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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.30,Tue
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Posted by tafuto - 2007.10.12,Fri

 

 
「アッシューお疲れ! 何処行ってたんだ? そっちのが早かったのに、アッシュだけ居ないから心配した」
ここはケテルブルクホテルのラウンジだ。そわそわしていたルークが正面玄関から入ってきた雪まみれのアッシュに飛びついて行った。
メジオラ高原からたどり着いたばかりのルークは、アッシュの不在を知って心配していたのだ。

「ああ、お前達のが時間がかかるのは解ってたから、ちょっとロニール雪山の様子見てきた」
「ええ~ 危ないから一人で行くなよ」
苦笑したアッシュはルークの頭を軽く叩く。
「入り口を見てきただけだ。・・・ダアト式封咒は残されていたが、途中で壁が崩れていて、何とか入れそうだぞ」
「そっか、じゃあイオンをあんな寒いとこに連れて行かなくてすむね」
「そうだな」
 
 

一同は、しばらく身体を休める事にした。極暑から極寒に来た為、身体を慣らす必要があったのだ。
ピオニー陛下が感謝の気持ちと言ってケテルブルクホテルとスパを無料にしてくれた為、一行は費用を気にすることなく短い休暇を楽しんだ。
 

アッシュがスパに入っていると、シリウスとルークが寄ってきた。
「・・・なんだ」
胡乱な目で見るアッシュに、ルークは満面の笑みで答えた。
「お疲れ様のアッシュに、精一杯サービスしまーす。行くぞ、シリウス!」
「アイアイサー」

アッシュはじたばたしていたが、やがて諦めた。優しく触れてくる手が存外に気持ち良かった所為もある。
髪を洗われ、首や肩をマッサージされ、力が抜ける。

ぶふっと吹き出しながら、イオンとシンクがそれを見ていた。彼らも少し歩み寄ったようだった。
 イオンが楽しそうにシンクを振り返る。

「シンク、僕はシリウスの言葉のなかで、忘れられない一言があるんです」
「へえ、奇遇だね、僕もさ」
「・・・・・・」
「・・・・・・せーの」

「「陰毛髭!」」


ぶわっははは! と笑い声があたりに響き渡った。
実は、笑いのツボは似ている二人だった。
 
 
 
 
 
スパ上がりに冷たい物を飲んでいるルークのところに、ガイが笑顔でやって来た。

「久しぶりだなールーク。ずっとお前に謝りたかったんだけど、陛下が来させてくれなくてさ。
俺があんな育て方したから、お前は我侭で人の話しを聞かなくなっちまったんだし。今までほっといてごめんな。正直まだわだかまりは有るけど、お前はファブレ家の人間じゃなかったんだし、これからも親友として・・・」

「ガイ! 父上は俺を息子と呼んでくれた。・・・ガイはやっぱり、俺がレプリカだから、って思ってるんだな。俺はガイを親友って思ってた。けど、そう思ってたのは、俺だけだったんだな」
「ル・・・ルーク!」
唇を噛んで涙ぐむルークを、シリウスがそっと促し、二人は立ち去っていった。
「てめぇはホントの馬鹿だな」
冷たい視線をくれてアッシュが後を追う。

残されたガイは、嘲笑の言葉に振り返った。
「あんたさぁ、レプリカを自分の好きに出来る人形とでも思ってんの? 自分が育てたから好きにして良い? ふざけないでよ。あんたが一番ルゥを理解してないんじゃないか」
シンクの言葉に、青ざめたガイは長い事その場に立ち竦んでいた。
 
 
 
ロニール雪山には、イオンとアニス、ナタリア以外の全員で向かう事になった。
ぶっちゃけメンバー割が面倒になったのだ。(アッシュが)
イオンは極寒の地に連れて行くのは無理なので、涙ながらに謝ったアニスがイオンを守る事になった。(もちろん兵士も残してあるが)ナタリアは風邪を引いていたので同行を拒否した。
 
アッシュとシンク、アスランで前衛、その後をルークとジョゼットで守りシリウスとジェイドが中衛、ガイが荷物持ちで最後尾にティアという順番で進んでいった。
 

ロニール雪山に入ってすぐ、六神将の襲撃があった。ラルゴ、リグレット、アリエッタが張っていたのだ。
リグレットはシンクに目を留めると顔を顰めた。
「シンク、何故そこにいる」
「僕はもうあの髭の言いなりになるのが馬鹿馬鹿しくなったんだよ」
「閣下を裏切る気か!」
「最初からあんな髭、どうでも良かったんだよ。僕らを火口に投げ込んだの、忘れたの?」

そこにアリエッタが必死な様子で言葉を挟んできた。
「シンク! アリエッタのイオン様は何処?」
「・・・・・・アリエッタのイオンは2年前に死んだよ」
「うそ! 信じないもん!」
「だから僕達が作られたんだよ、見てわかんない?」
仮面を外したイオンと同じ顔を見て、アリエッタは立ち竦んだ。
「止めろシンク!」
「あんた達も、いつまで騙してんのさ。言わない方が可哀想だって思わないの?」
「貴様!」
「シンクの馬鹿ぁ! うそつき! なんでライガママの仇と一緒にいるの!」
「敵討ちがしたかったら後で存分にしなよ。今は忙しいんだよ」
 

戦闘が始まった。
距離をとり譜銃で仕掛けてくるリグレットにシンクが肉薄し、脇からルークが斬りつけた。
シリウスが譜術で援護する。ラルゴはアスランとアッシュ、ジョゼットが防いでいる。
アリエッタはジェイドとティアに襲い掛かり、ガイが前衛を勤めていた。
こちらが押し始めてきた時、アリエッタのビッグバンが炸裂した。
すんでの所で効果範囲から逃げたシリウスが、攻撃しながらリザレクションを発動させる。
ほぼ全回復した前衛たちがすぐさま戦いに戻り、アッシュがラルゴに秘奥義を放った。

ラルゴが膝を突き、リグレットが舌打ちしたその時、低い地鳴りが聞こえてきた。

「雪崩だ!  みんな逃げろ!」

ルークが叫ぶ。必死で走る背後から白い壁が迫ってきていた。
 


「みんなーいるかー?」
「・・・ああ」
「ひどい目にあいましたね」
ラルゴとリグレットの姿は見えず、逃げたか巻き込まれたのだろうという事になった。
アリエッタはシンクが雪の中から助け出した。頬を叩いて目を覚まさせる。
アリエッタはシンクの顔を見て、くしゃりと顔を歪めた。

「ほ・・・ほんとはアリエッタ、知っていた、です。アリエッタのイオン様とにおい、違ってたです。ヴァン総長、アリエッタ騙していた、ですか」
「・・・さあね。教えると後追いしかねないから、って言ってたけどね」
しゃくりあげるアリエッタから目を逸らしながら、シンクは言った。
「僕はもうあいつには付かない。あんたはいつまで髭の言いなりになって、お友達を死なせてるつもりさ」
「あ・・・アリエッタは・・・」


サクサクと近づいてきたシリウスが、アリエッタにヒールをかける。ついでに近くに倒れていたライガにもヒールをかけ、首を持ち上げたライガの鼻筋を撫でてやる。
クゥ、とライガが喉を鳴らした。

「動けるなら、お帰り。ヴァンに協力するのは、最後はアリエッタもお友達も死ぬって事だけど、それを決めるのはアリエッタだから」
「でも・・・その人達、ママの仇です」
アリエッタは困惑して、ぬいぐるみに顔を埋めた。

「憎んでて、良いんだ。でも死を選ぶな。 ・・・ライガは森の生存競争に負けたとき、最後の1頭まで死を選ぶのかい?」
「ちがう森に移動する、です」
「ライガクイーンが死んで、アリエッタが次のクイーンになったんだろう? 最後の1頭まで戦って死ねと、そう命じたらライガ達は女王の命令に素直に従うだろう。でも、アリエッタはそれで良いの?」
泣きそうに俯くアリエッタの頭をぽんぽんと撫でる。
「群れのリーダーとして、最善を考えろ。それでも向かってくるなら、全力で相手をするよ」

近寄ってきたライガの目を見て話しかける。
「アリエッタを安全な所で休ませて。 ・・・お前達は賢くて気高い生き物だな」
一声鳴くと、ライガは消沈したアリエッタを乗せて去っていった。
 


幸いな事に荷物はすぐに見つかったので、そのままパッセージリングに向かう事にした。
壁の崩れた所から中に入り、とりあえず休んで服を乾かす。
 
「この雪壁溶かせば、向こう側にいけるだろう。シリウス、頼む」
「ん。エクスプロード! あっしまった、つるつるになってしまった。ロックブレイク・フリジットコフィン・ロックブレイク・フリジットコフィン。 ・・・これで良いかい?」

微妙に見事な氷の階段がそこに出来上がっていた。
ほとんど詠唱時間も無しに上級譜術を使うシリウスに、ジェイドとティアは唖然としている。
「旦那と同じぐらい使えるんじゃないか?」
ガイの言葉にアッシュが口を挟む。
「シェリダンでメテオスォームってすげえ譜術使ってたな」
「メテオスォーム? 聞いた事がありませんね。コントロールは私より上かもしれません」
「大佐より? そういえば・・・シリウス! あなたが使ったリザレクション、何故あんな広範囲で威力も桁違いなの?」

振り返ったシリウスは気の無さそうに答える。
「ん~、実力?」
「ふざけないで!」
「ふざけてるわけじゃ無いんだけどね。俺の譜眼は右がフォニムの収束、左がコントロールを司る。譜歌は祖母と母が改良しまくったから威力が増してるんだろう」
「な・・・ユリアの譜歌を改良するなんて、なんて冒涜なの!」
「より良い物を使うのは当たり前だろう? 文句はあの世で母に言ってくれないか」

肩をすくめるシリウスにジェイドが近づく。
「その譜眼はとても興味深い、見せてくれませんか」
「・・・・・・目を抉り出されそうで嫌だ。それにいい年の男が見詰め合ってたら寒いだろう?」
後ずさるシリウスに、アスランが助け舟を出した。
「カーティス大佐、諦めてください。彼に無礼を働いたら、陛下に言いつけますよ」
 


長いセフィロトを進み、ようやくパッセージリングにたどり着いた。
進み出ようとしたティアをシリウスが止める。睨みつけるティアに話しかけた。

「ユリア式封咒はここを入れて後3箇所有る。次はゲートで一つづつ解く事になる。君は後一箇所なら耐えられるだろうが、2箇所だったら死ぬかもしれない。俺は何箇所解いても死なない。君が死にたいなら止めないから、どうぞ」
ユリア式封咒を手で指し示すと、ティアは青ざめて固まったまま動かなくなった。

 
遠くで見ていたシンクがアッシュを肘で突付いた。小声で話しかける。
「ちょっと燃え滓。 髭妹、聞きしに勝るじゃない?」
「うるせぇ出来損ない。 ・・・まったく同感だ。一週間も付き合ってみろ、精神が崩壊するぜ」
「あんたがルゥと組ませたがらないわけが解ったよ」
「よくアクゼリュスまで堪えられたと思うぜ」
 

10分程も黙って見ていたが、動きが無いのでシリウスは溜息を一つ吐いてユリア式封咒の前に立った。かすかな音と共に本が開く。
「ちょ・・・あなた勝手に!」
「死にたいならさっさとやれと言っているだろう? 人の所為にするなよ」
僅かにふらついたシリウスを、ルークが心配そうに支えた。
「大丈夫だよ。そっちを宜しくね」
浮かび上がった文字を示す。
「アッシュ、どっちがやる?」
「どっちでもかまわねぇが・・・疲れるから二人でやるか。支えるから古代イスパニア語の成果、みせてみな」
「うん!」
二人は同調して指示を書き変えていった。(ルークが思い浮かべた古代イスパニア語の間違いをアッシュが直して、脳内で罵倒していたのは秘密だ)
 
 
「さあ、あと二つだね。やっとここまで来た」
「ああ。アブソーブゲートとラジエイトゲートは、同時に行ったほうが良い。アブソーブゲートには多分ヴァンが居るだろうしな・・・」
 


一行は、ケテルブルグホテルに戻ってきていた。ラウンジでお茶を飲みながら話し合っている。
驚いた事に、アリエッタが来ていた。イオンと話をしに来たのだそうだ。
ちょうどアニスがいなかった為(皆、呆れた)、部屋で真実を聞く事が出来たという。
そのアニスは離れた所でガイたちと話しながらこっちを睨んでいる。ちなみにアスランはジョゼットと少し離れた席でいい雰囲気だ。


「・・・アリエッタ、もうお友達死なせる、いやです。敵討ちは、ぜんぶ終わったら考える、です」
「それで、アリエッタはこれからどうしたい?」
シリウスが優しく聞いた。
「シンクが幸せにしてくれる、です」
それを聞いたシンクが思い切り茶を吹いた。
「な・・・何いってんのさ! 幸せになればいいんじゃないって言っただけだろ!」
むせ返りながら赤面して大変な事になっているシンクを周囲は生暖かい目で見守った。


「おお・・・見事だ。ツンデレの真髄を見た・・・!」
「あれが真のツンデレかぁ・・・!」
「可哀想だから言ってやるなよ、シリウス、ルゥ」


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