辺りが騒がしくなり、タルタロスが地響きを立てて停止した。主砲が発射される振動が聞こえる。
いよいよ襲撃が始まったのだ。
ルークは愉しげに笑うとドアに鍵をかけた。そして更に第七音素で目くらましをかけ、此処に部屋がある事が分からないようにする。
ルークを探すティアの声が廊下を過ぎて行った。遠くに事切れるマルクト兵たちの絶叫が聞こえる。
襲撃に直接関わらないアッシュは真っ直ぐにここに来るだろう。同位体のアッシュにだけは眼くらましは通じない。
ルークは鼻歌を歌いながらお茶を準備し、アッシュの訪れを待った。
コンコン、と小さくドアを叩く音にルークはいそいそとドアを開けた。
愛しい深紅が後ろ手にドアを閉めながらルークを抱きしめる。
「アッシュ! 会いたかった・・・」
飛びついて来て自分の口を貪るルークに苦笑しながら、アッシュはルークの背を宥める様に軽く叩いた。
「がっつくなよ。ちょっと待て、あいつらに邪魔されんのは真っ平だからな」
ドアに鍵をかけなおすと、アッシュは更に部屋に防音の呪譜を張った。
引き離されて不機嫌になったルークが横目でアッシュを睨む。
「特務師団長サマがこんなとこでサボってて良いのかよ?」
「拗ねるなよ、ルーク。・・・来い、抱いてやる。 ・・・会いたかったぜ」
腕を引かれ、強く抱きしめられたルークはすぐに機嫌を直した。アッシュに縋り付き、その首筋に顔をうずめる。
「俺も。・・・ああ、アッシュの匂いだ。ねぇ、はやく繋がりたいよ」
お互いに服を脱がせ合い、狭いベッドに転げ込む。
くすくすと笑いながらお互いの身体を弄り、舌を這わせて齧り合った。
精神(こころ)も身体も繋げて揺れながら快楽に蕩ける。
鋼の打ち合う音も断末魔の悲鳴も人の焼ける匂いもここには届きはしない。
焔が一つに繋がる歓喜の声が外に洩れ出る事も無い。
ただ二人は快楽によってその存在を確かめ合っていた。
満足した猫のようにシーツに身体を伸ばすルークを苦笑しながら眺めていたアッシュは、タルタロスの動力が止まった事に気付いた。
同時にルークがつまらなそうな顔になる。
「さあルーク、お楽しみはしばらくお預けだ。着替えろ、外まで送ってやるから」
「えぇ~、・・・もうちょっとだけ」
すり寄って来るルークの唇を啄みながら、もつれた髪を指で梳いてやる。その優しい指にルークがうっとりと吐息を洩らした。
「・・・どうせまたすぐに会える。破滅はもう始まっているんだからな」
「・・・・・・うん、楽しみだね」
リグレット達がタルタロスに閉じ込められる少し前に、アッシュはルークを連れてそっと艦を抜け出した。
ガイと合流したジェイド達がタルタロスを離れようと動き出した時、アッシュはルークを物陰からそっと押しやった。
(さあ、行け。さっさとここから離れろよ。髭の命令で俺はしばらくダアトから動けねぇ、しばらく辛抱しろよ)
(・・・ん、早くまた会いたいな)
アッシュに一つ口付けを送ると、ルークはガイ達の方へと歩いて行った。
「貴方、今までどこに行ってたのよ! 戦いもしないで隠れているなんて卑怯だわ!」
「おやまぁ、あれだけの騒ぎの中を隠れていたというわけですか。さすがは貴族のおぼっちゃまですね」
早速始まった罵倒と見下した言葉に、ルークは嘲笑を返した。
「和平先の王位継承者を敵襲から守ろうともしない立派な軍人の手を煩わせることもないかと思ってね」
ムッと表情を消したジェイドの後ろからガイが進み出てきた。
「ルーク、無事だったか! 心配したぜぇ」
肩を抱いて笑いかけてくるガイの手をさりげなく離しながらルークは笑いかけた。
「ガイが迎えに来たのか。じゃあ家まで俺の護衛をよろしく頼むな」
数頭の魔物に遭遇したあと、ティアが堪りかねたように怒鳴った。
「ルーク! なぜ貴方は戦おうとしないの? 剣が持てるなら戦うべきだわ!」
「なんで? その為にガイが来たんだろ?」
ルークは心底理解できないと言った風に首をかしげる。
「ガイ一人に前衛をさせるつもりなの?」
「あたりまえじゃないか、護衛を守って主が戦うなんて聞いたことないぜ。軍人を守って民間人が前衛に立つなんてのもな。
ガイ、大変ならそいつらまで守ることないぞ。そいつらは軍人なんだから。お前も一人で俺を守る事も出来ないなら数人で組んで探しに来るべきだったと思うぜ?」
ガイの実力不足を憐れむように、ルークは笑って肩を竦める。
「はは、焦って飛び出して来たんでね、精進するよ」
爽やかに笑い返すガイの眼が一瞬憎悪に彩られていたのを、ルークは楽しげに見ていた。
無事にセントビナーへと辿り着き、一行は老マクガヴァンと対面することになった。
髪を隠しもしないで通りを歩くルークを、ぎょっとしたような兵士が幾人も眼で追っている。ジェイドやティアは気付かない。
ガイはルークに髪を隠すよう注意する事も無く、ティアと楽しげに雑談しながら前を歩いていた。こいつが襲撃犯だと言う事は言ったはずだが。
一行は軍施設の部屋に通され、ジェイドと老マクガヴァンのやり取りが続いた。
話も終わり皆が退室しようとしたところで、不意にルークはマクガヴァンに話しかけた。
「マクガヴァン殿、俺や俺個人の護衛がこいつら軍人の前衛に立たなくても済むように、兵を貸してくれませんか? 人手が足りないから前衛を務めろと言われているのですが、いきなり屋敷から誘拐されたので使い慣れた剣も持っていませんし、何より俺は怪我をしてはいけない身であるとこの人達には解って貰えないようなのです」
にっこりと微笑みながら告げたルークの言葉に、マクガヴァンは唖然とし、みるみる蒼白になってゆく。
ルークは返答も聞かずに笑いながら部屋を後にした。
国境までは数人の兵士が同行することになった。ジェイドとマクガヴァンの間でどんなやり取りがあったのかはわからない。
ジェイドの事だからうまいこと丸めこんだに違いない。名代をそのまま続けているのだから。
宿でジェイドに嫌味を言われたルークは、回線でアッシュに告げ口して二人で嘲笑いあっていた。
ルークがここに居る事を不思議にも思わず、ジェイドを咎める事もしない。まったくマルクトはどこまで身内贔屓なんだか。
一行は特に何事もなく国境まで辿り着いた。なにかあったのは護衛に付いて来た兵士たちの胃袋くらいだろう。
一介の兵士である彼らには、皇帝の名代に意見することなど出来はしなかった。彼らの地位では許されて初めて口を開けるのだから。
これから和平を結ぶ先の王位継承者に不敬な発言を繰り返す一行に、彼らは冷汗を垂らしながら胃痛をこらえていた。
ちなみにフーブラス河でアリエッタは襲ってこなかった。きっとアッシュが「機会を待て」とでも言ったんだろう。
「月夜ばかりと思うなよ」
お馴染みのセリフが聞こえてきて、ルークは口元を歪めた。イオンが諫めるように声を掛ける。
「アニス、ルークに聞こえてしまいますよ」
「きゃわぁ~んv ルークさまぁ!」
飛びついて来たアニスをすっと避けたルークは、ガイに話しかけた。
「何してんだよ、ガイ。不審人物が俺に向かって飛び掛って来てんのに、何でただ見てるだけなんだよ」
「えっ、イオン様が導師守護役だって言ったじゃないか」
慌てたように答えを返すガイに、頬を膨らませたアニスが同意する。
「そうですよ~ 不審人物なんて酷いなぁ」
うんざりした様なルークがアニスを無視してガイに話しかける。
「何言ってんだ、こいつ今『自分の利益にならない者は闇討ちする』って言ったんじゃねぇか。そんな物騒な奴を傍に近付けるのは俺は御免だ。だいたい俺の身分を知って媚びて来るような奴をお前は信用できるのか? 見失った導師を心配もしないで、守護役が聞いて呆れるぜ」
ルークの言葉にアニスが立ち竦み、蒼褪めた。イオンがおろおろと取り成そうとし、ティアが大声で怒鳴った。
「なんて失礼な人なの! アニスに謝りなさい!」
セントビナーから付いて来た兵士たちは気が遠くなった。ここは国境である。キムラスカの兵士たちが不審そうに注視している。
こんなところで王位継承者を罵倒するなど、最悪全員打ち首だ。
誰か何とかしてくれ! そう神に願った時、助けが現れた。
「ルーク、無事だったか」
「ヴァン師匠!」
にっこりと笑ったルークがヴァンに近付いていく。
「ああ、旅券を持って来てくれたんですか? ガイもジェイドも俺の分の旅券すら持ってないからどうしようかと思いましたよ」
その言葉にガイはばつの悪そうな顔になり、ジェイドは表情を隠すように眼鏡に手をやった。
「それじゃぁ、さっさとカイツール港に向かいましょうか。ヴァン師匠、兄妹喧嘩は人に迷惑をかけないように向こうで好きなだけやって下さい」
スタスタと国境を抜け歩き出すルークを唖然と見送った後、一同は慌てて後を追った。
後には汗をぬぐいながらため息を吐くセントビナー兵が残された。
セントビナーに帰還した兵は、名代の態度を何と報告して良いのか途方に暮れ言葉を濁した。そしてジェイドはタルタロスへの襲撃を極秘任務だからとマクガヴァンに伝えなかった。マクガヴァンは子供の頃から知っているジェイドを信用しすぎていた。
結果的にジェイドの失態がピオニーに報告されることは無かった。
船旅は順調だった。襲撃もなく、途中のローレライからの干渉をルークは鼻で笑ってねじ伏せた。
地殻に封じられたままのローレライなどより、今のルークとアッシュはよほど強い力を持っているのだ。
甲板に佇むルークのもとにヴァンが近づいてくる。
耳元で囁かれる言葉をルークは冷めた思いで聞いていた。
(残念だけど師匠、俺にもう暗示は効かないぜ? まあいい、今はあんたの望み通りに動いてやるよ・・・)
バチカルが目前に近付いてくる。笑いが出るような茶番が行われる場所だ。
王に礼も取らない名代や護衛やなぜか付いてくる使用人。自分のした事も理解出来ない襲撃犯、しゃしゃり出る大詠師。それを許す馬鹿な王。
馬鹿な王の馬鹿な娘。
(せいぜい爆笑しないように頑張るとするか)
「勅命、承りました。このルーク・フォン・ファブレ、一命を賭して全力を尽くす所存でございます」
優雅に膝をついて完璧な作法で親善大使の任を受けたルークに、インゴベルトは呆気に取られた。側らのファブレ公も瞠目している。
ルークがごねるだろうとせっかく用意した譜石の立つ瀬がない。
「・・・実はこの度の事は預言に詠まれておってな。・・・モースどの、譜石を」
「その必要はありません」
譜石を持って得意気にしゃしゃり出てきたモースを遮るようにルークが言葉を発した。
「預言などが有ろうと無かろうと、国王陛下の命に従うのが臣下の勤め。たとえ『死ね』と言われても笑って死んで見せましょう。
私が行動するのは預言の為ではありません。ただ陛下の御言葉のみ。私の忠誠心を御疑いであれば、どうぞ預言をお聞かせ下さい。」
満面の笑みを浮かべたルークの言葉にインゴベルトは固まった。公式の場で自ら任命した親善大使を信用できないなどとは言えるはずもない。そしてインゴベルトにはルークを国の繁栄のための生贄にするという負い目があった。
「・・・・・・いや、そちの忠誠心は欠片も疑ってはいないぞ。モース殿、譜石はもうよい」
肩透かしを食ったように唖然とするモースを尻目に、優雅に退出の礼をしたルークは謁見の間を出て行った。
(あっははは! アッシュ、見てたぁ? あのモースの顔! 父上も陛下もポカンとしちゃってさ!)
(・・・ああ、傑作だったな。楽しませてもらった)
(預言だからなんて言い訳、許さない。俺たちを殺すのは人なんだから。・・・・・・俺を殺したいなら自分の口で死んで来いって言えばいいんだ!)
気が狂ったように笑い続けるルークの心が悲痛に軋んでいるのが分かる。
優しい半身の心はこうして何度も何度も『殺されて』きた。その度毎に歪みひび割れていく半身の心をアッシュはそっと抱き締めた。
(ルーク、俺はお前のものだ)
涙を流して笑い続けるルークに口付けてやれないのが口惜しい。せめて精神を寄り添わせる。
(永遠に俺はお前を離さない)
(アッシュ・・・アッシュだけだ。もう俺はアッシュしかいらない)
(ああ、分かっている。俺も同じだ。・・・・・・さあ、もう眠れ。イオンは攫って行くがオアシスで帰す。心配するな)
縋り付くようなルークの心を抱き締めるように宥めていたアッシュは、やがてルークが寝息をたてだしたのを感じてそっと回線を切った。
ルークの心をここまで壊した世界など、何千回でも滅びてしまえばいい。
・・・来た。
かすかに聞こえてきた譜歌にルークはほくそ笑んだ。
周囲の白光騎士達がばたばたと倒れていく。目の前のヴァンがよろけて膝を突きながら襲撃者に叫んだ。
「ティア!」
「ヴァンデスデルカ、覚悟!」
まるで攻撃を知らせるように、わざわざ叫んでティアがヴァンに切りかかる。
(傲慢女、ヴァンを殺す気が無い事なんかバレバレだぜ?)
ルークは木刀を投げ捨て、素手でティアのナイフを捕らえた。掌が切れ、血が滴ってゆく。
ティアが眼を見張った時、光が溢れその場から二人の姿は消え去った。
「起きて! 起きてちょうだい」
肩を揺する手と不愉快な声にルークは目覚めた。
「どうやら貴方と私の間で擬似超振動が起きたみたいね。うかつだったわ、あなたも第七譜術師だったのね」
ふーん、とルークはティアを見た。ファブレ家を襲撃した時点で『うかつ』どころじゃねぇだろ、と思いながら。
口には出さない。何度くり返しても、何度言っても解ってはもらえなかったから。
「いつまでも此処に居てもしょうがないわ。川沿いに下れば道があるはずよ、行きましょう。
・・・貴方はルークね? 私はティアよ。貴方を連れ出してしまったのは私の責任だから家まで送るわ」
ティアはさっさと渓谷を降り始めた。
「魔物よ! 構えて!」
繁みから小さな魔物が顔を出す。ティアはルークに指示すると自分は譜歌を詠い始めた。そんなティアを無視してルークは後ろに下がった。
「構えるって、何をだよ。・・・俺は素手。オマケに民間人。責任持って家まで送ってくれるんだろ? ダアトの軍人さん」
ぶらぶらと手を振りながらやる気の無いルークにティアの眦がつり上がった。
「そんな事言ってる場合じゃないでしょう! 戦わなければ死ぬのよ!」
「ああ、だから足手まといの民間人はおとなしく守られてやるよ。素手で何しろって言うんだよ。・・・ナイフも貸してくれなくて結構。俺、ナイフは使えないから。誰かさんの所為で怪我もしてるしな」
自分のナイフを渡そうとしたティアがぐっとつまる。自分が怪我を負わせた事を忘れていたらしい。
ルークは軍人の前衛にされるつもりなどこれっぽっちも無かった。だからあえて木刀を捨てて来たのだ。
あんなちゃちい木刀を持っていたくらいで『剣を持っているなら子供でも戦う』なんて言われるのはうんざりだ。
いざとなったらルークは譜術が使える。繰り返した人生の中で役立つ知識はすべて詰め込んできた。
・・・こいつらに教えてやるつもりは無いが。
魔物が去ってゆくとティアはルークに治癒をかけた。
「怪我をしてるなら早く言ってちょうだい。・・・ナイフを素手で止めるなんて無茶だわ」
「襲撃した奴に言われたくないな」
「あれは、そんなんじゃないわ! 個人的なことよ」
「・・・・・・馬鹿だろ、お前。 ほら、さっさと行こうぜ」
ルークの嘲笑にティアは思い切り噛み付いてきたが、もう気にも留めずにルークは歩き出した。
渓谷を降りると辻馬車が休憩していた。
二人を見て始め警戒した御者は、旅人と分かると馬車に乗ってゆく事を勧める。
その金額にティアが思案している所にルークが自分のしていた指輪を差し出した。
「一人分ならこれで足りるか? あ、お釣りはくれよな。あとマントか何か売ってくんないか? ティア、俺は乗っていくからお前は好きにしろよ。」
突き放したようなルークの言葉に、ティアの顔に怒りが浮かぶ。
「ルーク!」
「何? お前の分まで払わせようって言うのかよ? あいにく俺も持ち合わせが無いんだ。自分の分は自分で払ってくれよな」
「・・・・・・」
悔しそうなティアを後目に、ルークはさっさと馬車に乗り込んだ。しばらく思案していたティアは、ペンダントを御者に渡し乗る事を決めたようである。・・・まあ、どうでもいいが。
ルークの目的はアッシュに会うことなので、あえて行き先の勘違いも訂正しない。エンゲーブに行かなくてはアッシュに会えないからだ。
ルークは鼻歌を歌いながら馬車の座席にごろりと横になった。
ただひたすら、あの深紅に会う事が待ち遠しかった。
夜半、カチリと何かが填まるお馴染みの感覚がして愛しい半身の声が聞こえてきた。
(おい、今どこだ)
(ん? エンゲーブに向かう馬車ん中。うるせー女がやっと寝たとこ)
(ほっといたって親善大使には任命されるんだ。馬鹿正直に飛ばされたりしないで、あんな女放っときゃ良かっただろうが)
アッシュの呆れたような感情が伝わってくる。ルークは馬車の座席に身を横たえたまま頬を膨らませた。
(せっかくアッシュに会えるチャンスじゃんか! ずっとバチカルに居たってつまんねーもん。 ・・・もうすぐ会えるな、アッシュ)
(ああ。・・・それまでおとなしくしてろよ?)
苦笑するように甘いアッシュの声に、髪を撫でられているように感じる。
(会ったらいっぱいシような! あ、考えたらムラムラして来ちゃった。 ・・・ねぇアッシュ、ちょっとだけで良いからしようよ)
(こら、そんな所でやる気か。女が起きてもいいのか?)
(え~! ちょっとだけだからぁ)
アッシュが溜息をつくのが解った。アッシュは基本的にルークのおねだりは断らない。舌なめずりをして返事を待つ。
(・・・解った。同調するからこっちに『来い』よ。気持ち良くしてやる)
(アッシュ、アイシテルよv)
同調が深まり、精神が引き寄せられるのを感じる。ルークは眼を閉じて身体から離れた。
アッシュの身体の中に『入る』のはとても心地良い。包まれるような安心感を感じる。
眼を開けると浴室が見えた。アッシュが服を脱ぎシャワーを浴びている。
手が身体を滑り、絡みついた。突き抜けるような快感が伝わってくる。
(アッシュ・・・気持ち良い、もっと・・・・・・)
手の動きが早まり快感が強くなる。溢れ出しそうな快楽に身を任せながら、ルークはなおも強請った。
(アッシュ・・・後ろも欲しいよ・・・ねぇ、ちょうだい)
(・・・っ、この、淫乱レプリカ!)
吐息交じりの罵声と共にぬらりと指が入ってきた。慣らし、指を増やしてイイ所を刺激する。
同じ身体だ、ポイントなど知り尽くしている。
前と後ろを同時に弄られてルークは喘いだ。
アッシュが自分の為にここまでする事に、言い知れぬ満足感を感じる。
(アッシュ・・・! イイよぉ!)
悲鳴のような喘ぎと共に頭が真っ白になり、虚脱感に襲われたアッシュは足元をふらつかせた。
激しい吐息を押し隠し片割れに呼びかける。
(ルーク? おい、人の『中』で寝るなよ。満足したか?)
(ん・・・アッシュ、気持ち良かった。・・・早く会いたい、もっともっと気持ち良いことしたいよ)
擦り寄る猫のように淫蕩な笑みを漏らすルークにアッシュは苦笑する。早く繋がりたいのは自分も同じだからだ。
(もうすぐ会える。・・・それまで良い子にしてろ)
(うん、待ってる)
名残惜しげに優しく回線が切られ、ルークはうっすらと眼を開けた。馬車のゴトゴトと言う振動が伝わってくる。
・・・もうすぐアッシュと会える。それまでせいぜいアイツラで遊ばせてもらおう。
くすくすと笑いながらルークは眼を閉じた。
途中タルタロスに追い立てられ、橋を壊されて辻馬車はエンゲーブへと着いた。
行く先の勘違いに落ち込むティアを置き去りにし、ちゃっかり乗車賃の差額を受け取ったルークはマントを着けて買い物をしていた。食材をいくつか買い、宿に足を向ける。
「ちょっとルーク! 一人で出歩かないでちょうだい! 聞いてるの、ルーク!」
金切り声が追いかけてくる。煩そうにルークは振り返った。
「おい、俺の名を連呼するな。此処がどこだか解ってんのか、お前」
『聖なる焔の光』と言う名を持つ者はキムラスカではたった一人だけだ。赤い髪に碧の目を持つ『ルーク』が何者かなど、少し詳しい者なら誰でも知っている世界の常識だ。
言い返そうとしたティアを村人が取り囲む。ティアとルークのやり取りを不審そうに聞いていた村人に、盗人の疑いをかけられたのだ。
ローズの家に連れて行かれた二人はそこでジェイドとイオンに会う。
胡散臭く微笑みながらジェイドが自分をじっと観察している。ティアは全く気にも留めていない。
何度も繰り返したルークは気付いていた。会った瞬間からジェイドはルークが『ルーク・フォン・ファブレ』である事など解っていた。
そして解った上でイオンを追ったルーク達を監視していたのだ。
隠密行動には素人のイオンをまともな軍人が見失うなど有り得ない。
それもイオンを失えば和平どころか世界規模で戦争が起きるかもしれないこんな時に。
放って置いてもイオンに危害が加わることは無い。
ルークは数度目に繰り返した時からライガとチーグルの問題には関わらないことに決めていた。薄笑いしながら傍観する。
茶番のような一連のやり取りが終わり、疑いが晴れて詫びにと宿を提供された二人は早々に休む事にした。
明け方、ルークはティアにゆり起こされた。
「ルーク、イオン様が一人で森に向かって行ったの。危険だわ、後を追いましょう!」
眠そうに顔を上げたルークはひらひらと手を振った。
「ああ? 勝手に行けよ。許す」
「何言ってるのよ! イオン様を放っておけって言うの? 我侭言わないで!」
「あのなぁ、あれはダアトの導師、お前はダアトの兵士。・・・俺は何者だ? ちなみにここはマルクトだ。俺が手ぇ出す義理なんかこれっぽっちも無いだろ? どこが我侭だよ、俺が絡んだらキムラスカからの内政干渉も良いとこだぜ」
呆れたように肩を竦めながら自分を指差すルークに、ティアの眼はつり上がった。世間知らずのお坊ちゃんが我儘を言って手伝いを拒んでいるとしか思えないらしい。
「・・・! もう勝手にしなさい!」
「ふ~ん、いいのか? 早く行かないとイオンを見失っちまうぜ? ああ、一人で行けないなら導師守護役でも見つけて連れて行けよ」
そう言うとルークは布団に包まり、さっさと二度寝の体勢になってしまった。
ティアはルークを睨みつけると音を立てて部屋を出て行った。
数時間後、惰眠を貪っていたルークは部屋を取り囲む兵士の気配に眼を覚ました。同時にマルクト兵が部屋に踏み込んでくる。
「おい、お前。カーティス大佐の命令でタルタロスに連行する。来い!」
「ああ、良いぜ。ちょっと待ってくれよ、着替えるからさ。ついでに朝食を頼んどいてくれないか?」
悠然と着替え始めたルークを、マルクト兵は呆気に取られて見た。というか、『もう昼食だろ!』と言いたい。
「早くしろ。食事はタルタロスで取ってもらう」
「まあまあ、カーティスが何考えて俺を『連行』しろって言ったか知らねえけどさ、俺の色見りゃいろいろヤバイの分かるだろ? あんまり強制すると拙いんじゃないの?」
にんまり笑ったルークの言葉に顔を見合わせたマルクト兵たちは、打って変わって丁重にルークを案内したのだった。
顔を洗ってさっぱりしたルークは、朝食の包みを手に持って堂々とマルクト兵を従えるようにタルタロスへと乗り込んだ。
(チーグルの森に行かなくても、ジェイドが俺を逃すはず無いよな。・・・まあ良い、これでアッシュに会える)
エンゲーブチキンのベーグルサンドを優雅に口に運びながらルークはくすりと笑った。
しばらくの後、タルタロスはエンゲーブの北の森の近くに停止した。すぐにジェイド達が乗り込んでくる。
タルタロスの一室でルークは彼らと引き合わされた。
森での出来事をイオンがルークに説明する。ライガクイーンはジェイドとアニス、ティアによって斃されたという。
ミュウはティアを主人と定め、同行していた。
「ふうん・・・自分の失態を償う為に人間を連れて行ってライガを始末したのか。上手くやったな、チーグル族は」
「ち、違います。僕たちは交渉しようと・・・」
慌てたようにイオンが反論するが、ルークの言葉にミュウは涙を浮かべて項垂れた。
ティアが憤慨したように叫ぶ。
「何言ってるの! ミュウは悪くないわ、人里に近い場所に居るライガは殺さなければ大変な事になるのよ!」
ルークは薄く笑って肩を竦めた。
「殺る気満々な奴を連れて行った時点で交渉が成立するわけ無いんだよ。 お前初めからライガを殺す気だったろ? それをチーグルも分かってたはずだ。分かってて自分たちの為にライガを殺しに行ったんだよ。自分たちの害になるものは最小限の労力で排除する、上手いやり方だって誉めてんのさ」
「貴方って、最低ね! ミュウの気持ちも考えて! イオン様だって交渉に力を尽くしたわ!」
「ははっ、そんでお前が交渉をぶち壊したわけか。お前には森を焼いたそのブタザルの気持ちが分かるのか? 住処を追われ、殺されたライガの気持ちは考えもしないくせに」
「ご主人様、やめて下さいですの。ルークさんの言うとおりですの。ミュウが悪いんですの」
ミュウがティアに縋って泣き出し、イオンが項垂れた。ティアは言い返そうと睨んでいる。
「その辺にしませんか? 済んだ事をあれこれ言っても仕方ありません。まずは貴方のフルネームをお聞かせ願えませんか」
ジェイドがうんざりしたように話に割って入った。
「・・・ルーク・フォン・ファブレだ」
「ルーク! そんな簡単に名のるなんて軽率だわ!」
「ちょっとお前黙ってろよ。元はといえばお前がエンゲーブで俺の名を連呼したんだろ? キムラスカ王族の色の『ルーク』が何者かなんてこいつはもう知ってるよ。だから俺が今此処にいるんだろうが」
表情の読めない笑みを浮かべてジェイドが進み出た。
「話が早くて助かります。私達は極秘任務でキムラスカに向かっています」
「まさか戦争?」
「違いますよ~ あたしたちは和平の為にキムラスカに向かってるんですよ、ルークさまぁv」
蒼褪めて言葉を発したティアにアニスが返事を返し、媚びたようにルークを見た。
「アニース、いけませんね。機密事項をぺらぺら話しては。・・・ルーク様、あなたに和平の取次ぎの為の協力を仰ぎたいのですよ」
「・・・断ったら?」
「機密事項を知ったからには拘束させていただきます」
頬に手を当て下を向いたルークは、やがてくっくっと笑い出した。
「・・・それって交渉じゃねぇよな。さすが交渉の場でライガクイーンをブチ殺しただけあるわ。・・・いいぜ、引き受けてやるよ。和平に向かう先の王位継承者に礼も取らない奴を王に取り次ぐのは不安だが、断ったら何されるか分かんねぇからな」
「いえいえ、協力していただけるならこのくらい朝飯前ですよ。そんな安っぽいプライドは持ち合わせておりませんので」
ジェイドはそう言うとルークに向かって跪いた。そして許しも得ずにすぐに立ち上がるとポケットに手を突っ込んでルークに話しかけた。
「これで良いですか? ルーク様」
「・・・お前、本当に名代かぁ? 信じらんねぇ。 マルクトの皇帝はキムラスカに喧嘩売って来いって言ったんじゃねぇの? それともマルクト皇帝は礼儀も弁えない奴を名代にするような公私混同の激しい奴なのか?」
ルークは鼻で笑うと席を立ち、ドアに手をかけた。
「待ちなさい、どこへ行くのです」
ルークの言葉に不愉快そうに無表情になったジェイドが引き止める。
「犯罪者と同じ席になど着いていられるか。取次ぎは引き受けたんだからどこに行こうと良いだろ? 俺は部屋で休ませてもらう」
「ルーク、あれはそんなんじゃないって言ったでしょう!」
「黙れ襲撃犯。お前が俺を呼び捨てにする時点で十分犯罪者なんだよ」
背後でティアが慌てて言い訳をしている。
あんな馬鹿げた言い訳を信じるなんてどうかしている。それとも『今回の件には関係ないと思いましたので』か?
やり取りに蒼褪めていた兵士に個室に案内させると、ルークは備え付けのベッドにごろりと横になった。そのまま眼を閉じる。
愛しい焔の片割れが近づいて来る気配が感じられる。他の事なんかどうでも良かった。
(・・・もうすぐアッシュに会える)
IF 逆行 ヴァンに味方するスレアシュルク
設定と注意
※同行者にかなり厳しい話になります(イオン除く) 人死に多数あり。と言うかオールドラント滅亡。
ガイ・ジェイド・ティア・ナタリア・アニスに酷いです。
逆行数回目で、何度やっても世界の生贄で音素乖離か大爆発で死ぬのでもう飽き飽きした。
ちなみに逆行2回目で両思いになった。一度目の大爆発で記憶を共有したため、お互いに分かり合った。
何度も最後に大爆発を起こしてその度に記憶を共有する事になる。その為アシュルクどっちも何処かひん曲がっている。
ルークは何度やっても見捨てられた所為でスレて真っ黒で淫乱。アッシュはルークに執着し溺愛した為つられて黒い。
いつもいつも同行者はアレだし結局自分達は救われないしでスレまくったアシュルク。
ローレライを憎んでいる。お互い以外には無関心。世界なんて滅びてもいいと思ってる。
それなら今度はヴァンの作る世界とやらを見てやろうぜ!ってことになった。(しかしヴァンを慕っている訳ではない。)
私にしては珍しくルークが主人公っぽいです。
同行者を断罪するのはルークではありません。世間です。ルークやアッシュは同行者には無関心。
アッシュが同行者の前に一切姿を現していないので、ルークがレプリカである事は知られていません。
あまりグロくはしてませんが、同行者&その他が死亡しています。苦手な方は自己回避をお願いします。
イオンは贔屓。シンクとアリエッタも。彼らはレプリカ世界の為にヴァンに協力している。
アスラン、ギンジ、ノエルは出てきません。六神将は救済の方向で。(ディストは空気)
アシュルク比喩表現エロに挑戦しました(笑) 苦手な方、学童の方は自己回避をお願いします。
本人アシュルクのつもりで書いているのですが、・・・なんとなくリバっぽいです(笑)
言うまでも無いことですが、説明臭い文章はすべて捏造です。妄想過多に注意。
『 楽園は深淵の底に 』
いつも此処から始まる。
ふと覚醒したアッシュは暗い部屋の硬いベッドの上でにやりと笑った。
(・・・また始まる。このくだらない世界で、糞みたいな俺の生涯で、あいつだけが俺の『真実』・・・)
己の半身が自我を持った瞬間にアッシュは戻ってきた。
フォンスロットなど開かなくても分かる。生まれ出た半身が自分を求めている事を。
なぜなら自分もこの世界に零れ落ちた瞬間からあいつを求め続けているから。
もうすぐ会える。あの髭野郎が得意気に俺をあいつの側に連れて行くから。
アッシュが『聖なる焔の燃え滓』になりルークが『聖なる焔の光』になった日。
世界に存在を否定されたあの絶望の日が、今ではこんなにも待ちどおしい。
アッシュはくすくすと笑いながら眼を閉じた。
アッシュとルークは何度もこの時を繰り返してた。
世界の為に奔走し、結局二人とも死ぬ世界。
何度やってもどちらかが死に、または生き残っても大爆発を起こし二人で生きられない。
ローレライを解放した後、タタル渓谷に帰還したこともあった。
しかしそこで『ルーク』が見たものは、虐げられ、狩られ、利用されるレプリカの末路。
人間は相変わらず私利私欲の為に争いを続ける。
死ぬ時に二人は必ず記憶を融合させる事になる。そして半身が辿った人生に絶望を深めてゆく。
そんな繰り返しの中で二人は少しずつ壊れていった。
何回も繰り返される嘲笑や罵倒、世界から見捨てられる事にルークは耐えられなかった。
どんなに頑張っても、自分を変えてみても、結局世界は自分たちを見捨て、利用し、殺す。
ルークを認め、ただのルークとして愛してくれるのは記憶を共有するアッシュだけだった。
ルークはただひたすらにアッシュだけを求め、その繋がりに依存していった。
そしてアッシュもまたルークだけを、己の絶望を知る半身だけを求め続けた。
いつしか二人はお互いの為だけに生きるようになっていった。
小部屋に連れて行かれ半身と二人だけにされると、アッシュはルークの側に屈み込んだ。
額を合わせフォニムをコントロールするとカチリと何かがはまった感覚が訪れる。
(・・・アッシュ、おはよう。ねぇ、今度は何して遊ぼうか?)
無表情に転がっているだけのルークから、楽しげな声が流れてくる。人形のような身体とは裏腹に、その瞳はアッシュを見つめ輝いていた。
アッシュはその小さな手で愛しげにルークの髪をかきあげる。
(おはようじゃねぇよ。・・・そうだな、お前は何がしたい? 何でもしてやるよ、お前の為なら)
(ん~・・・何回やっても、替わり映えしないしなぁ。・・・なぁ、いっそ今度は師匠の好きにさせて見ないか? 奴が作る預言の無い世界とやらを見てやろうぜ)
(くっくっく・・・そいつはいいな。髭野郎がどこまでやれるか見てやるか)
(決まったな! なぁ、アッシュ、またしばらく離れ離れだな。・・・アッシュと早くシたいな)
(・・・この淫乱レプリカめ。残念だがまだこの身体じゃお前を抱けねぇ。もう少し育ったら回線繋いで可愛がってやるよ)
10歳の身体に似つかわしくない艶のある笑みを浮かべ、アッシュはルークの頬に手を滑らせた。
くちゅり、と音を立てて舌を絡ませる。
(今はこれで我慢しろ)
(ん・・・もっと、いっぱいキスして。7年分してよ)
石造りの冷たい部屋に、濡れた音が響いた。
アッシュは人形のようなルークの身体を愛撫し、隅々まで舌を這わせていく。
だらりと力なく垂れ下がった腕を取り、指を咥え軽く歯を立てながら一本一本丁寧に舐めていった。薄い検査着をはだけ、出来立ての滑らかな肌を味わう。
いまだ未成熟なそこも、隠された蕾も、一つ残らず確かめるように舌を這わせた。
(あっしゅ、もっと、ねぇ、もっとして・・・ この身体にもアッシュを覚えさせて・・・)
(ルーク・・・お前だけだ。・・・もっと、もっと俺を欲しがれよ)
二つに分かれた焔がまるで一つに戻りたがるように、交じり合い繋がった精神が歓喜を溢れさせた。
ヴァンに抱えられ連れられて行く半身を遠目に見ながらそれでもルークに精神を寄り添わせていたアッシュは、ヴァンの配下の者にダアトへと連行された。そして真っ暗な部屋の中に何日も閉じ込められる。
一度目は気が狂いそうだった孤独も、もうアッシュを苛む事は無い。側らには常に半身の心が寄り添っていたからだ。
数日が過ぎ戻って来たヴァンが扉を開けた時、小さなろうそくの光に眩しそうに眼を瞬かせたアッシュは無表情にヴァンを見上げた。
「もう俺はキムラスカの『聖なる焔の光』じゃない。ただの燃え滓、『アッシュ』だ。・・・・・・おれは予言を憎む、俺を『殺した』キムラスカを憎む。予言をぶっ潰す為なら何でもやってやる」
淡々と呟く子供の深淵を呑んだ瞳にヴァンはほくそ笑んだ。子供が絶望から己に縋り付いたと思いこんだ。
・・・己が子供達の手の内で転がされているとは思わずに。
アッシュはヴァンの命令に何一つ逆らわなかった。
言われるがままに強くなり、兵を率い、人を殺していった。
ヴァンが時折キムラスカの事やレプリカの事を話してもアッシュは無関心だった。
「あんな所どうなろうと俺にはもう関係ねぇ」と、つまらなそうに肩を竦めるアッシュにヴァンは信用を深めた。
己の片腕となったアッシュに、ヴァンはやがて計画の全てを話し協力を求めるまでになっていた。
アッシュに『鮮血』の二つ名が付くのにそう長くはかからなかった。その背を覆う髪の色では無い。全身を染め上げる朱の色だ。
血煙を巻き上げ戦場を駆けるアッシュを彩る返り血の色だ。
アッシュが『仕事』に行く時、ルークはいつも同調したがった。
屋敷から出られないルークは退屈凌ぎに時折アッシュの身体を借りて『仕事』を手伝う。
返り血に塗れ敵を倒すアッシュはルークを酷く興奮させる。
ルークの興奮はアッシュをも煽り、くすくすと笑いながら敵を屠る特務師団長は味方にも怖れられた。
アッシュの身体がしなやかに動き敵を一刀のもとに切り捨てるのを、『繋がった』ルークはうっとりと感じていた。
闘っている時のアッシュは生に満ち溢れてとても綺麗だ。ああ、直接この眼で観られないのが口惜しい。
ダアトに帰還したアッシュが返り血に塗れた服を脱ぎ棄て、血塗れのまま鏡の前で指を操って己を弄ってくれるのが待ち遠しい。
情欲に染まった眼で鏡越しに視線を合せ、登り詰めるアッシュを見ながらイかせて欲しい。
窓際に寄りかかったルークは、とろりと艶を含んだ笑みを浮かべていた。
ぺろりと舐めたその赤い唇から切なげな溜め息が漏れる。
窓の外から食い入るような視線が感じられる。
・・・どうせガイだろう。 親友と言いながら人の事を憎しみの籠った冷たい目で見てくるくせに、時折ああして暗い情欲を含ませて覗いている。
お前には俺を殺すことも、犯す事も出来ないよ。だって俺の全てはアッシュのものなんだから。
シャツのボタンを外して手を差し入れ、いつもアッシュがする様に自分の喉から胸へと指を這わせながらルークは嗤った。
以前、変わりたいと願った。
無知が招いた愚かな出来事を繰り返すまいと知識を得た。
世間を知り、人のために役立ちたいと働きかけた。
世界を救いたいとがむしゃらに頑張った。
しかし結果はどうだ。どんなに頑張っても世界が求めるのは生贄としての『聖なる焔の光』
何度、何度くり返しても変わりはしない。誰も自分の言葉に耳を傾けたりはしない。
ここには『ルーク』と言う名の赤毛の男児がいればいいのだ。
(ヴァン師匠、もうあんたを止めたりしないから、精々頑張って早く世界をぶっ壊してよ。・・・あんたが失敗しても、ちゃんと俺達が世界を壊してあげるから大丈夫だよ )
当家のPCとセキュリティ
Windows Vista IE8
Norton Internet Security 2009
GENOウィルス対策↓
Adobe Reader 9.4.4
Adobe Flash Player WIN 10,3,181,14
Powered by "Samurai Factory"