閑話 別荘でのひととき 11話と12話の間です
「どうした? 機嫌良いな、シリウス」
器用に芋の皮を剥きながら鼻歌を歌っているシリウスにアッシュが尋ねた。
「だってさ、ファブレ公の許可をもらったから、大っぴらにこの別荘使えるし。警護も居るから一晩中起きて無くて良いし。 ・・・あいつらと会う事もないし。良いことだらけじゃないか。アッシュもいるしね」
装置が出来上がるまでアッシュとルークは、ベルケンドのファブレの別荘に滞在する事になったのだ。
もちろん、あの同行者などは立ち入り禁止だ。アスランとギンジ、ノエルが連絡の為、シェリダンと此処を行き来している。
マルクトから着いてきてアッシュとルークに心酔した兵と、白光騎士団から数名、警護と連絡などに滞在している。
初めギクシャクしていた両国の兵士はすぐに打ち解け、協力するようになった。
主にアッシュとルークとシリウスの話で盛り上がっているのは兵士達の秘密である。
「さすがに何ヶ月もろくに寝てないのはきついね。一晩中寝れると、体力の回復が早いよ」
「野営の見張り、一人でしてたのかよ?」
「アスラン殿には少し任せた。あとは・・・役立たずが大勢居るより一人の方がマシってとこかな。
人ひとり完璧に守るのには、一人だと無理があるね」
10人以上の食事を軽々と準備しながらシリウスは朗らかに笑った。
「しばらくは、護衛以外のところで腕をふるうかな」
確かに時間と手間をかけた料理は絶品だった。兵たちは自分の幸せを噛み締めた。
ファブレから上等の日常生活用品も届けられ、シリウスは上機嫌でルークやアッシュの世話を焼いた。
「自分で出来るってば!」
別荘のでかい風呂場に向かっていたアッシュは、中から聞こえる騒ぎに怪訝そうに覗き込んだ。
「何してんだ・・・?」
そこでは袖と裾を捲り上げたシリウスが、ルークの頭を泡だらけにしていた。
「やあアッシュ。せっかくのルゥの綺麗な髪が痛んできたから、全力で手入れしようと思ってね」
良い笑顔でシリウスが振り返る。
「良いじゃねぇか。屋敷じゃメイドにやってもらってたんだろう? ・・・俺もお前の髪の色は嫌いじゃない、きっちりやってもらえ」
赤面したルークは大人しくなった。
丁寧に洗われ上質の髪油をつけて蒸しタオルを巻かれたルークは、ちらりとシリウスと目を見交わした後、身体を洗っているアッシュに視線を投げた。
そしてその後、こんどはアッシュが風呂場で大騒ぎする事となった。
きっちり手入れされ、きらきらのつやつやになった二人は、疲れ果て、けれど照れくさそうにお互いを見て溜息をついた。
「ふわふわだな」
「つやつやだね。アッシュの髪の色大好きだ」
「お前の方が綺麗だ、こんな血の色俺は嫌いだ」
「アッシュの方が絶対綺麗だ! 俺のは劣化してるじゃないか」
わいわい騒いでいると、飲み物を持ったシリウスが笑いながら入ってきた。
「何を言い争ってると思ったら。ルビーと夕日、どっちが綺麗? なんて問いに答えが出るはず無いだろう? 俺はどっちも好きだな」
アッシュとルークは同時に赤面して、おとなしく飲み物をすすり始めた。
ルークの勉強をアッシュが見てやったり、疲れたアッシュをシリウスがマッサージしてやったり、うとうとしているアッシュの横でいつの間にかルークが丸くなっていたり。
短い幸せな日々は、シェリダンからの連絡によって終わりを告げた。
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