忍者ブログ
同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.30,Tue
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by tafuto - 2008.01.26,Sat

 


世界がかりそめの平和を取り戻してひと月あまり。
ジョゼットは段々と膨れ上がってくる焦燥に捕らわれていた。
(もうすぐあの人が命を落とした日が来る・・・)
あの時とは違ってきている。しかしリグレットたちはまだ生きているのだ。
レプリカ兵を作っていないとは言い切れない。

執務を手伝いながら、心ここに有らずと言ったように溜息をつくジョゼットに、心配したルークが声をかける。
「ジョゼット、どうしたの?」
「いえ・・・申し訳ありません。」
ハッとするジョゼットに、ルークは言葉を重ねる。
「ジョゼット・・・心配な事があるなら言って欲しい。ジョゼットは休みも無くずっと俺に付いていてくれた。自分の時間をとるのも必要な事だよ。俺にも貴女を心配させて?」
真っ直ぐに自分を見るルークの眼に、いつの間にか育っていた力強さを感じる。
そして心を決めた。
「ルーク様、心配な事があるのです。杞憂に終われば良いのですが、確かめておきたい。私に、一週間時間をくれませんか?」
「分かった・・・気をつけて、ジョゼット。」

 

マルクトへの旅券を取ったジョゼットは、ケセドニアへと向かった。
今回、レプリカ兵の襲撃があるとは限らない。いまだ何の兆候も、証拠も無い。しかし、忠告だけはしておきたかった。
ケセドニアで騎獣を借り、ローテルロー橋方面へと急がせる。
あの時と同じなら、橋を越えてしばらく行った所で、演習が行われているはずだった。


演習中、急に訊ねてきたジョゼットに、アスランは驚いた。
面会する事を伝令に伝え、司令室で待つ。
入ってきたジョゼットが、一瞬微笑み、そして哀しそうに眼を伏せた。
(まただ・・・何故この人は私をこんな哀しい眼で見るのだろう)
気を取られていたアスランは、ジョゼットの言葉に反応を返すのが遅れた。

「襲撃?」
「はい、十分注意して欲しいのです。・・・・・・襲撃に関する何の証拠も、兆候すらありません。しかし、リグレットたちが生きている以上、何か仕掛けてくる可能性があるのです。」
リグレットの真剣な眼に、アスランは頷いた。
「ありがとうございます、セシル殿。それを伝えにわざわざ?」
俯いたジョゼットに、アスランは問いかけた。・・・ずっと、聞いてみたかった。
「・・・貴女は、いつも哀しげな眼で私を見る。その理由を教えてくれませんか?」
アスランの眼を見たジョゼットが、眼を伏せた。

「・・・・・・あなたに良く似た人を、知っていました。」
過去形で語られた言葉に、その人がもういない事を知る。
そしてその口調で、とても大切な人だったのであろう事も。
ズキンと胸が痛んだ。
(何てことだ、これは嫉妬か?もういない人間に。)
会釈をして去っていくジョゼットを見送りながら、アスランは戸惑っていた。


早く戻らねばならない。ジョゼットが騎獣を走らせていると、今後にしたばかりの駐屯地の方から、爆弾の破裂する音が聞こえてきた。
立ち竦んだジョゼットは、騎獣の首を返した。全速力で走らせる。
(どうか、間に合って!)


虚ろな目をしたレプリカ兵たちが、次々と自爆していく。
その異常な行動に、マルクト兵は浮き足立っていた。
「奴らから離れろ!自爆するぞ!走れ!」
叫びながらジョゼットは真っ直ぐ司令部へと突っ込んでいった。
「アスラン、逃げて!」
ジョゼットは、アスランに襲い掛かっていたレプリカ兵を騎獣で蹴り倒すと、飛び降りてアスランの手を引いた。そのまま二人で縺れるように荷馬車の陰に飛び込んだ。
直後に、蹴り倒されたレプリカ兵の身体が自爆して吹き飛ぶ。
荷馬車の破片から身を庇いながら、アスランは驚愕した。
「ジョゼット、どうしてここに!・・・すみません、せっかくの忠告を生かせなかった。」
「いいえ、譜業爆弾の可能性を言わなかった私のミスです。・・・間に合ってよかった。」
破片で傷を負ったジョゼットを庇いながら、アスランは呟いた。
「・・・まだ安全とは言いがたい。このままでは全滅だ・・・」

その時、レプリカ兵の集団の中央に、光が膨れ上がった。
その光に触れたレプリカが、次々と乖離して行く。金色の光が辺りに舞い散った。
瞠目したアスランが、気を取り直して指示を叫んだ。
「遠距離攻撃で狙え! 近づくと自爆に巻き込まれるぞ!」
数を減らしたレプリカ兵達は、次々と倒されていった。


ジョゼットに肩を貸し歩き出したアスランの元へ、男が近づいてきた。赤い髪が揺れる。
「アッシュ殿・・・力を貸して下さったのですか。ありがとうございます。」
頭を下げるアスランに、アッシュは無表情に答えた。
「力を貸したわけじゃない。・・・ジョゼット・セシル、まだ死んでもらってはルークが困る。
・・・・・・それと、礼だ。 今度は幸せになれ。」
それだけ言うと、アッシュは去っていった。

 

力が抜けてへたり込んだジョゼットを、跪いたアスランは抱きしめた。
「私は、貴女の亡くされた方にはなれません。しかし、貴女を抱きしめることは出来る。
・・・・・・私では代わりになれませんか?」
眼を見張ったジョゼットの双眸から涙が零れ落ちる。
ジョゼットは何も答えられず、アスランに縋ってただ泣き続けた。
その胸は温かかった。

 


アスランとジョゼットの報告が両国にもたらされ、各国の緊張は高まった。
リグレット達の捜索は続けられていたが、その行方は知れなかった。しかし、巨大なフォミクリー施設が数ヶ所発見されたのだった。
それと同時に、あちらこちらでレプリカが発見されるようになり、その数は日毎に増えて行った。
行方不明になった者や、急に体調を崩し亡くなった者と瓜二つのレプリカが虚ろな顔で彷徨い、人々は恐怖と嫌悪でパニックに陥った。
キムラスカとマルクトは、レプリカを施設に収容し保護しようとしたが、人々の嫌悪感は消せず各地で民衆によるレプリカ狩りが始まっていた。


そして、タタル渓谷近くの海上にエルドラントがその姿を現した。
同時に、ディバイングラインで押し込められたはずの瘴気が世界各地から噴出してきた。
民衆の混乱と絶望は頂点に達していた。

 

 

PR
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
はくしゅ
気に入って下さいましたら、 ぜひぽちっとな
プロフィール
HN:
tafuto
性別:
女性
自己紹介:
作品は全部書き上げてからUPするので、連載が終わると次の更新まで間が空きます。

当家のPCとセキュリティ
Windows Vista  IE8
Norton Internet Security 2009
GENOウィルス対策↓
Adobe Reader 9.4.4
Adobe Flash Player WIN 10,3,181,14
メールフォーム
カウンター
アクセス解析
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]