帰還ED スレアシュ アシュ←ルク
※短編2(帰還ED 悲惨)に似てますが、実はこっちのが先に出来たんです。
アッシュが燃え尽きてなくて、ルークがやや白いだけです。
アッシュだけが帰還すると、どうしてもこうなるんじゃないかと思ってしまいます。個人的見解ですが。
アッシュを受け入れられない仲間たちに絶望したルークが、アッシュの後を追ってしまう死にネタです。
苦手な方は自己回避で。
仲間好きさん注意。 (残虐行為には走っておりません)
『彼は誰時の蛍』
かはたれどきのほたる
賭けは俺の勝ちだな!
その言葉に、ルークの世界は暗転した。
ローレライを解放し乖離した身体は、ローレライに拠っても一年以上かけて一つしか作ることは出来なかった。
二人の意識は融合や剥離を繰り返しながら音譜帯に漂っていた。
お互いの記憶を共有し、痛みや苦しみを分け合った二人には、もはや憎しみなどは無かった。
ただ、互いの半身と寄り添い、揺蕩っていた。
ローレライがそんな焔たちに目覚めを促す。しかし身体は一つ。
二人は一つの身体に二人ではいるか、完全に融合し一人になるか、一人だけが戻るかの選択を迫られた。
アッシュは身体をルークに譲るという。融合してしまったら、もう元の人格ではいられないだろうし、二人で入るには身体の負担が大きすぎるから、と。
ルークは逆にアッシュに生きて欲しいと願った。
「お前は死にたくねぇと、あんなに願っていただろうが! 俺は死ぬ事を前提に考えていたんだ。もう未練なんてねぇんだよ!」
「嫌だ! アッシュを死なせて自分だけ戻るのは嫌だ! お願い、アッシュが戻ってよ」
「俺が戻ったって、待ってる奴なんかいねぇよ。お前には約束した奴らがいるんだろう?」
「そんなこと無いよ! アッシュの事だってみんな待ってる」
溜息をついたアッシュは、賭けを持ち出したのだった。
戻って自分が望まれていなかったら、身体をルークに渡して、自分は音譜帯に戻ると。
ルークは頷いた。きっと自分が帰るよりアッシュが帰ったほうが皆は喜ぶと思っていたのだ。
アッシュはルークを身体に同化させて、音譜帯を後にした。
セレニアの真ん中に、一つの焔が降り立った。
「ルーク!」
駆け寄ったティアは、足を止めた。
「貴方は・・・ アッシュなの・・・?」
焔は俯いていた顔を上げた。
「そうだ」
「何で! ルークは、ルークはどうしたの!」
「何でお前が帰ってきたんだ!」
泣き崩れるティアに、アッシュを睨みつけ今にも剣を抜きそうなガイ。
ジェイドが眼鏡に手をやりながら、冷静に答えた。
「大爆発が起きたのでしょう。大爆発は被験者がレプリカの情報を取り込み、再構成するものです。レプリカは記憶しか残らない。アッシュ、貴方はルークの記憶を持っていますか?」
驚愕する皆を前にアッシュは頷いた。
「なんで、なんでよぉ!」
「ルーク・・・!」
アニスも泣き出し、ナタリアは複雑そうな顔で俯いた。
それをじっと見ていたアッシュは、突然愉快そうに笑い出した。
「てめぇ!」
ガイが睨みつけ、切り付けようとする。
ジェイドがガイを止めようとするが、そんな事には構わずアッシュは笑いながら言った。
「賭けは俺の勝ちだな! ルーク。 ・・・じゃぁな」
身体が一瞬朱金の光に包まれたかと思うと、アッシュはその場に倒れこんだ。
皆が驚愕していると、アッシュは身体を起こし、絶叫した。
「ああああー! アッシュ、アッシュ!! 行かないで! 嫌だ、一人にしないで!! アッシュ!」
胸を抱え込むように激しく慟哭する青年に、みなは恐る恐る近寄って行った。
「ルーク・・・ルークなのか?」
肩に触れようとしたガイの手が、叩き落とされた。
憎悪に染まった目で睨みつけられ、微笑みかけたガイの顔が強張った。
「何故!何故なんだ! 何でアッシュにあんな態度が取れるんだ! 何故喜んであげなかった! アッシュは行ってしまった。音譜帯に! ・・・アッシュを生かす、最後のチャンスだったのに!」
胸を掻き毟って泣き続けるルークに、ナタリアは口を覆って崩れ落ちた。
ガイやティアも青ざめ視線を逸らす。
ジェイドがルークに話しかけた。
「ここにいつまでも居るわけにはいきません。バチカルに戻りましょう。あなたが帰還したことを知らせなくては」
ルークはゆっくりと顔を上げた。青ざめて無表情なその顔を、涙の筋がつたっていた。
「アッシュは、自分は誰にも望まれていないと、そう言っていた。アッシュは誰も恨んでなかった。ただ、諦めていたんだ。けど俺は、アッシュを殺した貴方達が憎いよ。あんたたちとは一緒に行かない。顔も見たくない」
「ルーク!」
ふらつきながら立ち上がったルークはゆっくりと崖の方に歩き出した。
二度と、振り返らなかった。
残された者は、焔が翻りふわりと崖から落ちてゆくのを声も無く見つめていた。
伸ばした手も、掛ける言葉も、何一つルークには届かなかった。
無数の蛍のような光が天に昇って行く。
ガイの絶叫が響き渡った。
世界は、こんどこそ完全に聖なる焔の光を失ったのだ。
「何だ、また来ちまったのかよ」
「アッシュ! また会えた。アッシュがいるところが俺の場所だよ」
「お前、馬鹿だろ」
「アッシュ、大好き! ずっと一緒にいよう。他には何もいらない」
「ああ、俺もだ。・・・一緒にいよう」
音譜帯の挟間には、二つの焔がふわふわと混ざり合いながら今日も揺蕩っている。
・・・ずっと、永遠に。
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