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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2007.10.10,Wed

 


アッシュは果てしなく不快だった。眉間の皺がどんどん深くなってゆく。
マルクトから同行した兵士が、気の毒そうにアッシュを見遣る。彼らも自分自身の不快感を顔に出さないようにするのが精一杯だった。マルクト王宮で真摯に民を助けたいと願うルークに、誰もが感嘆していたからだ。
 

「ルークは何処に隠れたんだ? シリウスも大口たたいたわりに、たいした事無いな」
「あんな人間もどき、どうだっていいじゃん! アクゼリュスを落とした張本人の癖に」
「そうね。彼の行動が戦争の引き金になったのですもの。罰も受けずに隠れているのは卑怯だわ」
「そうですわ! あの偽者のせいで、ルークは帰って来られなかったのですもの。ルークが居て下さったら、きっとこんな事にはならなかったのですわ」


際限なくルークを罵る言葉に、訂正する気力もなくアッシュは頭痛を堪えた。
幼い時の美しい思い出ががらがらと崩れていく。
摩り替えられたルークに気が付かなかった自分を棚に上げ、ルークを自分たちのことを騙していた偽者とののしるナタリアに不快感を抱き、幻滅していった。
(お前も偽者だといわれたばかりなのに、ルゥの事は一つも思いやれないのか。おまえらは、今まであいつが何をしてきたのか知りもせず、何故そんな事がいえるんだ)
ベルケンドが見える頃には疲労困憊し、吐き気を堪えるまでになっていた。


 
ベルケンドにはジェイドが来ていた。導師イオンから創世記時代の歴史書が届けられていたのだ。
再会を喜び合う一行を冷たい目で見ていたアッシュは、静かにその場を離れようとした。
「アーッシュ、何処に行くのです?」
ジェイドが胡散臭い笑みで話しかけてくる。
「何処だっていいだろ。てめぇらの居ないとこだ」

引き止める同行者ともみ合っていると、オラクル兵に研究所の中に連行された。
そこにはヴァンが居た。
(おいルゥ、同調しろ。ヴァンが企みを話すから、お前はそれをシリウスたちに伝えろ)
(ヴァン師匠が・・・! わ、わかった)
ヴァンの企てとは、外殻大地を全て崩落させ、大地と人々を全てレプリカに置き換える事によって預言から脱却するというものだった。
 
「死ぬのはユリアの亡霊のような預言とそれを支えるローレライだけだ。あれが預言を読む力の源となりこの星を狂わせているのだローレライを消滅させねばこの星は預言に縛られ続けるだろう」
狂信的なヴァンの言葉は、今ではアッシュに憤りを感じされるものでしかない。

「外殻大地が崩落して消滅したら大勢の人が死ぬ そしたら預言どころの話じゃねぇ」
「レプリカがある。預言通りにしか生きられぬ人類などただの人。レプリカで代用すればいい。
・・・アッシュ、私の計画にはお前が必要だ。私と共に新しい世界の秩序を作ろう。所詮レプリカは紛い物、あれは預言どおりに歴史が進んでいると思わせるための捨てゴマに過ぎないからな」
(師匠・・・俺のこと・・・)
ルークがショックを受けたように小さく呟いた。
「てめえ・・・断る! もうお前には付いて行けねぇ」
「ここは引いてやろう。お前の機嫌を取るのも悪くないからな」
高笑いするとヴァンはリグレット達を引き連れて出て行った。

(・・・おい。平気か? 今何処に居る)
(もうすぐベルケンドに着くよ・・・ ありがとうアッシュ、心配してくれて)
(そんなんじゃねぇよ。・・・早く来い。ベルケンドの外れにファブレの別荘がある。宿にはあいつらが居るからな)
(シリウスを医者に見てもらいたいんだけど)
(ヴァンが町から去るまで待て。それまで別荘で休んでろ)
 


アッシュと同行者が宿に戻ると、ジェイドは歴史書の解読のために部屋に閉じこもった。
宿からそっと抜け出し別荘に向かう途中、アッシュはガイとヴァンの会話を聞いてしまった。
「なるほどな・・・ それがあのガイの態度のわけか。まあどうでもいいが」
ガイはルゥに絶対近寄らせねぇ!と固く心に誓いながら、アッシュは道を急いだ。
 

ルークたちに合流すると、アッシュは傍目にわかるほど脱力した。ぐったりとルークに寄りかかる。
ルークは嬉しそうにアッシュの好きにさせている。
「彼はどうかしたんですか?」
アスランがアッシュと同行していたマルクト兵たちにそっと問いかけると、兵たちは口々に(小声で)いままでの不愉快だった出来事を話した。
アスランとシリウスの眉がひそめられる。
「フッ・・・フフフ。 我がマルクトの恩人をそこまで侮辱するとは。喧嘩を売っているならマルクトが買いましょうかね」
にっこりと黒いアスランの笑みに、一同、腰が引けたのだった。

 
ヴァンが去っていった事を確認したアッシュは、ルークとシリウスを研究所のシュウ医師のところに連れて行った。三人とも健康診断を受ける。
シリウスは軽い瘴気障害にかかっていたが、自分の言ったとおりフォニムを整え、改善傾向にあるという事だった。

「ルークさんは問題ありません。アッシュさんは少しフォニムに乱れがありますね」
「俺が? なぜ被験者である俺のフォニムが乱れるんだ」
「スピノザは完全同位体の研究をしていましたが、私にはそこまではわかりません。とりあえず二人とも、この薬を飲んでおいてください」
薬を受け取ると、三人は研究所を後にした。
 

別荘に戻ると、くっついて離れない赤毛達をまとめてベッドに放り込んだ。
しばらく(主にアッシュが)抵抗していたが、疲れていたのかすぐに寝息が聞こえてくる。

寄り添うように眠る二人の、歳相応に幼い寝顔にシリウスは微笑み、そっとドアを閉めた。

「お疲れ様・・・・・・おやすみ」
 

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