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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.10,Wed

 

シリウスに回復術を掛けながら、ナタリアが問いかける。
「いったい何故こんな事に・・・ ここは何処ですの?」
「ここはクリフォトよ。兄さんはアクゼリュスを崩落させようとしていたの」

アニスに支えられながら、イオンが弱々しく言葉を発する。
「僕がダアト式封咒を解かなければ・・・ ヴァン謡将が、ルークの超振動を使ってパッセージリングを崩壊させたのです」
「ええ~っ! じゃあこれ、あのお坊ちゃんの仕業ですかー! サイテー!」
その言葉に蹲って震えていたルークは声を上げた。

「俺のせいじゃない! ヴァン師匠は瘴気を消せるって言ってたんだ! 俺は悪くねぇ!!」
その言葉に、一行は軽蔑を含んだ目でルークを睨む。
「記憶を失ってからのあなたはまるで別人ですわ」
「師匠師匠って、あなたはまるで兄さんの人形ね。少しはいいところもあると思っていたのに、
・・・私が馬鹿だったわ」
「こうなる前に、相談していただきたかったですね」
「ルーク、あまり幻滅させないでくれ」
口々に責め立てられ、ルークはガタガタと震えだし身を縮めた。
 

傷が癒え、動けるようになったシリウスは、ゆっくりと身体を起こした。
ふらつく足を叱咤し立ち上がると一行をかき分けるようにルークに近寄っていった。
竦む身体を宥めるように頭を撫でる。

「あら、シリウスもう大丈夫ですの?」
「そんな奴、放っときなよ!」
かけられる声に振り返ると、冷たい目で一同を見渡す。
「崩壊の瞬間を見てもいないくせに、よくルーク様を責められますね」
「え・・・?」                                             
「アニス・タトリン、あなたは自分の職務をどう考えているのです。導師イオンがタアト式封咒を解かなければ、パッセージリングに近づくことも出来なかったのですよ?
あなたは何故導師イオンを守りもせず一人にしたのです。
自分の職務怠慢を棚に上げ、何故ルーク様ばかりに罪を擦り付けられるのですか。
あなたの行動は不審すぎる。導師を攫われ、アクゼリュスに到着するのは予定よりだいぶ遅れました。住民はそれだけ長く苦しんだのです。それにあんな瘴気の充満する場所に御身体の弱い導師を連れて行って、万一のことがあったらどうするつもりだったのです」
自分にも責任があるとは微塵も考えていなかったアニスは、シリウスの指摘に口篭った。
「え・・・だって」

ティアに視線を移し、問いかける。
「グランツ響長、あなたはヴァンが大地を落とそうとしていると知りながら、何故言わなかったのです。大地の下に瘴気の充満するクリフォトがあることをあなたは知っていたのでしょう?
アクゼリュスの地盤が緩んで瘴気が吹き出していることくらいすぐに考えついたはずです。
脆くなった大地に、好機とばかりにヴァンがなにかするつもりだとは思わなかったのですか?
私はあなたを信用できない。ファブレ邸を襲撃しながらそれを許されて当然と捉えるあなたには、強力な後ろ盾があるのだと思っていました。ヴァンと繋がっている可能性も否定できない。
そんな人に相談なぞ出来るわけが無いでしょう」

シリウスの言葉に激高したティアは怒鳴り返した。
「何言ってるの? 馬鹿なこと言わないでちょうだい!」

ティアを庇うようにガイが前に進み出る。
「俺にも相談できなかったのか。ルーク!」
シリウスはガイに冷たい目を向ける。

「・・・ガイ。君はヴァンと繋がっている可能性が最も高いと思っている。俺は元白光騎士団だよ?
君が時々殺気の篭った目でルーク様や公爵様を見ているのには気が付いていた。
ヴァン謡将と、使用人らしからぬ態度で会話していたのも知っている。
・・・君やヴァンと居る時だけ、ルーク様は本当に楽しそうになさるから、言い出せなかった。
・・・それは俺の責任だ。君はヴァンと共謀してルーク様がヴァンに盲信するよう仕向けていたのか? 逃げ出せないように、外の世界で生きられないように、何も教えずに居たのではないか?
何も教えないのが教育係? 一方的に責めるのが親友? 守りもしないのが守護役?
・・・答えろよ、ガイ・セシル」

狼狽するガイを押しのけるようにナタリアが口を挟む。
「わたくしは幼馴染でしょう! シリウス、なぜあなたはルークばかり庇うのです!」

「ナタリア姫、いえもう姫では無いかも知れませんが。あなたは出奔について軽く考えすぎておられる。王命に背いての出奔とは、反逆と同じです。あなたはバチカル、いえキムラスカには二度と戻らない、との覚悟がおありでしたか?」

「そんな・・・お父様はきっと分かって下さいますわ!」

「あなたが居なくなったことは、すぐに気付かれたはずです。しかし連れ戻そうとする者は、誰も現れなかった。私にとって、今のあなたはボランティアの一般市民と変わりありません。そのような者に相談することなど出来ません。それに、相談したらきっとあなたはガイたちに話してしまったでしょう?
もう一つ・・・ヴァンがルーク様に亡命を持ちかけたのを知りながら、それを肯定して脅迫の種にするような方にはとても話せません」

「そ・・・そんな事・・・」
青褪めたナタリアは、口を覆って立ち竦んだ。


「ならばなぜ私には相談してくれなかったのですか?」
少し離れた場所から冷たくルークを眺めていたジェイドが、シリウスに近づいてきた。
シリウスはすっとルークを庇うように位置を変える。

「カーティス大佐。あなたは確かに優秀な軍人でしょう。しかし外交官としては、私の評価は最低です。何処の世界に和平を結ぶべき国の王位継承者を軽んじ、嘲笑する名代が居るのです。
あなたの言葉はマルクト皇帝の言葉なのですよ。そのまま戦争になってもおかしくはない、そうは思いませんか? それに、あなたなら少し前まで敵国であった国の軍人に自国の機密を相談する事が出来るのですか? 人格的に信用することも出来ないのに。
一つ質問ですが、バチカルにて街道の使用許可は出ていたのに、何故マルクトは先に住民の避難をさせていないのでしょう。こんな少人数の、それも『親善大使』の一行に一万の住人を救えとマルクトは言っているのでしょうか。それともマルクト皇帝はアクゼリュスの住民を救う気など初めから無かったのでしょうか」
 

これ以上馬鹿な発言に付き合っていられませんとジェイドは踵を返した。
それにつられる様に去っていく同行者たち。
ルークに話しかけようとしたイオンは、アニスに言葉を遮られ引き摺って行かれた。

座り込み、俺は悪くないと繰り返すルークの肩を抱きしめながらシリウスは言った。
「ルーク様、私はあなたにまったく責任が無いとは言いません。しかしあなただけが悪いのではない。私にもあの人達にも、アクゼリュスが崩落して大勢の犠牲を出してしまった責任があるのです」
「し・・・死んじゃった。たくさん! ・・・俺の力がこれをやったのか?」
「ええ、嘆いても死者は戻りません。これからどうするか、いっしょに考えましょう。
・・・怖かったですね、ルーク様」
「・・・怖かった。すごく怖かったんだ・・・! ごめんなさい、ごめんなさい!!」
しがみ付き、堰を切ったように泣き出したルークをシリウスは強く抱きしめた。
自分の無力さを後悔と共に噛み締めながら、優しく背を擦った。
 


近くにあったタルタロスに乗り込み、ティアの提案でユリアシティに向かった。
タルタロスには、生き残った100人余りの住人が座り込んでいた。
気を失ったルークを抱き上げて歩くシリウスに、何人かが声を掛ける。

「あんたか! 助かって良かった。大変な事になったな」
「歩ける人間はここに来ていたが、とても全員は連れ出せなかった。ダメそうな奴は置いてきちまった。・・・瘴気障害があんなに酷くては、とても助からなかっただろうと思うが・・・」
「ここにいる者たちだけでも助かったのは、あんたらのおかげだ。礼を言うよ」
「大使の坊ちゃん、大丈夫か? 箱入りにゃキツかったろ」
シリウスは苦笑し、深く頭を下げた。
「力及ばず、申し訳ありません。今回の事の詳細はピオニー陛下に報告させていただきます。
後ほど、改めてお詫びに窺いますので」
「何であんたが謝るんだよ。マルクトは助けに来てくれなかったのに、キムラスカのあんた達は来てくれだろ?それにアクゼリュスが危ないかもって教えてくれたじゃねぇか」
 

 
ユリアシティに到着したとティアが呼びに来た。
力の入らないルークを支えるようにゆっくりとシリウスは歩き出した。
 

「考えなしに超振動を使いやがって! この劣化レプリカ野郎!」

もうすぐ町に入るというところで、深紅の髪を翻した男が姿を現した。
「レプリカ? 俺が・・・嘘だ!」
「何で俺とお前が同じ顔してると思ってるんだ。7年前ヴァンに誘拐された俺から作られた、お前は俺の劣化レプリカなんだよ!」
「嘘だ、嘘だ嘘だ!!」

「なにこのお坊ちゃん、人間じゃなかったの?」
「あなたは偽者だったのですね!  こちらが本物のルークですの?」
衝撃を受けるルークに追い討ちを掛けるような言葉に、シリウスは眉を顰めた。

「レプリカだろうが無かろうが、国王に親善大使に任命されたのはこちらのルーク様です。
・・・ようやく繋がった。ネクロマンサージェイド、レプリカ。あなたはフォミクリー理論のジェイド・バルフォアですね。鮮血のアッシュとルーク様を見て、コーラル城のデータを読んだあなたは気付いたはずです。何故何も仰らなかったのですか。ヴァンが何かを企んでいると解ったでしょうに」
表情の読めない顔で佇むジェイドから、シリウスは鮮血のアッシュに視線を移した。
 

「それにアッシュ殿、ルーク様は考えなしに超振動を使ったわけではない。
カーティス大佐、私はあなたに訊きましたね。超振動で瘴気は消えるのかと。あなたは是と答えたが方法は教えてくれませんでした。ヴァンは怪し過ぎたが、私は彼の行動を完全には否定し切れなかった。そこでルーク様に、方法を詳しく聞いたうえで判断するように勧めたのです。
パッセージリングを見て、ルーク様は住民を避難させてから超振動を使おうとヴァンに言いました。しかしヴァンはルーク様に暗示をかけ、強制的に力を解き放ったのです。私はその直前にヴァンに切られ、お守りすることが出来なかった。
それでもルーク様ばかりを責めますか? 鮮血のアッシュ。・・・私の判断の甘さと、ルーク様を守り通すことが出来なかったことがこれを招いたのです。
ルーク様、申し訳ありませんでした。あなたを守ると誓ったのに、苦しめてしまった・・・」

「ち・・・違う! シリウスは誰より守ってくれた! いろんなこと教えてくれた! だけど!だけど俺、ヴァン師匠が大好きだったんだ! なんか変だと思ったけど、信じたかったんだ!! だから俺が悪いんだ! ・・・ごめんなさい」

泣きだしながら崩れ落ちたルークを抱きかかえてシリウスはシティへと向かった。
「ルーク様を休ませます。アッシュ殿、あなたも。少し話を聞かせてください」
「・・・いいだろう」
 


朦朧としながらしゃくりあげるルークを空き室のベッドに横たえると、シリウスは優しくその髪を撫で付けた。
その背後から、不機嫌そうで、それでいて困惑したようなアッシュが話しかける。
「おい。何が訊きたいんだ」
シリウスは振り返るとじっとアッシュを見つめた。

「まず、あなたは7年前に誘拐されたルーク・フォン・ファブレ様ですか? そしてこちらのルーク様がレプリカというのは本当ですか」
「ああ、そうだ。7年前、ヴァンに誘拐されてレプリカを作られた。作ったばかりのそいつを見せられたからな。人形のようで気味が悪かった。 ・・・今の俺はアッシュだ。そう呼べ」
「何故、キムラスカに戻らなかったのです」
「・・・っ! そいつが居たから! そいつが俺から何もかも奪い取ったんだ!」

その言葉にビクッと身体を震わせるルークの肩を優しく擦りながらシリウスは続ける。
「作られたばかりのレプリカは、赤子のようなものだと本に書いてありました。赤子が自ら何を奪えるのです。あなたから全てを奪ったのはヴァンではありませんか」
「そうかもしれないが!! 俺はいままでそいつを憎むことで生きてきたんだ!」
額を掻き毟る様に俯き、声を荒げるアッシュに、シリウスは静かに問いかけた。
「誘拐されたあと、何があったのですか」

混乱しているアッシュは俯いたまま素直にその問いに答えた。
「・・・真っ暗な部屋に何日も閉じ込められた。超振動の実験が何回も続き、レプリカ情報を抜かれたせいか体中が痛くて立つ事も出来なかった。甘い水を飲むとぼんやりして何日たったかも解らなくなった。俺とレプリカの違いなぞ、誰も気付かなかった。ヴァンだけが俺のところに来てくれた。俺の事を必要だと言ってくれた・・・」

シリウスは一瞬の間、痛ましそうに眉をひそめるとゆっくりと話しかけた。
「アッシュ・・・ 一人で今まで頑張ってきたのですか。辛かったでしょう」
「煩い! 同情でもしているつもりか!」
「いいえ、同情ではありません。 ・・・あなたに辛いことを言いますが、聞いてくれますか?」
「・・・?」

怪訝そうに顔を上げるアッシュにシリウスは続けた。
「あなたがされて来たことは、洗脳の手口に良く似ています。絶え間ない苦痛と、薬物投与、暗闇と孤独に置き絶望させ、たった一人に縋らざるを得ないようにした。ヴァンは自分に都合のいいようにあなたをマインドコントロールしてきたのでしょう」

「マ・・・インド・コントロール・・・? 俺を・・・? ・・・ヴァン」
呆然と目を見開き指先を震わせるアッシュにそっと触れるとシリウスは言った。
「アッシュ・・・ 7年も続いたマインドコントロールを、自分ひとりで僅かでも覆すことが出来た事に私は感嘆します。まだ混乱しているでしょう? 少しお休みなさい。あなたも限界なはずだ。
さあ、ルーク様も寝なさい。起きたら何が出来るかいっしょに考えましょうね」
「うん・・・ありがと、シリウス。それからごめん、アッシュ」

毛布の間から泣きそうな顔で二人の話を聞いていたルークは、そっと頷くと気を失うように眠り込んでしまった。
ルークの謝罪に反射的に怒鳴りそうになったアッシュを指一本で黙らせると、シリウスはじっと目を見ながら問いかけた。

「まだ彼が人形に見えますか? 私には捨てられて途方にくれている7歳の子供に見えます」
そして、音を立てないようにそっと部屋を出て行った。
残されたアッシュは、青ざめ泣きはらしたルークの顔をしばらくの間見つめていた。
そして壁際にずるずると崩れるように座り込むと両手で顔を覆った。

「俺・・・は・・・」
 


キッチンの有り合わせの物で手早くスープを作っていたシリウスは、気まずげにこっちを見ている者達に気が付いた。
「・・・ルークはどうした?」
「休んでいますよ。あれだけの力を使ったのだから」
「会えるかい?」
「今のあなた方には会わせません。あなた達はルーク様を傷つけるだけでしょうから。それより市長の所へ行ったのでしょう? 話を聞かせてください。それにガイ、君はまだ俺の質問に答えていないよ」
うろたえたように黙るガイを後目に、ジェイドからテオドーロの話を聞き、シリウスはスープを持って部屋に戻っていった。
 

「私です、入りますよ」
静かに声をかけ部屋に入るとアッシュが疲れたように顔を向けた。
「少しは休めましたか」
「ああ、少しな。 ・・・・・・俺はまだ、こいつの事を認められない。今は人形だとは思わない。けれど理性ではお前の言ったとおりだと思うのに、感情が追いつかないんだ」
「それはしょうがありません。7年を覆すのは容易なことではないでしょうから。良くヴァンから離反出来ましたね」
「ヴァンの計画が預言を覆す物とは知っていたが、罪の無い人々まで死なせるモンとは思っていなかった。そんな馬鹿な事、やらせる訳にはいかねぇ。 ・・・それから敬語やめろ。俺はおまえの主人じゃねぇ」

眉間に皺を寄せるアッシュに苦笑する。
「分かったよ。さっき市長の話したことを聞いてきた。アッシュ、君はアクゼリュスの秘預言を知っていたのかい?」
「知っていた。ヴァンに聞いた。聖なる焔の光がそこで死ぬことも。俺は、死ぬ為だけに生まれて来ただなんて認めたくは無かった。 ・・・軽蔑するか? かわりに人形が死ねば俺は死ななくてすむと思っていたのさ。
ガキの頃から異端だと、第七音素の塊の化け物だと言われ続けて実験されてきた。生き残ったってそれは変わりないんだってのにな」
アッシュは自嘲するように顔を伏せた。

「生きる為に戦う者を軽蔑したりはしない。生き物として当然のことだ。なぁアッシュ、こう考えたらどうかな? 聖なる焔の光は一人では支えきれないほどの使命を受けて生まれた、だから支えあえるように二人になった、ってさ」
アッシュは目を見開きまじまじとシリウスを見つめた。

「ぷっ・・・間抜け面」
「うるせぇ! ・・・くっくくっははは! 随分と能天気な考え方もあったもんだな!」
「耳赤いぞ。だけどね、君の孤独を本当の意味で理解出来るのはこの子だけじゃないかと思うんだよ。完全同位体であるこの子は君の半身みたいなものじゃないか。この子もずっと孤独に苦しんできたよ」
「はっ! この屑が半身か。まあ、身代わり人形よりは愉快な考え方だがな」
「まあゆっくり考えなよ。スープを持ってきたから、冷めない内にどうぞ」

鍋を引き寄せていると、毛布がもぞもぞと動き、かすかな声が聞こえてきた。
「ん・・・シリウス?」
「アッシュ、君が大声出すからルーク様が起きたじゃないか」
「てめえの所為だろが!」
憮然とするアッシュを放ってルークに話しかける。
「ルーク様、お起こししてしまって申し訳ありません。召し上がれるようでしたらスープをいかがですか?」

ぼうっとしていたルークはふと何かに気付いたように身体を起こした。ふらつくそれをシリウスが支える。
「シリウス、アッシュには普通にしゃべってんのに何で俺にはずっと敬語なんだよ。俺、貴族じゃなかったんだろ」
「私はファブレでは無くあなたに雇われたのです。主に礼を持って接するのは当然のことです」
「ずるい! 俺にもタメ口きいてくれよ! なんか線引かれてるみたいで、やなんだよ」
「・・・じゃ、アッシュ以外誰も居ない所だけでね」
「うー・・・分かった」

呆れたように眺めていたアッシュは思わず口を挟んだ。
「何くだんねぇ事言ってやがるんだ、この屑。そんな事言ってる場合か」
その言葉にびくりと身体を竦ませるとルークは俯いた。
「ご・・・ごめん。俺、アッシュのこと何にも知らないで・・・『ルーク』を全部返すから・・・!」
「今さら返されたってこっちだって困るんだよ!ったく、俺のレプリカの癖に何でこんなアホ野郎なんだよ、屑!」
「アッシュ、やつあたりも程々に。君が元自分の名前を呼び辛いのは分かるけど、屑ってのは人としてどうかと思うよ」
「うっ・・・」
「あ、アッシュ。じゃあアッシュが俺に名前付けてくれよ! アッシュが呼ぶ名前。そんなら良いだろ?」
「な・・・何言ってやがるんだ!」
「はいはい、二人とも興奮しないで。ルーク、まだ顔色が悪い。スープ飲んでもう少し休んだ方がいい」
「う、うん、わかった」
「わ、悪かった」
我に返ったようにおとなしくなる二人にくすりと微笑むとシリウスはスープを差し出した。
 

食事を終えてうとうとするルークをベッドに寝かせると、シリウスはアッシュに向き直った。
「これからの事を決めなければならない。彼らの所に行って来るからルークを見ていてくれないか?」
「寝かせておけば良いだろう? 暫く起きないはずだ」
「ここはユリアシティ、監視者の町だ。預言で死ぬはずだったルークが生きていたと知られれば、何が起きるか分からない。腕の立つ者にそばに居て欲しい。他の者を、俺は信用できない」
「・・・なら、俺があいつらの所に行ってやる。俺は何とかして外殻大地に戻って、ヴァンの目的を探ろうと思っている」
「まあ、妥当だな。じゃあ任せるから、解った事を教えてくれ」
「ああ」
「それとな、さっきの名前をつけてやる件、俺は良いと思うよ。アクゼリュスで死ぬと詠まれた『ルーク』は二人とも生き残った。いいかげんもう自由になっても良いだろう? それに半身なんだから、ちゃんと名前で呼んでやれよ。呼び難いならかっこいい名前付けてやればいい」
「なっ、あれこれ蒸し返すな!」
「しー。ルークが起きるだろ」


ばつが悪そうに、しかし静かに部屋から出たアッシュは扉が閉まる寸前小さく呟いた。

「・・・考えておいてやる」


 

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自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

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