先でなぞりながら、そのロケットを握り締めた。

父上と母上に包まれて、小さい頃の俺とアッシュが笑っている。
・・・・・・嬉しかった。

 

部屋を出ると、使用人や騎士たちは何も言わないまま、優しい目で俺たちを案内してくれた。
俺たちの事は、気付かないふりをしてくれるらしい。
皆、泣きそうな顔で嬉しそうに微笑みながら俺たちを見守っていてくれている。


朝食の席には父上と母上が待っていてくれていた。
俺たちが部屋に入ると、席を立って迎えてくれる。

「聖者に感謝を・・・ おはよう、アッシュ、ルーク。 今日は大切な人と過ごす日なのよ」

そう言って母上が俺とアッシュの頬に交互にキスをした。

「アッシュ、ルーク。生まれてきてくれてありがとう」

父上も同じように俺とアッシュにキスをして、おまけに母上の頬にもキスをした。
「お前たちが生まれてきてくれたことに感謝する。・・・シュザンヌ、この子を産んでくれてありがとう」

俺は嬉しくなって、父上と母上にキスを返したあと、真っ赤になってるアッシュにもキスをした。

「アッシュ、俺、生まれてきて良かった。アッシュも、生まれてきてくれてありがとう」

アッシュはびっくりしたように俺を見て、ふわっと解けるように微笑んだ。
頬に優しく唇が降ってくる。


「ルーク・・・生まれてくれて、ありがとう」

 

俺は生まれてきて良かったと、そのとき心の底から、そう思った。


 

みんなに感謝と、ありったけの愛を!

 



 

 2008 メリークリスマス! でしたv 

 

 

※メリークリスマスって言わせるのも変かと思ったので「聖者に感謝を」と言ってもらっています。
 そして良く考えると、アッシュはサンタさんの格好で両親と会っています(笑)


 

Posted by tafuto - 2008.11.19,Wed

『蛍火の杜へ』リスペクト! (緑川ゆき 著)

ルーク溺愛アッシュ。 アシュルク  死にネタです。


設定

完全同位体の被験者とレプリカが触れ合うとレプリカは消滅してしまう。これが大爆発(という捏造です)

第七音素の同位体として異端視されていたため深い孤独を感じていたアッシュは作られたばかりのルークに一目惚れ。思わず触れようとしてヴァンに止められ、触れればレプリカは消えてしまうことを聞く。
アッシュはルークに触れてしまわないようにダアトに残ることを決意する。
ルークを消したくないという一心で行動している。
アッシュがピュアなストーカー

話の構成上、ゲーム進行はいろいろ省いています。そして捏造過多です。
雰囲気重視の話なので設定は深く考えない事(笑) ボロが出ますv
「蛍火の杜へ」のファンの人、ごめんなさい。<(_ _)>  愛がスベった・・・
すでに原作(蛍火)の面影を留めていません。最後が思いきり違います。



 

 

                       『Noli me tangere ‐私に触れるな‐』

 


暗い森の中を永遠に彷徨うような孤独の中にいた。
出口を求めて走りまわり、疲れて動けなくなって、信じたもの全てが崩れ去り。
全てを諦めて立ち尽くす俺の前に、突然その光は現れた。
 

無垢な瞳で見あげてくる『それ』を、俺は茫然と見つめ続けた。
俺より少し色の薄い、夕陽のような髪が薄暗いランプの光を弾く。


俺の、レプリカ。
俺から作られた、俺と同じ生きもの。
世界中でたった一人、異端の化け物と言われ続けたこの俺の。
・・・・・・俺の、半身。

 

無意識に手が動き、その朱金の髪に触れようとする。
その俺の手を、節くれ立った大きな手がつかんだ。

「触れてはいけない。完全同位体のレプリカと被験者が触れ合えば、レプリカは消滅してしまうのだ」

薄笑いを浮かべたヴァンが俺の腕を引き、レプリカを隠すように遠ざけた。


ああ、それではこの俺の半身に触れられる日は、永遠に来ないのか。

俺は絶望と、ほんの少しの安堵を込めて、連れて行かれるそいつを見送った。

 

『触れてはならない』  その言葉が呪いのように俺を縛る。

あいつの傍に居てはいけないんだ。
傍に居れば、俺は必ずこいつに触れてしまうだろう。
たった今でさえ、抱きしめたくてたまらないのだから。


俺はアッシュという名を貰い、いつかあいつを一目見ることを心待ちにするようになった。
名を捨てることも、罪も、血に塗れることも怖くはなかった。
たった一つ、あの光を守るためならば。

 


導師を奪還しに行った先であいつを見つけた。
あの存在を、見間違えるものか。 ただひたすらに望んでいた、たった一つの光。
人を殺して怯えるお前は、あのときと変わらず無垢なままだな。
お前が人を殺める必要などない。剣など捨ててしまえ。


眠らせたあいつに触れたがる両手を止めるのに苦労する。
早くこいつを連れて行ってくれ。でないと俺はこいつを消してしまう。
視界に入れないように顔を背ける。 やっと会えた半身と離れる苦しさに顔が歪む。


そうだ、せめて声だけでも。
それならば俺はあいつに触れなくて済む。・・・あいつを消さなくて済む。
アリエッタに攫わせたあいつをコーラル城に運び、ディストにフォンスロットを開けさせた。

心の片隅に、あいつの存在が感じ取れる。


・・・・・・あたたかい、ひかり。  ああ、お前はきれいだな。

 

 

降りしきる雨の中、イオンを追って走り寄ってきたあいつが、驚愕の目で俺を見る。
おずおずとのばされた手を剣で払いのける。

俺に触れるな! (でないと俺はお前を消してしまう)

怯えるあいつの歪んだ顔を見なくて済むように、身をひるがえした俺はその場を足早に立ち去った。

 

ヴァンの目的は、あいつを使ってアクゼリュスを崩落させることだった。
そんなこと、許すわけにはいかない。
あいつを死なせないために、今まで俺は生きてきたのだから。
全力で走る、息が切れる。障気に覆われた街は目前だ。
死なせるものか。 ・・・・・・ルーク!

 


ヴァンの足元に崩れ落ちたあいつに伸ばした手を、すんでのところで引き留めた。
握りしめた拳に爪が食い込む。

触れてはいけない。

立ちすくむ俺を、ヴァンの魔物がその場から連れ去った。
離せ、俺もここで朽ちる!(あいつがいないのなら、俺の生に意味はない)

 

ヴァンを撒き、たどり着いた監視者の町で、錯乱してつかみかかってきたあいつを剣で弾き飛ばした。
(生きていてくれた)
気絶して倒れるあいつを無表情に見下ろす。
(こんな時にさえ、抱き止めてもやれない)
(抱きしめたい)
(俺の半身。・・・大切な大切なひかり)

(せめてこの想いだけは伝えてもかまわないだろうか?)


ベッドに寝かされたあいつの精神をそっと心に招き入れた。
温かなひかりが孤独に凍えた俺の心を温めてくれる。
俺は戸惑うあいつに全てを伝えた。
ヴァンの事、レプリカの事、そして触れ合えばお前が消えてしまうこと。

『ルーク・・・何があっても、絶対、俺に触るなよ』
(おまえを愛しているんだ)
『アッシュ・・・・・・ありがとう、話してくれて。今まで守ってくれていたのに、気付かなくてごめん』
(・・・・・・俺も、アッシュがすきだ)


あいつが立ち上がれるようになるまでの短い間は、俺にとって蜜月のように甘い時間だった。
あの豪奢な鳥籠で、誰にも顧みられること無く過ごしたあいつにとってもそれは同じ事。
温もりに飢えた心がお互いを離したくないと叫ぶ。


しかし、あいつも俺も世界が消えるのを黙って見過ごすことは出来なかった。
たとえ辛いばかりの世界だとしても。


あいつはあいつのすべきことを、俺は俺のすべきことを。
そう決めたはずなのに、直ぐにでも逢いたがる心をなだめるのに苦労する。
ときどき何もかも放り出してあいつのもとに行ってしまいたくなる。
きつく抱き締めて、そのまま俺もあいつと共に消えてしまえたら・・・・・・

 


街で見かけたあいつは、使用人と肩を組んで笑っていた。
なぜ俺は触れることが出来ない!
胸が苦しい。 顔が歪む。 痛いほど拳を握り締め、顔をそむけた。
「アッシュ・・・」
俺に気付いたあいつの哀しそうな声が聞こえる。
『・・・一緒に居たいよ』
『・・・・・・駄目だ。共には行けない』
追い縋る視線を振り切り、速足にその場を立ち去る。その背後からあいつらの声が聞こえた。

「アッシュ! いくらお前がルークを嫌いだからってその態度は無いだろ」
「アッシュ、貴方もご一緒しませんこと?」
「ルーク、貴方も引け目に感じる事なんて無いのよ」

黙れ! 何も知らない奴がいい加減な事を言うな。
俺は、俺からこいつを守りたいんだ。

 


紫色に陰る空に白い塔がそびえ立っている。俺はあいつらに見つからないように黙ってダアトを出てきた。
障気中和をお互いに自分がやると言い張って、ルークと怒鳴り合った。
レプリカよりも被験者を残すだって、冗談じゃない。
あいつを生かすために俺は今まで生きてきたのに。

あたりを埋め尽くすレプリカ達の生気の無い顔が俺に向けられる。
許せ。 あいつのために死んでくれ。 代わりに俺をくれてやるから。


ローレライの剣を掲げ力を籠めようとした俺に何かが飛びかかってきた。
「やめろ、アッシュ!」
ガイに引き倒されて俺の手から剣が落ちる。剣はルークの足元に転がって行った。
泣きそうなあいつが剣を手にレプリカ達の間に進み出る。
離せ! あいつにやらせる訳にはいかない! 離してくれ!
ガイと眼鏡がもがく俺を押さえつける。

やめろルーク、やめてくれ!

超振動の光がうねりながら天へと伸びて行き、レプリカ達が一人、また一人と消えて行った。
あいつは殺したくない、死にたくないと心で叫びながら真っ直ぐに空を見ていた。
剣を握り締めるその手が揺らぐ。 薄れる。

消える、消えてしまう。 おれのひかりが!

力のゆるんだガイの手を振りほどいた俺はルークの元に飛び込んで行った。
あいつの手に触れないよう剣の刃をつかんで超振動を合わせる。掌が切れて血が滴り落ちた。
眩い光が辺りを染め上げた。

 

ふと気付くと隣にあいつが倒れているのが見えた。 よかった、消えないでいてくれた。
重い頭を振って起き上がる。早く離れなければ。
「アッシュ・・・」
ぼんやりと目を覚ましたルークが俺に手を差し伸べる。

「俺に触るんじゃねえ!」

ルークはびくりと手を引く。危ないところだった。

「アッシュ、そんな言い方しなくてもいいじゃないか!」
「そうよぉ、いくらルークを嫌いだからって、それは無いんじゃない」

ルークを怒鳴り付けた俺を、口々に責める。ジェイドだけが感情の読めない眼で俺を見ていた。
「おい眼鏡、お前にはわかってるんだろう? 何でこいつらに教えてやらない。俺とこいつが触れ合えば大爆発が起きてこいつは消滅してしまうんだって」
ジェイドは一瞬絶句すると眼鏡を押さえた手で表情を隠した。
「・・・・・・ええ、知っていました。けれど貴方はルークを憎んでいるので触れないだろうと思っていたのです」

みな息を飲んで一斉に俺達を見た。
両手を握りしめて俯いていたルークが潤んだ目で俺を見上げた。

「アッシュ・・・俺、アッシュに触りたい。もう離れているのは嫌だ。アッシュに触れて消えるんなら本望だ」
(・・・・・・それに、きっともう、おれは・・・・・・)

おずおずと伸ばされた手を見て、怯えたように俺は後ずさった。
「やめろ! 嫌だ、お前が消えてしまうのは・・・・・・ 頼むから、俺に、触れないでくれ!」

泣きだしたあいつと、唇を噛んで俯いた俺を、声を失った皆が見ていた。

 

ベルケンドで診察を受けた俺達は、力を使いすぎたルークが乖離しかかっている事を知らされた。
何となくわかっていた、とあいつは静かに笑った。

『 俺達の間にいつか別れは来るだろう
けれど それでも せめてその時まで 一緒にいようよ 』

・・・・・・そう、言って 笑った。



研究所からの帰り道、俺とルークはゆっくりと街を歩いて帰った。
少し寄り道をして、店を冷やかしながら通りを歩く。
慌ただしげに行き交う人混みに流されそうになるあいつを、溜息をついて呼び戻す。

「何やってやがる。迷子になっちまうぞ。・・・・・・ほら、これでも持っていろ」
店先に掛っていた赤いリボンを買い求め片方の端を投げてやると、少しきょとんとしたあいつは嬉しそうに笑ってそれを手首に巻き付けた。
「へへっ、デートみたいだな!」
俺は無言でもう片方の端を自分の手首に巻き付けた。
赤くなった顔を見せないように、そっぽを向きながら。


街の終りの高台まで二人で歩いた。
海に落ちる夕日があいつの髪みたいに綺麗だった。
いつも夕陽を見ては思い出していた。 出会った時のこいつの髪の色を。

『逢えない間もずっとお前の事を考えていた』

無意識に回線を繋いでいたらしい。驚いたように顔を上げたルークがふわりと笑った。

『俺も、ずっとずっとアッシュの事考えてた。いつでもアッシュに逢いたかった』
(ねぇアッシュ・・・ 俺のこと、忘れないでね)

忘れるものか。 ・・・・・・俺の、命の最後の一瞬まで。

 


ヴァンを倒しローレライを解放する為、俺達はエルドラントへと向かった。
あいつの仲間達は、酷くすまなそうに俺に謝ってきた。
何か言いたげに、しかし何も言えずに俺達二人を見守っている。
あいつらにも分かっているんだ。ルークがもう永くない事が。

あのとき買ったリボンを腕に巻いて、ルークが笑う。
つられて微笑んだ俺は、ひらりと垂れたリボンを手にとってそれにくちづけた。
あいつの真赤になった顔にハッと我にかえれば、ガイやナタリアが眼を丸くして見ていた。
・・・・・・しまった、恥ずかしい事を。
二人揃って赤くなった俺達を、あいつらは苦笑しながら祝福してくれた。

 

エルドラントの最深部でヴァンと戦いになった。
これが最後の戦いだ。

力の落ちたルークを庇いながらヴァンと斬り結ぶ。
俺達の総力を叩き付け弱ったヴァンの中でローレライが暴れ、奴の腕を変形させていった。
譜歌を謡うティアに斬りかかったヴァンを止めようとルークが前へ出た。
剣をヴァンに向かって突き出した瞬間、ルークの腕が薄れた。 手をすり抜けた剣が音を立てて落ちる。
丸腰で茫然と立ち尽くすあいつに、ヴァンの剣が迫った。

何も考えられなかった。
ただ、失いたくなかった。

あいつの前に飛び出した俺を、ヴァンの剣が貫いた。

「アッシュ!」

腹から背まで抜けるほど俺を深く貫いた剣は、直ぐには抜けなかった。
戦う者にとっては、その一瞬の隙で十分だった。
ガイの剣がヴァンに止めを刺した事を眼の端にとらえながら、俺はその場に崩れ落ちた。
氷のような灼熱が身体の中心を走る。不思議と、痛みは感じなかった。


駆け寄ろうとするルークを眼で制止する。
『・・・まだ、もう一つだけやる事が残っているだろう? これで、やっと終わるんだ』

俯いて唇を噛んだルークは顔を上げて皆を見渡した。
「これからローレライを解放するから、皆は早くここから離れて」

ガイが絶望の表情を浮かべた。俺は、回復の詠唱を続けるナタリアとティアに首を振った。
自分の体の事は自分でわかる。内臓を深く傷つけたこの血は詠唱で止まる事は無い。

「・・・もういい、無駄だ。おまえたちは早く逃げろ」
「アッシュ! そんなこと仰らないで!」
泣きながら叫ぶナタリアの肩を、ジェイドがそっと押さえた。

「行きましょう。彼らの邪魔になる」

(彼らは、やっと触れ合うことが出来るんですよ)

涙を浮かべ、何度も振り返りながら去っていく人影の後から、そんな声が聞こえた気がした。

 

ルークがローレライの鍵を振り上げる。
地に突き刺した場所から、巨大な譜陣が広がった。
譜陣は俺達を飲み込み、周囲を崩壊させながら下へと沈んでいった。


眼を閉じて剣を握るルークのその腕がかすかに揺らぎ、薄れた。
俺はとても静かな安堵に包まれていた。
嬉しかった。あいつと共にいけることが。

「ルーク・・・・・・これで、やっと、お前を抱き締めることができる・・・」

眼を開けて俺を見たルークが、嬉しそうににっこりと微笑んだ。

「アッシュ・・・もう、アッシュに触れてもいいの?」

 

「来い、ルーク」

 

ろくに動かない両手を広げて呼ぶと、嬉しそうな満面の笑みを浮かべて縋り付いてくる。

・・・・・・ああ、温かいな。

指先をからめ合い、頬をなぞり、お互いの体に腕をまわす。
同じ形の手が、身体が、ぴたりと合わさるようにお互いを抱き留めた。

(・・・・・・初めから、俺達はこういう生き物だったんだよ)


淡い光があいつの体からゆっくりと舞い散っていく。
蛍に飾られるようにあいつが微笑む。
霞む目が最後に映すものが、おまえでよかった。


・・・・・・きれいだ    しあわせ  だっ た


柔らかくて温かい唇が、俺の最後の吐息を飲み込む。
優しい翡翠の瞳と夕陽色の髪が目の前に広がり・・・・・・  ひか り  が

 

 
 

燐光のような光の奔流が二人を包み、きえたとき。

ことりと音をたてて青年の鼓動が止まった。

 

 


 


     さあ、いこう



     ・・・・・・ 逝きましょう

 

 

 











青年の亡骸は、幸せそうな微笑みを浮かべていた

巨大な白い墓標はゆっくりと崩れ去り

すべてを 静かに のみこんでいった

 
 

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