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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.12.03,Mon

                                                          ※目指せ!ファミリードラマ!(笑)



しばらくの間は平穏な日々が続いた。
インゴベルトも、国民に高い評価を受けているアッシュを、表立って処罰したりは出来なかったのだ。
『ルーク』はすくすくと育っていった。さすがに乳母はついていたが、ルーは乳母任せにはせず分からない所を聞きながら出来る限り自分の手でルークを育てていった。
(アッシュが時々拗ねて放してくれないので、夜は乳母任せだが。)


アッシュもルーも、自分の子供時代に与えられなかった愛情を、子供には精一杯与えようと思っていた。決して寂しい思いなどさせたくない、と。
ルークはアッシュの子供時代より、表情豊かに育って行った。
ちょっとツンデレだけれど、素直で真っ直ぐな子供だ。
ぎゅっと抱きしめると真っ赤になって照れるが、嬉しそうに笑顔を見せる。


「やっぱ、アッシュにそっくりなとこ有るよね。 ・・・アッシュもこうなるはずだったのかな?」
テラスでお茶をしながら、ルーが少し寂しそうに呟いた。中庭ではルークが楽しそうに走り回っている。
傍らのアッシュが穏やかな表情で息子を見守りながらそれに答えた。
「さあな、もうすんだ事だ。いまさら仮定の話をしてもしょうがねぇだろう? ・・・俺はお前に出会えて幸せだ。だからあれで良かったんだ。」
「アッシュ・・・ 俺も幸せだよ。 ・・・大好き。」
二人は微笑み合うと触れるだけの口付けを交わし、目ざとくそれを見つけたルークは真っ赤になって目を隠していた。

 

ルークは7歳になっていた。
数年前から家庭教師がつくようになり、フォニック文字はもちろん簡単な古代イスパニア文字まで読み書き出来るようになっている。

「やっぱり、ちっちゃくてもアッシュだなぁ!難しい本、大好きなんだもの。」
「お前も一緒に勉強したらどうだ?」
からかうようにルーに笑いかけたアッシュは、不意に表情を真剣なものに改めた。

「・・・そろそろ剣の稽古を始めさせようと思うんだが、この間モースに連れられて城にヴァンが来たぞ。少し話したんだが・・・ヴァンは憎しみに凝り固まっているようだった。ガルディオス伯は奴を救う事が出来なかったようだな・・・」
「・・・そっか・・・師匠にも幸せになって欲しかったんだけどな・・・」
「なるべく話すようにしてみよう。・・・しかし今のあいつにルークは任せたくない。剣の師事は断ろうと思う。」
「うん・・・そうだね。」
「剣の稽古は俺が付ける事にしよう。」
「じゃあ俺も!」
「お前な、ドレスで剣を振り回す気か!・・・お前は譜術でも教えてやれ。得意になっただろう?」
「そうする!」

父母直々に教えられてルークが喜んだのは、言うまでもない。
剣と譜術の稽古の時間を何より楽しみにして、毎日の稽古を欠かさなくなった。
そして、自分と同じく見た目の割に威力がしょぼいルークの譜術に、アッシュは苦笑していた。

 

ルークが8歳になった頃、インゴベルトより命が下った。ルークの超振動をベルケンドで調査するようにと言うものだった。
以前、トラウマになるほどの苦痛を味わったアッシュは王に抵抗した。しかしアッシュが言葉を尽くせば尽くすほどインゴベルトは意固地になるばかりであった。
まるでアッシュとルークを苦しめたいだけと言わんばかりの態度に、アッシュは心から怒りを覚えた。ぐっと唇を噛んで謁見の間を退席する。

答えを出すまで謹慎を命じられたアッシュに、ルークが思い詰めた様に声をかけた。
「父上・・・国の為になるのなら、俺はベルケンドに行ってきます。・・・父上が俺の為に罰を受けるのは、嫌だ。」
アッシュは我が子をぎゅっと抱きしめた。
「ルーク、すまない・・・あれはとても辛いんだ。お前にあんな苦痛を味あわせたくは無い・・・」
「耐えて見せます!父上。」


アッシュとルーは、ルークがベルケンドに行く時にはどちらかが必ず同行するようにした。
実験の後、ふらふらになって苦痛に涙ぐむルークを抱きしめて労わってやる。
ローレライの同位体だ、人間じゃないと言われてショックを受けたルークの様子に激怒したアッシュが、科学者をきつく叱責した事もある。


帰宅後、憔悴したように眠り込むルークの髪を梳きながら、ルーは涙を落とした。
「アッシュはこんな酷い事に、ずっと一人で耐えてきたの・・・?」
「泣くな、ルー。もう終わった事だ。・・・ルークには、一人で耐えさせたりなんかしなければ良い。精一杯抱きしめてやれ、それが一番の薬だ・・・」
「うん、絶対一人になんかさせないよ!」

必ず直ぐ側で見守り、抱きしめて労わってくれる両親の存在に、小さなルークは絶望することなく実験に耐え続けた。
ベルケンドではファブレ公爵夫妻に配慮して、あまり酷い実験は行われなくなった。

 

剣の師事を断った後でも、ヴァンは時折アッシュにご機嫌伺いに来ていた。
ルークとも2,3度顔を合わせたが、優しげな笑顔の裏でその目は冷たく値踏みするようにルークを見ている事にアッシュは気付いていた。
預言について話を向けてみても、のらりくらりとかわし、けしてこちらを信用しようとしない。
そんなヴァンの態度に、アッシュは彼がもうレプリカ計画を心に決めてしまったのだと感じた。
そろそろ『あの』時期だ。今まで以上にルークの身辺警護を強化する。

・・・しかし、ベルケンドからの移動の一瞬の隙を付かれ、ルークは誘拐されてしまったのだ。

 

「・・・あの髭野郎! もう許さねぇ! ギタギタに叩きのめしてやる。」
バシッと音を立てて拳が掌に打ち付けられた。そのままボキボキと指を鳴らす。
壮年のファブレ公爵のならず者の様な口調に、通りかかった騎士が眼を剥いた。そんな事も気にならないくらいアッシュは怒っていた。
「アッシュ! 俺も行く!」
ルーも目を煌めかせて怒っている。動きやすい服に着替え、戦闘準備万端だ。
「この時期ならコーラル城にいるだろう。王に兵を動かす許可を取った。・・・乗り込むぞ!」
「行こう! アッシュ。」


激怒したファブレ夫妻に異を唱えられるものなど居ない。アッシュとルーは白光騎士団を引き連れてコーラル城に乗り込んだ。
逃げ出す者の無いよう兵士に城の周辺を張り込ませてから、アッシュとルーは先陣を切って城に突っ込んでいった。
百戦錬磨の騎士達が、誰も追いつけない。城に巣食っている魔物なんか瞬殺する勢いだ。
薙ぎ払い、譜術をぶっ放し、壁を吹き飛ばして進んで行った。

クリムゾン様、あんな戦い方戦場でも見たこと無いぜ!・・・いやそれよりシュザンヌ様って、昔身体弱かったなんて、嘘だろ・・・!荒い息をつきながら(追いつけない)騎士達は思った。

「ルーク! どこにいるの?返事して!」
「ヴァン! てめぇどこに居やがる!」

 

ヴァンはフォミクリー装置の所に居た。ファブレ夫妻の乱入に絶句して青褪めている。
こんな所を見られては、もう言い逃れ出来はしない。
夫妻を中心に、(やっと追いついてきた)騎士達が周りを取り囲んだ。
「居やがったか、髭野郎。オトシマエ、付けてもらおうか。」
「ルークを返してもらうよ!」

ヴァンは装置の上に居る『ルーク』をちらっと見た。何とか誤魔化して「コレ」を返せば本物のルークは手元に残る。
「いや、私も今ルーク様を発見したのです。直ぐにお知らせしようと・・・」
アッシュは凶悪な笑顔を見せた。
「そんな言い逃れが通じると思ってんのか。ヴァンデスデルカ・屑髭・フェンデ。」
「な、なぜそれを・・・!!」
「問答無用!・・・サンダーブレード!うおりゃ!崩襲脚!翔破裂光閃!絞牙鳴衝斬!!」
「今度と言う今度はもう許さない!タービュランス!ディバインセイバー!エクスプロード!インディグネイション!!」


鬼夫婦の鬼畜コンボを食らったヴァンは、数分でボロクズと化した。
あっけに取られて見ていた騎士団は、ハッと気を取り直してヴァンとその一味を捕縛した。

 

「ルーク!」
ルーが装置に駆け寄る。そこには朱金の髪の子供がすやすやと眠っていた。
アッシュとルーは小声で囁き交わす。
(ルー・・・この子はレプリカだ。)
(うん・・・『俺』だね? やっぱり作られてしまったんだ・・・)
(俺はそれでいいんだと思う。ルークは世界でただ一人のローレライの同位体である事を孤独に思っている。 ・・・俺も同じだった。ルークもこの子も幸せにしてやればいい。)
(うん・・・アッシュ、ありがとう。)
アッシュはそっとその子を抱き上げた。そしてそのまま近くの小部屋に足を進めた。


「ルーク、居るか?迎えに来たぞ。」
アッシュの後ろから覗き込むルーの目に、暗い部屋の隅で蹲った我が子の姿が映った。
「ルーク!」
ぼんやりと顔を上げる子供の手足には拘束された痕が残り、注射や火傷の後が無数にあった。
ベルケンドの実験より数段酷いその様子にルーは息を呑む。
急いで駆け寄り抱き起こすと、荒れた唇がかすかに母上・・・ 父上・・・と動いた。
「もう大丈夫だ、ルーク、良く耐えたな。」
「さあ、早く帰ろう。」
弱々しい動きで服の裾を握りしめてくるルークを、ルーは強く抱きしめた。

 

ヴァンはキムラスカに帰還した後、城の罪人部屋に幽閉された。現場を取り押さえられた為、言い逃れは出来なかったのだ。若すぎる主席総長には敵も多く、庇おうとするものは少数だった。
ダアトはヴァンを切り捨てた。
ユリアの子孫であるという事で死罪は免れたが、幽閉は一生続くだろう。

 

 

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