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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.30,Tue
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Posted by tafuto - 2007.10.15,Mon

 
 

そろそろ2年が過ぎようとしていた。
シリウスは食堂のほかの調理人たちに自分が2年契約である事を告げ、自分無しでもやっていけるように仕込んだ。2年かけただけあって、もうほとんど遜色は無い。
涙ぐむ同僚に新しいレシピを送る事を約束し、引継ぎをはじめた。
そしてその頃から毎晩、深夜に聖堂で歌を奉納し始めた。
 

番兵に声をかけ(顔パス)、するりと聖堂に入り込む。
ユリアのステンドグラスの前に立つ。大きく息を吸って、浪々と歌いはじめた。

初日はノーム、2日目はレム、3日目はルナという風に、一晩に精霊一体に歌を捧げていった。
番兵はその声に聞き惚れた。長く教団にいるが、こんなに見事な声はそう聞けるものではない。
自分の幸運さにユリアに感謝を捧げた。
最後のローレライの日、シリウスが聖堂に入ってすぐにヴァンがやって来た。重要な話が有るのだと人払いを命じ、扉に鍵をかけてしまった。(番兵は少し殺意が沸いた)
 
 

ユリアのステンドグラスの前にシリウスは立っていた。こちらに背を向けている。
そして歌い出した。 ・・・大譜歌を。

ヴァンは呆然とそれを見つめ続けた。澄んだ声にいつしか聞き惚れていた。
大譜歌が終わり、シリウスが振り向いた。その目を見て、やっと動くことが出来た。
ゆっくりと近づくヴァンに、シリウスが微笑みかける。

「・・・何故お前がそれを謡えるのだ」
「それはね、俺がユリアの子孫だからだよ。テオドーロ殿は言ってなかったかい? シティを飛び出した俺の祖母にユリアの血が流れている事を」
「・・・知らなかった」
「ねぇ、ユリアは何で預言を詠んだんだと思う?」
「・・・知らん!」
「教えてあげる」

 
シリウスはふっと宝珠を出現させて、ヴァンの手を取った。
自分の手で宝珠とヴァンの手を包み込むように触れさせる。
世界の消滅を詠み、嘆くユリアの声が届いた。どうか覆して、と泣いている。

目を瞠り呆然と動けないヴァンの手を外し、宝珠を体内にしまう。
「・・・まだ、ユリアを、預言を憎むかい? ユリアは滅亡を覆せるようにと預言を詠んだんだ。
長い年月のうちに預言を絶対視して、その通りに生きてきた人間は愚かだ。しかしそうじゃない人もいる。あんたの考えてる事は、きっとあんた自身も幸せになる事は出来ないんだろう? ・・・違うかい?」
 

ヴァンの目を見てするりと腰に手を回す。
「まだ人間を憎んでいる? すべてを滅ぼしたいほど」

答えられないヴァンに笑うと、シリウスは体を離し歩き出した。 
「・・・俺はけっこうあんたが気に入っている。だけど、前に言ったろ? 俺は俺の好きな人たちと楽しく暮らしたいって。末永く幸せになりたいんだよ。そのためにユリアの願いを叶えたい。
・・・明日でダアトでの契約は終了だ。答えは2年ぐらいしたら聞きに来るよ」
「待て、どこに行くのだ」
「やりたいことがあるんだよ」
 

 
次の日、皆に契約終了を告げたシリウスは、滂沱の涙と共に見送られ、ダアトを去った。
 

 

 


 
閑話   その後の主席総長
 

 
しばらくヴァンはおかしかった。
同じ書類を何枚も書いたり、コーヒーにペンを指してみたり。
虚ろな目でフォークに刺したにんじんを5分も見ていた時には、痛々しくて話し掛けられなかったほどだ。
だんだんリグレットの目が怖くなってきた。情けなさすぎて怒りが沸くらしい。
 

うんざりしたアッシュが果敢に突っ込み(というか追い討ち)を入れる。
「ハッ! 男に逃げられたくらいで、主席総長がだらしねぇな」
「ち、違う、そんな事で悩んでいるのではない! というかその表現は何だ!」

ハッと気付いたヴァンが慌てて訂正する。 
「へぇ・・・あいつのことは『そんな事』でしかないのか? シリー、可哀想になぁ・・・若いうちから散々弄ばれて、尽くしてきたのに『そんな事』かぁ」
(実はアッシュはシリウスから、ヴァンに何を言ったかは全て聞いている。ただの嫌がらせだ)

 
ちなみにここは食堂だ。大勢いるオラクル兵たちは、ヴァンを見てひそひそ噂している。
当然アッシュは狙ってやっている。ヴァンはそんな事には気が付かず、墓穴を掘りまくっていた。

「弄んでなどいないぞ! 同意の上だ」
「えぇー? 無理やり部屋に引っ張り込まれて、気絶するまで犯られたって言ってたけどなぁ」
周囲のざわめきが大きくなる。強姦?とか絶倫! とか聞こえる。
「あれは久しぶりだったから、つい・・・!」
「やっぱり体目当で、弄んでたんじゃねぇか。だから逃げられるんだよ」

「違っ「閣下。その辺にしてください。・・・アッシュ。これ以上は可哀想だから止めてあげてくれないか。情け無くて涙が出そうだ」

 
リグレットの冷たい言葉に我に返ると、ヴァンは周りを見渡した。
生暖かい視線がそっとそらされる。いくつも。
ヴァンは別な意味で虚ろな視線になると、そっと、席を立った。
 
 
シリウスに聞いたユリアの真実や預言について深く悩んでいたヴァンは、「犯り過ぎで愛人に逃げられ、子供にくどくど言い訳する情けない男」という事になっていた。

 

アッシュは一人になると机を叩いて爆笑していた。
 彼の人生でこんなイイ笑顔、ちょっと見た事が無い。
 
 

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