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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.10,Wed

 


グランコクマはぴりぴりした雰囲気に包まれていた。
マントで姿を隠したルークを連れたシリウスは、宮殿へと歩いていった。
門衛の兵士に取次ぎを申し出、門前で待っていると、銀髪の青年将校がこちらに歩いてくる。

「お初にお目にかかります。マルクト軍、アスラン・フリングス少将です。陛下がお目にかかりますので、どうぞいらして下さい」
シリウスはアスランに略式礼を取ると、話しかけた。
「私は護衛騎士、シリウス・ブレイズと申します。ピオニー陛下に拝謁させていただく前に、今回の事件で私が知りえた事を報告書として纏めさせていただきましたので、先にそちらをご覧になってください。導師イオンと六神将アッシュの調書も入っています」
「これはありがとうございます。参考にさせていただきますので、しばらく別室でお待ち下さい」
 


小一時間ほど経つと、声がかかった。
「陛下がお会いになられます」
マントを取り身奇麗にしたルークとシリウスは、ピオニーの前へと進み出た。
ルークは立礼を、シリウスは跪礼をとる。

「俺・・・私はインゴベルト陛下より親善大使を拝命したルーク・フォン・ファブレです」
「私はルーク様個人の護衛で、シリウス・ブレイズと申します」
その様子を見ていたピオニーは、二人に向かって声をかけた。

「顔を上げろ。俺がピオニー・ウパラ・マルクト九世だ。報告書は読ませてもらった。信じられない事ばかりだが、・・・ジェイドは生きているのか?」
「はい。ユリアシティでお別れしてからの事は分かりませんが。アッシュによると、ワイヨン鏡窟までの同行を申し出たようです」
「ちっ、あの馬鹿。報告もしないで親善大使を放置とは、何やってんだ」
ピオニーは王座から身を崩して、頭を抱える。


「発言をお許しいただけるでしょうか」
跪いたままのシリウスが、伺いを立てる。
「なんだ、言ってみろ」
「あの報告書はあくまでも私の見聞きした物であり、カーティス大佐側からの報告書は何れ彼が出されるでしょう。カーティス大佐からの調書はマルクト側でお願いいたします。ルーク様とイオン導師、六神将アッシュの調書の信憑性に関しては、本人のサインをご確認下さい」
「疑っているわけじゃない」

「一つ、確認させていただきたいのですが。マルクトはキムラスカを軽んじ、嘲笑し、利用してやろうと考えているのですか?」
「な・・・何を言う、無礼な!」
周囲の貴族から、声が飛ぶ。その声を無視してシリウスは言葉を続けた。

「マルクト陛下の名代であるカーティス大佐は、終始その様な態度でしたので。マルクト皇帝はキムラスカに対し何か含む所がおありでしょうか」
「その件に関しては、返す言葉も無い。マルクトは真実、和平を望んでいたのだ」
「もう一つ。バチカルで和平が成立したとき、キムラスカ側の街道の使用許可は出ていたのに、何故アクゼリュスを放置したのですか。キムラスカからは少人数の親善大使一行しか出ていない事は、お知りにならなかったのでしょうか」
「使用許可証が送られてこなかったのと、被害を低く見積もりすぎた俺の失態だ」

「最後に・・・何故カーティス大佐を和平の使者に選んだのです」
微笑するシリウスの顔は、寒気を感じるほど怒りに満ちていた。

「・・・・・・すまん。親善大使殿にも迷惑をかけた」
ピオニーの顔には、後悔と苦渋の色が滲んでいた。
軽く頭を振ると、気持ちを変えるようにルークに声をかける。
「それで、ルーク殿はこちらに何をしに参られたのだ」


弾かれたように顔を上げたルークは、必死に言葉を紡いだ。
「俺は、謝りたくて来ました。俺の力のせいで、沢山の人が死んでしまいました。ごめんなさい!
俺に償いをさせてください!」

身体が震え目は潤みながらも、真っ直ぐに目を見て話すルークに、ピオニーは感心し興味を持った。
「謝罪を受けよう。 ・・・とは言え、報告書を読む限り、お前が悪いとは言い切れないがなぁ。
それに名代が放置した以上、罪に問う事は出来ないな」
「でも、何かさせてください! 俺に出来ることなら、何でもします」
「じゃあ、考えとくから、お前ら今日は泊まってけ」
少し疲れた様にピオニーは微笑んだ。問題は山積みなのだ。
 


「いいのかなぁ・・・」
「まあ、城下の宿より安全でしょう」
宮殿に客室を用意してもらい、寛いだあとピオニーと夕食をとって、なぜか皇帝陛下の自室でお茶をご馳走になっている。

ブウサギにもみくちゃにされたルークをさり気なく助け出したシリウスは、ピオニーの質問攻めにあっていた。
「ほう、元白光騎士団副団長が今は傭兵か。何ならうちに仕官しないか?」
「ルーク様が望まれる限り私はルーク様のものですから」
「絶対ダメ! シリウスは俺とアッシュのだから!」
むきになってシリウスの腕をがっしりと抱え込むルークに、笑いが漏れる。
「ははは、冗談だ。けど、お前ら全員まとめて面倒見てやってもいいんだがなぁ。アッシュって奴もなかなか面白そうだ。 ルーク、こいつを大事にしろよ。白光騎士団のシリウスって言ったらマルクトでも知られてるくらいの譜術使いだぞ」

きょとんとしたルークは、首を傾げて苦笑するシリウスを見た。
「へぇ、知らなかった。いつも双剣でばさばさ薙ぎ倒すから、剣のが得意だと思ってた」
「シリウスは見事な譜眼じゃないか。しかしブレイズって言ったら、むかし凄腕の傭兵がいたなぁ。夫婦で100人からの大部隊を率いていてな。惜しい事にキムラスカ側だったんだが。マルクト正規軍がこてんぱんにやられて、敵ながらすげえと思ったもんだ」
「ああ、それは私の両親の事です」

微笑みながら言葉を挟むシリウスに、ピオニーは驚愕する。
「ええっ、おまえあの『氷華ファリィヤ』と『双牙フェンリル』の息子か!」
「はい。白光騎士団に入団したのは5年前ですので、それ以前は私も傭兵をしていました」
「そうなのか。おまえも二つ名とか持ってんのか?」
「はは・・・二つ名は自分で名乗るものではありません」
 

眠くなって、少し幼い口調になったルークがピオニーに話しかけた。
「ピオニー陛下って、話しやすい」
「そうか。皇帝らしくないってよく言われるなぁ」
「陛下、俺のこと、正式じゃない所ではルーシェルかルゥって呼んでくれませんか?」
「お前はルークだろう?」
「ルーシェルって名前はアッシュが俺にくれたんだよ。俺とアッシュは、二人で『聖なる焔の光(ルーク)』なんだ」
へにゃりと笑うルークの嬉しそうな笑顔に、ピオニーは微笑んで頷いた。
「そうか、よろしくな、ルゥ」
 
 
 
翌日、ピオニーと昼食をとっているときにちょうどアッシュから通信があった。
ヴァンが外殻大地を崩落させ、巨大なレプリカを作ろうとしているというものだった。
アッシュの話をルークがそのまま一同に伝えていたとき、地震が起きた。

(南ルグニカ地方を支えていたセフィロトツリーが消滅したからな 今まで他の地方のセフィロトでかろうじて浮いていたがそろそろ限界の筈だ。次はセントビナーが落ちるだろう)
「セントビナーが崩落する?!」
(早くそっちに合流したいが、時間がかかる。定期船ももう出てねぇしな)
「アッシュ、ガイに聞いた事がある。シェリダンに空を飛ぶ音機関があるって」
(シェリダンなら近い、分かった。どっちみち崩落が始まったら必要になるだろう。お前はそっちを先に何とかしてろ)
 

通信が切れた後、ルークは懸命にピオニーに訴えた。
「ピオニー陛下。セントビナーが危険です! 俺がセフィロトツリーを消してしまったから、ルグニカ地方が崩落する恐れがあるって」
「む・・・しかし、もういつ開戦してもおかしくない。あの辺りで軍を動かせば、キムラスカを刺激して戦闘になりかねん」
「なら俺に行かせてください! お願いします」
「わかった。・・・ルーク・フォン・ファブレ。セントビナーの住民を救え。これをもって償いとする」
「ありがとうございます!」
「いや、礼を言うのはこちらの方だ。気をつけろよ。・・・俺の民を頼む」
 

 

フリングス少将以下数名の兵士を連れセントビナーに急行すると、皇帝の命令書をマクガヴァン元帥に手渡す。
アスランとルークの説明を驚きとともに聞いていたマクガヴァンは、すぐさま市民の避難を開始した。
アクゼリュスでの住民の誘導を思いだしながら必死でシリウスを手伝っていたルークは、足元から不吉な振動が響いてきた事に気付いた。
重々しく震える大地に、転びそうになった子供を咄嗟に支える。

「早く逃げるんだ! 出来るだけここから離れろ!」
子供を父親に渡し、大声で叫ぶ。
「まだ残っている住民がいるのか?」
広場を見渡すと、足の遅い老人や子供を連れた家族が、老マクガヴァンのもとに集まり、抱き合いながら戦いている。

駆け寄ろうとした瞬間、ルークの足元に亀裂が走った。轟音を立て、大地が裂けてゆく。
「うわああ!」
亀裂に落ち込みそうになったルークの手を、裂け目を飛び越えてきたシリウスが掴み、すんでの所を引き上げる。

「ルーク様! シリウス殿!」
裂け目の向こうからアスランが必死に呼びかけるが、亀裂は飛び移れないほど広がり、セントビナーの大地は少しずつ沈んで行った。
 


「シリウス! どうしよう、まだ人達が残っている!」
すがり付いて叫ぶルークの肩を、シリウスは強く叩いた。
「しっかりしなさい、ルゥ! 君が動揺してどうする。落ち着いて今すべきことを考えるんだ」
「ご・・・ごめん」
ハッとしたルークは、深呼吸を一つするとシリウスに向きなおった。
「この沈み方からいくと、急激に崩落する事は無さそうだ。大地が崩れなければ、上手くすればクリフォトに辿り着ける。ルゥ、君は残った人達をソイルの木の周りに集めて」
「わかった!」
 

老マクガヴァンを含め取り残された十数名の人々を、ルークは落ち着かせながらソイルの木の周囲に誘導した。
木を調べていたシリウスが、人々に説明を始める。
「ソイルの根が張り巡らされているここが一番安全でしょう。大地の崩壊を最小限にするため、これから譜術で結界を張ります。持ちこたえれば、きっと助けが来ます」
「そうだよ! きっとアッシュが来てくれるから、みんな、頑張ろう!」
不安に強張っていた人々の顔に、希望の光が射しはじめていた。
 

「ソイルよ、力を貸してくれ・・・!」
大きく深呼吸すると、シリウスは譜歌を歌いだした。
深いテノールから少女のようなカウンターテナーまで広い声域を誇る声が、素晴しい声量で譜歌を紡いでゆく。
ソイルの木を中心にフォニムが集まり、淡い光がゆっくりと木の周りを舞い散りはじめた。
足元に出現した譜陣は町を覆うほどに広がって、崩れ始めていた大地を支えた。
 
 

メジオラ高原でギンジを助けたアッシュは、アルビオールでセントビナーに向かっていた。
早くしないとセントビナーが崩落するというアッシュの必死の説得に、イエモンが頷いてくれたのだ。
ルークに回線を開くと、すでに崩落が始まっているという。
イライラと前方を睨みつけるアッシュに、パイロットのノエルは声をかけた。
「アッシュさん、もうすぐセントビナーに着きます」
「ああ、降下しつつある大地に人々が取り残されている。そこに降りれるか?」
「降ろして見せます!」
巨大な譜陣に守られたセントビナーは、振動もせずアルビオールを受け止めた。
 


「アッシュ!」
「ルゥ、無事か!」
飛び出してきたアッシュに、泣きそうになりながらルークが走り寄る。
「シリウスが結界を張っていてくれたんだけど、もう限界だ! 一晩中歌い続けてるんだ」

「早く人々をアルビオールに乗せろ!」
ほっとした表情の人々が、アルビオールに列を成して乗り込んでゆく。
アッシュはシリウスに近づくと、声をかけた。
「シリウス、住民の避難は完了した。もう終わらせていいんだ」

掠れた譜歌が続けられる。アッシュの声が聞こえないように、ただ一心不乱に歌を紡いでいる。
そっと肩に手を掛けると、ふとその目がアッシュを映し譜歌が止んだ。
譜陣が薄れ、消えていく。
アッシュに笑いかけ、言葉を発しようとしたシリウスが、不意に喉を押さえ血を吐いた。ふらつき、膝を付く。

駆け寄ってきたルークとともにその身体を支えるとアッシュはアルビオールに乗り込んだ。
気を失い運び込まれたシリウスを、人々が心配そうに見守るなか、マクガヴァンが口を開いた。
「住民を代表して礼を言う。ありがとう。お主等のおかげで、全ての住民を助けることが出来た。
わしらはこの感謝を忘れんじゃろう。 ・・・しかしその御仁は、たいしたもんじゃ。一体何者ですかの? 聞いた事のない譜歌じゃったが」
介抱していたルークが首をかしげる。
「ティアの歌ってたユリアの譜歌に似てたけど、ちょっと違うみたいな気がした」
 


アルビオールは、地表に戻ると、アスランを初めとした避難してきた人々の近くに着陸した。
降りて来た住民が、知り合いのもとに駆け寄り、喜び合う。
「ルーク様、アッシュ殿。ありがとうございます。シリウス殿は大丈夫なのですか?」
アスランが三人を労い、心配そうに問いかける。
「セントビナーの民は、連れてきた兵士に護衛させてエンゲーブに避難させます。私たちはこのままグランコクマに戻り、シリウス殿を医者に見せましょう」
 

アルビオールでグランコクマに戻り、ノエルにアルビオールを任せてシリウスを王宮に運び込む。
回復術をかけるとシリウスはうっすらと目を開いた。
「シリウス! 良かった、気が付いた」
泣きそうなルークと怒ったようなアッシュを見ると、済まなそうにシリウスはかすれた声を出した。
「ごめん、心配かけたね。少し休めば大丈夫だから、そんな顔しないで」
「そんな声して、何が大丈夫だ。しばらく寝てろ!報告は俺たちがしてきてやる」
「ん・・・頼む」
ひらりと手を振ると、シリウスは眠り込んだ。
 


「ルーク! 無事だったか。そっちのがアッシュか。二人とも良くやってくれた。礼を言う」
王座から立ち上がり、二人に向かって頭を下げるピオニーに、ルークはあわてて手を振りながら言った。
「そんな! 俺は何もしていません。シリウスとアッシュが頑張ってくれたから!」
「何を言ってる。お前が一生懸命民を誘導した事も、励まし続けてくれた事も聞いているぞ。シリウスは喉を痛めたそうだな。あとで見舞いに行く。・・・セントビナーに関しては、何とかならないかユリアシティに聞きたいんだが、あの空飛ぶ音機関を貸してくれないか?」

ピオニーの言葉を黙って聞いていたアッシュはそこで口を挟んだ。
「シェリダンはキムラスカ領だ。戦争が始まりそうな中、アルビオールをマルクトに貸すわけには行かない」
「アッシュ!」
「だが、俺たちが行くのであればかまわないだろう」

悲痛な表情から一転して笑顔になったルークがアッシュに抱きついた。
満面の笑みのルークと仏頂面で耳を赤くしているアッシュを微笑ましそうに眺めていたピオニーは、真顔に戻ると二人に話しかけた。

「お前達がセントビナーに言っている間に、ジェイドたちが帰ってきた。驚いた事にナタリア王女を連れて、だ。報告もせんであの馬鹿は、しばらく謹慎だ! 色々言ってたが、とりあえず王女にはキムラスカに帰ってもらった。開戦の理由にするわけにはいかないからな。
・・・たとえ、戦争が預言に詠まれていたとしても」

 

 

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自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

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