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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.30,Tue
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Posted by tafuto - 2008.01.26,Sat

 

ルークはジョゼットとユリアシティへと向かっていた。
ピオニーと連絡を取り、ユリアシティで会合を開く事になったのだ。
マルクトからはピオニーとジェイド、アスラン。導師不在のダアトからはトリトハイムが来ていた。
ロストテクノロジーの保存庫であるユリアシティでも、この事態に有効な手段は見つからず、一同は頭を抱えていた。

そこに赤い髪の男が現れた。
「よぉ、アッシュ。お前ならこの事態について何か知ってるんじゃないか?」
ホッとしたようなピオニーがアッシュに声をかけた。
「ああ。・・・お前らは何もしなくていい。すぐにこの事態は収まる、それまで民の暴動を抑えていろ。俺が何とかしてやる。しかし、ただ一つ条件がある。」
一同の顔を見渡したアッシュは言葉を続けた。

「預言を捨てろ。これが条件だ。」


テオドーロとトリトハイムが、戸惑ったように顔を見合わせた。
「しかし・・・導師が行方不明ななか、私の判断では・・・」
トリトハイムの言葉に、アッシュは呆れたように鼻を鳴らした。
「イオンなら死んだぜ。ユリアの子孫であるティアが秘預言を読ませて殺した。ティアは俺が殺したがな。・・・・・・導師も居ない、ユリアの血も絶えた。預言なんてとっくに覆されている。まだ預言なんてくだらないものに振り回されるつもりか?」

アッシュの言葉にテオドーロが青褪め、トリトハイムがへたり込んだ。
導師が預言によって次の導師を選ぶ前に、ユリアの子孫が導師を殺めてしまった。
もう導師を指名出来る者は存在しない。
ローレライ教団は、ダアトは事実上崩壊したのだ。


「マルクトは、その条件を呑もう。」
「キムラスカも従います。」
ピオニーとルークがアッシュの前に進み出た。真剣な眼差しがアッシュを射る。
項垂れたテオドーロが呟くように言った。
「分かり・・・ました。ユリアシティも従いましょう。」
「私の意見など、聞くまでもないでしょう・・・・・・ローレライ教団など、もう、存在しないのだから・・・」
両手で顔を覆ったトリトハイムが、搾り出すように声を出した。


「その言葉、違えるなよ。」

「待って!」
身をひるがえし、去って行こうとしたアッシュに声が掛けられた。
ルークが追い縋ってくる。
「貴方だけ危険な目に合わせるのは嫌だ。俺も一緒に戦う!」
マントを掴んで見上げてくるルークと、アッシュの視線が交わった。

『ここは俺が食い止める。早く行け!』
『俺も一緒に戦う!』

アッシュの脳裏に、いつかの記憶が蘇る。
(あの時のあいつも、こんな泣きそうな顔をしていた・・・)


そっと指を外し、ルークの頭をくしゃりと撫でる。
「・・・今、お前がすべき事は何だ? 王として、しなくてはならないことは何だ。」
ルークはその手の優しい感触に驚き、そして唇を噛んだ。
今の自分がしなければいけないことは、民を導く事だ。
「約束して・・・必ず帰って来ると・・・」
ルークの言葉に、アッシュは微かに微笑む。

「お前に俺の約束は、もう必要ないさ。」

優しい手が離れていった。

 




エルドラントに、靴音が響く。
リグレットは、何処からとも無く入り込んできた男に憎悪の視線を向けた。
この男の所為で、計画が次々と覆された。
「何故邪魔をする! 預言に支配された愚かな人間など、滅びてしまえばいいのだ。 我らは新しい世界を作る!」
激高するリグレットに、男は嘲笑を向けた。

「全てをレプリカに変えて、世界が存続すると思ってんのか? レプリカは大地に還らない。消えるだけだ。土地は涸れ続け、死は次の命に繋がることは無い。・・・・・・お前がやろうとしてるのは、預言どおりに世界を滅ぼすことだぜ。せっかく預言は消失したって言うのになぁ。」
「煩い、黙れ!」
「お前は弟を殺した男に惚れたのを、預言を覆すだなんだと自分を誤魔化しているだけの、ただの愚かな女だよ。」
「黙れえぇ!!」

リグレットは狂ったように男に向けて譜銃を乱射した。しかし軽く手を上げた男の前でその効果は全て打ち消される。
男は哂いながらゆっくりと近づいてきた。
「でもまあ、ヴァン無しでここまでやった事は評価してやっても良い。けれどもうお前達の役目は終わりだ。ここで消えろ。」
リグレットは眼を見張った。目の前から男の姿がふっと消失する。
次の瞬間、リグレットの胸から剣先が突き出してきた。
いつの間にか後方に回った男が、背後からリグレットの心臓を貫いたのだ。
ごふっと血を吐き痙攣したリグレットは、絶命した。

「貴様!」
ラルゴが大鎌を振り上げる。
アッシュはリグレットの身体を蹴り飛ばして剣を抜くと、振り返りざまに大鎌の刃を受け止めた。
「ナタリアは死んだぜ。」
「なんだと・・・!」
跳び退って距離を置いたラルゴに、可笑しそうにアッシュは問いかけた。
「何で驚くんだよ。お前達がやろうとしてた事で、どっちにしろナタリアは死んだはずだろ? なら良いじゃねぇか、俺が殺したって。」
「貴様ああぁ!」

雄叫びと共に鎌を振りかぶったラルゴをひょいとかわし、アッシュは剣を薙いだ。
背骨に達するほど深く腹を裂かれ、ラルゴの身体は重い音を立てて崩れ落ちた。
急速にその眼から命の光が消えていく。
「馬鹿な男だな・・・お前は預言を憎んだんじゃない。どうする事も出来なかった自分が憎かったんだろう?」
事切れた男に、少しの哀れみを含ませた声でアッシュが呟く。
そして振り返った。


「ひ・・・ひいぃぃ!」
柱に隠れていた男が、這うように逃げ出した。つまずいて転び、そのまま尻で後ずさる。
「ディスト。てめぇの役目ももう終わりだ。・・・いい加減、レプリカとオリジナルは別人だと気付け。」
アッシュはディストに手を翳した。手の前に光が集まる。
光はディストごと、真っ直ぐにエルドラントを貫いた。
鈍い音を立てて、エルドラントは海へと落下して行った。

「てめぇらみたいな小物が人類滅亡だなどと、笑わせるぜ。」

 


エルドラントの最深部にアッシュはいた。
眼を閉じると、微かなノイズと共にローレライが接触してくる。
(アッシュか・・・お前が我を解放してくれるのか?)
「ああ。」
(解っているのか?我を解放すれば、お前は・・・)
「お前を解放したら、俺が奪った力はお前に還るんだろう?」
無表情にアッシュは答えた。

(・・・・・・良いのか? まだ瘴気中和が残っているぞ。中和は、生身のお前では耐えられまい。)
「良いんだ。その代わり、頼みがある。今回作られてしまったレプリカを、全てお前に還してやって欲しい。人に虐げられ、国を荒らすよりは、まだ何も知らないうちにお前の元で休ませてやってくれ。 ・・・ああそれと、俺をレムの塔まで運んでくれないか?」

(・・・・・・承知した。)


アッシュはローレライの鍵を床に突き立てた。
譜陣が広がり、エルドラントを飲み込んでゆく。
朱金の光が自分を呑みこみ、力を引き剥がしてゆくのが解った。
激痛が全身に走り、がくりと膝を付いた。


もうすぐ全てが終わる。
・・・・・・あいつの所へと還れる。

自分を抱きしめ、蹲まりながらアッシュはくすくすと笑い続けた。




(・・・・・・哀れな・・・)

激痛に気を失ったアッシュを、ローレライは崩れ行くエルドラントからそっとすくい上げた。

 


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