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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2025.07.14,Mon
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Posted by tafuto - 2008.03.03,Mon

 

ダアトに戻った俺とアリエッタは六神将の執務室に顔を出した。シンクが一人寛いでいる。
「おかえりーアッシュ、アリエッタ。随分ゆっくりだったじゃない」
「ああ、色々あってな。カイツールでヴァンに追い帰されたぜ。・・・あの襲撃犯はどうした?」
「モースの命令で贖罪の為にバチカルに連れて行かれたよ。あいつ、ヴァンの妹だよ。ユリアの子孫なんだってさ。ヴァンの命を狙ってファブレ家を襲撃したらしいよ」

つまらなそうにシンクが言う。・・・ヴァンがユリアの子孫なんて、はじめて聞いたぜ。
何もかもが胡散臭せぇ。ヴァンは何か企んでやがるのか?


その時、黙っていたアリエッタが俺の袖をおずおずと引いた。
「アッシュ・・・・・・アリエッタのイオンさまから、アッシュにお手紙を預かっている、です。ヴァン総長が変な事したら、アッシュに渡せ、って」

アリエッタがどこかから持ってきた手紙を開封し、読みはじめた俺はすぐに顔色を変えた。
そこには秘預言の全文が記されていた。 ・・・俺が、聖なる焔の光?
『ヴァンはアッシュをファブレ家から誘拐し、レプリカを作らせた。その副作用でアッシュは記憶喪失になったんだと思う。ヴァンはアクゼリュスでアッシュの代わりにレプリカを使うつもりだ。君は預言なんかに負けないで欲しい』
手紙の最後にはそう記されていた。


「レプリカ・・・・・・それじゃ、ルークが俺のレプリカなのか?」
呆然と呟く俺を哀れむように見ると、シンクが言葉を発した。
「そうだよ。・・・そして僕と『イオン』は、導師イオンのレプリカなのさ。三つ子なんて思ってたの、あんたくらいだよ」
瞠目して見返した俺の視線を避けるように、シンクは目を逸らした。

「・・・悪かったな。よく知りもしないで、俺はおまえに無神経な事を言ったのか」
俺の言葉にシンクが勢い良く振り返った。
「何で謝るのさ! ・・・あんた、レプリカが憎くないの? 自分の場所を奪われたんだよ?」
「何も覚えてねぇのに、奪われたとか言われてもわからねぇよ。ルークの事なら、憎くない。弟が出来たみたいで楽しかったからな。レプリカって、弟みたいなもんだろ?」

「・・・まったく、あんたって・・・・・・」
しばらく下を向いて笑っていたシンクは、真面目な顔をすると俺に尋ねた。
「んで、どうするの? これから」
「決まってる。ルークを助けに行く。俺の代わりに殺させたりしねぇ」
「・・・言うと思ったよ。僕も手伝ってあげるよ」
「アリエッタもアッシュの味方です。それに、ルークは恩人、です」

 

まずはヴァンの目的を知るために、俺たちはディストを問い詰めた。
なかなか吐かなかったから、3人がかりでボコボコに・・・してやると脅したらあっさり白状した。
アクゼリュスを皮切りに全ての大地を崩落させ、レプリカ大地を造る。人も皆殺しにしてレプリカに置き換える事で預言を覆す・・・だって。 あいつ馬鹿じゃねぇのか?
「ディスト・・・なんでおまえ協力してんだ? この計画じゃ、みんな死ぬって事じゃねぇか」
「私はネビリム先生のレプリカを作れればそれで良かったのです!」
喚き散らすディストに、俺は呆れたように話しかけた。こいつ天才なのに、時々物凄く頭悪いんだよな。

「・・・作る前にお前、死んじまうんじゃねぇか? それに、レプリカは被験者とは別人だぞ。ルークと会った俺が言うんだ、間違いねぇ。イオンとシンクだって全然違うだろ? きっと、同じ形でも魂が違うんだよ。 同じ人間なんて、作れるはずが無いんだよ」
ディストは涙と鼻水を垂らして俯いている。
「・・・何となくそうじゃないかと思っていました。・・・でも、信じたくなかった。ネビリム先生を復活させて、ジェイドやピオニーともう一度あの頃のように楽しく・・・・・・」

「何だディスト、今楽しくないのか? おまえいっつも十分楽しそうだが」

俺の呆れ声に、ディストはきょとんとして眼を瞬かせた。
「・・・・・・それもそうですね。・・・どうやら私は、過去に囚われ過ぎていたようです。ヴァンに協力するのは止めました、死んでしまっては元も子もないですからね」
「そうか、そんなら手伝え」
俺は3人目の協力者を手に入れた。

 

シンクにはバチカルで導師を拉致してザオ遺跡のダアト式封咒を解かせろと言う指令が出ていた。
シンクにはとりあえずその命に従う振りをしてイオンに話をつけ、アクゼリュス救助の為の時間稼ぎをしてくれと言ってある。
何か吹っ切ったらしいディストは自分からピオニー皇帝に話をつけに行くと言ってくれたので、イオンの書いた秘預言を渡した。ピオニーがこれを見たら速攻で救助を出すだろう。
俺はアリエッタとアクゼリュスに向かい住民を救助しつつ、アクゼリュスに向かわされるであろうルークを待つ事にした。

俺はまず全ての預金を下ろして宝石に替え、隠しにしまい込んだ。
もうここには戻れないかもしれないからな。何をするにも先立つものは必要だ。
いつか独り立ちする時の為にと、給料を溜め込んでおいて良かった。

 

アクゼリュスへ向かった俺達の元に、シンクから報告が届いた。
案の定ルークは親善大使としてアクゼリュスに送られた。キムラスカは繁栄の為に『聖なる焔の光』を差し出すつもりだ。
驚いた事に、襲撃犯のティアが同行するらしい。ユリアの子孫だと言ってモースがねじ込んだと言う。なぜあれだけの事をしでかして斬首されないのか理解に苦しむ。
ルーク・ティア・カーティス・使用人・導師守護役(それとこっそり付いて来たキムラスカの王女)なんて少人数で陸路を進んでいるとは、一体どういうつもりか。途中に砂漠もあるのに。
当然のように前衛に立たされているというルークの身が心配だ。
あいつは人を斬った事が無い。俺だって初めて人を殺した時は眠れなかったからな。

シンクの報告書は最後にこう書かれていた。
『僕がわざわざ足止めしなくたって、あのペースじゃそっちに着くのは相当時間かかるんじゃない?』
俺もそう思うぜ。でも海路を来ているヴァンが到着する前に避難を終わらせねぇとな。

 

アクゼリュスに着くと瘴気はかなり大地を汚染していた。俺は責任者に鉱山が崩落する事を伝えて避難を促した。
ダアトの六神将が預言に詠まれたと言って疑う奴はいねぇ。・・・本当の事だし。
歩ける奴はデオ峠からさっさとカイツールに向かってもらった。
動けない奴は、アリエッタのお友達を総動員してデオ峠を西に飛び越え、カイツールとフーブラス川の間くらいに避難させた。ディストから救助隊が出たと知らせがあったから大丈夫だろう。
マルクトからの陸艦も到着し避難の目処が立ったので、俺は後をアリエッタに任せて(ヴァンが来たら隠れろと言ってある)ルークの元へと向かった。


まずい事に、ルークに会う前にリグレットに会っちまった。
命令違反で俺を捕らえようとしたので、リグレットを撒こうとした俺はルークと行き違いになっちまった。
それに気付いた時には、ヴァンもルークもアクゼリュスに入った後だった。
慌ててアクゼリュスに戻り、残った人間を連れてすぐここを離れろとアリエッタに指示を出す。
坑道の手前にティアが居たので、ヴァンがルークを利用してアクゼリュスを落とすつもりだと言い捨てて俺は最深部を目指した。
俺が血相を変えて走っていくと、眼鏡や使用人や姫や守護役が次々と後を付いて来る。
何でおまえらルークと一緒じゃないんだ! 導師はどうした。
最奥のダアト式封咒が開けられている。俺たちはそこに飛び込んでいった。


「愚かなレプリカルーク、力を解放するのだ」
ヴァンの冷たい声が響き、もがいていたルークが身体を強張らせて虚ろな目になった。
その手が力なく上がり、光が迸った。
「ヴァン、てめぇ!」
俺が斬りかかると、ヴァンはグリフォンに掴まって宙に逃れた。
「アッシュ、なぜここに来た!」
「うるせぇ! てめぇの企みは分かってんだ!」
ティアに譜歌を詠えと言い捨て、ヴァンは去って行った。俺のことも捕らえようとしたが、魔物に蹴りを入れてやった。
ルークは気を失っている。担ぎ上げ、ティアが詠う譜陣の中に引き入れた。イオンも近くに倒れている。
アクゼリュスの大地は崩落していった。

 

あたり一面に紫色の世界が広がっている。ここは地下世界、クリフォトと言うらしい。
ディストの説明にはあったが見るのは初めてだ。
俺はルークをそっと寝かせると、あたりの探索に出かけた。

少し行くとタルタロスを見つけた。どうやら崩落に巻き込まれたらしい。誰も生き残っちゃ居ないだろうと思って入ってみたが、驚いた事に生存者が居た。
「あなたがアッシュ殿ですか・・・私たちはマルクトの救助隊です。崩落の危険が高いと言ってネイス博士がタルタロスの推進力を大幅に上げてくださったので、落下の際全力で噴射を続け何とか助かる事が出来ました。・・・運の悪い者も居ましたが、ほとんどの者は命は助かりました。ありがとうございます」
俺はホッとした。無駄死にさせなくて良かった。・・・しかし、ネイスって誰だ? 
タルタロスは半壊したが、かろうじて動くらしい。俺は皆を呼び集めようと元居た場所に戻った。


「じゃあ、このお坊ちゃんのせいなの? サイッテー!!」
「見損ないましたわ、ルーク! 記憶を失ってからのあなたはまるで別人ですわ!」
「こうなる前に、相談していただきたかったですね」
「少しはいいところもあると思ってたのに、私が馬鹿だったわ」
「あんまり幻滅させないでくれ」

口々にルークを罵る声が聞こえてきて、俺は急いでルークのところへ戻った。
ヴァンが暗示をかけていた所は全員見ていたと思ったのは俺の間違いか?
倒れたルークを介抱してくれていると思った俺が馬鹿だった。

「何やってる!」
蹲って震えていたルークが縋るように俺を見た。その眼に涙がこみ上げる。
「アッシュ・・・」
「何でこいつの所為なんだ。あん時ヴァンが暗示をかけていたのを、お前らも見てたじゃねぇか!」
「あ、貴方が言ったんじゃない!兄さんがルークを使ってアクゼリュスを崩落させようとしているって!」
ティアが俺に食ってかかる。てめぇ、何で自分の兄貴じゃなくてこいつを責めるんだ。
「ああ、だからやったのはヴァンだろ? 人を斬ったら刀が悪いのかよ。罪はやった人間のものだろうが。何でてめぇは自分の兄貴の罪を他人の所為にしてんだよ」

まだぶつぶつ言ってる奴らを無視して、俺は俯いているルークの頭をぽんぽんと撫でた。
「間に合わなくて悪かったな。でもアクゼリュスの人間はほとんど救助した。おまえは誰も殺してねぇ」
バッと顔を上げたルークがくしゃりと顔を歪めると大声で泣き出した。
ガキっぽいと思ってたが、おまえは本当に七歳だったんだよな。
手を引っ張って立たせてやると、ぐちゃぐちゃの顔で縋り付いてきた。
「ほら、しゃんと歩け。」
俺は泣きべそをかくルークの手を引いてタルタロスに向かって歩き出した。
あいつらは付いて来ようと来るまいともうどうでもいい。


タルタロスはティアの進言でユリアシティって所へ向かう事になった。こんな瘴気の中で生きていられるなんて今でも信じられねぇが。
ティアと王女がタルタロスの重傷者に治癒術をかけ終わると、奴らは自然と俺の所に集まってきた。
ルークは倒れそうに疲れてるのに俺に引っ付いて離れねぇ。・・・恐い目にあったからな。

「さてアッシュ、貴方の知っている事を話してくれませんか」
ネクロマンサーが眼鏡を光らせながら俺にきりだす。
「・・・ヴァンは大地を全て崩落させて、レプリカで置き換える事で預言を覆そうとした、ってところだ。俺はダアトでそれを知って、阻止する為にアクゼリュスに来た。預言の内容はピオニー皇帝に伝えたからそっちに訊け。こんなとこじゃ話せねぇ。・・・ヴァンは計画の為に俺からレプリカを作った、それがルークだ」
「レプリカ・・・!」
「ええ~! このお坊ちゃん、人間じゃなかったのぉ~?」
ルークがビクリと身体を強張らせた。・・・しまった、ショックだったか。


「それでは貴方が本物のルークですのね! あの約束を覚えていらして?」
ルークの様子にも気付かず、押しのけるようにナタリア王女が俺に詰め寄ってきた。
「そんなもん覚えてるわけねぇだろ」
7年も一緒に育ったのに、掌を返したような王女の態度に俺は不快になった。
「俺だって記憶喪失だぜ? 俺がレプリカかもしれないじゃねぇか。記憶が無けりゃ偽者かよ」

何か言いたげな王女を無視して、ルークの手を引っ張って部屋に休みに行く。ルークはなぜかしょんぼりしている。
「・・・・・・アッシュ、俺がレプリカなら、俺はおまえの居場所を取っちまった事になるのか? ごめんな、アッシュ・・・」
「気にすんな。そうだとしてもお前の所為じゃねぇし、俺も何も覚えてねぇから取った取られた言ってもしょうがねぇ。レプリカなんて、兄弟みたいなもんだろ? お前、兄貴が欲しいって言ってたじゃねぇか。あれは嘘だったのかよ」

顔を上げたルークは、プルプルと顔を振った。
「う、嘘じゃない! アッシュが兄上なら俺は凄く嬉しい! でも良いのかよ、俺みたいなレプリカが弟で・・・」
「危なっかしくって、目が離せねぇ。しょうがないから面倒見てやるぜ」
ルークの背中をべしっと引っ叩く。 

・・・ああ、やっと笑ったな。

 

ユリアシティで俺達はここの責任者のテオドーロに会った。ティアの育ての祖父(?)だ。
タルタロスの負傷者の治療を要請する。
テオドーロはアクゼリュスの崩落が預言に詠まれていた事を俺達に話した。俺は知っていたが皆は驚いていた。そりゃそうだよな、知っててルークをアクゼリュスに行かせたって事なんだから。
キムラスカは多分預言を知っている。それも中途半端に。
繁栄の後に世界の滅亡が来ることは知らなかったのだろう。知っててやったならただの馬鹿だ。

驚愕はしたものの、こいつらはルークが利用されただけだとは思わないらしい。
相変わらずルークに辛く当たっている。自分達が保護の義務を怠ったくせに。
俺はもうこいつらと行動を共にするのが嫌になった。一緒に居る義理もねぇし。


後でこっそりルークとイオンを連れてテオドーロに面会すると、秘預言を最後までぶちまけた。
青褪め、言葉も出ないテオドーロから外へ行く方法を聞きだす。さっさとこんな所からは出て行ってやる。
部屋を出ようとすると、蒼い顔のイオンが走り寄ってきた。
「アッシュ・・・なぜそんな事を知っているのですか。僕も最後の預言は聞いたことがありませんでした」
「・・・・・・秘預言は、前のイオンが教えてくれた」

俺のその言葉にイオンは震える手で口を押さえた。
「貴方は・・・僕がレプリカだって、知っていたのですか?」
俺の隣でルークが驚いたように目を見開く。俺は静かにイオンに答えた。
「レプリカだって知ったのは最近だが、身代りだとは知っていた。シンクもそうだしな。俺は前のイオンと友人だったんだ。あいつは俺に、自分の兄弟たちを頼むと言っていた。・・・俺はレプリカだとかそう言う事はどうでも良いんだよ。ただ、お前が知ってなきゃいけないことだと思ったから話しただけだ」


立ち竦むイオンを残して俺達は部屋を出た。
ルークが心配そうに振り返ったが、こういう事は自分で決着つけるしかねぇんだ、そっとしといてやれよ。
廊下の向こうから導師守護役がぎゃんぎゃん喚きながらやって来た。
人間じゃないくせにとルークを罵るこいつの言葉を、イオンはどんな気持ちで聞いていたんだろう。
イオン・・・お前も早くシンクみたいに好き勝手に生きられるようになれば良いと思うぜ?

 

 

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Posted by tafuto - 2008.03.02,Sun

 

タルタロスから兵を引かせて、リグレット達には『教団最高位の導師の命の方が優先する、不満ならヴァンに指示を仰げ』と言って追い返したあと、俺は何名かの兵と共に和平の使節一行をセントビナーまで送った。
タルタロスはネクロマンサーの一言で起動停止してたから徒歩だ。(俺の所為じゃねぇ)
途中、ルーク殿の使用人らしい奴が合流した。探していたらしい。

驚いた事に、王族であるルーク殿が前衛に立とうとする。慌てて止める俺たちに不思議そうに訊いてきた。
「だって、剣を持っているなら子供でも戦うんだろ? 戦えないなら足手まといだって言われたぞ」

開いた口が塞がらない。何処の馬鹿野郎だ、そんなデタラメを教えたのは。
と言うか、速攻で首を落とされるレベルの不敬だぞ。使用人やネクロマンサーも何故止めない。
「ルーク様、王族と言うのは守られるべき存在です。イオン様と同等の身分なのです。あなたがここで傷ついたら和平どころでは有りません。即戦争になります」
「そうなのか・・・でも俺、他人に戦わせて守られてるのは嫌だよ」
俯くルーク殿に苦笑が漏れる。なんて真っ直ぐな優しさだ。ガキっぽいとも言えるが。
「その苦しみが、王族の背負うものなのではないでしょうか。部下に死んで来いと言うのは、自分が剣を取るより辛いものです」

驚いたように眼を見張ったルーク殿が、不意にニパッと笑った。
眩しいくらいの全開笑顔に、不覚にも見惚れてしまった。こんな風に笑う奴、俺の周りにはいなかった。
「なあ、あんたすげえな! 俺と同じ位の歳なのに何でも知ってるのな。俺の事はルークって呼んでくれよ! 敬語も無しだぜ!」
「・・・わかった、ルーク。俺はアッシュと呼んでくれ」
なんか使用人が向こうでギリギリ睨んでいるが、気にしない。皇帝の名代や導師の前でいきなり王族の名を呼び捨てるような使用人の分を弁えない奴に、王族の護衛など勤まらない。


ルークは何かと言うと俺に纏わり付いてきた。ちょっと鬱陶しいが、弟が出来たみたいでくすぐったい感じだ。俺たちは少しづつ自分の事を語り合った。

「なあ、それにしても俺達そっくりだよな。孤児って言っても、何かちょっと位親の事覚えてないのか?」
ルークの言葉に俺は苦笑する。
「俺は10歳くらいの時にダアトで拾われたんだが、記憶喪失でそれまでの事を何も覚えてなかったんだ」
「ええっ、アッシュも記憶喪失なの! 俺も10歳で誘拐されて記憶喪失になったんだ。歩く事も話すことも出来なくなってて、赤ん坊からやり直したんだぜ」
「俺は話すことは出来たな。日常生活くらいは出来た。読み書きは忘れてたがな」

ああ、こいつがガキっぽいのは赤ん坊からやり直した所為か。王族で、軟禁されて7年じゃ世間知らずなのも当たり前だ。世間に揉まれた俺だって随分苦労したからな。

しかしここまでそっくりで、しかも同じ頃に記憶喪失になるとは。
・・・やはり俺と何か繋がりが有るのかもしれないな。


野営の事とか戦いの事なんかを教えてやると、ルークは眼を輝かせて聞いている。
何を見ても珍しくってしょうがないと言った感じだ。嬉しそうに笑う生徒に、教える方も気合が入る。
とうとう部下に『師団長、弟さんが呼んでますよ~(笑)』とか言われちまった。

「本当に、アッシュが兄上なら良いのにな。・・・帰ったら父上と母上に聞いて見よう!」
「・・・おい、それは両親が揃ってる所で聞くなよ」
「何でだ?」
首を傾げるルークに溜息だ。どうやらそっちの方もガキらしい。
「王族はどうだか知らんが、普通一般人の家庭でそれを聞くと、浮気したしないで血の雨が降るからだ。
・・・それに俺は王族なんて面倒なものになりたくねぇ」 
「ええ~っ、ずりぃ! 俺もアッシュと色んなとこ行ってみたいな・・・」
寂しそうになったルークをぐしゃぐしゃ撫でてやる。不敬だが、まあ大目に見てもらおう。

 

セントビナーには、シンクが俺たちを待っていた。
どうやら導師のキムラスカ行きは承認されたらしい。リグレットとラルゴは一足先にダアトへと帰還したと伝えてきた。

「アッシュ、あんたもすぐダアトへ戻れってヴァンが言ってたよ」
シンクの言葉にルークの耳と尻尾がへにゃりと垂れた。・・・ように見えた。
「ええ~・・・アッシュ、もう行っちゃうのかよ。つまんねぇー、バチカルまで来いよ・・・」
子供みたいに俺の袖を引くルークを、ムッとしたシンクが俺の反対側から睨んだ。
「何あんた、アッシュは軍人なんだから帰還命令無視できるわけないだろ」
左右で睨み合いをされて、微妙に居心地が悪い。
「シンク、不敬だぞ。・・・それに導師の護衛が不足してるんだよ。どういうルートで帰れって指示は出てねぇだろ、俺はカイツール回りで帰還するから、国境あたりにフレスベルグを手配してくんねぇか?」
「・・・怒られたって知らないよ。分かった、アリエッタに伝えておいてあげるよ」
 
何か機嫌の悪いシンクが帰って行ったあと、ニコニコしているルークに話しかける。
「国境を越えればとりあえず安全だろう。そこまで送ってやるよ」
「やった! どうせならバチカルまで来ればいいのに・・・」
「さすがにそれは命令違反だからな」
俺は苦笑した。何だかんだ言って、俺もこいつと離れ難いみたいだ。手の掛かる弟みたいで眼が離せねぇ。今まで天涯孤独だったから、こいつといると何かこう、あったかくなるんだよ。


セントビナーに入ると導師守護役が先に来ていた。
導師を放っておいてマルクト皇帝の親書を優先するとは呆れた奴だ。
いやにベタベタしたしゃべり方のこいつを俺はあまり好きじゃない。アリエッタに変な優越感を持ってる態度が気に障る。
まあ守護役も合流したし、マルクト兵もいるから特務師団は帰還させても良いだろう。
セントビナーに一泊すると、俺たちはカイツールへと向かった。
(こっそり老マクガヴァンに名代の態度をチクってやった)

驚いた事にカーティスは、隠密行動とか言って護衛の兵士を伴わせなかった。
ちっ、特務師団を帰したのは早まったか。何考えてんだこの眼鏡! 
守護役も使用人も守るべき主を放置して前衛に突っ走っていくわ、ルークにも戦わせようとするわ、まったくろくな奴がいねぇ。
導師や公爵子息が怪我でもすれば、和平なんてたちまちおじゃんだぜ。


橋が落ちたフーブラス河を徒歩で渡り終えた時、アリエッタが現れた。
導師守護役が早速噛み付くが黙らせた。お前分かってんのか、アリエッタはお前より上官なんだぞ?
「アッシュ!」
「何だアリエッタ、早いな。国境まではもう少しあるぞ?」
なぜかもじもじしたアリエッタがルークのほうに向き直った。
「ルーク、さま。ママを助けてくれてありがとう、です。アリエッタお礼を言いたくて・・・」
「え? 俺は誰も助けた覚えなんかないぞ」
「アリエッタのママは、エンゲーブの北の森にいた、ライガクイーン、です」
「ああ! あのときの!」

・・・何でルークとライガクイーンが関わりがあるんだ?
俺の視線に気付いたルークが、ちょっと照れながら説明する。

「チーグルに森を燃やされたライガがエンゲーブの北の森に住み着いて、チーグルがエンゲーブからドロボウしてたんで、移動してもらったんだ。ティアは殺せって言ってたけど、可哀想じゃん。だからブタザルにもっといい場所に案内させたんだよ。」
「おなかが空いてもチーグルを食べないでいいように、ルークさま、ママに自分のお弁当、くれたです。卵は孵って、ママたちは無事、移動しました」

クイーンは確か卵を産んでいたはずだ。気が立っているライガクイーンと交渉したのか・・・
俺はぞっとすると共に心底ホッとした。食い殺されなくて、本当に良かった。
アリエッタの礼に照れ笑いをしているルークに近づき、その頭を撫でる。
「ルーク、俺からも礼を言う。クイーンは俺も友達なんだ。・・・けれどもうこんな危険なまねはすんなよ?」

ルークが嬉しそうに顔を輝かせて笑った時だ。
いきなり岩場から紫色のガスが噴出した。
俺はとっさにルークを抱き抱えると、ガスの無い方へと走った。同じくアリエッタが素早くイオンをライガの背に乗せてその場を離れるのが見えた。
「そこから早く離れろ! 有毒なガスだったらどうする!」
もたもたしている使用人や守護役、安全な所で考え込んでいるネクロマンサーに俺は怒鳴った。


安全な所まで離れると考え込んでいた眼鏡が話し出した。
「これは瘴気です。多量に取り込むと瘴気障害を引き起こして最悪死に至ります。・・・今回和平を結ぼうとした理由は、アクゼリュスで瘴気が発生しマルクト側の街道が使用不能になってしまったからなのです。・・・・・・こんなところにまで瘴気が出てくるとは、急がなくてはなりません」

だったらこんな手間も時間もかかる方法を取らないで、さっさとグランコクマからバチカルに鳩でも飛ばせば良いのに・・・とか思ったが、そこにはツッコまずに俺は気を引き締めた。

導師守護役が頼りなさ過ぎるのでアリエッタにカイツールまで同行してもらう。
足の遅い導師をアリエッタとともにライガに乗せると一行の歩みは格段に速まった。
守護役はブーブー言っていたが、無視だ。時々アリエッタとバトルしていて煩せぇ。
アリエッタが口を出したくなる気持ちは分かるので止めないが。
ルークもライガに乗せようとしたが、護衛の俺が乗らないと知ると『俺もアッシュと歩く!』と言い出した。言い出したら聞かないからな、このガキは。


ルークは俺の戦いを食い入るように見ている。
俺は普段試合とかでは右手を使う。基本を押さえた綺麗な剣だからだ。相手が強くなると左手に持ち替える。左は自己流がとうとう抜けなかった。それ故剣筋の読めない、スピードを生かして我武者羅に相手の急所を狙っていく汚ねぇ剣だ。ただ勝つだけならこっちのが強い。
相手がもっと強くなると、右に剣を、左に細剣を持つ。右で相手を誘い左で撹乱して止めを刺す。
まあ、俺に両手を使わせる奴なんかそうはいないがな。

「すっげぇアッシュ! 俺にも教えてくれよ!」
「俺のは自己流すぎて、勉強にならねぇよ。下手に真似すると剣の型が崩れて眼も当てられなくなるぞ?」
「ええ~、そうなのか。・・・んじゃ、時間のあるとき相手してくれよ!」
やる気満々のルークに苦笑する。野営の時に相手をしてやったら、けっこう筋が良い。
ヴァンと同じ、綺麗なアルバート流だった。
「変な癖をつけるより、そのままアルバート流の基本を伸ばせ。筋が良いから頑張れば伸びるぞ」
「わかった! 俺、頑張るよ」
誉められたルークが、ガキみたいな全開笑顔で笑った。俺も少し嬉しくなった。

 

とうとうカイツールに着いた。そこでひと悶着起きた。
旅券が無ぇだと? 何考えてんだ、この眼鏡。
俺のを貸してやろうにも、到底全員分なんて持っていない。困っていたら向こうからヴァンが表れた。

「師匠!」
嬉しそうにルークが駆け寄っていく。
「アッシュ、何故ここにいる。私はダアトに戻れと命じたはずだ」
敬礼した俺にヴァンの厳しい声がかけられる。
「師匠、アッシュは護衛が足りないから残ってくれたんだよ! 俺の我侭だから、アッシュを罰するのはやめてくれよ!」
「・・・わかった、ルーク。 アッシュ、直ちにダアトに帰還せよ。・・・ところでルークを攫った者はどうした?」
「襲撃犯はオラクルの団員と判明致しましたので、リグレットに言ってダアトに護送させてあります。・・・では、これより直ちに帰還します」

俺の報告にヴァンは難しい顔をして考え込んだ。・・・そういやあの女、ティア・グランツと言っていたな。もしかしてヴァンの身内だったのか? ま、俺にゃ関係ねぇ。
ルークが名残惜しそうに手を振ってくるのに、俺は手を振り返した。
「アッシュー! ここまでありがとうな! また会えると良いな!」
「ああ、またな」
俺とアリエッタは和平の一行をヴァンに任せ、ダアトに帰還した。


・・・・・・しかしヴァンはルークと俺の両方を知ってたのに、疑問に思わなかったのか?
俺にそっくりな奴が要るなんて、いっぺんも聞いたことが無かったんだが。
教えたくない理由でも有ったんだろうか・・・ 
俺はヴァンに不信感を抱きはじめていた。

 

 

Posted by tafuto - 2008.03.01,Sat

 

俺はダアトで拾われた、って事になってる。
なぜなら俺には10才(推定)以前の記憶が無いからだ。
ある日眼を覚ましたら、すっかり何にも覚えちゃいなかった。
銀髪の煩い男がしきりに話しかけてくるからちょっと話したら、そいつは慌ててどこかにすっ飛んで行った。
俺は言葉と、日常生活が何とか出来る位の事しか覚えてなかったんだ。

次にはヴァンと言う男を連れてきた。
どうやらヴァンはダアトの近郊で俺を拾ったらしい。意識不明だった俺を治療していたと言う。
「おまえはどうやら孤児らしい。記憶を失うほど辛い眼にあったのだろう。・・・どうだ、行く所が無いなら私の元で働かんか? きちんと教育も受けさせてやるぞ」
何も覚えて無くても、ここから放り出されたら野垂れ死ぬだろう事は俺にもわかる。
ヴァンの言葉に俺は速攻で頷いていた。


俺はアッシュと言う名を貰って、しばらくは下働きみたいな事をして過ごしていた。
ヴァンはローレライ教団のけっこう偉い奴で忙しいらしく、基本俺はほったらかしだ。
ヴァンに引き取られた俺はやっかまれて苛められたりしたが、そんなの構っちゃいられなかった。
世界の名も国の名も、文字さえも忘れていた俺には覚える事がたくさん有ったからだ。
こまごまと雑用を押し付けられながら、空いた時間に俺は銀髪の男(ディストと言った)の所で読み書きを習った。

ちなみに俺は左利きだ。ペンを持とうとしてとっさに左手が出たから、きっとそうだと思う。
しかしあまりに下手な字なんで、今まで俺は読み書きを習った事が無いんだろうと思っていた。
一年もすると読み書きもけっこう達者になって、難しい本も読めるようになってきた。まあ、相変わらず字は下手だが。
勉強させてもらえるうちに出来るだけ色々学んでおかないと、ガキが一人で生きてくのは大変だからな。
ここから追い出されても生きていけるように、働きながら俺は夢中で勉強した。

 

俺がダアトに来て1年半ほどたった頃、ヴァンが俺に剣の稽古をしろと言ってきた。
ヴァンは俺を神託の盾騎士団に入れたいらしい。騎士団員は(比較的)高給取りなんで、俺は一も二も無く頷いた。地位が上がれば食いっぱぐれる事は無いからな。

剣もやっぱり素人らしく、利き腕でも上手く扱えない。
大人に混ざってへたくそな素振りをする俺は、散々馬鹿にされるか生意気だと叩きのめされるかだったが『目指せ高給取り!』精神で頑張った。
ガキになんか誰もちゃんと教えてくれないので、変な癖のある自己流の剣になっちまったが、素早さを生かした先手必勝の俺はけっこう強くなっていった。

ある日試合中に利き腕を強かに打たれた。仕方なく右手に剣を持ち替え、相手に向かって行った。
・・・あれ? 身体がスムーズに動くな。
剣先がぶれない綺麗な動きで俺は相手から一本奪った。
試合のあと、左手が腫れ上がっていたので右手で字を書いてみた。何か凄く綺麗な字が書けた。
もしかして俺は右利きだったのか! と思ったが、とっさに出るのは左手だ。
・・・まあいいか、両方使えるにこした事は無いからな。
俺は気にしない事に決めた。正式な書類なんかは右で書けばいいから便利なもんだ。

 

ダアトに来て3年目、俺は神託の盾の試験に受かった。これで晴れて騎士団員だ。下っ端と言えどもちゃんと給料は出る。嬉しかった。

ある日教団内部の歩哨をしていたら、緑色の髪のガキに話しかけられた。
ピンクの髪の女のガキを連れている。どっかの貴族の子供が迷ったか?
そのガキは俺に、訳のわかんねぇことを訊いてきた。
「君がアッシュ? ねえ、預言についてどう思ってる?」
何で俺の名を知ってるんだこいつ、と思いながら俺は素直に答えた。
「預言? どうも思わねぇ。そんなもん詠まれた事無いからな。預言なんて詠まれたって、給料が上がるわけじゃねぇだろ? そんな事に金を使うなら、俺は旨いもんでも食いに行くぜ」
俺の言葉にそいつはきょとんとした後、腹を抱えて爆笑した。
ヒーヒー笑い転げてるガキに、心配そうに女のガキが話しかける。
「イオンさま・・・大丈夫、ですか」

イオンだってぇ! やばい、俺は教団の導師に今何て言っちまったんだ。クビになる!
慌てて跪く俺に、笑いすぎて涙を浮かべた導師は言った。
「ああ、気にしないで良いよ。立って立って! ・・・気に入ったよアッシュ。そうだよね、普通に暮らしてたら預言なんて要らないよね」
導師は笑いながら俺にひらひら手を振るとお供を連れて行っちまったが、俺は気が気じゃなかった。
しかしその一件後、なぜか俺は頻繁に導師の護衛に付く事になった。

歳も近い俺たちはすぐに仲良くなった。イオンとアリエッタしかいないときはタメ口だ。
時にはアリエッタと一緒に勉強させてくれたり、本を貸してくれる。
俺は下働き生活で培ったイジメ返し・嫌がらせ倍返しなんかを教えたり、イオンの慇懃無礼10倍返しなんかを教わったりして楽しかった。


俺は剣の稽古も毎日熱心にしていたから、やがてそこらの雑兵より強くなった。
ついに騎士団の剣の大会で上位に食い込むようになると、ヴァンは色々話しかけて来る様になった。
どうもヴァンは預言が嫌いらしく、預言からの脱却を図りたいらしい。預言を覆す為に俺に手を貸せと言ってくる。
俺は預言なんて心底どうでも良かったから、適当に頷いておいた。
このごろ体調を崩しがちなイオンの側に早く行きたかったんだ。

アリエッタを使いに出し、二人きりになった部屋でやつれたイオンは俺に囁いた。
「アッシュ・・・僕には死の預言が詠まれているんだ。でも僕はこの預言を覆したい。だからヴァンに協力したんだよ。アッシュ、・・・もうすぐ僕が死んでも、アリエッタには知らせないで。兄弟たちが代わりにイオンになるから」
俺はびっくりしてイオンの手を握り締めた。痩せて力の無い手に悲しくなる。
「代わりは代わりであってお前じゃないだろ! いくら似てても別人だ。・・・そんなのアリエッタもお前も、身代りにされる奴もかわいそうだ」
目を見開いたイオンは、しばらくして声を絞り出した。
「・・・・・・そうだね。・・・別人か・・・ アッシュはいつも真っ直ぐに僕の考えを変えてくれる。僕の兄弟たちをよろしく頼むよ。・・・そして君は預言なんかに負けないで」

アリエッタが戻ってきたので話はそこで終わりになった。俺は部屋を出て、廊下の警備に付いた。
かすかにアリエッタの泣き声が聞こえてきた。イオンから全てを聞いたのだろう。

 

順調に昇進していた俺は、大抜擢されて特務師団を任されることになった。若すぎる師団長に喧嘩を売ってくる奴もいたが、叩きのめして従わせた。今ではもう俺に勝てる奴は教団で数人だ。
用兵術や戦術、戦略の勉強も頑張っていたから特務師団はそれなりに成果を上げ続け、俺は六神将として『鮮血』の二つ名が付いた。(給料も上がった)
六神将にはアリエッタも入っていた。アリエッタが導師守護役を外されるなんて、やっぱりイオンは死んでしまったのか。俺は黙って泣きそうなアリエッタを撫でてやった。


参謀にシンクと言う名の仮面で顔を隠した男が入った。髪の色とか体型がイオンそっくりだ、イオンの兄弟かも知れねぇ。俺は人気の無い所でそいつに訊いてみた。
「よぉ、シンクって言ったか。おまえ前のイオンの兄弟か?」
「ちょ・・・何でそれを知ってんのさ!」
そいつは慌てたように掴みかかってくる。ああ、秘密だったっけ?
「いや・・・イオンに兄弟たちを頼むって言われたからさ。今導師してるのもイオンの兄弟だろ?」
「イオンが・・・僕たちを頼むって・・・ そう言ったの? 何で」
呆然としているそいつに困惑して言葉を返した。
「何でって・・・兄弟だからだろ? 身代りしてたって別人じゃねぇか。心配だったんだろ?」
きょとんとしていたシンクはいきなり笑い出した。似てねぇと思ったけど、こう言う所はイオンとそっくりかもしれない。

シンクはひねくれた野郎だが、こいつと口喧嘩するのは嫌いじゃない。毒舌を叩き合ってストレスを発散したら、タッグを組んでイヤミな狸野郎(モース)に悪戯を仕掛けたりすると楽しい。
まあ、悪友って奴だ。
あんまりやりすぎると、リグレットに譜銃をぶっ放されたりラルゴに諌められたりしたけどな。

同僚の六神将は皆一癖も二癖もある奴ら揃いだが、面白い奴らだ。
リグレットは思い込みが激しくてちょっとヒステリー気味だがけっこう面倒見が良い。どうやらヴァンに惚れてるらしくて、たまに(命がけで)からかうとスリルが味わえる。
ラルゴには用兵を習ったり剣の稽古に付き合ってもらったりしているが、どっしりしていて父親ってこんな感じかとも思う。融通が利かないのが難点だが。
ディストには昔から勉強を見てもらっていたが、とにかく煩い奴だ。いつ見ても嬉しそうに高笑いしながらわけのわかんねぇもん作ってやがる。まあ頭は良い奴だが、変人だ。
直属の上司であるヴァンは俺を拾ってくれた恩人だが、いまいち何考えてるのかわからねぇ。
たまに預言からの脱却について俺達に熱く語ったりするが、脱却したかったらグダグダ言って無ぇでさっさとすれば良いじゃねぇか、と思うんだが。
イヤミな狸野郎のモースよりは遥かに付き合いやすいがな。

まあそんな感じで、俺のダアトでの生活はけっこう充実していたわけだ。


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